
私たちが毎日使うトイレのメーカーはどこかと聞かれたら、多くの人は「TOTO(トートー)」の名前を挙げるのではないだろうか。
それほどTOTOが製造・販売するトイレや洗面化粧台など多くの水回り製品は、私たちの暮らしを支えています。
また、日本のトイレは世界一快適といわれるだけあり、その技術力は凄いの一言。本社は福岡県北九州市に構え、隣接してトイレの進化の歴史を無料で見学できる「TOTOミュージアム」があります。
TOTOミュージアムにて、和式から最新式まで日本のトイレ100年の歴史を学んでみよう。そして、今以上にトイレのありがたみを感じて下さいね。
本記事では、今よりもトイレが好きになるユニークな博物館こと「TOTOミュージアム」を紹介します。
目次
TOTOミュージアムとは

TOTOミュージアムは、国内でトイレや洗面器などの衛生陶器において、約6割のトップシェアを誇るTOTO株式会社が2015年にオープンした施設です。
私たちの生活に密接に関係している「トイレ」をテーマにしたユニークな博物館ですね。建物の外観からして清潔感のある白を基調にしており、近未来的なデザインがカッコイイ!
「どのようなトイレが展示されているのだろう?」と入る前から期待感を味わえるだろう。建物の1階がショールームになっていて、2階がミュージアムですよ。どちらも無料で見学できます。
ミュージアムの展示コーナーは、以下の通りです。
| 第1展示室 | 【TOTOのルートと歴史を紹介】 TOTOのあゆみコーナー 「森村グループ」コーナー ものづくりの流れコーナー 食器の歴史コーナー |
| 第2展示室 | 【創業の想いとTOTOのものづくり】 TOTOのこころざしコーナー 水回りの変遷コーナー 水回りの商品の進化コーナー 映像シアター |
| 第3展示室 | 【未来、そして世界へ】 グローバルギャラリー |
これらの展示コーナー以外にも、水回りに関する児童図書から専門書を取りそろえたライブラリーや、オリジナルグッズや地元企業とのコラボ商品を販売しているミュージアムショップなどがあります。
所要時間は、一通り見て回るならば1時間ほど。じっくりと見学するならば、2時間ほどは見ておきましょう。
「ウォシュレット」で知られるトイレの進化を学ぶ

TOTOといえば「ウォシュレット」をイメージする人が多いだろう。ウォシュレットはTOTOの商標であり、TOTOが販売している商品名。正式名称は「温水洗浄便座」といいます。
1980年に販売を初めて、今では国内の温水洗浄便座の普及率は70%近くとも言われるほどですね。そもそも創設者が、欧米で洋式便器を目にして「日本にも衛生的で快適な生活文化を普及させたい」という想いから生まれたのがルーツです。
1912年に衛生陶器の製造に着手しましたが、当時の日本は、まだ下水道がほとんど普及していなかったそうですよ。令和6年度末には、日本の下水道普及率が93.7%に達しており、その先見の明には脱帽します。

時代が進むにつれ技術力が向上し、ウォシュレットの改良を図ってきました。一斉に並ぶ便器を比較すると、外見はさほど変わっていないですね。
しかし、中身は全然別物なんだそうな。便器の構造や水の流し方の移り変わりを知ると、その進化に驚きます。
たとえば、便器を使用する度に流す水の量が20L必要だったものが、最新式では1回あたりの水量が3.8Lとなっているという。よくぞこのような、小さな便器を改良したものだと、TOTOの皆さんの努力と情熱に拍手喝采を贈りたい。

館内には、見るだけでなく、実際に体験できるコーナーもあります。子供用や大人用、はたまたお相撲さん用の便器があるぞ。実際に座ってみて、その違いを体感して下さいね。
ちなみにお相撲さん用便器は、見た目以上にとても頑丈。なんと100kgを越える体重にも耐えられるそうです。
【博物館の紹介(その1)】
旅先で訪れた博物館を、下記記事で紹介します。
国産第1号の水洗トイレや特別感のあるトレイの数々

こちらは、1914年に日本陶器の製陶研究所(TOTOの前身)で開発に成功した国産初の腰掛式水洗便器のレプリカです。
当時の写真をもとにして、2015年に当館のオープンに合わせて作られたそうですよ。今の多機能な便器を知っていると、凄くシンプルだな~。
2年間で約2万回の試作を繰り返して誕生したということから、どれだけこの便器の実現に賭けてきたのかを伺い知れる。それに、これから日本の水洗トイレが始まったかと思うと胸アツですね。


おっ、これは何ともお洒落な便器ではないですか。実は、これ迎賓館赤坂離宮の便器なんだとか。特別に作られた木製カバーで覆った陶器製の腰掛け便器は、ネオ・バロック様式の迎賓館の外観にピッタリ。
そもそも迎賓館は、国賓の宿泊や外交活動の舞台となる場所ですね。このような便器ならば、他国から日本へ訪れた皆さんにも、気持ちよく用を足せるだろうな。
個人的には、これだけお洒落なデザインですと、なんだか用を足すのが申し訳ない気持ちになります。


1929年に竣工した総理大臣官邸には、日本初となる腰掛式サイホンゼット便器がありました。展示されている浴槽と便器は実際に使われていた本物なんだとか。
首相官邸建て替えの際に引き取って展示しています。ということは、吉田茂氏や田中角栄氏など歴代の首相が使っていたのかも知れないですね。
走るトイレだと!? バイオガスで走るバイクにびっくり

館内の展示品の中でもひと際目を引くのが、こちらのバイクでしょう。
バイクのシート部分には、まごうことなき白い便座が設置されており、インパクトが抜群だ。初見では、「なんだ、これは!!」と驚くに違いありません。(私もそうでした。)
実は、これTOTOが地球環境の取り組みを知ってもらうために作った宣伝カーなんだそうな。その名は「トイレバイク ネオ」といいます。
ネオの燃料は、家畜の排せつ物や生活排水などから生成されるエコなエネルギー「バイオガス」が使われているそうですよ。満タンにすると、約300kmも走れるという環境に優しいバイクですね。


そもそも排せつ物を利用するという発想が凄い。個人的に思ったのは、「走行中にトイレに行きたくなったら、そのまま用を足せれるのかな?」というところ。う~む、仕様的にはOKのような気がしますが、実際のところどうなんでしょうかね。
最高速度は70~80キロで、実際に福岡から東京まで約1,400kmを1ヶ月かけて走破したのだから、実用性も十分期待できます。
TOTOが誇る歴代の水まわり商品がいっぱい

館内には、トイレ以外にも歴代のTOTO製品が展示されています。その中に見知ったものを見つけると、当時の頃を懐かしく思い出すでしょう。
昔は、台所や洗濯用の流しなどで洗顔や歯磨きを行なっていましたが、1966年に洗面化粧台が登場すると、洗面所がお風呂の脱衣所を兼ねるようになりました。ご高齢の方には、当時を経験していると思うので、その便利な変化に喜んだ人も多いと思います。
それでは、主な水回り商品の一部をダイジェストで紹介。




洗面化粧台やシステムキッチン、浴槽など水まわり関連の商品を見学しながら、その進化の過程を学ぶのが面白いですね。

日本の近代水道の始まりは、道端に設置して共同で使う「共用栓」ということを知っていますか。明治20年にイギリスから輸入されたのが最初だといいます。
その後、住宅内に専用栓を設置されていきました。昭和40年代以降になると、一般家庭でも日常的にお湯が使えるようになり、水栓は時代とともに進化して、ますます便利になることに。近年には、環境に配慮して節水できる水栓も登場しています。

1936年に竣工した帝国議会議事堂(今の国会議事堂)には、TOTOの水回り商品がたくさん使用されていました。
実は議事堂の建築に際し、すべて国産品で賄うという条件があり、材料や生産技術にたいへん厳しい基準が設けられたそうです。
もちろん衛生陶器も対象となり、TOTOの商品は他社を圧倒したという。その数は、6品種498個もあります。展示品の壁掛け式洗面器は、国会議事堂専用の特別製というのだから、お見逃しなく。

また、こちらの初代ユニットバスルームにも注目しよう。ホテルニューオータニに現存していた最後の1台を移設した貴重なものです。
浴室の工期短縮や性能向上に貢献しているとして、平成28年度に「建築設備技術遺産」に認定されました。現在の主流となる浴室工法の原点になっています。
【博物館の紹介(その2)】
旅先で訪れた博物館を、下記記事で紹介します。
トイレのミニチュアが可愛い

館内には、手のひらサイズのトイレや浴槽などのミニチュアが展示されています。
かつてショールームの無かった時代では、お客に対して商品を知ってもらうためにミニチュアを使用していました。ミニチュアの大きさは、実物の20分の1でできており、色や形は同じなのでイメージしやすいですね。

また、ミュージアムショップではミニチュアの便器が販売されています。一番人気は、手のひらサイズの「超ミニチュア便器」なんだとか。本物の便器と全く同じ材料、同じ製法で作られた一品。それだけで、こだわりを感じます。
「King of Toilet」の異名を取る「ネオレストNX」と同じく、小倉の工場で焼いてるそうで、TOTOミュージアムでしか買えないものですよ。

超ミニチュア便器以外にも黄金色に輝くミニチュア便器があるぞ。こちらは「トイレ三景」と呼ばれる商品。TOTO株式会社と芝崎合金鋳造所のコラボ商品で、2025年5月から販売されています。
「開運と快便の祈りを込めたトイレのオブジェ」なんだそうで、これは自宅のトイレに飾りたい。「洋式・ネオレストNX・和式」の便器がそろっています。材料は、金属の真鍮製で、原料の一部にはTOTOの水栓金具の廃材が利用さているそうな。
可愛いトイレのミニチュアを自宅のお部屋に飾るのも良し、家族や友人、知人へプレゼントするのも良し。TOTOミュージアムを訪れた記念にお土産にいかがですか。
日本だけではない、世界のトイレも展示

日本で有名なTOTOですが、世界でも愛用されているメーカーです。グローバルギャラリーのコーナーでは、アメリカや中国、ヨーロッパなどで使われているトイレを見学できます。
同じトイレでも国によって、デザインや形が違うのが興味深い。「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、その国の文化や習慣に合わせたものを提供するのは大事ですね。
日本とその他の国・地域ごとの特徴を比べながら見学してみよう。その違いに、新鮮な驚きを味わえると思います。
【博物館の紹介(その3)】
旅先で訪れた博物館を、下記記事で紹介します。
TOTOミュージアムの基本情報とアクセス
| 住所 | 福岡県北九州市小倉北区中島2-1-1 |
| 電話番号 | 093-951-2534 |
| 営業時間 | 10:00~17:00(入館は16:30まで) |
| 休館日 | 月曜日・夏期休暇・年末年始 |
| 入館料 | 無料 |
【アクセス】
- 北九州モノレール・香春口三萩野駅から徒歩約10分
- JR小倉駅からタクシーで約10分
- JR小倉駅から西鉄バス愛の家車庫行きに乗って(約12分)、貴船町のバス停で下車後すぐ
- 北九州都市高速「紫川IC」から車で約4分
TOTOミュージアムの駐車場
TOTOミュージアムには、無料駐車場があります。(乗用車34台、バス3台)
尚、貸切バスで来館する場合は、事前に見学の予約が必要です。
まとめ

TOTOミュージアムでは、私たちが毎日使うトイレが、どのような進化を遂げてきたのかを学べます。
特に歴代のトイレや洗面化粧台が一堂に並ぶ様は壮観ですね。そもそも色々なトレイをまとめて見る機会なんて、そうそうないだろうな。
展示された製品を一つ一つ見学していると、物づくりのこだわりや情熱が伝わってきました。日々の生活に使うからこそ、様々なアイデアを取り入れて果敢にチャレンジしているのを感じ取れます。
今や私たちの生活に欠かすことができない清潔で便利なトイレに対しては、感謝しかないですね。



