
日本全国には、猫に縁ある「猫寺」がいくつもあります。その中の一つが、山口県萩市の山奥にある「雲林寺(うんりんじ)」。
雲林寺には、猫にまつわる伝説が残っており、日本だけでなく世界中から猫好きが集まる聖地として有名ですね。
山門へ向かう途中から、他の寺とは違う雰囲気が漂っており、境内へ足を踏み入れると、たくさんの木彫りの猫たちがお出迎え。本堂の内部では、あふれんばかりの猫グッズに頬が緩むだろう。雲林寺名物の「猫かぶり」と「猫みくじ」をぜひ体験して下さいね。
一見すると、小さなお寺に見えますが、猫好きな人はもちろんそうでない人も、「猫が好きだ!!」と訴えかけるオーラに圧倒されるに違いありません。
本記事では、猫寺として親しまれている雲林寺の魅力を紹介します。
目次
雲林寺が猫寺になった理由

雲林寺は、臨済宗南禅寺派の禅寺であり、萩藩開祖の毛利輝元(もうり てるもと)とその夫人、殉死者などの墓がある天樹院(現:廃寺)の流れを汲む末寺です。
この天樹院には、悲しい猫にまつわるエピソードがあるという。このことが、雲林寺が猫寺になった理由に絡んでいます。
そのエピソードとは、輝元公の家臣・長井元房(ながい もとふさ)はとても猫を可愛がっていたそうで、輝元公の死後に元房も自刃したそうな。その後、猫は元房の墓前から離れようとしませんでした。そして、ついに舌を噛んで主人の後を追うことに。
「猫は3日で飼い主を忘れる」という言葉がありますが、なんと忠義な猫だろうか。猫の死後、不思議なことが起こり始めました。それは、夜な夜な主を探す猫の声が聞こえてくるのです。事情を知らない人からすると、これは怖すぎる・・・

当時の天樹院の和尚は、そんな猫の様子を憐れみ、しっかりと供養すると鳴き声はピタリと泣き止んだと伝わっています。このお話は、雲林寺で無料配布されている「招福堂縁起絵巻」にて、漫画仕立て紹介されているので、ぜひ一読して下さいね。
話を現代に戻すと、雲林寺は猫寺と呼ばれる以前から、招き猫や猫のグッズが奉納されていたそうです。そして、天樹院の住職にならい、猫の魂を慰めようと発願して、猫好きが集まる今のお寺となりました。
その後、以前に増して猫の像や置物などが奉納されており、今では約600体以上もあるというのだから驚きです。(お寺の人に話を聞くと、600体から数えていないそうなので実数はもっと多いと思います。)
境内は猫のアート作品がいっぱい

雲林寺の境内へ一歩でも踏み入れると、本堂周辺にはズラリと立ち並ぶ大小様々な木彫りの猫地蔵にビックリします。
その猫地蔵の表情や仕草からまるで今にも動きだしそう。聞くところによると、世界一になった山口県のチェーンソーアーティスト・林隆雄さんの作品だそうです。
本堂だけでなく、境内のどこを見ても猫がいっぱい。猫好きにとってはパラダイスでしょう。吹き抜ける心地よい風の中で、まずは本堂へお参りを行ない、境内を一通り見て回って下さいね。




境内に潜む数々の猫地蔵をひっそりと眺めていると、猫たちの心の声が聞こえてきそうです。

こちらは「猫仏」ですね。本堂の正面の扉の奥に鎮座しており、優しいお目目が印象的。
自分自身の身体の良くないところと同じ部分を撫でれば、その部分の病気や怪我が治ることが期待できるぞ。「よくなりますように」と願いながら撫でてみよう。

おっ、萩にゃんがいるではないですか。萩市の観光課長代理を務めている、忠義の猫をモチーフにしたキャラクター。
忠義の猫といえば、先ほど紹介した雲林寺が猫寺になった理由にからむ猫ですね。まさにこのお寺に相応しい存在だといえます。
奇兵隊の姿で、毛利家の家紋の肉球マークが入った陣笠をかぶっているぞ。うん、凛々しいお姿がいい感じ。

こちらの像にご注目。山門にいらっしゃいましたが、遠目ではアマエビだと思いました。近づいてその姿が鮮明になってくると、どう見てもアマエビの猫バージョンですね。
そこで、勝手に「ネコエビ」と命名。どうですか、単純ですが中々いい名前でしょ。猫以外にもフクロウやウサギの像もあるので探してみよう。

なんだ、この面白そうなポストは。お亡くなりになった人へ、お地蔵様が手紙を届けてくれるという。
なので、現世での取り扱いはできません。


猫仕様の観音堂とは珍しいですね。ここでは、猫の魂を成仏させているそうな。個人的には、パッと見た時に、天井を突き破るような猫の腕に一瞬ビックリしたぞ。(そんな訳あるか!)
境内を一通り見て回り、猫にとって救いの場所なんだと感じました。
猫好きや猫とお別れをした人、これから猫を飼おうと考えている人は足を運ぶ価値あり。もちろん猫に興味ない人も楽しく参拝できます。また、神社仏閣巡りを趣味にしている人にとっては、普段見かける機会なんてない刺激的なお寺となるでしょう。
想像以上に多い圧巻の猫グッズ

境内を一通り見て回ったら、よいよ本堂の中へ。玄関に足を踏み入れると、そこからはこれまで以上に猫ワールドが広がっています。
デザインが可愛い猫の壁時計を始め、Tシャツやエコバック、缶バッチなど様々な猫グッズが並んでいるので、一つ一つ見ていこう。
もちろん健康守りや交通安全守りといった定番のお守りも並んでおり、中にはお金や人を招く「ねこ鈴もり」や、愛猫のためのお守り首輪「首玉守り」などバリエーションも豊富です。

その中でも注目したのが、雲林寺名物の「猫みくじ」だろう。良く当たることで有名なんだそうな。
形の違う猫が8種類いて、それぞれに「ノスケ」や「コウメ」といった名前がついている。それぞれの猫ちゃんは、自己紹介をしているので、自分に一番合う猫を選んでみよう。たとえば、ノスケの「夢に向かってまっしぐら」なんて素敵ですね。
さて、どれを選ぶかは最終的にはあなた次第。いっちょ、運試しとしゃれ込みましょう。



玄関から上がり、奥の部屋へ進んで行くと、ここからが本番です。部屋の中には所狭しと猫グッズがいっぱいだ。
よく見かける招き猫を始め、可愛らしいデザインの猫や時代を感じさせる猫、人体模型ならぬネコ体模型といったシュールな猫など、大小様々な猫たちが一斉に歓迎してくれます。

こちらの猫神様では、なんと相性占いができるという。左右のヒゲをひっぱりあいこして、つながったら「相性抜群」なんだそうな。もし、つながっていなかったら再チャレンジ。
それでもダメだったならば、猫神様に向かって、二人で手を合わせて「ヒゲを引っ張って、ごめんなさい」と謝れば、きっといつまでも仲良しで入られるそうです。

そして、とある部屋では寝そべっている大きな猫ちゃんの登場だ。これは、見ていると今まで以上に癒されます。
周囲を囲む猫ちゃんたちの表情や仕草も可愛らしく、まるで陽だまりの中で過ごす時間のようだ。そういう時間というのは、とても貴重なものですよ。
一つ一つの猫グッズを紹介できればいいのですが、それだと膨大なページ量になる。涙をのみながら、ほんの一部のみを紹介します。






これだけユニークな猫ちゃんがいると、たとえ猫好きでなくても嬉しくなるだろうな。猫好きであれば、天にも昇る気持ちになると思います。
ちなみに、リアル猫ちゃんもいるそうなので、もし出会うことができればラッキーですね。(私はタイミングが悪かったみたい。それ以上は聞かないで・・・)
たくさんの不思議で温かな猫たちに囲まれながら参拝すると、いつも以上に穏やかな気持ちになれるでしょう。
【猫に関わる観光スポットの紹介】
旅先で訪れた猫に関連する観光スポットを、下記記事で紹介します。
雲林寺名物「猫かぶり」で猫になろう

一番奥の客間には、ズラリと並ぶ木製の猫のお面があります。
実は、このお面をかぶるっても大丈夫。サイズも色々あるので、小学生以上の人ならば対応できるだろう。
木製なので、ずっしりと重みがありますが、それがまたいいかも。このような体験ができる機会なんて、そうそうないでしょう。思い思いのポーズを決めて、記念撮影をして下さいね。
さらにかぶったままで、ご本尊様(釈迦牟尼仏)へお参りもOK。ご本尊様も笑って許してくれるだろうな。反対に何もせず、帰ってしまうなんてもったいない。これは、旅の思い出になりますね。(猫かぶりしなくても、普通にお参りしてもOKです。)
世界中から猫好きが集まる

雲林寺は、日本だけでなく世界各地から多くの人々が訪れています。その人気ぶりが分かるのが、こちらの世界地図。こちらの地図では、訪れた人にシールを張ってもらっていますね。
アジアやヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカなど猫好きな人たちが集まっているのが分かるでしょう。もちろん、シールを貼っていない人もいる訳ですから、その総数は凄いことになるだろうな。
また、訪れた皆さんが自由に書き込めるノートがあるので、ぜひメッセージを書き込んでみてはいかがですか。

ちなみに、世界地図だけでなく日本地図もあります。パッと見た目では、西日本を中心に訪れる人が多い。
一方、東日本は西日本と比べて少なめです。これは地理的に考えれば分かるかな。ただし、関東地方の参拝者が多かったのが印象的でした。
雲林寺の基本情報とアクセス
住所 | 山口県萩市大字吉部上2489 |
電話番号 | 08388-6-0307 |
拝観時間 | 平日 9:00~15:00 土日祝 9:00~17:00 |
【アクセス】
- JR津和野駅からタクシーで約40分
- 萩バスセンターからタクシーで約30分
- 萩市街地から車で県道11号線、13号線を津和野方面へ向けて約30分
雲林寺の駐車場
雲林寺には無料駐車場があります。(普通車20台、大型バス3台)
まとめ

山口県萩市の市街地から約25kmほど離れた山奥には、猫寺として親しまれている雲林寺があります。
境内や本堂の中に至るまで、たくさんの猫グッズがあふれているお寺なんて、そうそうあるものではないでしょう。猫にまつわる伝説や、猫をモチーフにしたお守りやグッズの数々にビックリ。
参拝していると「猫・猫・猫!!!」と叫んでしまいたいほど、猫愛を感じられるかな。そのため、決してアクセスのよい場所ではありませんが、足を運ぶ価値は十分にあります。
また、運がよければリアル猫ちゃんにも会えるかも。山陰地方の西部へ訪れる際には、雲林寺まで足を延ばしてみてはいかがですか。