「流しびな」を知っていますか。
流しびなは、雛まつりの原点ともいわれる行事であり、古くは源氏物語にも登場しています。そんな流しびなや雛人形など「雛の文化」を今に伝える博物館が鳥取県にある「流しびなの館」です。
旧暦の3月3日には、流しびなの伝統行事が開催されて、日本古来の良さを今に伝えている。
本記事では、流しびなの館を見学しながら、その魅力を紹介します。
流しびなの館とは
流しびなの館は、鳥取県鳥取市用瀬町にあり、全国から集められた流しびなや雛人形、竹田人形、御所人形など約1,000体を展示しています。
そのため、雛が織りなす独特な美しさを堪能できる。江戸時代の珍しい雛人形もあり、一見の価値がありますね。
初めて訪れて驚くのは、本館の外観でしょう。京都の金閣寺をモチーフにした大型な木造建築物で、所どころの朱塗りのカラーリングが目を引きます。
また、本館の周りには、池泉回遊式庭園もありますので、ゆっくり寛ぎましょう。
観光物産センターが隣接していますので、2階の食事処「ぼんぼり」では人気の昼食「雛ものがたり」を召し上がれますよ。
用瀬町では、毎年旧暦の3月3日に千代川(せんだいがわ)に雛を流す「流しびな行事」が行われ、無病息災を願います。流しびなの館では、流しびなの制作体験ができるので、ぜひ参加してみてはいかがですか。
【周辺の見所】
流しびなの館の周辺の見所を、下記記事で紹介します。
流しびなの館を見学し、流しびなや雛人形の文化を学ぶ
流しびなの館は、3階建ての建物で1階と2階に雛人形などを展示しています。3階は展望台となっていますので、一通り人形見学をし終えたら足を運びましょう。
館内を見て回るにあたり、事前に「流しびな」について知識を仕入れておきたいものですね。冒頭でも触れましたが、「流しびな」は「雛流し」ともいわれており、雛まつりの原点ともいわれる行事です。
紙などで人形(ひとがた)を作り、この人形をなでて災いを写した後で、人形を川や海に流す行事から生まれた風習ですよ。
この行事がいったいいつから始まったのか不明ですが、紫式部の著書・源氏物語では、源氏の君が祓いをして人形(ひとがた)を舟に乗せ、須磨の海へ流すという記述があることから、流しびなの原形は平安時代だといわれています。
館内で「流しびな」を見学していると、様々な地域で続いていることが分かりました。
こちらは、鳥取市の流しびな。用瀬(もちがせ)町の流しびなについては後述しますね。
こちらは、京都・下鴨神社の流しびなです。3月初めの日曜日に境内を流れる御手洗川に、人形をのせた桟俵を流します。
岡山県笠岡市の流しびなもありました。3月3日の節句を祝った後で、翌日の午後に麦わら船に乗せて海に流すという。
内裏雛1対、船頭1体、官女9体の合計12体の大所帯だ。うるう年には、官女を増やして13体になるそうですよ。なぜでしょうかね。
その他にも、和歌山県粉河町や兵庫県竜野市の流しびながありました。
また、鳥取砂丘がある鳥取市らしく、流しびなの砂像もありビックリ。うん、これはさすがに川に流せませんね。
流しびなだけでなく、数多くの雛人形や竹田人形などが所狭しと並べられており、実に華やかですよ。そこで、雛人形などをダイジェストで紹介します。
こちらは江戸時代後期に作られた「享保雛」。
頭は長めで能面のように見える。少し口を開いており、切れ長の目をしています。実は、この雛から髪を植え、男雛は冠をかぶり、女雛は宝冠をつけるようになりました。
おっ、これは「貝合わせ」だ。
平安時代では、貝を持ち寄り、左右に2組に分かれ、美しい貝・珍しい貝・大きな貝を出し合い優劣を争いました。現代の私たちが「貝合わせ」と聞くと、対になるものを合わせる遊びですね。展示されていた貝には、きれいな源氏絵が描かれています。
そのほかにもリアルな人形で「ひな荒らし」を再現しているじゃないですか。ひな荒らしとは、雛段の前に供えられたご馳走を食べ荒らす風習のこと。
う~む、それにしても実によくできている。パッと見た時は「本物か?」と驚いてしまったのは内緒です。(笑)
3階は展望台になっており、用瀬の町並みや流しびなの行事を行う千代川を一望できる。
私が訪れて日は、曇り空のためいまいちの景色でしたが、晴れた日はのどかなよい景色がみられるかな。
流しびなの伝統は、これからも後世に伝えていきたい古き良き文化です。流しびなの館で「雛の文化」に触れ、新たな知見を得れば、よりその魅力を味わえます。
【博物館の紹介】
旅先で流しびなの館のような博物館へ訪れると、その土地の歴史や文化などを学べますね。下記記事では、歴史や文化を学べる博物館を紹介します。
「もちがせの流しびな」とはどういうものか
もちがせの流しびなの風習は、江戸時代から始まったそうです。1985年(昭和60年)には、鳥取県無形民俗文化財に指定されています。
今でもその風習が続いており、用瀬町では毎年旧暦の3月3日になると、男女一対の紙雛を桟俵にのせて、菱餅や桃の小枝を添えて千代川(せんだいがわ)に流す光景が見られますね。
この行事が行わる時期になると、個人宅や玄関先で町に伝わる雛人形やその関連のものが飾られ、町中が雛人形であふれます。なので、鑑賞しながら町歩きを楽しもう。
もちろん、観光で訪れた方も楽しめるよう当日流しびなを購入して、千代川に流せるのは嬉しいですね。鳥取で昔から続いている伝統行事に触れ、流しびなで無病息災を願いましょう。
用瀬(もちがせ)町では、時代の移り変わりと共に形を変えながらも、今も「もちがせの流しびな」として受け継がれています。
【カメラに関する話】
旅の思い出にカメラ撮影を楽しみましょう。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
日本庭園と流しびな神社へ足を運ぼう
流しびなの館の入口前には、手入れの行き届いた日本庭園があります。
それほど大きな庭園ではありませんが、大きな池には立派なコイが泳いでおり、そのゆったりとした動作は不思議となごみますね。売店では、コイの餌(1袋50円)が売られているので、コイに餌をあげてみよう。
また、小さな滝や竹林があったり句碑もある。
特に印象的なのは、流しびな神社があることだ。
由来やご利益はわかりませんが、流しびなにちなみ「無病息災」を願っておくとよいかも知れません。
流しびなの館の前を流れる千代川の周辺には、水原春郎の句碑が立てられていました。
この句碑には「里の子の晴着の袖や雛流し」と刻まれており、その情景が思い浮かびます。川沿いを散策しながら、千代川に流れる雛の姿を想像するのも楽しいですね。
【庭園の紹介】
旅先で訪れた様々な庭園を、下記記事で紹介します。
流しびな作りを体験できます
流しびなの館では、有料で流しびな作りを体験できます。
コースは以下の2つに分かれており、地元の「ときわ流しびなの会」の皆さんが完成まで優しく指導してくれるので安心ですね。
- 60分コース 紙雛づくりを行います。
- 90分コース 60分コースに桟俵づくりが追加されます。
希望者はひな流し体験も可能です。また、完成した流しびは、お持ち帰りもできます。
紙雛づくりは、雛の顔書きや着付け、お札などをつくる。お札には願い事を記入し、次回の流しびな行事の時まで大切に保管してくれるそうですよ。
尚、参加費用は以下の通りです。
- 60分コース 3~14名:1,430円(団体15~20名:1,330円)
- 90分コース 3~14名:1,630円(団体15~20名:1,530円)
流しびなの館の基本情報とアクセス
住所 | 鳥取県鳥取市用瀬町別府32-1 |
電話番号 | 0858-87-3222 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 水曜日(祝日の場合は開館) 年末年始(12/29~1/2) |
入館料 | 高校生以上 300円(200円) 中学生以下・障害者 無料 ※15名以上で団体割引きあり、( )内の金額は割引き後の料金 |
【アクセス】
- JR用瀬駅から徒歩約5分
- 鳥取自動車道「用瀬IC」から車で約5分
流しびなの館の駐車場
流しびなの館には、無料駐車場があります。(乗用車30台、バス5台)
まとめ
「流しびなの館」では、流しびなや雛人形がたくさん展示されており、自由に見学できます。
江戸時代を始め各時代の雛人形、雛飾りなど雛が織りなす独特の美しさは素晴らしい。ぜひ「雛の文化」に触れてみて下さい。
鳥取市用瀬町では、「流しびな行事」が今も旧暦の3月3日に開催されますので、興味がある方はぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。