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旅の体験談

滋賀・油日神社は甲賀忍者の集会場、美しい回廊付きの楼門は見応えあり

油日神社の紹介サムネ

日本全国に大小様々な神社があり、そんな神社巡りを行なっていると、素晴らしい造形美の社殿に出会えたりするものです。

そのような神社の一つが、甲賀忍者の郷・滋賀県甲賀市に鎮座する「油日神社(あぶらひじんじゃ)」ですね。

南北に本殿・拝殿・楼門が建ち並び、楼門の左右には境内を囲むように廻廊がのびる様は美しすぎる。

また、「るろうに剣心」など映画のロケ地としてもよく活用される注目の神社だ。それに戦国時代には、甲賀忍者の拠り所となっていたので、忍者ファンにはたまらないだろう。

境内をゆっくり歩きながら、実に絵になる光景を目に焼き付けて下さいね。

本記事では、中世の神社景観が今も残る「油日神社」の魅力を紹介します。

本記事は、以下に該当する人向けです。

  • 神社仏閣に興味がある
  • 忍者が好き
  • 油日神社の見どころを知りたい

油日神社とは

油日神社の境内
油日神社の境内

油日神社は、南鈴鹿の霊峰油日岳の麓に鎮座し、古来より朝廷の崇敬が篤い神社です。「甲賀の総社」として、地域の人々から篤く信仰されています。

創建の詳細は不明ですが、用明天皇または天武天皇の時代に創建されたそうな。また、聖徳太子が社殿を建立し油日大明神を祀ったいう伝承も残っている。

どちらせよ長い歴史を歩んだ神社には違いありません。それに油日岳を神体山とし、山頂には今も岳神社が祀られています。

ご祭神は以下の通り。

  • 主祭神:油日大神(あぶらひのおおかみ)
  • 東相殿:罔象女神(みつはのめのかみ)
  • 西相殿:猿田彦神(さるたひこのかみ)

油日大神の名は、古事記や日本書紀に記載されていません。しかし、日本三代実録によれば、平安時代の元慶元年(877年)に「油日神」が従五位下を授かっているので、これ以前から存在することは確実視されています。

油日神社の一の鳥居
油日神社の一の鳥居、周囲の住宅は高くないのでより目を引く

その名前の通り油の神様ですよ。諸願成就のご利益があるぞ。そもそも油日大神は、全国の神社を見回してもこの地にしかいません。そう考えると、色々と謎に包まれた神様なのではないだろうか。

戦国時代には、甲賀流忍者が篤く信仰しており、油日神社は集会場でもありました。その歴史は滋賀県無形民俗文化財に指定された「奴振(やっこふり)」に刻まれています。

ちなみに、この「奴振」は甲賀流忍者が列をなして油日神社を参拝したのが起源という。現在では、5月1日に開催される油日祭りにて、5年1度のみ奉納されています。

楼門の造形美を堪能せよ

楼門
楼門

油日神社へ近づくと、まず始めに驚くのが「楼門」の美しさではないだろうか。

均整の取れた檜皮葺(ひわだぶき)の楼門から東西に伸びる回廊のバランスが良く、参拝者の心を惹きつけます。

なので、様々な角度から眺めて下さいね。このような楼門から廻廊がのびる中世の神社建築は、滋賀県ではここだけなんだとか。国の重要文化財に指定されています。

楼門を見上げてみる
間近で楼門を見上げよう

この楼門は、室町時代の1566年(永禄9年)に甲良五良左衛門尉により建てられました。

寺社建築の特徴の1つには、梁や柱を支えるカエルが足を広げたような装飾的支柱、いわゆる蟇股(かえるまた)が見物です。

正面にある蟇股の彫刻は「龍」と「雲」。それほど珍しくない造形ですね。その後、門をくぐり抜けたら振り返って見て下さい。きっと驚くだろう。

鳩の彫刻
蟇股(鳩の彫刻)

なんと裏側の蟇股には「鳩」の彫刻が見て取れます。実は、この鳩には面白いエビソードがあるぞ。

楼門のお披露目式の際にこの鳩の彫刻がなぜか実物となり、飛び去ったそうな。やがてその鳩の捕縛に成功して蟇股に戻すのですが、何度も逃げ出すことに。(どうやって蟇股に戻したかはツッコんではいけない。)

そこで、片方の羽をもぎ取り勝手に飛んでいけなくしたところ逃げなくなりました。だからこそこの鳩の彫刻は、生き生きとしているのでしょうね。

食用油の一斗缶

おっ、楼門の両脇に食用油の一斗缶を発見。きっと、油日という名前にちなんで奉納されたのだろうな。

普段、食用油はプラスチックボトルに入ったものしか見ないのですが、一斗缶が山積みされた光景というのは、レトロ感を感じてしまう。これも時代の変化なのですね。

楼門の左右にのびる回廊に魅せられる

回廊
回廊

楼門を正面から見ると、左右には伸びる廻廊がまるで大空を舞う鳥が翼を広げたように見えませんか。それが私の第一印象でした。

この廻廊は、楼門とあわせて建立されており、国の重要文化財に指定されています。

楼門をくぐり抜ける前に外側からぐるりと回廊の外観を見てみよう。規模の大きさに驚くぞ。

正面は東西とも4間、奥行は東6間、西7間もある。左右対称になっているかと思えば、少し違っています。一方には馬をつなぐためのスペースがありました。

回廊の内側

楼門の一直線上にある拝殿を囲うように回廊があり、楼門同様に屋根が檜皮葺なのがいい感じ。板張の廊下が続いていますが、密閉感を感じさせない造りになっている。

この外側と内側との境界をあいまいにしている縁側を見ると、不思議にホッとしますね。これも日本人のDNAが成せる業なのかも知れないですよ。

せっかくなので縁側に座りながら、境内をボーと眺めてみてはいかがですか。

桃山時代に建立された拝殿

油日神社(拝殿)
拝殿

楼門の正面には拝殿が見えており、その奥には本殿が配置されています。

拝殿は安土桃山時代に建立されたと推定。国の重要文化財に指定されている。

その外観は入母屋造の檜皮葺。四方にしつらえられた格子戸は、優美さを感じさせるかな。また、明るい色の塗装が施されていない木肌というのは、実に古色蒼然たる佇まいを感じるぞ。

油日神社(拝殿)の額

間口には「鎮護」と書かれた大きな額が掛けられていて、いかにも長い歴史を歩んできたのを偲ばせます。

拝殿を様々な角度からカメラを向けて撮影してみよう。屋根の張り出し具合がシャープなのが特徴的。格子戸の優美さが混じりあい、軽やかな印象を与える社殿に仕上げているのは、実に良い仕事をしているなと思いました。

油日神社(拝殿)の内部

また、拝殿内には「三十六歌仙」と呼ばれる平安時代の和歌の名人たちの肖像画が、ぐるりと掲げているのでお見逃しなく。

拝殿の外観や回廊の配置からどう見ても拝殿は舞殿として、回廊はその見所(けんしょ)の役割があったと考えられますね。

本殿とコウヤマキの巨木

油日神社(本殿)

本殿は、室町時代の1493年(明応2年)に建てられてものであり、国の重要文化財に指定されています。

近江国出身の藤原宗弘によって建てられました。内部は三部屋構造となっているのが、中世における神社建築の特徴の一つです。

本殿と拝殿の距離が割と近くに配置されているため、驚く人も多いのではないだろうか。

実は一番外側の部屋(外陣)が、幣殿の役割を担っているということで、あえて幣殿を設けていないスタイルなんですよ。

菱格子

前面に見て取れる菱格子が実にいい。なんとも優美な印象を与えてくれる。

鈴緒を鳴らしてお賽銭を入れて、参拝していこう。きっと多くの甲賀忍者の皆さんもここでパワーを授かったに違いないと思います。

油日神社(本殿)

そして外側からぐるりと見て回り、室町時代の特色を残した本殿を十分に見物して下さいね。

コウヤマキ
コウヤマキ

また、本殿の背後には豊かな社叢林が広がっているぞ。特に本殿の脇には、ひと際大きなコウヤマキ(高野槙)がそびえ立っているため、自然に目を引いてしまう。

この巨木は樹齢750年を越えるそうで、その大きさは圧倒的だ。なんと幹周は6.5m、樹高は35mもあるそうです。

ちなみにコウヤマキは滋賀県の指定自然記念物で、その名前は和歌山県の高野山でたくさん見られることから名付けられたといいます。

境内をゆっくり歩いてみて回ろう

油日神社の鳥居

神社のシンボルとして真っ先に思い浮かべるのは「鳥居」ではないだろうか。

油日神社の鳥居は、実に味のある木製です。鳥居の奥には楼門が見えており、鳥居をくぐり真っ直ぐ歩いていくと、美しい楼門が近づいて見えるのが実にいい。

梵鐘
梵鐘

境内の西側には、梵鐘があります。梵鐘といえばお寺のイメージですが、これも神仏習合の名残と考えれば神社にあってもおかしくありません。

この梵鐘は、1620年(元和6年)に秀吉や家康に仕えた山岡景以たちにより寄進されました。

一時的にご祭神を遷座なさる場所
お堂

本殿向かって右手側にあるお堂は、社殿の改修造営する際に一時的にご祭神を遷座させる場所だそうです。

御神馬像

おっ、これは御神馬像ですね。私が油日神社へ訪れた時間帯が夕暮れ時だったためか、周囲は本当に静かであり、裏山からいつ動物が飛び出してきてもおかしくない雰囲気がありました。

井戸

これは井戸かな?

古びた木製の屋根と注連縄(しめなわ)が印象的。きっと昔は日々の生活に使用されてきたのだろうな。

油日神社の境内社

また、境内社には八幡神社や神明神社、春日神社、金比羅神社など多数ある。気になる神社があれば、ぜひ足を運んで参拝していこう。

境内には、油日神社に伝わる神宝や社宝を納めた「甲賀歴史民俗資料館」がありますが、残念ながら時間の関係上見学は始めから諦めていました。また訪れた時の楽しみにとっておきます。

ちなみに歴史民俗資料館の見学を希望する時は、事前連絡が必要なので気を付けて下さいね。

油日神社は「るろうに剣心」など映画のロケ地としても有名

油日神社の境内の様子

油日神社は、時代劇や連続テレビ小説、戦隊ものなど映画やドラマのロケ地として、しばしば利用されています。

映画「るろうに剣心」シリーズの完結編は2部作ですが、その第2弾の「The Beginning」では、剣心の運命を左右する回想シーンの舞台となった場所として登場しているぞ。

また、NHK朝の連続テレビドラマ「わろてんか」の第1回に登場。主人公のてんと藤吉がめぐり逢うシーンが撮影されています。

その他には、ブラタモリ・鶴瓶の家族に乾杯・必殺仕事人・信長協奏曲など数々のロケ地として利用されました。

なので、参拝に訪れた際には、見たことのあるシーンが頭の中で蘇るかも知れないですね。

最寄り駅の「油日駅」の外観がまるで忍者だ

JR油日駅
JR油日駅

JR油日駅から東へ約2kmほど歩くと油日神社へ辿り着きます。

この油日駅ですが、駅舎の外観が面白い。正面から見ると、どう見ても忍者にしか見えないですね。

まるで巻物を手にした忍者が、忍術を唱えているように見えるぞ。それに特徴的な丸窓の中には、それぞれ違った手裏剣模様が描かれているではないですか。このような遊び心は大好きかな。

油氏駅(アップ)
忍術を唱えるぞ
丸窓に手裏剣が描かれている
丸窓に手裏剣が描かれている

もともと老朽化した駅舎を全面改修するに当たり、新駅舎のデザインの公募をしたところ、最終的に町内の小学生の案が採用されたという。

2002年(平成14年)3月から今の駅舎となり、地元の人に親しまれています。

まさに甲賀忍者の故郷に相応しい外観の駅舎なので、油日神社へ向かう前に足を運んでみよう。ちなみにJR甲賀駅には、忍者のトリックアートがあるのでぜひ合わせて訪れてみて下さいね。

油日神社の基本情報とアクセス

住所滋賀県甲賀市甲賀町油日1042
電話番号0748-88-2106
拝観料境内は自由(無料)
甲賀歴史民俗資料館:500円(入館希望の場合は、事前連絡要)

【アクセス】

  • JR油日駅から徒歩約30分
  • 新名神高速道路「土山IC」「甲南IC」から車で約15~20分

油日神社の駐車場

油日神社には、無料駐車場があります。(普通車10台、大型車8台)

まとめ

油日神社の本殿周辺

油日神社は中世の神社景観が今も残り、その美しすぎる外観が魅力的です。

ゆっくりと境内を歩いていると、まるでここだけ時間が止まっているような感覚を覚えるだろう。そのような場所なので、時代劇や映画のロケ地として注目を集めるのも頷けます。

ご祭神の油日大神は謎多き神様ですが、千年以上前からこの地でのみ信仰されてきたのだから、レア度は最上級ともいえるのではないでしょうか。

甲賀忍者の故郷・甲賀市へ訪ねる機会があれば、ぜひ油日神社へ足を運んで参拝してみよう。



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年齢:40代。
職業:旅人兼ブロガー。

私にとって自転車旅が一番の楽しみであり、知らない土地、景色、一期一会の出会いなど様々な体験をしました。当ブログでは、自転車旅などを通じて体験した事や訪れた絶景・観光スポットについて紹介します。また、自転車全般に役立つ情報を発信しています。

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