
山口県美祢市に位置するカルスト台地の地下には、日本最大級の鍾乳洞が広がっています。
それが国の特別天然記念物に指定されている「秋芳洞(あきよしどう)」ですね。洞内の一部は観光用に一般公開されており、悠久の時が創り上げた神秘的な景色に息を飲むだろう。
一言で表現するならば「地下世界」としかいいようがありません。この場所には、かつて地底王国が存在していたと言われても、思わず信じてしまうほどだ。
広々とした地底湖や不思議な形の鍾乳石が至るどころにあり、百枚皿や黄金柱、巌窟王、洞内富士などその景観にピッタリな名前が付けらているので、お見逃しなく。
本記事では、神秘的な造形美を堪能できる秋芳洞を紹介します。
目次
秋芳洞のマップと所要時間

秋芳洞は、約3億5千万年という長い年月をかけて形成された鍾乳洞です。かつて昭和天皇がまだ東宮だったころにご訪問されたのをきっかけにして、宮内庁にて「秋芳洞」と命名されました。
総延長は日本第2位の長さを誇る11.2km。その内、一般公開されているのは、約1kmぐらいですが、歩きやすく整備されているのでゆっくりと巡ろう。
地下100~200mに渡って広がっているため、温度は四季を通じて17℃で一定だ。そのため、夏は涼しくて冬は温かく快適に冒険できるのはありがたいです。
洞内には、様々な鍾乳石や石筍(せきじゅん)が見られ、特に特徴的な形をしたものには、名前が付けられていて案内板が設置されています。

所要時間は、片道で約30分ほど。往復すると約60分ぐらい。写真撮影をしながら、ゆっくりと歩くのであれば往復で1時間30分はみておきたい。
洞内には階段や滑りやすい場所があったりするので、動きやすい服装と運動靴やスニーカーのような歩きやすい靴でチャレンジして下さいね。

正面入り口付近には、より冒険家の気分を味わえる「冒険コース」の入口があります。
約100mと短めの距離ながら鍾乳石の間をすり抜けたり、はしごを登ったりするスリリングなコース。料金箱に追加料金300円を入れると中へ入れるぞ。
貸出される懐中電灯の明かりを頼りにして、道なき道を歩いてみてはいかがですか。
【周辺の見どころ】
秋芳洞周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
秋芳洞正面入口は写真映えするスポット

秋芳洞商店街を奥へ歩いていくと、秋芳洞の観覧券発売所があります。
まずはこちらで、観覧券を購入して下さい。GWやお盆などの観光シーズンは混雑が予想できるので、オンラインで事前に観覧券を購入しておくとスムーズに入場できますね。
観覧券を無事ゲットしたら、発売所の奥へ進むと秋芳洞正面入口が見えてくる。その道中は、川が流れており岩や苔の緑に彩られている景観がいい感じ。水しぶきが細かく砕かれている様は、見ているだけでリフレッシュするだろう。



そして極めつけが、秋芳洞正面入口の景観です。入口から勢いよく流れ出す地下水にビックリ。
とても写真映えするので、この場所で記念撮影をする観光客が多いのもうなずけます。

洞内へ入ったら一度振り返ってみて下さい。陽光が洞内に差し込む光景が綺麗ですね。
入口により近い場所から振り返ると、外の景色が切り取られたように見えるぞ。もし紅葉シーズンに訪れたら、赤く染まった木々がより彩りを与えるだろうな。

ちなみには、秋芳洞の入口は全部で3つあり、秋芳洞正面入口以外にも秋吉台案内所と黒谷案内所の近くにそれぞれ入洞口がある。
秋芳洞正面入口から中へ入り、一番奥まで行くと秋芳洞黒谷口から外へ出られるので、洞窟内を往復しなくてもバスやタクシーを使って帰路に付けます。(バスは土日祝日のみ運行。最終バスの出発時刻を確認しておこう)
独創的な形をした鍾乳石や石筍がひしめき合う地底世界

秋芳洞内へ一歩でも踏み込むと、そこに広がる圧倒的な大空間に驚くだろう。洞内は幅40m、天井の高さは15~20mもあるので、冒頭で触れ通り「地下世界」という表現がピッタリと当てはまります。
薄暗い洞内ですが、所々でライトアップされているので、懐中電灯がなくても歩けますね。
それにライトアップされる場所は、単に明るいだけでなく、その魅力を引き立てる。白い壁面が光り輝き、透明度の高い地下水とのコラボが何とも幻想的ではないですか。
そのような景観が洞内の至るどころで見られるので、ワクワクが止まりません。鍾乳洞の魅力をこれでもかと演出しています。


近年、秋芳洞には海外観光客が多く訪れるようになりました。そのため、洞内の主要スポットには、音声ガイドが設置されています。
音声ガイドは日本語・英語・中国語・韓国語に対応済み。ガイドの案内に耳を傾けながらじっくりと地下世界を堪能して下さいね。
また、特徴的な鍾乳石や石筍などには案内板により名前が紹介されているので、いくつかダイジェストで紹介します。




洞内には、数は少ないですがベンチが設置されているので、歩くのに疲れたら休憩することも大事。
無理をして注意散漫な状態で歩いてると、思わぬ事故に合うかも知れません。尚、洞内は飲食禁止なので気を付けて下さいね。

「広庭(ひろにわ)」と呼ばれる大空間には、巨大な「洞内富士(どうないふじ)」がそびえ立つ。高さ約8mもあるので存在感が凄いぞ。さすがは富士と名付けられたことはある。
天井からしたたり落ちる石灰分を含んだ水が堆積してできたようですが、ここまでになるのには、途方もない時間がかかっているのだろうな。

おっ、これは洞内富士同様にバカでかい石筍ではないですか。こちらも高さが約8mほどあるかな。「巌窟王(がんくつおう)」というネーミングなんだとか。
見る角度によって、様々な表情を見せてくれるのが面白いですね。横向きでは、祈りを捧げる聖職者のように見えました。
その存在感と風格から名前に「王」が付くのも納得できる。秋芳洞の関係者が名前を付けたと思いますが、ネーミングセンスの良さに脱帽です。

「これは一体なんだ~」と思うのが、龍の抜け穴ではなだろうか。よく見ると分かるのですが、その名前の通りに、高い天井に向かって巨大な竪穴がつくられているのが凄すぎる。
これほどの大きさならば、確かに龍が通れるだろうな。

こちらは、五月雨御殿です。どんなに地上に雨が少ない時期でも、他の場所と比べると地下水がよく垂れているという。
スマホやカメラを手に持って歩いているならば、濡れないように気を付けて下さいね。それにしても静かに滴り落ちる水音を聞いていると、心が静まってくるのが良きかな良きかな♪
この他にもたくさんの見どころがあるので、一つ一つをじっくりと見物して、地球の神秘をぜひ体感しよう。特に黄金柱や百枚皿、千町田、傘づくしは見事なり。なので、それぞれについてくわしく紹介します。
迫力満点な秋芳洞のシンボル「黄金柱」

秋芳洞には、大小様々な鍾乳石や石筍がありますが、その中でも美しすぎるのは「黄金柱(こがねばしら)」だろう。
正式名称は「石灰華柱(せっかいかちゅう」といって、炭酸カルシウムが結晶化したものなんだそうな。高さ15m、幅4mの巨大な石灰華柱は、秋芳洞でNo.1の美観を誇り、見ていて飽きません。
天井から流れ出た地下水が岸壁を伝い、その部分へ石灰分が付着し何万年の長い年月を経て創り上げました。
天井から洞床まで何層にも重なり合った、レースのように繊細で複雑な造形は見事なり。このような自然の芸術品には、拍手喝采を贈りたい。

黄金柱をパッと見た時に「どうして黄色く見えるの?」と思う人は多いのではないだろうか。かくゆう私もそうでした。
最初は照明に使われているLEDライトの影響と思っていたのですが、調べてみるとどうやらそれだけではなく、青色とオレンジ色の光を好む藻類や細菌が繁殖しているからだそうです。

また、その存在感からどうしても全体的な美観に目がいってしまうのですが、根本にある亀裂に注目しよう。実は黄金柱の下には洞窟があるそうで、床がなり下がった影響で亀裂ができました。
ということは、今後も同じようなことが起こり得る可能性があるのだろうな。もし起こったとしても数千年や数万年以上のレベルの話になると思うので、今を生きる私たちがその変化をつかめたら超ラッキーですね。
人気スポット「百枚皿」は不思議な景観

秋芳洞の中で一番最初に衝撃を受けるのは「百枚皿(ひゃくまいざら)」の景観だと思います。
というのは、秋芳洞正面入口から約5分ほど歩いた場所にあり、大小様々な皿のような並べた形状は、まさに棚田を連想させるからですね。
皿の数は名前の100枚とは裏腹に、実際は500枚以上あるという。百枚皿の正式名称は、石灰華段丘(せっかいかだんきゅう)といって、これほど大規模なものは国内では珍しく、その壮観な眺めから人気が高いです。
規則正しく並んだ皿状の景観を見ると、人工物のように思う人も少なくないだろう。このような形状になったのには、水溜りに含まれる炭酸カルシウムが沈殿していき、それが結晶化して徐々に盛り上がることで皿状になりました。

おそらく今も皿は増え続けているのでしょう。数千年、数万年後になるのかは分かりませんが、今とは比べ物にもならない棚田の景観が見られる可能性があるのかな。
反対に皿の縁の高さが成長したり、地下水位が今よりも低くなったりすると、皿の部分に地下水が溜まらないので、成長が止まる可能性もある。
私たちが生きている内に答え合わせはできないと思うので、後世の人たちに託したいですね。
「千町田」と「傘づくし」の景観に注目

洞内富士を抜けた先にあるのが、こちらの「千町田(ちまちだ)」です。なんだか田舎の棚田の風景を思い出す。百枚皿に良く似ていますが、雰囲気は少し違うかな。
滑らかな曲線がいい感じ。それに、水が張られた田んぼのような地形もGood。水中には、目が退化したヨコエビが生息しているそうな。

この千町田がある空間の天井に注目しよう。というのは、「傘づくし」と呼ばれる鍾乳石の大群が伸びている。なんでも昔の傘屋では、天井に傘を吊るしていたそうで、その光景に似ているから名付けられました。
スポットライトに照らされたその空間は、不思議な光景が広がります。人によっては、不気味に感じかも。無数の大小様々な鍾乳石が並ぶのは凄すぎます。

約1mほどの細長い鍾乳石が、何本も天井からぶら下がっている。成長速度の違いにより、子供用と大人用の傘に見えるのが面白い。
このような光景は、中々見る機会がないと思うので、お見逃しなく。
「3億年のタイムトンネル」にて地球の歴史を学ぶ

秋芳洞の最後を飾るのは、「3億年のタイムトンネル」という名前の人工トンネルです。
全長187mの直線のトンネル内には、地球誕生から現代までの秋吉台をイメージした56枚の絵が飾られています。
アンモナイトが泳ぐ海底や恐竜の時代、そしてマンモスや人類など哺乳類が誕生していき、現代の私たちの生活を表現したアニメ風のビジュアルは見応えあり。眺めながら歩いていると、壮大な時の流れを感じてやまないだろう。



特にマンモスの絵は、トリックアートになっている。うっかりすると、見逃してしまうかも。記念撮影に1枚どうですか。
何も変わり映えしないトンネルを歩くだけでは退屈しますが、直線の長さを活かした面白い演出により、トンネルを歩くのがとても楽しくなります。
秋芳洞の基本情報とアクセス
住所 | 山口県美祢市秋芳町秋吉3449番地1 |
電話番号 | 0837-62-0018(秋芳洞案内所) |
入洞受付・閉洞時間 | 3月~11月 8:30~17:30(閉洞18:30) 12月~2月 8:30~16:30(閉洞17:30) ※黒谷入口・エレベーター入口からの入洞は16:30まで |
休業日 | 年中無休 |
入場料 | 大 人 1,300円 中学生 1,050円 小学生 700円 |
【アクセス】
- JR新山口駅からバス(約45分)に乗って「秋芳洞」のバス停で下車後徒歩約6分
- 山口市街から車で約40分
- 小郡萩道路「秋吉台IC」から車で約5分
秋芳洞の駐車場
秋芳洞の周辺には、たくさんの駐車場があります。
正面入口付近には有料駐車場があり、普通車は1日1回500円、第1駐車場のみバイクは無料です。(高さ2.5mまでの制限あり)
- 市営第1駐車場(普通車200台)
- 市営第2駐車場(普通車300台)
- 貸切バス駐車場(バス18台・無料)
その他にも以下の無料駐車場があります。
- 黒谷入口付近の駐車場(普通車120台、バス10台)
- エレベーター入口付近の駐車場(普通車150台、バス2台)
まとめ

秋芳洞では、大自然が創り出した圧倒される程の大空間の中で、美しく不思議な造形美を堪能できます。
洞内へ一歩でも入ると、本当に地下世界を冒険する気持ちになり、ワクワクするでしょう。実は秋芳洞がある地表は、まるで日本とは思えない風景が見られるカルスト台地(秋吉台)が広がっています。
そして、秋吉台の地下には、秋芳洞だけでなく大正洞や景清洞など400を超える鍾乳洞が点在しているというのだから驚きですね。
山口県へ訪れる機会があれば、日本最大級の鍾乳洞である秋芳洞を冒険して、その魅力に触れてみてはいかがですか。