
水の都と聞くと、水辺の景観や水運で経済や文化が発展した都市のイメージを抱く人が多いだろう。日本全国には数多くの「水の都」が点在しており、愛媛県西条市もその内の一つです。
西日本最高峰・石鎚山系を源流とする清らかな水に恵まれた地域として知られ、自然に噴き出す自噴水こと「うちぬき」が市内の至るどころで見受けられます。
驚くのは、その数はなんと3,000ヶ所以上ということ。日本一美味しいと称される「嘉母神社」の御神水や、弘法大師にゆかりある「弘法水」など実際に美味しい天然水をその場で飲めたりするのも魅力的ですね。
本記事では、水の都・西条市にて豊かな水文化や美味しい天然水を堪能できる名水スポットを厳選して紹介します。
目次
天然の地下水「うちぬき」とは

愛媛県西条市は、南は霊峰・石鎚山、北は瀬戸内海に囲まれた温暖な地域です。市内には、広範囲にわたり地下水が噴き出しており、この自噴水を「うちぬき」と呼んでいます。
初めてその名を聞くと、ピンと来ない方も多いだろう。この地域ならではの呼び方であり、実はこの名称はとある工法に由来しています。
かつては、人手で鉄棒を地面に打ち込んだ後でその中にくり抜いた竹を入れ、地下水を確保していました。江戸時代中頃から昭和20年頃まで行われていたそうです。なるほど、だから「うちぬき(打ち・抜き)」なんですね。
テクノロジーの進化に伴い、現在では加工した鉄パイプやエアーハンマー、機械の動力(コンプレッサー)を用いた効率的な方法に変更されています。

うちぬきの一日の自噴量は、約9万立方メートルから約13万立方メートル。これは日本最大級の規模ですよ。年間を通じて水温がほぼ一定で、一部地域では水道代(上水道料金)が無料なんだそうな。(くっ~うらやましい!!)
生活用水だけでなく、農業・工業用水に使われており、市民・事業者・行政が一体となって「うちぬき」の地下水資源を守る活動を進めています。
1985年3月には、当時の環境庁(現・環境省)により名水百選に選ばれました。
【周辺の見どころ】
西条市街周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
うちぬき水のお味は

西条市内には、実際にうちぬき水をその場で飲んだり、ペットボトルに入れて持ち帰れるスポットが点在しています。
実際に飲んでみた感想ですが、ひんやりとして口当たりが柔らかくて飲みやすいです。また、少し甘みを感じ、スッキリとした味わいでグイグイと何杯でも飲めました。
地層や水脈の違いにより、場所によって微妙に味の差が出るので、飲み比べをするのが楽しい。一言でまとめると「とても美味しい軟水」です。ミネラル成分のバランスに定評があります。
西条市の水辺を巡る「サイクリングまっぷ」を入手しよう

まず始めに訪れたい場所が「西条市観光交流センター」です。JR伊予西条駅から歩いて約1分のところにあります。
ここでは、西条市の観光情報を発信しており、物産品やお土産、ここでしか買えない鉄道オリジナルグッズを販売するコーナーもあり観光拠点に持ってこいですね。

名水巡りを行なうに当たり、受付で「サイクリングまっぷ」を入手しよう。そのマップには市内の見どころだけでなく、「うちぬき」の位置が細かく記載済み。名水巡りをするのにとても重宝します。
また、各名水スポットでそのまま飲むのであれば、コップを持参すること。私はコップを持参していなかったので、紙コップも頂きました。(ありがとうございます。)

館内には、うちぬき試飲コーナーがあるので、実際に湧水を飲むことができます。一般的に湧水は安全のために煮沸させてから飲みますね。スタッフの話を聞くと、実際に飲むことができるスポットでは、現場でそのまますぐに飲むのであれば、煮沸はいらないでそうです。
うちぬき自体の水質は、毎年検査を実施しており、安全にも配慮済みとのこと。ただし、ペットボトルなどに入れて持ち帰るのであれば、煮沸が必要ですよ。
こちらの交流センターでは、レンタサイクルを借りれたり、市街地のうちぬきや歴史スポットなどをガイドと巡る「西条うちぬき名水めぐり」も行っているので、必要に応じて活用して下さいね。
名水が流れる石鎚山のモニュメント

JR伊予西条駅の前を東西に延びる駅西通り。そこを西へ向けて歩いていこう。約8分ほど歩くと、西条市総合文化会館が見えてきます。
その隣では、雄大な石鎚山をモチーフにした大きなモニュメントを発見しました。清らかな水がトクトクと流れる様は、とても目を引きますね。気軽に立ち寄れるフォトスポットとして人気があるそうです。
湧き出る豊かな水資源を視覚的に表現しているこのモニュメントは、まさに「水の都・西条」にピッタリな存在と言えるでしょう。


周囲に目を向けると、川底が透けて見えるほどの透明度の高い小川にビックリ。その中を悠々と泳ぐコイが、まるで浮いているように見えます。
また、奥の方には豪快に噴き出す湧水がいい感じ。近づくと、太陽の光を浴びてきらめく水滴にて視覚を楽しませ、ダイナミックな水音は、聴覚を楽しませてくれる。
遊歩道を歩きながら、マイナスイオンをたっぷりと感じて下さいね。

遊歩道には、名水「うちぬき」をその場で飲むことができる水飲み場が設置されています。その見た目は「そうめん流し」の台のように見えるかな。
じっと眺めていると本当にそうめんが食べたくなりました(笑)。「うちぬき + そうめん」の組合わせは、実に魅力的です。
ちなみに、こちらの水飲み場ではペットボトルなどに水を貯める込むのは時間がかかりすぎますので、持ち帰りが目的ならば、西条市総合福祉センター横にある「水飲み場」へ足を運んで下さい。
西条市街のほぼ中心にある「水飲み場」と「うちぬき広場」

石鎚山のモニュメントが建つ場所から北へ約350mほど歩くと、西条市総合福祉センターがあります。その敷地内(南側)にある水飲み場は、数あるうちぬき飲み場の中でも、水の汲みやすさが抜群ですね。
3箇所の太いパイプからは、轟々と水が流れており、ペットボトルに水を貯め込むのが簡単にできます。実際、私が訪れた時には、地元の人が数本のペットボトルの中へ次々に水を汲んでおり、その手際の良さは印象的でした。
西条市総合福祉センターには広い駐車場があるので、車でのアクセスのしやすさも良いですね。
ただし、こちらの水飲み場の利用時間は、8時から21時までなので気を付けること。年末年始や臨時休館日には、利用制限があるそうです。

こちらは、西条市役所の南側にある「うちぬき広場」です。名水百選に選定されたことを記念して造られた広場なんですって。園内には、記念碑が建っています。
コンコンと湧き出る「うちぬき」の様子が実に涼し気でいい感じ。実は、うちぬき水は1995年と1996年に岐阜県で開催された「全国利き水大会」で、2年連続日本一に輝いています。1995年にNo.1になったのが、うちぬき広場の名水でした。
西条市総合福祉センター横にあるような立派な水飲み施設はないので、手やコップなどで直接水をすくって飲んで下さいね。
ちなみに、うちぬき水はコーヒーに一番合うみたい。気になる方は、ぜひお試しあれ♪
日本一美味しいと称される「嘉母神社」の御神水

加茂川の河口近くには、「嘉母神社(かもじんじゃ)」が鎮座します。田園地帯として開拓された禎瑞(ていずい)地域の産土神として、1782年(天明2年)に創建されました。
うちぬき名水巡りを行なうに当たり、この神社は欠かせないでしょう。境内には、1996年に「全国利き水大会」で日本一に選ばれた名水(御神水)が噴き出しています。

こちらの手水舎にご注目。見た目は神社で良く見る派手な装飾がなく、屋根と4本の柱で支えられた簡素な造りですが、流れ落ちる水が別格です。コンコンとうちぬき水が噴き出しており、鉢から名水があふれ落ちる様子には、気品のようなものを感じました。
ということで、早速手を清めると、水の冷たさが気持ち良い。それに何とも贅沢な感じがするのは私だけでしょうかね。

御神水を頂く前には、まずは拝殿でお詣りしよう。神様への挨拶と感謝を伝えるのが大事です。境内には水を汲む際の注意書きがありましたので、以下に紹介します。
- 水を汲む時間帯は朝6時から夜9時までとし、特に朝晩は静かに汲むこと。
- 車で来られた方は、近隣に迷惑をかけない様にエンジンを切ること。
西条市内には、たくさんのうちぬき水飲み場があるので、人により一番気に入る場所は異なるでしょう。個人的には、こちらの御神水が一番のお気に入りです。
弘法大師にゆかりがある海底から湧き出る「弘法水」

西条港口には、海の中から真水が湧き出しているとても珍しい名水スポットがあります。以前は、干潮時にしか湧水を確認できませんでしたが、今は陸地から歩いて行けるように整備済みですね。
その湧水が「弘法水」と言って、名前から分かるように弘法大師(空海)と縁がある名水です。
ある夏の日、大師が四国巡礼の最中にこの地で休憩をとっていたところ、水桶を持った老婆が通りかかり、のどの渇きをいやすために水をもらいました。親切を受けた大師は、お返しに持っていた杖の先で大地を突くと、その場所からコンコンと清らかな水が噴き出したと言われています。


先ほど紹介した嘉母神社と同じように、こちらでは地域を見守るように建つ弘法大師へご挨拶をして下さいね。その後に弘法水を頂きましょう。
海底から湧き出しているのですが、実際に飲んでみると全く塩辛くありませんでした。これも弘法大師のお力でしょうかね。そんな不思議な湧水で乾杯♪
懐かしく感じられる陣屋跡の水辺の景観

旧西条藩の陣屋跡には、立派なお堀や大手門、石垣などが今も残り、城下町として栄えた面影を色濃く残しています。
陣屋の四方は豊富な水源を利用した水堀で、周囲には歩道やベンチが整備済み。特にお堀の中から噴き出す湧水に目を奪われるだろう。

お堀の水とは思えないほど透明度が高いです。さすがうちぬき水といったところか。私が訪れた時期は、丁度つつじが咲き乱れており、より気持ちよく散策ができました。
四季折々の花木が彩る水辺の景観は、カメラの被写体にピッタリ。カメラが趣味の人でなくても、シャッターを切らずには入られませんね。

現在、陣屋跡には愛媛県でも有数の進学校・西条高校が建てられていて、大手門が高校の正門となっています。このような学校は全国に複数ありますが、非常にレアケースですよ。
私が訪れた時間帯は昼遅くだったこともあり、人影はまちまち。重厚感な大手門を高校生たちが元気よくにくぐり抜ける姿を想像すると、ノスタルジーを感じさせるかな。
歴史あるお城の遺構と現代の学校が共存する環境には、良い意味で不思議な感じがしました。
大穀倉地帯の真ん中に整備した「加茂川左岸うちぬき公園」

西条市の中心地から少し西側に離れた場所には、田園地帯が広がっています。その一角にある小さな公園が「加茂川左岸うちぬき公園」です。
石鎚山の雪解け水などが加茂川の伏流水となり、園内で湧き出ていますね。この公園は、1990年に加茂川左岸のほ場整備事業の完成記念として整備されました。

周囲が開けたのどかな場所ということもあり、より水と緑の恵みを身近に感じられます。そのような場所で飲む水は実に美味しいこと。
環境や気分の変化は味覚に与える影響はとても大きい。遠方からたくさんの人が訪れる人気スポットというのも納得です。

田んぼや畑などの農耕地に造られた小さな水路やあぜ道などが組み合わさり、遠くには雄大な石鎚山脈が広がる景観をじっくりと眺めてみよう。不思議と安心感を覚えると思います。
美味しい水で喉を潤しながら、のどかな自然に調和する人々の暮らしぶりをぜひ感じ取って下さいね。
名水を利用した「野菜洗い場」

名水「うちぬき」は、農家の人が収穫した野菜を洗う場所にも使用されています。上喜多川地区では、農家が共同で作ったという「野菜洗い場」があり、地域の人々の交流や憩いの場としても活用されてきました。
主に1日の作業を終える夕刻や、出荷に向けた早朝に野菜を洗うのに集まるみたい。うちぬき水は夏場でも冷たいので、一気に冷やすことで野菜の味を引き締めることで、新鮮さを損なわいようにしているそうですよ。
こういう話を知ると、昔ながらの暮らしの知恵に感心しますね。こんなにきれいな水で洗った野菜ならば、絶対に美味しいでしょう。

ちなみに、私が訪れた時には野菜を洗っている人はいませんでしたが、トラクターを洗車していました。せっかくなので、トラクターの持ち主の了承を得て、しばらく見学していた次第です。
このように野菜だけでなく、農具の洗浄や軽トラック・トラクターなどの洗車など日常的に利用されているようですね。
余談ですが、この野菜洗い場の正確な場所が中々分からなくて、四苦八苦していましたが、散歩中の地元の人へ声をかけて場所を教えて頂き事なきをえました。ありがとうございます。(位置は以下のGoogleストリートビューで確認して下さい。)
西条市内で様々な水文化に触れよう

西条市内には、様々な「うちぬき」名水スポットが点在しています。これまで紹介した以外にもまだたくさんあり、私も全て見て回れた訳ではありません。
うちぬき水は、一般家庭や農業、工業など幅広分野に利用されていて、飲料水はもとよりエコハウスの冷暖房など用途も多彩です。
これまで紹介した以外の水に関わる主なスポットを、ダイジェストで紹介します。






「サイクリングまっぷ」を片手に西条市内を巡りながら、うちぬき水の飲み比べに勤しんだり、町中に張り巡らされた水路や石鎚山の豊かな恵みによる自噴水など、水辺が織りなす美しい景観を楽しんで下さいね。
まとめ

愛媛県西条市は、石鎚山系を源流とする清らかな水に恵まれた地域です。暮らしに密着した水文化を堪能できます。
「うちぬき」と呼ばれる自噴水を実際にその場で飲める場所が点在しているので、西条市へ訪れた際には足を運んでみよう。
うちぬき水は、ミネラル成分のバランスが良い軟水であり、口当たりがやわらかくてとても飲みやすいです。水質は毎年検査を実施しており、安全にも配慮済みとのこと。そのため、安全に飲み歩きができました。
本記事で紹介した西条市の名水スポットはほんの一部なので、気になる方はぜひ色々と探してみて下さいね。


