
瀬戸内海中央部に位置する備後灘には、大小様々な島が浮かんでいます。
広島県福山市へ訪れて沼隈半島を周回するたびに、この備後灘に位置する「田島・横島」を眺めていました。本土から田島へ向けて、特徴的な外観を持つ内海大橋が架かっており、いつか時間を作って行ってみたいと思っていた次第です。
田島には、「やぶ椿と水仙の里」という公園があり、約10万本の水仙ややぶ椿、桜、菜の花、ミモザなど春の花が咲き誇るという。一方、横島では本格的なヒルクライムを楽しめる切石山があり、山頂からの景色が素晴らしい。のんびりと外周を一周しながら島旅を楽しみたいですね。
本記事では、福山市街から鞆の浦を経由して田島・横島へ向かい、これらの島を一周する様子をお届けします。
福山駅から旅立つ

桜舞う季節に、約半年ぶりとなる福山の地へやってまいりました。
駅前でテキパキと自転車の組み立てを行なっていると、前回訪れた福山城や隈沼半島について鮮明に思い出してくる。本日は、隈沼半島を巡るのは前回と同じですが、南端から内海大橋を渡り田島・横島へ向かいます。
福山には何回も訪れているのですが、田島・横島へ行くのは初めてなので、楽しみですね。まずは、隈沼半島の南端にある観光スポット「鞆の浦」を目指してレッツゴー♪

福山市は広島県第2の都市であり、広島市に次いで人口が多い。約46万人(2024年)の人たちが暮らす中規模都市ですね。そのため、市街地は交通量が多いので、まずは市街地からの脱出を図ります。
線路沿いの道を西へ向かい、芦田川の河川敷へ入れば整備されたサイクリングロードがあるので、そうすれば車を気にしなくてよくなるものだ。

そんなことを考えていると、あっという間に芦田川へ到着。
まぁ、福山駅から2kmも離れていないのだから、ロードバイクならば庭感覚ですよ。

サイクリングロードを走っていると、対岸に朱塗りの要塞がみえてきた。いや要塞ではない、あれは「草戸稲荷神社」だ。う~む、いつ見ても迫力があります。
自転車を停めて、この神社へ向かって一礼すると、サイクリングロードを南下。

このまま芦田川大橋の近くまで行く予定でしたが、途中で橋脚工事のため通行止めでした。
これは想定外かな。仕方がないので、迂回するしかありません。どうせ迂回するならば、近くにあった別の橋を渡り対岸へ向かうことに。旅をしていると、工事中には結構な頻度で出会います。
そういえば、兵庫県の日本海側にある余部鉄橋を見に行ったときに、内陸部の横断が通行止めで行けなくて、海岸線を使って約7kmほど遠回りしたことがあったかな。
余部岬灯台へ通じる劇坂の林道を走り抜けて大変でしたが、結果的に絶景を堪能できたので良かったです。ただし、予定より大幅に時間がかかりましたが・・・
そこは上手く付き合っていくしかないでしょう。

いつしか、ロマンチック街道313(県道313)へ合流すると、そのまま街道を南下する。この先に鞆の浦がありますが、その前に田尻町の菜の花畑へ立ち寄りたい。
今の季節であれば、まだ菜の花は見頃のはず。以前も立ち寄ったことがありますが、規模がそこそこ大きくて、海を見下ろす菜の花畑の景観が素晴らしかったのをしっかりと覚えているぞ。
シーズン中に近くを通るのであれば、寄らない理由がありません。

しばらくの間、ロマンチック街道313を走っていると、目印となる大きな老人ホームの案内板が見えてきました。
この看板の奥側に菜の花畑が見えています。
菜の花畑に囲まれて

駐車場に自転車を停めて菜の花畑へ入ると、園内には、あふれんばかりの菜の花がきれいに咲き乱れている。それに菜の花越し見える瀬戸内海の風景が素晴らしいですね。
この菜の花畑は、「田尻花の会」の有志の皆さんが大切に育てており、無料で見物できるのはありがたい。
畑の中にベンチが置いてあるので、座りながら菜の花に囲まれて過ごせます。



青い空と碧い海を背景にして、一面に広がる鮮やかな菜の花は、本当に絵になる。思わず何度もカメラのシャッターを切ってしまいました。(笑)
今年は3月9日(日)に田尻菜の花まつりが開催されたそうですが、4月上旬でもまだまだ見頃が続いています。


奥の方へ歩くと展望テラスを発見。そのテラスには、菜の花畑にお似合いな小さな鐘があるではないですか。
鐘を鳴らすと、可愛らしい音色が辺りに響く。一面に広がる菜の花たちに感謝を伝えながら鳴らしますよ。

おや~、菜の花に囲まれたハート型の飾りを見つけたぞ。以前訪れた時はなかったと思いますが、新しく追加されたのだろうな。
カップル御用達のように感じますが、たとえカップルでなくても仲の良い友人と一緒に記念撮影するのにもピッタリ。使い方は千差万別です。
本当に菜の花畑というのは、春の訪れを感じさせる心癒される場所ですね。いつまでも後世に残したい場所の一つだと思います。
鞆の浦で感慨にふける

菜の花畑をあとにして、ロマンチック街道313を約150mほど南下すると、時計台が見えてきた。
この時計台が見えてくると、「鞆の浦へやってきたな~」と実感しますね。きっと、そう思う人も多いだろうな。
時計台に向けて片手をあげて軽く挨拶すると、颯爽に時計台前を通り抜けます。そして、ついに鞆の浦の景色とご対面。
鞆の浦は、瀬戸内海沿岸のほぼ中央に位置しており、日本で最初の国立公園に指定されたほどですよ。瀬戸内海を代表する景勝地として多くの観光客があとを絶ちません。




鞆の浦は国内外との交易で栄えた港としても有名。朝鮮通信使が度々寄港しているぞ。それに、歴史に名高い旧跡や遺構も多く残っているので見応えがあります。
ということで、鞆の浦のシンボルである常夜灯のもとへ。

この常夜灯前では、よく観光客が記念撮影しているのを見かけます。確かに写真映えするので、人気が高いのもうなづけるかな。
常夜灯のすぐ近くには、いろは丸展示館があるので中へ入ってみました。

いろは丸展示館では、坂本龍馬ひきいる海援隊が乗り込んだ「いろは丸」と紀州藩が所有していた明光丸が衝突した事故について学べます。
いわゆる「いろは丸事件」のことですよ。館内では、いろは丸の引き揚げ物の展示やジオラマを使って、いろは丸の沈没状況をくわしく説明。
その他にも龍馬に関する様々なエピソードを紹介しているので、龍馬ファンであればより面白いかも。もちろん龍馬ファンでなくても、クイズなどを通りして楽しく歴史を学べます。

最も目を引くのは、「いろは丸」の様子を忠実に再現したジオラマですね。いろは丸の一部を原寸大70%で再現しているのだから、凄くないですか。
それにジオラマは、ブルーライトに照らされているので、海底をイメージしやすくていい感じです。一通り館内を見学すると、鞆の浦を離れ田島・横島へ向かいました。
いろは丸展示館を含め鞆の浦については、下記関連記事でくわしく紹介します。
いざ、田島・横島へ

坂道が続く鞆松永線(県道47号)を駆け上り、阿伏兎隧道(あぶとずいどう)を抜けると一気に下り坂になります。
つかの間のダウンヒルですが、これが気持ちいい~~♪♪♪
ペダルを漕がなくても、勝手に突き進む滑空間が大好き。このためにヒルクライムを頑張るという人もいるだろうな。

海沿いを道なりに進んでいると、遠くに海に浮かぶ田島が見えてきました。白浜海岸辺りから、遠景に本州と田島を結ぶ内海大橋が見えるのがGood。
これから向かう田島が見えてくるとテンションが上がりますね。ということで、ギアを一段上げてスピードアップ。内海大橋を目指して爆走します。


内海大橋の位置から考えて、橋の上まで向かうには坂道となるのは予想済み。なので、急坂でも気にしない。ペダルをクルクル回して、一気に駆け上った次第です。
ふとサイコンを見ると、もうお昼時。そういえば、お腹がすきました。そう思っていると、内海大橋の出入り口付近に良さげなお店を発見。


それが「Cafe’59」です。ということで、早速中へ入りエビピラフを注文。美味しく頂きました。
コーヒーとケーキのセットもありましたが、エビピラフだけでお腹が満たされたので、注文しませんでしたね。今度、来た時は頼もうかな。

このお店のテラス席からは、内海大橋の特徴的な構造が良く見えるぞ。このように「く」の字に折れ曲がって、離島へつながる橋というのは珍しいですね。
では、よいよ内海大橋を渡って田島へ入ります。
クレセントビーチ海浜公園の風景と、やぶ椿と水仙の里の景色

本日は、田島と横島の外周部を一周する予定です。両島合わせても約25kmほどしかないため、ロードバイクであれば楽勝に思うでしょう。
主に北側は平坦部が多く、南側にキツイ勾配の山道となる島々なので、全体を通して結構走りごたえがあるぞ。油断せずに行こう。
内海大橋を渡り終えて、東へ向けて約4kmほど海岸線を走っていると、クレセントビーチ海浜公園へ辿り着きました。

この公園は、全長約600mにもおよび砂浜があり、大きく湾曲した三日月のように見えるのが特徴的です。
沖合に浮かぶ小さな無人島の矢ノ島(やのしま)を含め、ロケーション抜群の公園ですね。夏になると、大勢の海水浴客でにぎわい、海の上には巨大な海上アスレチックが設置されるという。
今はシーズン前なので、人が少なくてこの景色をほぼ独り占めでした。しばらくの間、ビーチに佇みながら景色を堪能していた次第です。

おっ、芝生広場に見えるのは展望台かな。こういうのを見つけると、登りたくなるのが人の性(さが)。
近付いてみると、入口の階段前が金網で塞がれており、立入禁止になっているではないですか。理由は分かりませんが、丁度修繕中だったのだろうか。
こういうのは「旅人あるある」ですね。旅をしていると、こういうことは良く経験するので、気にしてもしょうがない。
では、気を取り直して次の目的地へ向けてレッツゴー♪



田島の南側へ向かっていると、アップダウンが多くなってくる。鞆松永線を離れ、内海大橋へ向かう道に比べると、同じ程度かそれ以下なので全然平気だ。

そうこうしている内に「やぶ椿と水仙の里」へ到着しました。
園内には、樹齢300年のやぶ椿と約10万本の水仙が咲き誇っています。また、春を感じる桜や菜の花、ミモザなども咲き乱れ、見ているだけで明るい気分になってくる。

やぶ椿と水仙の里は、海沿いにある小高い斜面にあり、海風に揺れる水仙などの花たちがとても綺麗です。この公園は無料で開放されているので、本当にありがたい。
地域の人たちにより、大切に育てられているのがよく分かります。私以外にも多くの人が訪れており、皆さん満足そうな顔が印象的でしたね。
田島・横島一周サイクリングコースと見どころについては、下記関連記事でくわしく紹介します。
切石山へヒルクライム

県道386号線を駆け抜け、田島から睦橋を渡り横島へ入りました。
横島の南側外周付近には、海と接するかのような最果て感のある道が続くので雰囲気良し。そんな道を突き進むと、切石山の入口前へ到着です。
標高約220mの切石山の山頂には、王城切石山公園が整備されており展望台もある。そこから絶景が楽しめるということで、楽しみにしています。


事前情報では、かなりの劇坂のこと。気合を入れなおして、本日のラスボスにチャレンジ。
自転車で山を登っていると、経験上どれくらいの勾配なのか肌で感じ取ることができるようになりますが、絶対に10%を越えているな。ギアはずっとインナーローにしっぱなしですし・・・
ふと、サイコンへ目を向けると「斜度14%」と表示。これではきついはずだ。当然、勾配は細かに変化していきますが、全然10%を下回らないとは、一体ど・う・い・う・こ・と?(もちろん10%以下の区間もあるのでご安心を)

こうなると、無心で上り続けるしかありません。道中では「甚九石」と書かれた案内板を目撃。
こういうのを見ると、興味を惹かれます。ということで、自転車を通行の邪魔にならないところに停めて、案内板が指し示す方向へ歩いていく。
すると、森の中に架けられた橋の上から、ひっそりと佇む巨石が見えました。

見える範囲内では、特に説明板がなさそうなので正体はわかりません。
後日調べてみると、昔海で助けた娘と夫婦になる約束をした甚平が、転げ落ちてきた大岩に命を絶たれたという悲しい物語が伝わっているそうです。
甚九石を見物できたことですし、ヒルクライムを再開。

しばらくすると、電波塔が見えてきた。ここからは、下り坂が続くように見えるぞ。
実際は、多少アップダウンしましたが、ずっと下り坂が続きます。ん?よくよく考えると、帰りは登ることになるのか。(トホホ・・・)

この電波塔辺りからは、眼下に田島・横島の風景を望めます。中々よい景色でしょ。
こういう景色をみると、ヒルクライムの疲れが吹き飛ぶというものですね。その後、あっという間に駐車場へ到着しました。



駐車場へ自転車を停めて少し歩くと山頂へ辿り着く。5分もかからなかったかも。ほどよい疲労感がありましたが、達成感は格別です。
山頂は展望台となっており、360度とはいかないまでも、眼下には美しい瀬戸内海の風景を楽しめます。これは、苦労して来たかいがありました。
ありがとう「田島・横島」

切石山を下り、海岸線を走ると思いきや再び山中へ。
勾配が6%前後の急坂が続きます。切石山の勾配と比べると、全然大したことないかな。反対に物足りなく感じます。
まっ、10%以上の勾配を体験すると、それ以下の勾配が途端に楽に感じるものですね。



しばらく道なりに進むと、シーパーク大浜が見えてきました。
ゲートを抜けて中へ入り、施設の入口前からは見える芝生広場と海の景色がいい感じ。楽しく遊べそうですね。
シーパーク大浜は、豊かな自然を体験できる海の公園です。夏にはマリンアトラクションがいっぱいあるという。シーフードバーベキューやキャンプも楽しめるみたい。
なので、自転車で訪れるならキャンプツーリングが楽しそうかな。

帰ろうとしたところ、遠くにポツンと建つ大きなタンクを発見。近づいてみると、ずいぶんと歴史を感じます。
調べてみると、どうやら岩国陸軍燃料廠の燃料貯蔵施設跡だったみたい。そういえば、離島には何気にこのような施設を見かける機会が多いですね。

その後、山道を乗り越えて、北側の海岸線へ辿り着くと、東方向へ海岸沿いに進む。そして、睦橋を渡り田島へ入りました。
そのまま海岸線を疾走すると、遠くに内海大橋が見えてくる。もう本日の旅が終わりかと思うと、何だか感慨深いですね。

時間にすると、田島・横島を一周するのに約4.5時間ほどかかりましたが、もくもくと走るのではなく、色々なところへ訪れて楽しい時間を過ごせたのでOK。
自転車旅とは、いつもこうありたいものです。最期に内海大橋へ渡り本州へ。ありがとう、田島・横島。
その後、帰路へつきました。
まとめ

田島・横島を離れ、島旅の余韻に浸りながら松永地域へ向かう道中では、丁度サラリーマンたちの退勤時間帯と重なってしまったためか、交通量が凄まじい。さっきまでの島旅と比べてギャップが凄すぎて、ビックリしましたが、こういうことがあるのも自転車旅ですよ。
さて、本日の旅を振り返ると、1日を通して天気に恵まれ楽しい旅ができました。
鞆の浦へ向かう道中では、田尻町の菜の花畑と一本桜が織りなす光景に癒され、鞆の浦へ到着すれば、古い建物が残る港町にはノストラジーを感じてやまなかったですね。
また、田島・横島では島旅を満喫。自分のペースで潮風に包まれながらゆっくりとライドしたのは楽しかったな~。
次回の自転車旅は、兵庫県の山奥へ向かう予定です。なんと、かかしの里があるというのだから興味津々。どのような旅になるのか、楽しみですね。