
吉備高原の西南端に位置する岡山県井原市美星町。標高約300~500mに広がるこの町には、かつて中世にあったであろうと思われる「村」が存在します。
それが「中世夢が原(ちゅうせいゆめがはら)」という歴史公園(テーマパーク)ですね。園内にある数々の施設は、その時代(鎌倉・室町)考証により忠実に再現されました。
当時の農民たちが暮らしていた家や、物売りの声が聞こえてきそうな三斎市、360度のパノラマ絶景を楽しめる山城など見どころがいっぱい。また、昔遊びなどを通じて当時の生活を体感できます。どこまでも広がる空の下で、中世の世界を楽しんで下さいね。
本記事では、歴史ロマンにあふれた非日常を体験できる「中世夢が原」を紹介します。
目次
中世夢が原とはどんなところ

中世夢が原は、10.5ヘクタールという広大な敷地の中に、鎌倉・室町時代の吉備高原にあった村を再現した体験型のテーマパークです。
発掘資料や絵巻物を基にして再現された「農家・武士の屋敷・三斎市・山城・城主の館」などが点在しており、展示品は250種、1,700点にもおよぶとのこと。
その他にも芝生広場やイベントなどに利用されるお祭り広場、お食事処「夢味庵」、神楽民俗伝承館などがあるので、1日を通して遊べますね。
また、春の山桜や夏の新緑、秋の紅葉、そして冬の雪景色など四季折々の自然が美しい。自然と調和する茅葺きの建物の景観は魅力的です。

こちらが中世夢が原のマップ。入場門から中へ入り、東へ向けて歩いて下さい。そして、一つ一つの建物を見て回りながら、中世の世界にどっぷりと浸りましょう。
季節により、七夕飾りや星空観察、大神楽、とんど祭りなど様々なイベントが開催されます。歴史好きの人だけでなく、多くの人が楽しめる場所ですよ。
当時の人々の暮らしぶりを、ぜひ体験して下さいね。
「辻堂」と「農家」で見る当時の生活様式

入場門から小経を歩いて行くと、まず最初に見かけるのが「辻堂」です。
鎌倉時代から室町時代にかけて、仏教が民衆に広まり、観音堂や地蔵堂、薬師堂が各地に建てられました。こちらの辻堂は、四本柱のもっとも簡単なもので「四ッ堂」とも呼ばれています。
中国地方に多くみられており、辻や峠のような村との境界に多かったそうですよ。中をのぞくと、村の安全を見守る地蔵菩薩が安置されているのでお見逃しなく。

辻堂の周りにも目を向けてみよう。五輪塔や宝篋印塔が見つかります。辻堂とあわせて、村人たちが真剣に祈願していた姿がありありと浮かびました。
辻堂から少し歩くと、直ぐに見えてくるのが「農家」です。複数の農家があるので、一つ一つ家の中へ入ってみて下さいね。


まずは、外観からチェック。自然な土の色は当時さながらで、見惚れてしまう。また、茅葺き屋根を見ていると、ノスタルジーに浸れます。
私たち日本人と自然が共生してきた歴史が生み出す「情緒」を感じました。当時の農家は、10坪前後の大きさだったとか。軒や戸口は低くて、窓や戸が少なく土壁は厚い。これは防寒を意識したものだと言われています。

中へ入ると、所せましに調度品がいっぱい。囲炉裏を始め、かまどや土鍋、瓶などが見て取れますね。まるで今生活しているような錯覚に陥るかも。
火や水を扱う炊事場は土間にあり、寝所は湿気を避けるために床にある。じっくりと中を見学していると、当時の人々が実際にどのようにして食事を作り、農作業をしていたのか目に浮かんできました。

家の中から屋根を見上げると、巨大な三角形の屋根裏空間がいい感じ。細かく敷き詰められた「茅」の美しさよ。高い断熱性と静けさと共に、温もりを感じてなりません。そのことが、深い安心感を与えてくれます。
鎌倉・室町時代の住居へ気軽にお邪魔して、当時の生活に触れてみて下さいね。
月に3回開かれていた「三斎市」を再現

農家が建ち並ぶエリアを東へ歩いて行くと、通りの左右に長屋が並ぶ「三斎市(さんさいいち)」に辿り着きます。
見せ棚を備えたお店が営業しており、地元特産品や手工芸品、飲み物が売られているので、足を運んでいこう。
そもそも三斎市とは、中世から近世にかけて月に3回定期的に開かれた市場のこと。当時は主に寺社の門前や交通の要所などで開催されていて、米・布・履物・壷など生活必需品が売られていました。
お店でスポンジ剣やでんでん太鼓、プロペラ付きソフトグライダーといったおもちゃを買って、遊ぶのも楽しそう。遊び場所には、すぐ近くに芝生広場があるのでご心配なく。

私が訪れた日は、備中神楽面彫りの実演をしていたり、オカリナコンサートが開かれていましたね。
中世の雰囲気を残す昔ながらの市場にて、そっと包み込むような優しいオカリナの音色が良く調和しており、とても心地良かったです。

通りに置かれていた、こちらのおもちゃを見て下さい。コマや積み木、火おこしの道具などがあり、その中には鬼滅の刃柄の羽子板を発見。
家族や友人たちと一緒に羽子板を遊びながら、時折「羽子板の壱の型、〇〇〇〇」と技名を叫ぶのも楽しそうですね。
ちなみに、現在では倉敷三斎市(岡山県)のように、三斎市の名称を引き継ぎ朝一として親しまれている地域もあります。
懐かしい遊びができる「武士の屋敷」

三斎市から少し北側へ歩くと、大きなお屋敷が見えてきます。それが「武士の屋敷」です。
先ほど見学した農家と比べて、2~3倍ほどの大きさだ。さすがは武士が住む家といったところか。再現されているのは、普段は農業に従事しながら村役をつとめ、非常時ともなると戦いに赴く半農半士の家なんですって。
こちらにも三斎市の通りにあったようなコマや火おこしの道具、けん玉などが置いており、昔ながらのおもちゃを遊べます。

外観を見終えたら実際に屋敷の中へ入ってみよう。かまどのある土間や囲炉裏のある居間などが見て取れます。私が訪れたタイミングは、ちょうど囲炉裏で火を起こしていて、当時の雰囲気をよりリアルに体験できました。
ここで囲炉裏の煙に関する豆知識を紹介。茅葺き屋根をいぶすことで、家を虫や湿気から守ります。これぞ先人の知恵ですね。
きっと居間でくつろいでいる最中でも、城主から呼び出しがあれば部屋から飛び出して急いで駆け付けていたのでしょう。そんな様子が、ありありと想像できました。


庭で見つけた竹の鳴り物をそっと叩いて、その音色を楽しんだり、童心に帰って竹ぽっくりで練り歩くのも楽しい。令和世代の子供たちには、デジタル化が進む現代において、昭和時代のレトロな遊びは新鮮に映ると思います。

個人的にハマったのは、竹の弓矢を使ったこちらの的当て。テーブルの位置から的を狙ったのですが、何度も挑戦しても的に当てるのがせいぜいです。才能ないのかしら。
ということで、しだいに的へ近づいていき、最終的に的の中央の穴へ矢を通すことができました。「え、何メートル近づいたか」ですって、それは秘密です。(笑)
「山城」の景観と360度のパノラマ絶景

武士の屋敷の東側には、ひと際高い場所に中世の「山城」を再現しています。芝生広場を歩いていると、存在感のある物見櫓が良く見えるので、それを目印にして向かいましょう。
こちらの山城ですが、見た目からして人工的に造られたカッコよさでなく、どこかホッとする温かみを感じませんか。一言で表すならば「素朴なワイルドさ」という表現がぴったり。
お城と言えば、石垣や天守閣を思い浮かべる人が多いですが、中世のお城は、そのような物がない時代。より自然の地形を利用したのは当然だと言えます。
この山城を眺めていると、竪堀や土塁、地下への抜け穴など色々と想像力をかきたてられました。


山城へ着いたら、物見櫓へ上るのをおすすめします。実際に中へ入って階段の前にくると驚くだろうな。何に驚くかというと、階段というよりハシゴのような傾斜ですよ。
なので、一歩一歩確実に上って下さいね。急いで上ると危ないです。



一番高い場所まで上ると、そこからは360度のパノラマ絶景が広がっています。
吉備高原の美しい自然や遠くに見える美星町の町並みの景観に、拍手喝采を贈りたい。心洗われる景色とは、このような景色を表すのだろう。日々の生活に疲れた時や、何か悩み事がある時に眺めると良いと思いました。
また、中世夢が原の近くには、半円形の観測ドームが特徴的な美星天文台があるので、興味がある方は、ぜひ足を運んでみよう。口径101cmの望遠鏡を持つ、国内でも最大規模の展望台なんだそうですよ。


物見櫓の直ぐ近くには「詰所」があります。こちらでは、戦争時に兵糧を詰めていたみたい。確かに、戦争になると何よりも大事になるので、大量の食べ物が蓄えられていたのは想像に難くないですね。
実は、中世の山城は必ずしも戦闘用とは限りません。通行や商いの要所ともいえない地方では、この場所から見える範囲を自領とする象徴のようなものだったと言われています。
防備もバッチリ「城主の館」

山城から少し南へ歩くと、物見櫓の上から見えていた「城主の館」へ辿り着きます。
この場所は、その名の通りに城主が住んでいたお屋敷。周囲を頑丈な板塀で囲み、防御に力を入れているのが分かるだろう。中世紀の武士が築いた最初の城郭を再現してるようです。
東西には櫓門があり、ここで城主を訪ねてくる人を監視していたのがありありと分かりました。敷地内には、主屋・侍所・井戸・厩(うまや)・厨(くりや)があります。

主屋は執務所と住居を兼ねているとのこと。構造や間取りは、足利氏の寝殿や朝倉氏の館、国立歴史民俗博物館の展示模型を参考にしているそうです。

部屋の中には、当時の衣装を身につけた城主や奥方の人形が配置されています。
また、部屋の中で飾っている額には、風水でお馴染みの「朱雀・青龍・白虎・玄武」の文字を発見。4つの聖獣が揃う空間は、最も運気が集まる環境ですね。
古代中国から伝わった風水ですが、初めは宮中行事に重用されていましたが、中世の頃になると、一般的に広がりました。


せっかくなので、城主と奥方に挨拶していこう。その後にゆっくりと、屋敷内を見学していくのが礼儀かな。
この館には、鎧・槍・弓などの武器があったり、当時の生活道具や家具が置かれているので、城主たちの生活に思いを馳せることができます。

こちらは厩。中へ入ると馬(模型)がいました。おめめがパッチリと開いて可愛い。ということで、カメラで1枚パチリと撮った次第です。
城主は、地域の支配者として領民の生活を守り、有事には自ら武器を取り、兵を率いて戦うカリスマです。名君もいれば暴君もいる。中世の頃の城主は、当たり外れが非常に大きかったと言われています。
芝生広場と鎌倉・室町時代の人物画

芝生広場での過ごし方は人それぞれですね。寝そべって読書したり、キャッチボールなどの軽い運動をするのも良し。
バッタやトンボ、てんとう虫といった可愛らしい昆虫を見つけるのも楽しそう。ひょうたん型の池で、コイにエサをあげて過ごしてみてはいかがですか。
また、子供が楽しく遊べる遊具がいっぱい。てんとう虫の屋根が可愛い遊具や、ジャングルジムにつり橋やロープ昇りがついて遊具などがあり、ちょっとしたアスレチック感覚で楽しめます。

芝生広場は、三斎市の直ぐ南側にありますが、広場へ向かう道中で見かけた人物画が個人的に気に入りました。
武士や商人、農民、旅人、子供、高貴な女性などが描かれているぞ。鎌倉・室町時代は戦争が多かった時代です。しかし、常に戦争をしていた訳ではないので、その表情からつかの間の平和を楽しんでいる様子を感じました。
これらの人物画は、点在しているので探し出してみて下さいね。
中世夢が原は様々な映画のロケ地に選ばれた

鎌倉・室町時代を再現した中世夢が原は、時代劇の舞台にピッタリですね。ドラマや映画関係者が、このような環境を見逃すことはなく、たびたびロケ地に選ばれています。
登場作品には、大河ドラマ「武蔵」やNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」、映画「あずみ2」、映画「たたら侍」、ドラマ「八つ墓村」などがあり、実際に見ていた人も多いだろうな。
ドラマや映画によっては、美星町の皆さんもエキストラとして参加していたそうですよ。園内には案内板があるので、どこがロケ現場なのか分かりやすいです。

ちなみ、こちらの辻堂は「武蔵」で登場したお通と城太郎の休憩シーンを撮影した場所なんだとか。
熱烈なファンであれば、現場を一目見るとピンとくるので、テンションが爆上がりすると思います。
刀鍛冶の実演や藍染め体験などができる

中世夢が原では、有料で竹とんぼ作りや箸作り、藍染め体験、備中神楽鑑賞などのイベントを通年で行っています。参加なさる方は、電話やメールで予約して下さいね。
また、春は「旧正月」、夏は「七夕夜市」、秋は「夢が原絵巻」、冬は「とんど祭り」といった季節限定のイベントもあり、時期をあわせて訪れると、より楽しめます。
その他にもGWの期間中に行なわれることが多い「刀鍛冶の実演」や「オカリナコンサート」などがあるので、くわしくは公式ホームページをご確認下さい。

私が訪れた日は、刀鍛冶の実演を行なう作業場所で、カマの修繕作業をしていました。スタッフの許可を得て、その様子を見学した次第です。
約900度の高熱の中に、カマの刃を入れた後で、刃を叩いてより曲げます。誤って火に指が触れると、一瞬で激しい火傷を負い、皮がビローンとはげるし、皮膚の奥の神経や血管にも深刻なダメージをうけるそうですよ。なので、一瞬の油断もできません。
慣れた手つきで、刃を叩く姿にはベテランが醸し出す風格を感じましたね。

こちらの写真を見て下さい。違う刃との比較になりますが、刃の弧の部分が全然違うのが分かるでしょう。普段、このような作業を見る機会はないので、勉強になりました。
中世夢が原の基本情報とアクセス
| 住所 | 岡山県井原市美星町三山5007 |
| 電話番号 | 0866-87-3914 |
| 営業時間 | 9:30~16:00 |
| 定休日 | 木曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3) |
| 入園料 | 【通常料金(3月~11月)】 一般(中学生以上)500円 子供(小学生)300円 【冬季料金(12月~2月)】 一般(中学生以上)300円 子供(小学生)300円 |
【アクセス】
- 井原鉄道・矢掛駅から大倉三山行きのバスへ乗り(約35分)、美星診療所前で下車後、徒歩約15分
- 山陽自動車道「笠岡IC」から車で約13km
中世夢が原の駐車場
中世夢が原には、無料駐車場があります。(普通車300台、バス10台)
まとめ

中世夢が原では、鎌倉・室町時代にタイムスリップしたような感覚を味わえます。
園内の豊かな自然の中を歩きながら、再現された当時の農家や武士の屋敷、城主の家などを見て回ろう。
さらに小高い丘には建つ物見櫓(山城)へ登ったり、三斎市で買い物をするのも良し。藍染め体験や竹とんぼ作りにチャレンジしたり、竹馬や竹の弓矢での的当てなど当時の生活や遊びに触れてみるのも楽しいです。
また、休憩がてらに芝生広場で寝そべりながら、どこまでも広がる青い空を見上げてみませんか。歴史ロマンにあふれた非日常をぜひ体験して下さいね。


