
香川県三豊市に位置する荘内半島の沖合には、小さな「粟島(あわしま)」が浮かんでいます。
粟島には、豊かな自然や瀬戸内国際芸術祭のアート作品など見どころがいっぱい。特にブイ(浮き)を使ったアート作品は、島内の至るどころで見かけるので散策するだけでも楽しいです。
その中でも数百のブイアートが集まる「ぶいぶいがーでん」はおすすめ。ブイに描かれた様々なキャラクターの楽し気な表情や、心温まる演出にほっこりします。また、アートの配信拠点「粟島芸術家村」にて、単なる美しさだけでなく、己自身や社会に対するメッセージをしっかりと受け取って下さいね。
本記事では、「ぶいぶいがーでん」と「粟島芸術家村」を中心に粟島のアートを紹介します。
目次
笑顔が絶えない不思議な空間「ぶいぶいがーでん」

粟島の北東部には、漁業で使われなくなったブイを再活用した庭園があります。それが「ぶいぶいがーでん」ですね。
ブイに描かれた表情は、お地蔵さんや猫の人形、アニメキャラクターなど誰しもが知っている物が多い。季節ごとに咲く花々とともに、個性的な彼らの表情をじっくりと鑑賞しよう。
口を大きく開けていたり、ウィンクしたり、困惑していたりする。一つ一つじっくりと鑑賞しながら、何を思ってそのような表情をしているのか、考えるのも楽しいです。
これらのブイアートは、島のアーティストとして活動している「えっちゃん」こと松田悦子さんが、コツコツと時間をかけて作成しました。今では粟島の名所の一つとして、心温まる不思議な世界が訪れる人たちをお待ちしています。
個人の敷地内に設置されているので、見学の際はマナーを十分に守りましょう。
「ぶいぶいがーでん」の行き方

粟島港から県道261号線を東へ向けて約4kmほど進むと、ぶいぶいがーでんへ辿り着きます。一本道なので、道に迷う心配はほとんどありません。歩くと約1時間ほどかかるので、レンタサイクルがおすすめです。
特に馬城八幡神社の鳥居がある場所から東は、「なんだ坂」や「こんな坂」の愛称で呼ばれる劇坂区間があり、距離は短いけれど勾配が10%のところも。なので、電動アシスト自転車を活用したい。
坂に出会った際に思わずつぶやいてしまう感想が、愛称になっているのも納得です。

また、粟島港から「グリーンスローモビリティ(GSM)」を活用するのも便利。このGSMは、環境に優しい低速電動自動車ですよ。
島民の生活の足としても使われていて、風を感じながら快適に島内を見て回れます。(1回の乗車100円、1日乗車券500円)

ぶいぶいがーでんは、粟島東端にある上新田港から歩いて約5分の場所にあり。こちらのGSMの時刻表によると、粟島港を13:00に出発すれば、上新田港へ13:43へ到着するとのこと。
GSMは路線上であれば自由に乗り降りできるので、おそらく「ぶいぶいがーでん」のある場所で乗り降りできると思います。運航日は月・水・金・土ですが、祝日や悪天候の場合は運休となるので、利用する際は気を付けよう。
ちなみに、GSMは貸し出しも行われているので、くわしくは島内の宿泊施設「ル・ポール粟島」で確認(TEL 0875-84-7878)して下さいね。

その他にも船で上新田港へ向かうの方法もあります。粟島港からは、1日に3便(6:55、11:05、15:25)だけですが、宮の下港へ向けて出港する船があるので、その途中で上新田港へ立ち寄るのも良し。
旅客とは別料金になりますが、自転車を載せることもできるので、必要に応じて活用して下さい。
心温まるブイアートの演出に注目

上新田地区の住宅が建ち並ぶ一角へ通りかかると、所狭しと並ぶブイアートがお出迎えしてくれます。
お澄まし顔のおばあさんを載せた丸太には、「このへんは美人多し 脇見運転要注意!!」と書かれていて、いきなり笑いを誘い出しました。
旅をしていると、このようなジョークを交えた安全標語を見かける機会は多く、運転への注意力を高める効果が期待できますね。

さて、「笑い」をテーマに作られたブイアートは、見ているだけで楽しくなる。豊かな表情や演出が魅力的。思い詰めた顔をした人でも、きっと表情が明るくなるに違いありません。
ありのままの自分でいてもいいと思えるような場所。それが「ぶいぶいがーでん」です。
ブイアートは、パッと見ただけでも100体以上あるかな。全部で何体あるのかは分かりませんが、気になる方は数えてみよう。
簡単ではありますが、ブイアートの一部を紹介します。

いきなり結婚式が開かれていてビックリ。幸せそうな新郎新婦や神父さんの姿もあり、賛美歌を歌う大勢の修道女や笑顔の猫たちが回りを囲みます。

こちらのお地蔵さんの楽し気な姿よ。笑顔でのびのびと歌っている様子が微笑ましい。どうやら「さがせてごらん自分の花を」と歌っている場面のようです。この歌詞のフレーズからして、名曲「世界に一つだけの花」だろう。

おっ、君たちは私たちが良く知る国民的人気キャラクターではないですか。どう見てもドラえもんですよね。
ジャイアンは普段通りに意地悪そうなお顔。映画版だと自分の身を挺して仲間を守ろうとするヒーローなので、普段とのギャップに男らしいを感じる人も多いかも。
そうそう国民的人気キャラクターといえば、この一家を忘れてはなりません。

そうです、サザエさん一家です。左から波平、フネ、カツオ、ワカメ、タラちゃん、サザエ、マスオさんが勢ぞろい。もちろん猫のタマもいます。
一家総出で、眩しい笑顔を向けて「ようきたな~」と歓迎してくれる。思わず「ありがとう」と返したくなりました。

その他にも「アンパンマン」を発見。近くにいるのは、ドキンちゃんかな。ドキンちゃんの表情から、何か驚いているみたい。
ドキンちゃんは、バイキンマンと一緒になってたびたび悪戯をすることがあるので、ひょっとして、見られてはならないところを見られたのかも。そのような想像が頭の中に浮かびました。

こちらは猫の集会でしょう。「腹減ったな~」「よっ、元気だったか」「〇〇丁目の▲▲▲さんは、大学へ合格したそうだよ」そのような何気ない会話が聞こえてきそうです。
その他にも色々なブイアートがあるので、じっくりと見学して行こう。




同じようにみえるキャラクターでも、目や口、歯の形を変えると全く受ける印象が違ってきます。細かな表情の機微を上手に実現していて、そんな表情をみていると、いつの間にか気持ちがゆるくなりました。
優しく語りかけてくるような温もりある空間に拍手喝采を贈りたい。粟島港から少し離れていますが、ぜひ愛らしい作品たちに会いに来てくださいね。
アートの発信拠点「粟島芸術家村」

粟島港から5分ほど北へ向けて歩くと、粟島芸術家村が見えてきます。
別名で「日々の笑学校(しょうがっこう)」と言って、この名前からして、どのような作品があるのか興味が湧いてきませんか。
粟島芸術家村では、旧粟島中学校の校舎を利用して、アーティストの作品を保管しており、毎週土曜日に一般公開中。アートを通じて地域の活性化や、訪れる人たちとの文化交流を図っています。

年に2~3人の若手アーティストを受け容れて、粟島に滞在しながらアート制作を行う支援をしているとのこと。つまり、アーティストを育てる場所にもなっている。なるほど、だからこそ斬新でユニークな作品が多いのですね。
きっと、島民との温かい触れ合いからインスピレーションを得ているのだろうな。そんなことを感じさせるアート作品を無料で見学できます。


こちらは、渡り廊下に展示されている「粟島大絵地図」です。どうですか、粟島の温かさを感じさせる色使いでしょ。ぜひ自分が訪れた場所や、これから訪れたい場所を探してみよう。
元教室の数はそれほど多くはありませんが、興味深い作品が多いです。

とある教室へ入ると、大きなお面がたくさん展示されていてビックリ。これ、なんだと思います。
どうやら新聞紙と半紙を積み重ねて作った島神様のようです。これらのお面は、「あわしまようけようけ」といって、瀬戸内国際芸術祭2016に展示されました。
お面の裏面には、粟島で過ごした人たちの思い出の写真がいっぱい。一つ一つの写真を見ながら、粟島の歴史や文化に触れてみよう。
そもそも「ようけ」とは、粟島の言葉で「たくさん」という意味なんだとか。ぜひ粟島で、たくさんの思い出を作って下さいね。

おっ、これは、魚やイカ、タツノオトシゴが泳いでいる海中の様子かな。そこに一つのドアがポツンとあり、このミスマッチの状態について、色々と想像するでしょう。
たとえば、どこでもドアが開いた先が海中だったとか・・・その先は考えない方が精神的に良さそうです。(笑)


教室の中には、「明後日朝顔プロジェクト」を大々的にアピールしていました。2003年にアーティストの日比野克彦朝さんが始めたそうですよ。
朝顔の種が「人と人」「人と地域」「地域と地域」をつなぐ橋渡しとなり、全国30カ所以上の地域が参加しています。実に有意義なプロジェクトですね。
【粟島芸術家村】
- 営業日時 毎週土曜日 13:00~16:00(季節によって延長、他の曜日の公開あり)
- 入館料 無料
インド・ワルリー族に伝わる物語が織りなす不思議な世界

敷地内にあるこちらの建物では、館内に洞窟壁画が公開されているのでお見逃しなく。
展示されている作品は、瀬戸内国際芸術祭2019の秋会期に公開された「言葉としての洞窟壁画と、鯨が酸素に生まれ変わる物語」です。
「洞窟壁画」といえば、古代人が洞窟の壁や天井に描いた絵画を思い浮かびますが、それがクジラとどうからむのか面白そう。ということで、建物内へ急いで入りました。


中へ入ると、大きなクジラの骨格標本に驚くだろう。それに周囲の壁画もいい感じ。人間の歩んできた道のりが、動物や神様と共に描かれており、輪廻転生を感じ取れるぞ。
インドから粟島へやってきたマユール・ワイエダさんと2人の兄弟たちが、たくさんの人と協力して作り上げたそうです。「死ねば土になる、そして土からまた生命が生まれる」というインドの少数民族・ワルリー族に伝わる物語の一部なんだとか。
クジラは伝達者として、洞窟の中へ現れ、生物が繰り返しながら作ってきた命の在り方を伝えているとのこと。私たち人類はどこから生まれ、そしてどこへ向けて歩むのか、色々と考えさせられる作品だと思います。
体育館で見られる大作「航海する記憶の船」

体育館では、モンゴルの移動式住居「ゲル」をモチーフにし、粟島の元船乗りたちの記憶を織り込んだ世界観に出会えます。
この作品は、アーティストのタオリグ・サリナさんが手掛けました。個人的に、粟島芸術家村の中で一番のお気に入り。ゲルへ近づくと案内が流れるので、その話に耳を傾けながら、この独特の世界観に浸って下さいね。
粟島は、かつて国内初となる国立海員養成学校があった場所。航海士や機関士など船で働くプロを育てるところでした。卒業生が世界中の海を巡り、どのような体験をしたのか実に興味深い。


船から空を見上げると、百羽を越えるカモメたちが館内にいっぱいに飛び回る。カモメは幸運や自由・魂・悲しみなどの象徴なので、人によっては色々なイメージやメッセージを受け取るだろうな。
ちなみに、私は館内がうす暗いということもあり、自由への逃避行を感じてやみませんでした。
粟島では至るどころにアートがある

粟島を巡っていると気付かされるのが、ブイアートの多さですね。
「ぶいぶいがーでん」のように100個を越えるような場所はありませんが、粟島港や粟島休憩所のような場所から、普通の道路わきなどにも数個から数十個をまとめて見かけました。
もちろんブイアートだけでなく、瀬戸内国際芸術祭に出展した作品なども見かけます。そんなアート作品をダイジェストで紹介。





このようなアートが島中に点在しているので、バッタリと出会えた瞬間にテンションが上がるかも。より粟島が気に入ると思います。

個人的に良くわからなかったのは、粟島海洋記念館前の海へ突き出した場所で見つけた、こちらの機械オブジェ。
近くには案内板がなく説明がないので、いったい何を表しているのか不明です。けれど、サビて朽ちていく様子から、時代の流れの中で取り残されていく哀愁を感じました。

この作品の周りには、鉄製のアートフレーム(額縁)があるので、明らな撮影スポットだろうな。ということで、一枚記念に撮った次第です。

そして忘れはならないのは、「漂流郵便局」でしょう。この郵便局は、旧粟島郵便局をリノベーションして開局した瀬戸内国際芸術祭2013の作品です。
この郵便局には、どこにも届かない手紙やハガキを送られていて、それを保存展示しています。実際に局内では、それらを読むことができ、天国にいる家族やペットなどに伝えたい思いに共感を覚えました。
ちなみに、私は菅田将暉さんが主演したフジテレビのドラマ「ミステリと言う勿れ」に登場したことで、その存在を知りましたね。
漂流郵便局について、くわしくは近日中に公開します。
粟島の見どころを紹介

島内には、アート作品の他にも夕日が美しい「西浜」や360度のパノラマ絶景を楽しめる城山、迫力満載の梵音寺のタブノキなど足を運びたい観光スポットがたくさんあります。
粟島の周囲はわずか16kmなので、自転車があると移動に便利。自転車であれば、4~5時間ほどで一通り見て回れます。島内にはレンタサイクルがあるので、必要に応じて借りて下さいね。
粟島の見どころについては、下記記事でくわしく紹介します。
粟島の基本情報とアクセス
| 住所 | 香川県三豊市詫間町粟島 |
| 電話番号 | 0875-56-5880(三豊市観光交流局) |
粟島へ行くには、三豊市にある須田港または宮の下港から出港する船(粟島汽船)へ乗ります。
【須田港までのアクセス】
- JR詫間駅からタクシーで約10分
- 高松自動車道「三豊鳥坂IC」から車で約20分
【宮の下港までのアクセス】
- JR詫間駅からタクシーで約5分
- 高松自動車道「三豊鳥坂IC」から車で約15分
まとめ

粟島は、ユニークなアート作品が集まる小さな島です。粟島港を中心にして、様々なアート作品に出会えます。
特に「ぶいぶいがーでん」は、粟島港から少し離れた場所にあり、アップダウンが結構ある道を移動するため、自転車をレンタルするのならば、電動アシスト自転車がおすすめ。
粟島の豊かな自然を巡りながら、自然と融合したアート作品をぜひ目にして下さいね。そして、島民との温かい交流と共に、粟島の観光を楽しみましょう。

