神社巡りをするに当たり、一宮の存在に特別感を感じる人も多いでしょう。
高知県(土佐国)の一宮といえば、古代から信仰を集める「土佐神社」です。パワースポットとしても有名ですね。
高知市の市街地から少し離れた場所に鎮座しており、鎮守の森こと「しなねの森」を散策しよう。
静寂に包まれた森に佇む様々な社へお詣りしながら、古代祭祀の痕跡が残る「礫石(つぶていし)」などへ近づけば、パワーを実感できるだろう。
また、境内には、戦国武将の長宗我部元親が造営した社殿を始め、江戸時代初期に建てられた楼門(神光門)、色鮮やかな「鼓楼」など見どころが多いです。
本記事では、しなねの森を中心に土佐神社の見どころを紹介します。
土佐国一宮「土佐神社」とは
土佐神社は、高知県高知市一宮(いっく)しなねに位置し、高知県を代表する神社です。
正確な創建年は分かりませんが、おそらく雄略天皇の時代である5世紀後半(460年頃)だといわれています。また、日本書紀や土佐国風土記にも記述が残っており、古くから土佐国の総鎮守として崇敬されてきました。
地元では、親しみを込めて「しまねさん」「しなね様」「いっくさん」と呼ばれています。
また、歴代の土佐国を治めた領主からの信仰が篤く、特に戦国武将の長宗我部元親(ちょうそかべ もとちか)は戦のたびに参拝を行ないました。現在の社殿は、元親公が寄進して再建され今に至ります。
御祭神は、以下の通り。
- 味鋤高彦根神(あじすきたかひこねのかみ)
- 一言主神(ひとことぬしのかみ)
味鋤高彦根神は、大国主神の御子であり、農業・工業・商業などあらゆる産業の繁栄の神様ですね。一方、一言主神は「一言で物事を解決する」という託宣の神様ですよ。
ご利益には、家内安全・交通安全・諸願成就・病気平癒・厄除け・縁結びなどがあります。
坂本龍馬が主役を務める大河ドラマ「龍馬伝」のロケ地としても知られており、高知県内外から多くの参拝者が訪れる土佐国一宮です。
【周辺の見どころ】
土佐神社周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
鎮守の森を巡ろう、しなねの森を歩きパワーを実感
土佐神社の境内を歩いていると、自然豊かな森が社殿を囲むような形で育っている、いわゆる鎮守の森に気が付きます。
この森は「志那祢(しなね)の森」と呼ばれ、パワースポットとして知られる土佐神社の中でも、特に大自然のパワーを感じ取れる場所なのでぜひ足を運んで下さいね。
一周するには、約5~10分ぐらいあれば歩けるコース設定なのもGood。ほぼ平地なのでサクサク歩けますが、どうせならゆっくり歩き、森林浴としゃれ込みましょう。
しなねの森の入口(スタート)は、本殿の左側奥にあり、小さな太鼓橋があるので渡ってそのまま道なりに歩きます。
周囲を見渡せば、たくさんの背の高い木々に囲まれる、それなりの深淵な森のため、夜歩くのは怖そう。けれど昼間であれば、そんなことはなく幽玄のような雰囲気を感じるぞ。
それに、鬱蒼と茂る草木から何だかパワーを感じてしまうのは、私だけではないと思う。
おっ、これは何だ?何やら埋没した倉庫のような家屋があるではないですか。
近付いて確認してみると、どうやら旧防火水槽だったみたい。今では、谷水流入時の調整池として使われているそうです。
それにしても、いきなりこのような建物が現れるとビックリしますね。
コース上には、お伊勢様を祀る「神名宮」へ向かう道が分岐しているので、そちらにも足を運んでみよう。
また、厳島神社も鎮座しており、その周囲には放生池があります。
厳島神社へ向かう道中には、注連縄(しめなわ)が巻かれている御神木とご対面。幹回り9mもある樹齢約200年の楠にビックリ。
その他には、古代に祭祀が行われていた「礫石(つぶていし)」や祓いの神様を祀っている「禊岩(みそぎいわ)」などがありますので、お見逃しなく。
それでは、これらの見どころを紹介します。
古のパワースポット「礫石」
しなねの森の中で、特に注目したいのが「礫石(つぶていし)」です。
長さ3.3m、幅2.5m、高さ1.7mの大きな石で、周囲を木札により囲まれているため、森の中でも目立ちます。
礫石は、古代の磐座とされた神聖なものですよ。それにこの礫石のある場所は、土佐神社の中でも最高のパワースポットという。
はるか昔に神様が土佐大神を移す際に「この石の落ちたところに宮を建てよ」とぶん投げた伝説が残っています。
その投げた石は、なんと14里(約55km)も離れた場所から飛んできたというのですから、さすがは神様ですね。
どこから投げたのが気になったので調べてみると、どうやら須崎市の鳴無(おとなし)神社みたい。
う~む、実際に礫石を探し回った人々は、今のような科学技術が進んでいる訳ではないので、かなり大変だったと思います。(これも試練ですかね~)
身心を清めるご利益のある「禊岩」
禊岩(みそぎいわ)は、もともと境内の西側を流れるしなね川にあったのですが、河川改修工事のために土佐神社へ移され今に至ります。
このしなね川は、禊川とも称され、禊神事を行っていたという。この禊岩は、禊神事を行なう場所に古くから祀られていました。
今でも人々の身心を清めるご利益のある、大変ありがたい岩ですね。
2つの禊岩は少しの間を挟んで隣に並んでおり、お揃いの注連縄(しめなわ)がされているので、夫婦岩のように見えるかも。
禊岩の前で、目を閉じてゆっくり手を合わせ、しばらくの間瞑想して心を静めてみてはいかがですか。
ちなみに、この禊岩に祀られている「祓いの神(祓戸四神)」は以下の通りです。
- 瀬織津比売(せおりつひめ)
- 速開都比売(はやあきつひめ)
- 気吹戸主(いぶきどぬし)
- 速佐須良比売(はやさすらひめ)
神名宮と厳島神社
しなねの森の中を歩いていると、途中で神明宮へ向かう別れ道があります。神明宮へ向かって歩くと、なだらかな丘になっていますが、勾配は大きくないので、すんなりと歩けますね。
神名宮では、伊勢神宮の内宮・外宮の神様を祀っている。
つまり、神道の最高神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)と豊受大御神(とようけのおおみかみ)が御祭神ですよ。
拝殿があった場所からそれほど離れている訳でありませんが、ここでは境内の喧騒が全く聞こえてこないのが不思議だ。
それほど、厳かな場所ともいえるでしょうね。
神名宮以外にも足を運びたいのが厳島神社です。放生池に架かる小さな橋を渡った先にあります。
宮島・厳島神社の分社として、宗像三女神(田心姫神・湍津姫神・市杵島姫神)をお祀りしており、縁結びのご利益で知られるありがたい神様ですね。
その他にも芸能向上のご利益があるため、芸能関係者に強く信仰されています。
ちなみに、本家となる宮島の厳島神社は、世界遺産として超有名。そもそも厳島神社が鎮座する宮島自体が神の島として神聖ですよ。
長宗我部元親が造営した「本殿・幣殿・拝殿」
土佐神社の社殿は、永正年間に起こった岡崎城攻防戦の際に焼失しましたが、1570年(元亀元年)に長宗我部元親により再建されました。
拝殿・幣殿・本殿が十字に配置されている「入りトンボ様式」という珍しい配置が特徴的。その名の通り、トンボが飛び込む姿に見立てたそうな。
それに時代を感じさせる外観は見事なり。特に本殿の鮮やかな朱塗りの外観は目を見張るだろう。本殿の内部は、内陣と外陣に分かれており、寺院の本堂に似た造りだそうです。
一通りぐるり外観を見て回った後は、ぜひ拝殿の中へ靴を脱いで上がってみて下さいね。
その際、本殿側へ目を向けると、やはり色鮮やかな色彩はとても華やかであり、目が釘付けになります。
また、備前焼の狛犬や大太鼓などが見て取れるので、じっくりと見物しよう。
こちらは、拝殿の扁額です。何とも個性的なフォントが良い感じ。
初めて土佐神社へ訪れた参拝者が疑問に思うのは、拝殿前に引かれた謎のレールではないだろうか。
宮司さんにお話を伺ったところ、正月やお祭りなどで多くの参拝者が訪れる際、このレールを使って賽銭箱などを移動させるといいます。そして初詣時には、さらなる大きな賽銭箱が設置されるとのこと。
なるほど、レールを敷設していないと、賽銭箱などの移動が大変なのは見て分かるので納得できました。
毎年3月11日の夕刻から13日の夜明まで斎籠祭(いごもりさい)が行われるので、この期間は境内への立ち入りは禁止となり、参拝は鳥居からの遥拝となります。
なので、3月に参拝する際には、気を付けて下さいね。
【神社仏閣の紹介】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
楼門から続く長い参道と大鳥居
土佐神社の近くを通る県道384号線に面した場所には、「土佐國一ノ宮」と記された社号標の大きな岩があります。
実はこれは、この周辺にあった一宮古墳群の天井石の一部を転用したものですよ。
そこから北へ向けて約300mほどの参道が続いていており、境内の入口には、楼門があるのですが、私が訪れた時は修復工事の真っ最中でした。
実際に見ることができなくて残念でしたが、これは仕方がないでしょう。
けれど、修復中の様子を写真で紹介されていたので、これはこれで面白い。また、工事前の写真も紹介されていました。
この楼門は、1631年(寛永8年)に2代藩主山内忠義公が建立したそうだ。また、別名で「神光門」とも呼ばれており、国の重要文化財に指定されています。
本来、門を守護する神様である随身像が置かれていたのですが、修復工事にあたり絵馬殿に一時的に引っ越していて、仲良く並んで座っている姿が印象的でした。
ちなみに、この桜門前の広いスペースは、かつて参勤交代を行なう際、休憩する場所だっだそうですね。おそらくですが、休憩時に土佐神社へ立ちより、江戸へ向かう道中の安全を祈願したのだと思います。
修復工事中であったため、楼門から参道を歩くことは叶いませんでしたが、また来た時のお楽しみということで。
そして、参道の先にあるのが大鳥居ですよ。
大鳥居の脇にある社号標の文字は、橋本龍太郎元首相が書いたものだそうだ。
鳥居の奥には、拝殿が良く見えます。一礼して鳥居をくぐり抜け、拝殿へ向かいましょう。
【参拝に役立つ話】
神社仏閣の参拝に役立つ様々な話を、下記記事で紹介します。
くぐれる御神木の輪抜け祓いに挑戦
絵馬殿の前にあるのは、「茅の輪くぐり」のような「輪抜け祓い所」です。
茅の輪くぐりと違うのは、大きな切り株の存在だ。「この切り株は、いったい何?」と思いますが、実はかつての御神木を伐採したものだといいます。
何でも樹齢800年を超える杉の木だったのですが、倒れそうになっていたため、やもなく伐採したそうな。
元御神木ということなので、ありがたいご利益あり。心身が清められて、大木のようなたくましさや長寿を授かれるというのだから、ぜひチャレンジしてみよう。
くぐり方の作法は「茅の輪くぐり」と同じ8の字型。手順を示した案内図があるので、初めての方でも間違えずに行えます。
色鮮やかな「鼓楼」の造形に注目
大鳥居をくぐり抜けて、すぐ右手側に見える色鮮やかな朱塗りの大きな建築物が「鼓楼」です。
屋根は、東アジアの伝統的な建築様式を取り入れているそうな。見た目からして、上層の屋根部分が大きいので目立ちます。
初層は黒い板を張っており、真ん中の部分に出入り口を作る「袴腰形式」ですね。
この鼓楼も楼門と同じく、山内忠義公が寄進しました。1649年(慶安2年)に建立され、国の重要文化財に指定されています。
名前の通り、建物の中には太鼓があって、昔はそれを鳴らして時間を告げていました。
蟇股(かえるまた)にも注目してみよう。
山内家の家紋の「三つ葉柏」や「鯉に乗る恵比須様」「虎」などの装飾が見て取れて、面白いですね。
境内社も参拝しよう
拝殿に向かって左手後方には、3つの境内社(摂社)が並んでいます。
それぞれの摂社は、以下の通り。
- 左側:事代主神社
- 真中:西御前神社
- 右側:大国主神社
これらの中で一番大きな西御前神社は、御祭神は不明ですが、家庭円満のご利益があるといいます。また、両隣の神社では、共に商売繁盛と諸業繁栄のご利益あるという。
尚、御祭神は神社の名前通り、事代主神社は事代主命(ことしろぬしのみこと)を祀り、大国主神社は大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀っている。
これら三社殿の奥には、しなねの森の入口がありますね。
土佐神社の基本情報とアクセス
住所 | 高知県高知市一宮しなね2丁目16-1 |
電話番号 | 088-845-1096 |
営業時間 | 一般参拝、社殿拝観 8:30~16:30 |
【アクセス】
- JR一宮駅から徒歩約20分
- JR高知駅からバスに乗って「一宮神社前」で下車後、徒歩約5分(所要時間約35分)
- 高知自動車道「高知IC」から車で県道384号線を進み約10分
土佐神社の駐車場
土佐神社には、無料駐車場があります。(普通車 60台)
まとめ
土佐神社は、日本書紀や土佐国風土記に記述されるほど歴史と由緒を誇り、歴代の領主が篤く信仰してきました。
楼門から続く長い参道を歩いて拝殿へ赴き、パワースポットとして名高い「土佐神社」へ参拝して下さいね。
また、自然豊かな「しなねの森」を散策すると、いつのまにか心が落ち着くものです。
土佐神社のすぐ隣には、四国八十八ヶ所霊場第30番札所・善楽寺(ぜんらくじ)があります。神仏習合時代には、土佐神社に付属するお寺でしたので、ともに参拝してみてはいかがですか。