広島県の東部に位置する「沼隈半島(ぬまくまはんとう)」。
福山市の南端に位置しており、南北に約10kmほどの規模を持つ瀬戸内海に突き出た半島ですね。特に南端にある「鞆の浦」は古くから瀬戸内の要衝として栄え、人気の観光地として有名。
福山市のサイクリングロード「しおまち海道」を自転車で駆け抜け鞆の浦を目指そう。その後、松永地域へ向けて北上し、沼隈半島をぐるりとほぼ一周してみませんか。
道中には、鞆の浦だけでなく、福山城や阿伏兎観音、松永はきもの資料館など足を運びたい観光スポットが目白押し。サイクリングと共に観光も楽しみたいですね。
本記事では、隈沼半島のサイクリングコースと魅力ある観光スポットを紹介します。
隈沼半島のサイクリングコース
広島県の第2都市として栄えている福山市。
隈沼半島をサイクリングする際、新幹線も停車するJR福山駅を起点に南下して鞆の浦を目指そう。その後に北上して、JR松永駅を終点とするコースがおすすめです。
ロードバイクやクロスバイクであれば、走行距離は約40kmと比較的短いので、サイクリングだけでなく観光にも時間を十分に割くことができるのがポイントだ。平均速度が時速15kmであれば、約2時間半ほどで走れるので、お手軽感があります。
海岸線がメインルートとなる「しおまち海道」を経由してほぼ一周するため、コースのほとんどが平坦路となる。なので、初心者から中級者におすすめ。
また、ヒルクライムを楽しみたいならば、ハードな福山グリーンラインをコースに組み込む選択肢があります。
こちらは、おすすめのサイクリングコースです。
まずは福山市街を抜けて芦田川へ向かおう。河川敷にはサイクリングロードが整備されているので、そちらへ入るのがおすすめ。水呑大橋付近からサイクリングロードへ入れます。
サイクリングロードの横幅は広く、歩道と自転車道が分かれているので、より走りやすくなっている。だからといって、歩行者が必ずしも歩道のみを歩くとは限らないので油断しないように。
芦田川の景色を楽しみながら一直線の道を駆け抜け、最後に芦田川大橋を渡る。
そして道なりに進めば、ロマンチック街道313(国道313号・県道22号)が鞆の浦まで続いています。
しばらすると左手側に瀬戸内海が見てくる。横目で穏やかな海の景色を眺めながら駆け抜けよう。道の所々には、ブルーラインの距離標があるのもありがたいですね。
鞆の浦の町中を抜けて、鞆松永線(県道47号)を西へ進むと坂道が続き、最大勾配が10%の劇坂があったりしますが、全体的に距離は短め。
上るのが辛い場合は自転車を押して歩いても、それほど時間をかけずに坂の上へ辿り着きます。
その後、海岸線の沿って道なりに走っていると、常石造船の工場前を通過する。
これは・・・何という大きさだ。船が製造しているさまを道路から丸見えなので、思わず立ち止まりしげしげと見物してしまいました。
しばらくすると、草深古市松永線(県道389号)へ合流するのでそのまま北上しよう。
その道中で戸崎港へ向かう大きな案内板が見えてきますが、この案内板へ向かって左折すると向島へ渡る渡し船が行きかう戸崎港へ辿り着く。しまなみ海道へ向かうと時に使いたい。
ちなみにこの案内板のすぐ近くには、浦崎の常夜灯があるので、こちらを目印にするのもアリですね。
左折せずそのまま草深古市松永線を突き進めば鞆松永線(県道47号)へ再度合流するので、そのまま道なりに進むと松永地域へ入ります。
ここまでくれば、JR松永駅まであと少し。クールダウンしながら駅へ目指して下さいね。
隈沼半島をサイクリングする際に訪れたい絶景・観光スポット
沼隈半島は、それほど知名度が高い訳ではありませんが、サイクリング中に足を運びたい絶景・観光スポットが多いですね。
時間に余裕があれば沼隈半島南端から内海大橋を渡り、田島へ訪れてみよう。島全体の大部分が山である自然豊かな島ですよ。
赤いやぶ椿や桜、菊桃、ミモザ、水仙などの四季折々の花を楽しめます。それに昔ながらの瀬戸内の離島の様相を堪能できるのがいい感じ。
そんな隈沼半島の主な魅力ある絶景・観光スポットを7つに絞り以下にまとめました。
- 福山のシンボル「福山城」
- 華やかなバラが彩る「バラ公園」
- ノスタルジーを感じてやまない「鞆の浦」の町並み
- 阿伏兎岬の断崖絶壁に建つ「阿伏兎観音」
- 見るだけでなく、触ることができる「福山自動車時計博物館」
- まるで要塞のような迫力満点な「草戸稲荷神社」
- 「松永はきもの資料館」は日本で唯一の履き物博物館
それぞれについて紹介します。
福山のシンボル「福山城」
JR福山駅北口を出ると、目の前には福山城があります。
もともと福山駅構内は、すっぽり入るほどの城郭だったのですから、これほど近いのもうなずけますね。
サイクリングを始める前に立ち寄ってみてはいかがですか。ちなみに所要時間は、1時間から1時間30分ほどみておきたい。
復元された天守は、五重六階地下一階の層塔型であり、二重三階の付櫓が付随した複合式天守です。黒と白のコントラストをなす城壁と、威風堂々とした外観が素晴らしい。
城内は博物館となっており、福山藩の武具や甲冑、古書など貴重な資料が展示されています。また、一番槍レースや火縄銃体験のコーナーもあり、子供だけでなく、むしろ大人の方が楽しめる。
最上階は展望台となっており、福山市街を360度見渡せるぞ。
さすがに遠く離れた鞆の浦までは見えませんが、晴れた日には、立ち並ぶビルなどの建築物の向こう側に瀬戸内海を見渡せます。
天守以外にも見どころが多く、京都の伏見城から移築された「伏見櫓」と「筋金御門(すじがねごもん)」や、石垣に張り出した「御湯殿」がおすすめ。
福山城については、下記関連記事でくわしく紹介します。
華やかなバラが彩る「バラ公園」
福山市は、100万本のバラが咲き誇るほどバラの町として知られています。
市内の様々な公園などでは、毎年5月・10月になると色鮮やかなバラが咲き誇る。
バラを楽しめる公園には、福山駅北口付近のスクエア広場を始め、花園公園や緑町公園、中央公園などたくさんあり、その中でも「バラ公園(旧南公園)」が特におすすめです。
バラ公園は、1950年代半ばに付近の住民がバラの苗約1,000本を植え付けたのが始まりでした。今では670種、7,000本に増え、例年5月中旬になると、福山市最大のイベント「福山ばら祭」が開催されます。
ちなみに私は10月中旬に立ち寄りましたが、バラが咲き始めたばかりだったかな。それでも綺麗なバラを見ているとテンションが上がりますね。
バラの開花シーズンに沼隈半島をサイクリングするならば、ぜひ足を運んで英気を養おう。
ノスタルジーを感じてやまない「鞆の浦」の町並み
福山市街を抜けて沼隈半島の南端を目指すと、鞆の浦へ到着します。
鞆の浦は、沼隈半島を代表する観光スポットです。古来より瀬戸内海の海上交通の要所として栄えました。
坂本龍馬ゆかりの地としても人気が高く、ジブリアニメ「崖の上のポニョ」のロケ地なので、知っている人も多いでしょう。
ひとたび町中へ入ると、まるで江戸時代にタイムスリップしたような感覚を味わえる。古く趣ある家屋や路地裏の石畳、そして何よりも港町を象徴する趣のある常夜燈や湾岸施設が素晴らしい。
そんな港町をのんびり歩くだけでノスタルジーを感じずに入られません。
JR福山駅から約15kmぐらいしか離れていないため、自転車を時速15kmで走らせたならば1時間で到着するのも魅力的ですね。
町中は自転車でなく歩くのがおすすめ。旅情あふれる町中をゆっくりと歩きながら町並みを見物したり、気になるお店へ入って休憩を取って下さいね。
特に足を運びたいのが福禅寺・対潮楼です。
かつて朝鮮通信使の寄港地として鞆の浦へは必ず立ち寄っており、ご一行をもてなす迎賓館として活用していました。
第8回通信使の李邦彦(イバンホン)は、対潮楼の座敷から見た景色を「日東第一形勝(日本で一番美しい景勝地)」として賞賛した逸話が伝わっています。
今でもその景観は健在ですよ。その景色の中に見える美しい仙酔島は、実際にフェリー(平成いろは丸)に乗って上陸できるぞ。(乗船時間は約5分)
仙酔島は西日本屈指のパワースポットとして、日本で唯一の五色岩(ごしきいわ)を見物できるのでお見逃しなく。
鞆の浦については、下記関連記事でくわしく紹介します。
阿伏兎岬の断崖絶壁に建つ「阿伏兎観音」
沼隈半島の最南端にある「阿伏兎岬(あぶとみさき)」には、瀬戸内海を行き交う船の航海安全を祈願するために建てられた観音堂があります。
それが「阿伏兎観音(あぶとかんのん)」ですね。紺碧の瀬戸内海の下で、断崖絶壁に建つ朱塗りの観音堂が織りなす景観には、拍手喝采を贈りたい。
波で削られた岩肌が複雑な地形を形成しており、雄大な自然とのコントラストがとても絵になります。
そのあまりの美しさに歌川広重が浮世絵にしたり、十返舎一九や志賀直哉が作品に登場させるなど色々な芸術作品の題材になりました。
高さは約10mほどあるので、高所恐怖症の人は足がすくむかも。また、個人的には火曜サスペンス劇場で良く見ていた犯人を追い詰めるシーンを思い出すかな。(笑)
強風や大雨など悪天候の時は危険なので、見学は控える方が無難ですよ。
阿伏兎観音については、下記関連記事でくわしく紹介します。
見るだけでなく、触ることができる「福山自動車時計博物館」
福山自動車時計博物館では、様々な歴史的に価値が高いクラシックカーや貴重なアンティーク時計を見学できます。
それにただ見るだけでなく、実際に触れこともできる。こんな博物館は珍しいですね。
そもそもこの博物館のキャチコピーが「のれ!みれ!さわれ!写真撮れ!」なんですから、言わずもがな。
実際、一部のクラッシックカーの座席へ座れるのは貴重な体験だ。車に興味のある大人であれば、誰しもがワクワクしますね。
時代を感じさせる自動車やバイクというのは、まさにロマンの塊です。男心に突き刺さるのではないでしょうかね。(興味のある女性にも突き刺さるかも。)
普通博物館というのは、国や各都道府県の自治体が運営することが多い。だけど、この博物館は私立博物館なんだとか。とても私立博物館とは思えないほどの規模を誇るぞ。
館長である能宗孝(のうそう たかし)氏が収集したコレクションを展示しているそうな。
また、博物館の道路を挟んで向かいの建物には、消防車やボンネットバスが並んでいるのでお見逃しなく。
福山自動車時計博物館については、下記関連記事でくわしく紹介します。
まるで要塞のような迫力満点な「草戸稲荷神社」
諸説はありますが、日本三大稲荷の1つに数えられている神社が福山市にあります。
それが「草戸稲荷神社(くさどいなりじんじゃ)」ですね。初めてこの神社へ訪れた人は、きっと社殿の外観に驚くだろう。
まるで要塞のような迫力があります。その様子は遠くからでもとても目立つ。特に近くから見上げると、思わず「うぉ~!」と声を上げてしまうほどだ。
社殿の最上階は、遠くに福山市街を一望できる展望台になっています。近くには高層ビルがなく、目の前に流れる芦田川の景観もいい感じ。
また、全国的に珍しい「大大吉」の出るおみくじがあるので、ぜひチャレンジして下さいね。
草戸稲荷神社については、下記関連記事でくわしく紹介します。
「松永はきもの資料館」は日本で唯一の履き物博物館
松永はきもの資料館(愛称:あしあとスクエア)は、日本で唯一の履き物関連の博物館です。
日本の暮らしの中で発展し続けてきた下駄や草履、靴など様々な履き物を、労働・信仰・儀礼・芸能などテーマ別に保存展示しています。
下駄コレクションの中には一般的な下駄はもちろんのこと、自分の身長よりはるかに巨大な下駄やローラースケート下駄、虫眼鏡で覗かなければならないほど小さな豆下駄などがあり、そのラインナップにビックリ。
また、日本だけでなく世界の履き物も展示しており、「こんな履き物があるのか」なんてことも・・・
さらにプロスポーツ選手のシューズコレクションまで展示されているので、スポーツ好きな方にとっては必見ですよ。
履き物は約13,000点を収蔵・展示しているので、その数の多さが凄いですね。
それに履き物だけでなく、日本各地や世界の郷土玩具もズラリと並んでいるぞ。
その数は驚くことなかれ、なんと約18,000点も収蔵・展示しているというのだから、履き物と共に見応えが抜群です。
特に米国アリゾナ州の先住民族ホピ族の「カチカ人形」コレクションは必見。その独特なデザインと斬新な彩色が素晴らしい。
そんなカチカ人形は324点も展示しているので、じっくりと見学してはいかがですか。
松永はきもの資料館については、下記関連記事でくわしく紹介します。
まとめ
沼隈半島をサイクリングする際には、福山市の玄関口となるJR福山駅から始めるのが便利ですね。
そのまま南下してサイクリングロード「しおまち海道」を走り、鞆の浦を目指そう。
それほど広く認知されていない沼隈半島ですが、鞆の浦を始め福山城や阿伏兎観音、松永はきもの資料館など見どころが多いのも魅力的です。
また、コース自体に急坂が少なくて、走行距離は約40kmとお手頃なので、サイクリングだけでなく観光にもたっぷりと時間が使える。長距離を走りたい人には物足りないかも知れませんが、観光も楽しみたい人にはピッタリといえます。
瀬戸内海の自然を楽しみながら沼隈半島のサイクリングを楽しんで下さいね。