
白壁の蔵屋敷やなまこ壁、柳並木など趣ある景観を楽しめる岡山県倉敷の美観地区。
その美観地区を見下ろせる鶴形山の山頂には、古い歴史と由緒を持つ「阿智神社(あちじんじゃ)が鎮座しています。
長寿のご利益が期待できるパワースポットの参道や、樹齢300年以上といわれる日本一のアケボノフジの巨木「阿知の藤」など見どころが多い。また、うさぎと縁があるとして、知る人ぞ知るうさぎ神社としても話題ですよ。
それに、磐座や磐境が並ぶ古代庭園や、絵馬殿から眺める倉敷美観地区の眺めも見逃せません。
本記事では、訪れる参拝者に新鮮な癒やしや驚きを与えてくれる阿智神社を紹介します。
目次
阿智神社のご祭神・ご利益・所要時間

阿智神社は、岡山県倉敷市の中心市街にある標高約40mの鶴形山山頂に建つ神社です。
創建は1693年(元禄6年)と伝わっているのですが、実際には応神天皇の時代(3世紀後半~4世紀初頭)までさかのぼるそうな。そう考えると、もの凄く長い歴史を歩んできた神社といえますね。
16世紀頃までこの神社がある一帯は海でした。そのため、鶴形山は独立した島(亀島と呼ばれていた)だったそうですよ。陸になったのは江戸初期頃なんだとか。そうなると、それまでは、おそらく船で行き来していたのでしょう。
その頃には「妙見宮」と呼ばれており、明治の神仏分離令が発令された後で、阿智神社に社号が変更され今に至ります。

ご祭神は、宗像三女神として知られる以下の通り。
- 多紀理毘売命(たぎりひめのみこと)
- 多岐都比売命(たぎつひめのみこと)
- 市寸嶋比売命(いちきしまひめのみこと)
ご利益は「海上安全・交通安全・商売繁盛・芸能上達・美容健康」など多岐に渡っていますね。特に海上交通の守護神として知られる宗像三女神を祀ることから、航海や交通の安全に関するご利益が抜群なんだそうな。

古くから倉敷は海運の要衝であり、阿智神社は総鎮守として重要な役割を果たしてきました。
所要時間は、境内をゆっくり見て回ると30~60分ほど。拝殿で参拝するだけならば、10分もあれば十分でしょう。
商業や文化の中心地として発展していく倉敷市において、阿智神社もその影響を大きく受けており、倉敷美観地区と共に多くの観光客や参拝者が訪れます。
長寿のご利益が期待できる「東参道の石段」

阿智神社には、主に東参道と西参道がありますが、東参道から拝殿へ向かうのをおすすめします。
というのは、東参道は歩くだけでありがたいご利益を期待できる場所だからですね。東参道の入口は、倉敷美観地区に接する南側にある鳥居から始まります。
この鳥居の奥には180段の石段が続き、「登るのがしんどそうだな」と思う人も多いだろうな。けれど、ご安心して下さい。実はずっと石段が続いている訳ではなく、3段階に分けて整備されているため、一息付けながら登れます。

まずは鳥居をくぐり抜け、最初の88段にチャレンジして下さいね。この石段は「米寿坂」と呼ばれている。ある程度、米寿坂を上った後は、足元に注意しながらゆっくりと振り返ってみよう。
美観地区に広がる瓦屋根の風景が見渡せます。思わずカメラのシャッターを切ってしまうほどのビュースポットなので、お見逃しなく。

米寿坂の後に待ち構えるのが61段の「還暦坂」だ。米寿坂をクリアした後では、はっきりいって楽に感じるかな。
だからといって、気を抜かずに一歩一歩踏みしめて歩いて下さいね。


そして、最期に現れるのが33段の「厄除坂」です。目線を石段の上へ向けると、随神門が見えるではないですか。この門をくぐり抜けた先に拝殿があるので、最期まで頑張ろう。
それぞれの石段につけられた名前は、人生の節目を象徴しているものばかり。そのため、健康長寿のご利益があるパワースポットといわれています。

ちなみに、還暦坂を上った後に見かける手水舎も見逃せないかな。なんと、四季折々の花が飾られているぞ。
春の季節では、サツキやツツジ、コデマリに青紅葉で彩られた春の花がいっぱい。どっさりと盛られているので、ゴージャス感を味わえます。
日本一のアケボノフジの巨木「阿知の藤」が見事なり

本殿北側では、毎年4月中旬から5月上旬に見頃を迎える「阿知の藤」を楽しめます。
この藤は、アケボノフジという藤の中でも珍しい品種。開花初期には淡紅色ですが、その後白色に変化するそうな。阿智神社のアケボノフジは、日本一の巨木というのだから凄いですね。
樹齢は300年~500年といわれており、幹周り1.5m、根元の周囲は2.2mもあるので見応えがあります。一時は枯れかけていた時期もありましたが、関係者の皆さんの努力の末、見事に復活を遂げました。


藤の見物に注意したいのは、クマバチではないだろうか。クマバチは、体と羽音が大きいので怖い印象がありますが、性格はいたって穏やかなので、刺される心配はほとんどありません。
だからといって、慌てて追い払ったり、巣に近づいたりすると刺されるかも。なので、クマバチを見かけても、刺激しないようにそっと静かに見守って下さいね。
実は、この藤は倉敷市の市花にも認定されているぞ。さらに岡山県の天然記念物にも指定されているのだから、そういう意味では、岡山県を代表する花の一つだろうな。
毎年見頃になると「藤見の会」が開催されます。期間中は、雅楽の演奏などのイベントやお茶席を設けるので、できればその時期に足を運びたい。
雅やかな調べに耳を傾けながら、美味しいお抹茶を味わい、可憐な藤を愛でるという贅沢な時間を過ごしてみてはいかがですか。
【藤の観光スポットを紹介】
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うさぎ神社と呼ばれる由来となった随神門

神社には、神域を守るために随神門が設けられていたりします。門の両脇には、弓矢や剣を携えた武人の姿の随神像が安置されているのが特徴的ですね。
随神門自体はよく見かけるので、それほど珍しくありませんが、阿智神社の随神門には面白いデザインがあるぞ。東参道の石段を上りきり、随神門を見上げると、梁の上に耳の長い可愛らしい木彫りの「うさぎ」に目がとまります。

「なぜ、うさぎがいるの?」と思う人も多いだろう。かくゆう私もそうでした。
少し調べてみると、所説は色々ありますが、うさぎは水の象徴として火事よけの信仰になっているそうな。また、その昔は北極星を神様として祀っていたそうですが、北極星が星ということで月の象徴として、うさぎが掘られたともいわれています。
個人的には、うさぎの飛び跳ねて行動する様から「運の飛躍」を連想できるかな。それに月の使いということで、ツキを呼ぶのではないだろうか。そう考えると、そのようなうさぎを掲げた随神門は、縁起が良いですね。

随神門の出入り口それぞれに、同じ動物が彫刻されているのは珍しい。
それに、よ~くうさぎの彫刻を見てみると、裏側のお顔は表側と比べて細身があるぞ。さらに口元が微妙に違っているように見えるかも。なので、じっくりと見物して細かな違いを見比べてみよう。

ちなみに、阿智神社の随神門は表側に随神像が安置され、裏側には狛犬が安置されるタイプのようだ。このような随神門は、それなりに見かけますが、帰路の付くときに随神門を通過すると気付かずにスルーする人も少なくないと思います。
阿吽の呼吸にて、神社を護ってくれるありがたい存在なので、気にかけて下さいね。
【うさぎと縁がある神社の紹介】
旅先で訪れたうさぎと縁がある神社を、下記記事で紹介します。
絵馬殿から見える倉敷の町並みとカラフルな干支の恵方盤に注目

絵馬殿は、境内西側の崖の上に建っています。
絵馬殿の中へ入ると、テーブルや長椅子が設置されているので、一息つくのに便利。休憩しながら、倉敷市街の風景を楽しんで下さいね。
倉敷は江戸時代に幕府の直轄地「天領」として発展を遂げました。今では約50万人の人々が暮らしており、岡山県内で岡山市に次いで2番目に人口が多いです。

眼下には美観地区の白壁の建物が並び、遠くには大きなビルがそびえ立つ風景が広がっている。その町並みは、賑やかな装いを醸し出しているのが分かるだろう。
静謐な阿智神社と都市部の風景はギャップがありすぎて、まるで別世界を覗き込んだ気持ちになるのは、私だけではないと思います。

また、絵馬殿の天井に注目したい。というのは、立体的な干支をあしらった恵方盤をあるからだ。カラフルに装飾された動物たちが印象的ですね。
干支の恵方盤自体は、神社でそれなりに見かけるので驚きはしませんが、立体仕様というのは珍しい。
この恵方盤は、内側に東西南北の方位を表わしていて、外側に十二支を配することで、恵方(縁起の良い方角)を知ることができます。
東方遥拝所や境内社にも足を運ぼう

境内の一角には、木々に囲まれたこじんまりとした広場があります。
その広場にて、「日本の国の象徴である太陽並びに伊勢神宮・皇居を遥拝します」と書かれた立札を発見。どうやらこの広場は、東方遥拝所というみたい。
私たちが暮らす日本は、国旗のデザインや昔から日出づる国といわれているほど、太陽を特別視しているのは周知の事実です。それに日本神話に登場する太陽神は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)であり、皇室の祖神や伊勢神宮のご祭神として特に有名ですね。
東方遥拝所にて、その特別な存在を遙拝してみてはいかがですか。大いなるパワーを感じ取れるかも知れないですよ。


また、境内には菅原神社や城山稲荷社、戎大黒火産霊社(えびすだいこくほむすひしゃ)、荒神社、倉敷護国神社といった境内社がありますので、足を運んで参拝しよう。
菅原神社では、学問の神様として知られる菅原道真公を主祭神として祀られています。学業成就や開運厄除などのご利益があるという。
個人的には、奉納されたダルマが気に入ったかな。受験生の皆さん、合格祈願で勝ちを呼び込んで下さいね。
境内社 | 主な祭神 | ご利益 |
---|---|---|
菅原神社 | 菅原道真(すがわらのみちざね) 日本武尊(やまとたけるのみこと) 大物主命(おおものぬしのみこと) 猿田彦神(さるたひこのかみ) | 学業成就 開運厄除 |
城山稲荷社 | 倉稲魂命(うかのみたまのみこと) | 五穀豊穣 商売繁盛 |
戎大黒火産霊社 | 大国主命(おおくにぬしのみこと) 事代主命(ことしろぬしのみこと) 火産霊神(ほむすひのかみ) | 商売繁盛 鎮火守護 |
荒神社 | 素戔嗚尊(すさのおのみこと) 宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ) 高龗神(たかおかみのかみ) 闇龗神(くらおかみのかみ) | 災厄消除 病気平癒 |
倉敷護國神社 | 旧倉敷町及び周辺16学区3,416柱の英霊 | 国家鎮護 武運長久 |
特別感あり、磐境に並ぶ磐座が目をひく古代庭園

境内には、石で囲まれた天津磐境(あまついわさか)があり、その中には磐座(いわくら)がそびえ立ちます。
磐境とは、古代の祭祀における神聖な場所のこと。良くあるのが、自然の岩石や石を組み合わせて、神を迎え祭るための祭場として使われている。一方、磐座は神の依代ですよ。
注連縄(しめなわ)をして、まるで鶴が羽を広げた形に見える磐座は「鶴石」というそうな。その他にも大きな亀にみえるのは「亀石」と呼ばれる磐座だ。
日本古来の磐座や磐境に、大陸文化の鶴亀石を始めとする神仙蓬莱思想や陰陽思想がミックスされているみたい。
神社庭園としては、日本最古の遺構なんだそうな。貴重な文化財なので、お見逃しなく。
阿智神社の基本情報とアクセス
住所 | 岡山県倉敷市本町12-1 |
電話番号 | 086-425-4898 |
【アクセス】
- JR倉敷駅から徒歩約15分
- JR倉敷駅からタクシーで約5分
- 山陽自動車道「倉敷IC」から車で約15分
阿智神社の駐車場

阿智神社の境内には、無料駐車場があります。(普通車 15台)
祭典や行事などで満車の場合は、美観地区内の有料駐車場を利用して下さいね。
まとめ

阿智神社は、鶴形山の山頂に鎮座し、宗像三女神を御祭神として祀る古い歴史と由緒をもつ神社です。
東参道の石段には、「厄除坂・還暦坂・米寿坂」といった特別な意味が込められているパワースポットがあったり、藤シーズンになると、薄紅色の花を咲かせる「阿知の藤」を楽しめます。
随神門のうさぎの彫刻やうさぎ柄の御朱印帳などで、うさぎのデザインを見かけるのも良いですね。
倉敷市へ観光する際には、倉敷美観地区からのアクセスが良いので、合わせて訪れるのをおすすめします。