
日本の原風景といえば、棚田が織りなす景色を思い浮かべる人が多いと思います。
そのような景色は日本全国に点在しており、1999年7月26日に農林水産省によって「日本の棚田百選」が選ばれました。香川県で唯一選ばれたのが、小豆島にある「中山千枚田(なかやませんまいだ)」です。
標高150~250mの斜面地には、階段状に大小様々な田んぼが造られており、その中には瀬戸内国際芸術祭のアート作品が調和している。また、農村歌舞伎など独自の文化を見ることができますね。
散策路を歩きながら、四季折々の美しい表情を見せる棚田の美観を近くで見物してみよう。
本記事では、古い歴史を持ち独特の景観美を誇る「中山千枚田」を紹介します。
目次
中山千枚田とは

中山千枚田は、瀬戸内海に浮かぶ小豆島のほぼ中央に位置する中山地区に広がっています。南北朝時代から江戸時代中期にかけて傾斜地を開拓して造られました。
大小様々な約800枚の田んぼには、春から夏にかけては鮮やかな緑の稲穂が見られ、秋になれば金色の稲穂がいい感じ。田んぼには、名水百選に選ばれた「湯船の湧水」が流れ込んでいるという。
映画「八日目の蝉」のロケ地となったことから、2011年7月初旬に虫送り行事が復活。「火手」と呼ばれる松明(たいまつ)を手にした人々が、棚田のあぜ道を練り歩く様が幻想的ですね。
【小豆島の観光スポット(その1)】
中山千枚田のある小豆島の観光スポットを、下記記事で紹介します。
約800枚の田んぼが広がる景観が魅力的

中山千枚田のある中山地区は、日本三大渓谷美で有名な銚子渓の麓にある山間集落です。
平地はほとんどないですが、山の急斜面に切り開かれた棚田の景色は圧巻の一言。初夏には、青空や雲の流れを映す水面が美しい。それに、青々と実る稲には生命力を感じるだろう。
湯船山の湧水を水源とする美しい石積の棚田ですね。雨が少ない島でも、この湧水のおかげで水不足になったことがないという。さらに昼夜の温度差が大きいことから、風味豊かな棚田米が作られます。
都会の喧騒を離れて、自然の中で過ごす時間というのは、私たちの心をリフレッシュしてくれるものだ。失ないつつある美しい里山の風景が、中山地区には今も残されているのです。
それでは、ダイジェストで中山千枚田の景観を紹介。





中山千枚田を見下ろせる県道252号線沿いには、こまめ食堂があります。古い精米所を改装したお店で、棚田を見渡すテラス席を完備しているぞ。
人気の看板メニューは「棚田のおにぎり定食」。棚田で収穫されたお米を使い、湯舟の名水を使って焚き上げるそうな。また、小豆島産の素麺やオリーブ牛を使ったバーガーなどが美味しそう。全て小豆島の旬な食材にこだわっているそうですよ。
残念ながら私が訪れた時は、満員御礼のため諦めることに。またの機会に訪れてリベンジするからな。待っていて下さいね。(笑)

中山地区では、2014年から棚田のオーナー制度を導入しました。
オーナーになると、田植えや稲刈りなどの体験や農村歌舞伎の鑑賞、虫送りの行事へ参加できるという。それに、収穫したお米を受け取れるのが良いですね。
棚田の保全活動の一環として、地元ならではの取り込みが行われています。
【小豆島の観光スポット(その2)】
中山千枚田のある小豆島の観光スポットを、下記記事で紹介します。
散策路を歩き千枚田を堪能

中山千枚田の散策路の入口は、いくつかありますが、とりわけ分かりやすいのは、春日神社の鳥居のとなりにある通路奥のゲートだろう。
金網で作られたゲートは通常閉じており、中へ入る時は自分で開けること。通行の際には、鳥獣被害防止のため、必ず閉めて下さいね。
散策路以外への立ち入りは禁止です。間違っても田んぼや畔には入らないように。


こちらの散策路の地図を見て分かるように、関係者以外は通行禁止な道もあります。その場所には、散策路と同じタイプのゲートがあったりするので、間違えて通過しないように気を付けよう。(ゲート前の案内板を見れば判断できる)
散策路は、急勾配なところが多く登るのが結構しんどい。運動不足の人には堪えるだろうな。一番高いところまで登ると、湯舟山蓮華寺に辿り着く。
このお寺は、標高400mの湯船山山腹にあり、境内には湯舟の名水が湧き出ています。(くわしくは後で説明)
散策路を登りながら、棚田の景色を身近に感じて下さいね。




良好な水辺環境と水田・湿地環境が保たれていることから、初夏の夜にはホタルが舞う美しい場所なんだそうな。
特に「ホタルの郷」と呼ばれる場所では、例年5月下旬から6月下旬にかけて、幻想的なホタルの光を楽しめるので、興味がある人はぜひ足を運んでみよう。
6月中旬頃がピークになることが多く、午後8時頃がおすすめの時間帯ですね。

こちらの写真を見て下さい。湧水が流れているのが良く分かるだろう。そして、坂道の表面には急勾配を表す丸い模様「Oリング」があるではないですか。
つまり、登るのがかなり辛いということ。棚田の風景を眺めながら、一歩一歩踏みしめながら登りましょう。
美しい棚田の風景に癒されながら、蓮華寺まで上りきると、充実感を味わえるので最後までレッツチャレンジ。
【小豆島の観光スポット(その3)】
中山千枚田のある小豆島の観光スポットを、下記記事で紹介します。
日本の原風景に調和する現代アート

3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭(略:瀬戸芸)では、中山千枚田とコラボするアート作品の風景が話題になります。
棚田の間を縫うように整備された県道252号線から、眼下の棚田を眺めると、周囲の風景に溶け込んでいる丸い形の人工物を目撃できる。
県道252号線沿いには、棚田へ降りる坂道があるので、歩いて近づいてみよう。

2025年に登場したのは「抱擁・小豆島」という名の作品。台湾のアーティスト「ワン・ウェンチー(王文志)」氏が手掛けました。
近付いて見ると分かるのですが、使われている素材はものすごい数の竹です。その数は、約4,000本というのだから凄すぎませんか。地元の人が島でとった竹を使っているそうですよ。
高さ15m、幅10mの巨大な竹のドームは、まるで秘密基地を連想させます。個人的には、童心に帰ったみたいでワクワクしっぱなしでした。



有料(500円)ですが、中へ入ってみると竹の隙間から差し込む柔らかな木漏れ日が気持ちいい。竹のトンネルを歩いた先には、広い竹部屋があるので、靴を脱いで青竹の上に寝そべってみませんか。
自然の中に身を置くとリフレッシュできます。とても静かな空間ですが、時折聞こえてくる小鳥のさえずりに癒されるかな。私が訪れた時は、多くの観光客が思い思いに寝そべって過ごしており、心やすらかな印象を受けました。
本作には、「世界中の人々が小豆島に辿り着けるように」と願いを込めているとのこと。名は体を表すといいますが、まるで小豆島に優しく抱擁されているように感じると思います。

ちなみに2022年の瀬戸芸では、同じような竹の秘密基地が作られていました。作品名には「人類の全てがゼロから出発することになった」という思いを込めていたという。
次回は、どのようなアート作品が登場するのか楽しみです。
江戸時代から続く伝統的な「歌舞伎舞台」

春日神社の境内には、江戸時代以降に島民によって演じられてきた歌舞伎の舞台があります。
山間地域にこれだけ立派な野外舞台場があるのは、日本文化の質の高さを物語っているのを感じ取れますね。
かつては島内の多くの地区で演じられた歌舞伎ですが、今では2地区(中山地区、肥土山地区)のみにしか現存していません。伝承内容は、上方歌舞伎の演技や演出の影響を受けていますが、地域的特色も顕著なんだそうな。
また、衣装蔵には代々受け継がれてきた約760冊の歌舞伎の台本や、衣装500点、かつら約90点などが保管されているという。中山農村歌舞伎は、肥土山農村歌舞伎と共に「小豆島農村歌舞伎」として、2024年3月に小豆郡内では初となる国の重要無形民俗文化財に指定されました。

中山地区は、戦前までは牛が通るのがやっとの細い山道が多かったそうです。そのような環境の中、人々は夏は棚田を耕し、冬は山仕事をしながら暮らしていました。
厳しい暮らしの中で、この歌舞伎が唯一の娯楽だったという。江戸時代から続く伝統的な歌舞伎は、現代にも引き継がれており、春日神社の奉納芝居として上演が続けられています。
農村歌舞伎保存会により、毎年10月に4幕が上演(午後5時頃から)されるので、興味がある人はチェックして下さいね。(参加費は無料)
千枚田にも引かれている「湯船の水」

標高400mの船山山腹には、小豆島霊場四十四番札所の湯舟山蓮華寺があるので、散策路を歩いて立ち寄ってみよう。
このお寺は、明治時代までは「高壺山千手院蓮華寺」と号していましたが、廃寺後に「湯舟山」と呼ばれています。
境内には、スギやクス、イブキビャクシンなど大樹があり自然度の高い社叢(しゃそう)となっている。そのような中で、湯舟山を水源とする清らかな湧水(湯舟の水)が流れているので、お見逃しなく。

この湯舟の水のエピソードとして、南北朝時代に南朝側の武将・佐々木信胤(ささきのぶたね)が、干ばつによる飢餓を救った霊水として仏堂を建立し、湯船の水を奉納したそうな。
そのようなエピソードとは裏腹に、昔から地元住民の飲み水や共同洗い場の用水などに用いられ、今も大切に利用されていますね。

また、この湯舟の水は中山千枚田に流れ込んでいて、雨が降らない日が続いても決して絶えなかったという。たとえ島全体が干ばつでも、中山地区は豊作なんだそうな。
その湧水の量は、1日で約400トンというのだから凄すぎます。1トンは500mlのペットボトルが約2,000本なのだから、その400倍の約800,000本となる。それが1分間に湧き出すとは、想像を絶するぞ。自然の恵みに感謝です。
それに日本名水百選に選ばれた「湯舟の水」にて、おいしいお米が育つと言われています。湯舟の水は、1985年3月に「日本の名水百選」に指定され、1992年4月に「さぬきの名水」に認定されました。
中山千枚田の基本情報とアクセス
| 住所 | 香川県小豆郡小豆島町中山 |
| 電話番号 | 0879-82-1775(小豆島観光協会) |
【アクセス】
- 土庄港から小豆島オリーブバス(約22分)に乗って、「中山春日神社前」のバス停で下車後すぐ
- 土庄港から車で約20分
- 池田港から車で約10分
中山千枚田の駐車場
中山千枚田の見物には、近くにある「池田公民館 中山分館」の駐車場を利用して下さいね。
まとめ

瀬戸内海に浮かぶ島として、2番目の大きさを誇る小豆島。3年毎に開催される瀬戸内国際芸術祭の会場の一つとして知られています。
小豆島の中央部にある中山地区では、標高150~250mの斜面地に「中山千枚田」が造られており、日本の原風景を楽しめる。
優美な曲線を描く大小様々な約800枚の田んぼは、瀬戸内国際芸術祭のアート作品が見事に調和しており、その独特の景観を満喫しよう。
高台から見下ろすだけでも素晴らしい景観を楽しめますが、せっかく観光に訪れたのであれば、ぜひ散策路を歩きながら、より間近で美しい景観に触れてみて下さいね。


