
香川県高松市に位置する庵治半島(あじはんとう)。その北端には、四国最北端の竹居岬があり、以前訪れたことがあります。
その際、気になったのが歯ART美術館ですね。以前は時間の都合上寄り道する余裕がなくてスルーしましたが、本日の旅にて訪れたいと思います。(前回の旅の様子はこちらの記事で紹介)
さらに庵治半島の南側には、ケーブルカーに乗って向かう四国霊場第八十五番札所・八栗寺がある。五剣山の中腹に建つ古刹であり、さぬき三大天狗の一人「中将坊」を祀るお堂があるというのだから興味深いですね。
また、近くにはたくさんの石の彫刻が野外展示されている「石匠の里公園」があるのも面白そう。そもそも庵治半島は、高級石材・庵治石の産地ですよ。
庵治半島から西側へ向かうと、鬼無町へ辿り着く。そこは、桃太郎に縁がある地域として有名です。一度じっくりと見て回りたいと思っていました。
本記事では、庵治半島周辺と鬼無町を自転車で旅した様子をお届けします。
目次
高松駅から旅立つ

いつものように電車輪行にて、やってきました香川県高松市。去年(2024年)は、それなりの頻度で訪れていたので、もうすでに勝手知ったるなんとやらですよ。
だからといって、まだ足を運びたい場所は山のようにあります。冒頭でも触れましたが、その一つが「歯ART美術館」ですね。
さて、その美術館へ訪れる前に、まずは高松駅から約9km先にある八栗寺へ向かいます。
ということで、輪行袋からロードバイクを取り出して、鼻歌交じりに組み立てる。輪行の頻度が多いためか、特に意識していなくても体が作業を覚えているかな。準備を終えると、瀬戸大橋通り(県道157号)を東へ向けて駆け抜けました。



庵治半島へ向かうには、瀬戸大橋通りを突っ切るのが一番手っ取り早い。片側だけでも三車線あるためか、朝の通勤時間帯にも関わらず、思った以上にスムーズに走れます。
しばらくすると、前方に平べったい山が見えてきました。それが高松市のシンボル「屋島」ですね。

個人的に瀬戸大橋通りをよく走る理由の一つが、屋島の存在だ。高松駅から東へ向けて走ると、ほぼ屋島の全景が見えてくるのがいい感じ。
私と同じような理由で、自転車にて駆け抜ける人もいるのではないだろうか。
詰田川や春日川などに架かる長い屋島大橋を渡り、屋島西地区へ入る。その後、県道150号線へ分岐しながら住宅地の路地へ入ります。

しばらくすると、屋島の山頂へ向かう屋島スカイラインへ到着。本日は、山頂へ行きませんが、あとで屋島が最も美しく見えるスポットへ行く予定ですよ。
その後、高松牟礼線(県道36号)を東へ進み牟礼地区へ入ると、八栗ケーブル(八栗登山口駅)へ向かいました。
八栗寺は、標高375mの五剣山の中腹に建っているので、ケーブルカーで訪れるのが便利ですね。

五剣山の山頂には、5つのコブ(峰)があるのが特徴的。一番右端のコブだけが低く見える。これは、江戸時代に起きた地震により崩れたそうな。
それに五剣山は、古くから山岳修験道の修行の場でした。今は、一般の入山は禁止になっていますが、中腹にある八栗寺まで続く登山道は歩いてもOKです。
八栗ケーブルへ向かう道中では、緩やかな坂道が続いたかと思うと、いきなり勾配が10%の劇坂が襲ってくることも。距離は短いですが、中々侮れません。
そしてついに、ケーブルカーが出発する八栗登山口駅へ辿り着きました。
八栗登山口駅を見て回り、ケーブルカーに乗って八栗寺へ

これから向かう八栗寺は、四国八十八ヶ所霊場第85番札所ですね。829年(天長6年)に弘法大師・空海により開基されました。八十八ヶ所では珍しい歓喜天の霊場としても知られています。
駅へ到着後、ケーブルカーが発車するまでまだ少し時間があるので、周辺を少しぶらつきました。


駅の目の前にある大きな池が「源氏池」です。名前からして、源平合戦に何やら関係がありそう。少し調べてみましたが、よく分かりません。普通のため池に見えますね。
すぐ近くに屋島の戦いの舞台となった屋島そのものがあるのだから、名前をあやかっただけなのかも。
ケーブルカーは15分毎に運行しているので、池回りを散策している時間は取れませんでしたが、晴天の下でボーと池を眺めるのも良きかな、良きかな。



駅内では食べ物や飲み物、オリジナルグッズなどを販売しているぞ。それらを見て回っていると、八栗ケーブルは2024年12月に開業60周年を迎えていたことを知りました。
東海道新幹線と同じ年に開業しているそうで、新幹線と重なるエピソードも多いそうだ。それにレトロな車両は、還暦を迎えてなお現役ですよ。老いてもますます盛んとは、いつまでも続いて欲しいですね。

おっ、四国のケーブルカーカードを紹介しているではないですか。そういえば、雲辺寺や寒霞渓、松山城、太龍寺、眉山のロープウェイを制覇しているかな。
あらためて考えてみると、四国の最高峰の石鎚山と第ニ峰の剣山へ行ったことがない。いつか機会を作って訪れたいですね。
ん、アニメ「ざつ旅」のポスターもあるぞ。私は視聴していたので知っていますが、八栗寺もざつ旅の舞台として登場しています。なので、聖地巡礼で訪れる人もいるだろうな。
そんなことを考えながら改札口を抜けて、ホームへ入るとケーブルカーへ早速乗り込みました。


五剣山の中腹にある八栗山上駅までは、約4分ほどで辿り着きます。上り始めて少しの間だけですが、車窓から八栗寺の表参道へ続く道が見えたり、屋島が見えたりするぞ。
しばらくすると、鬱蒼と生い茂る森林の中を突き抜けることに。途中で下りの車両とすれ違いましたが、結構距離が近いのには驚きました。
八栗寺へ参り、石匠の里公園から屋島の全景を望む

八栗山上駅は、裏参道の近くにあり、本堂までは少し距離があります。
麓から裏参道を使えば、車で通行できるみたい。聞くところによるとかなり細道なんだとか。自転車で通行するならばともかく、車ならば八栗登山口駅の駐車場に駐車して、ケーブルカーで来るのが良いそうですよ。

八栗山上駅から本堂へ向かうにあたり、五剣山の勇壮な姿を間近で見られるのは素晴らしい。牟礼町の町中から見かけたよりも、鋭くそびえ立つ岩肌の状態がより分かります。
表参道へ続くコースと大師堂前を通過して本堂へ向かうコースがあり、どちらを移動してもOK。早く本堂へ行きたいのであれば、大師堂前を通過する方が良いかな。


私が本堂と大師堂へ訪れると、2~3人ほどのお遍路さんたちが、お経を読んでいる場面に遭遇しました。四国八十八ヶ所巡りをしていると、良く見かける光景ですね。
本堂と大師堂にてお経を読み上げるのが、正式な巡礼作法ですよ。いつも思うのですが、あの長いお経をそらで覚えるのは、私には無理そう。
それでも日々お経に触れあっていれば、自然に覚えられるのでしょうかね。実際、四国八十八ヶ所巡りを本格的にするのであれば、覚えておいて損はないと思います。
その後、天狗を祀る「中将坊堂」や日本最古ともいわれる歓喜天(かんきてん)が祀る「聖天堂」などへ参拝し、多宝塔や鐘楼堂など色々見て回りました。

また、展望台からは高松市街や屋島の風景を楽しめます。
高松市は、四国の交通の要所として知られており、JR高松駅を中心に、碁盤の目のように整備されました。高い場所から一望すると、その発達具合がよく分かりますね。
四国へ移住するならば、高松市か愛媛県の松山市が暮らしやすいと思うかな。個人的には松山市を推しますが、交通のアクセスを考えると高松市に軍配が上がるので悩む人も多いのではないでしょうかね。
その後、再びケーブルカーに乗って下山すると、八栗登山口駅から南へ約450mほど離れた場所にある「石匠の里公園」へ向かいました。

石匠の里公園は、芝生広場に大きなアスレチック遊具があり、芝の上をソリで滑って遊べるので子供たちに人気が高いだろうな。
園内には遊具だけでなく、大小様々な石の彫刻がたくさん野外展示されているぞ。そのような公園のため、子供から大人まで楽しめる市民の憩いの場ですね。



特に園内にある石の民俗資料館が面白い。庵治半島は古くから庵治石の産地ということもあり、館内では庵治石を含む石の歴史や文化を学べます。
「石工(いしく)」と呼ばれる職人たちをマネキン人形を使って、庵治石の産出現場と作業風景を再現。人形を通して、伝わってくる情熱に目を奪われました。
また、 園内にある体験学習広場は屋島が一番美しくみえる場所なんだそうな。ということで、実際に足を運んでみると・・・

目の前に堂々と横たわる屋島の全景に拍手喝采を贈りたい。朝方に屋島大橋で屋島のほぼ全景を見ましたが、それよりもインパクトがあるぞ。
そしてなにより驚くのは、屋島の全景を1枚の写真に収められること。このような場所なんて、中々見つけられないだろうな。この景観が香川新五十景に選ばれたのも納得です。
その後に屋島撮影ショーが始まるのは私らしい。(笑)
さて、写真を撮り続けて満足したので、よいよ本日の一番のお目当てである「歯ART博物館」へ向けてレッツゴー。
八栗寺と石匠の里公園については、下記関連記事でくわしく紹介します。
庵治半島の東海岸を疾走し、歯ART美術館へ向かう

石匠の里公園を後にすると、公園前の道路を道なりに南下します。
その道中では、大小様々なため池を発見。香川県へ訪れると、ため池の多さに驚く人も多いだろうな。その数は、なんと12,000個以上というのだから凄いでしょ。
まんのう町には、日本最大のため池として知られる「満濃池」があり、弘法大師が改修工事を行なったことでも有名(満濃池については、こちらの記事で紹介)。小規模なため池は、約6,600個もあるそうで、これだけあると至るどころで目撃する機会が多いですね。

御山公園や二ツ池親水公園前を通り抜けたり、住宅街へ入りながら東へ向けて突き進む。

石匠の里公園から約3kmほど走っただろうか、いつの間にか再び高松牟礼線(県道36号)へ合流を果たしており、そのまま道なりに庵治半島の東海岸を疾走。
アップダウンが続く半島ですが、南側はまだ勾配はキツクないので、余裕で坂道を駆け上ります。

しばらくすると、面白い看板を見つけてしまい、思わずブレーキをかけて自転車を停止させることに。
看板には「うどん」の文字が逆さに書いてある。住宅が建ち並ぶ方向に矢印が指し示しているので、どうやら配置的に間違ってはいないみたいだな。
つまり看板を間違って逆に設置したのではなく、これは確信犯だということ。そうなると、がぜん興味が湧いてくるではないですか。

ということで、案内に従い訪れると、「by age 18(バイエイジエイティーン)」という名前のうどん屋がありました。お洒落な店名ですね。
丁度お昼時なこともあり、店内へ入ると「山の幸の天ぷら釜かけうどん」を注文。

窓越しに美しい志度湾を眺めながら、うどんをツルツルと食べる。麺のコシが強く、モチモチしていて美味しい。天ぷらは、衣が薄くサクサクしていてこちらも美味しいぞ。
実は、このお店で提供する料理は、グルテンフリーなんだそうな。つまり、うどんにも小麦粉を使っていないということ。小麦アレルギーの人も安心して食べられるだろう。
普通のうどんと言われても信じられるほどだ。香川といえば、讃岐うどんに注目が集まりますが、このようなうどんがあったとは驚きです。

食後は、お店のすぐそばにある浜辺にて、潮風を感じながら志度湾を眺めて過ごす。
そして、しばらくして高松牟礼線へ戻ると、自転車を道なりに北上させました。



先ほどのうどん屋から約3.5kmほど進むと、道が二手に分かれており、右手側の下り坂の前には白いゲートを発見。
どうやらここが歯ART美術館の入口ですね。歯ART美術館は、歯科技工の会社「和田精密歯研株式会社」が設立しました。歯に関する展示品やクラシックカメラ、入れ歯の研究のために使われた仮面が展示されています。
真面目な研究成果だけでなく、アートの部分にも注目しよう。駐車場から予想以上に面白い演出があり、とても楽しめました。歯ART美術館については、下記関連記事でくわしく紹介します。
桃太郎のふるさと鬼無町へ向かう道中にて

歯ART美術館をあとにして、来た道を引き返します。しばらくすると、庵治半島を抜けて讃岐牟礼駅の近くへ辿り着きました。
さて、次に向かうのは桃太郎とご縁がある鬼無町ですね。鬼無町は高松駅の西側にあるので、再度高松牟礼線を経て瀬戸大橋通りを駆け抜けるのが、時間的には一番早いかな。
しかし、往路と復路は違うコースを走るのが、サイクリストのたしなみではないだろうか。往復で異なる風景や自然を体験できるので、そのようなコース取りをする人は多いと思います。

牟礼駅の南側に位置する讃岐街道を道なりに南西へ進んでいると、羽間上池が見えてきました。
水面に隙間なく並んだ太陽光パネルは壮観の一言。たしか、太陽光パネルは温度が上がると発電効率が下がるはずだったかな。
このため池を利用する方法であれば、パネルは水で冷やされるので合理的。気になったので、後日少し調べてみると、羽間上池と羽間中池に建設した太陽光発電により、2,190キロワットの出力が見込まれるそうですよ。
ちなみに、年間発電電力量が350万キロワットもあれば、一般家庭約1,100世帯の使用量にあたるそうな。
羽間上池と羽間中池の様子を写真に収めると、先へ進みます。


高松志度線を道なりに西へ進み木太地区へ入ると、中徳三谷高松線(県道43号)を北西に走り、御坊川に架かる橋を渡る。そして、観光通り(県道155号)へ合流しました。
高松市街へ入ると、鬼無町まではもう少し。10kmも離れていないでしょう。10kmといえば、ロードバイクならば大した距離ではないけれど、ロードバイクへ乗らない人からすると、結構長い距離ですね。
ロードバイクに乗り続けていると、距離感覚がバグるのは良くあることなので、乗らない人との会話がかみ合わなかったりするので気を付けよう。
高層ビルが立ち並ぶ市街地を抜けると、次第に都市の風景から緑豊かな里山の風景が広がってきます。

鬼無町の地名からピンときた人もいるのではないだろうか。その名の通り「鬼が無い」ということ。
これには意味があって、桃太郎の鬼退治により、鬼がいなくなった町なんだそうな。

鬼無町には、桃太郎物語に登場する柴山や大きな桃が流れてきた大津川(ほんづがわ)がある。また、桃太郎やおじいさん、おばあさん、家来の犬・猿・雉のお墓もあるという。
それに加え、鬼ヶ島の戦いの後で、仕返しに来た鬼たちを返り討ちにして、その亡骸を弔った「鬼ヶ塚」があります。こんなに多くの桃太郎のゆかりの場所があるのは、実に興味深い。
鬼無町の桃太郎スポットについては、下記関連記事でくわしく紹介します。その後、鬼無町を自転車で巡り終えると、高松駅へ戻り帰路につきました。
まとめ

本日は、良く晴れた旅日和な1日でしたね。庵治半島の東海岸を巡り、歯ART美術館を見学して、歯の大切さをより深く学びました。
それに八栗寺では、自然と信仰が一体となった、特別な空気感を感じてやまなかったです。特に五剣山の鋭くそびえる立つ岩肌や、コブのような峰の景観がいい感じ。さらに眼下に広がる高松市街も素晴らしかったかな。
また、鬼無町では、桃太郎神社や鬼ヶ塚など桃太郎ゆかりの地を巡り、御伽噺の世界に触れた次第です。桃太郎や家来たちのお墓があるので、興味がある人はぜひ足を運んで下さいね。
さて、今度香川県へ行く機会があれば、絶景ドライブスポットとして知られる五色台スカイラインを自転車で駆け上ろうかしら。どのような景色が広がるのか楽しみです。


