
激動の戦国時代に暗躍し、歴史の裏舞台を駆け抜けた存在といえば「忍者」を思い浮かべるだろう。
今でもその輝きは失わず、多くの映画やアニメ、漫画などに登場しています。
そんな忍者の歴史を学ぶと多くの流派があり、その中でも知名度抜群なのは「甲賀(こうか)」と「伊賀(いが)」ですね。
滋賀県甲賀市には、唯一現存しているリアル忍者が暮らしていた住宅が残っています。
その住宅は「甲賀流忍術屋敷」として一般公開されており、実際に使用されていた忍者特有のカラクリを体験できる。また、手裏剣や水蜘蛛などお馴染みの忍者道具も展示されているぞ。
本記事では、甲賀五十三家の筆頭格・望月氏の住居であった「甲賀流忍術屋敷」の見どころをカラクリ中心に紹介します。
甲賀流忍術屋敷とはどんなところ

甲賀流忍術屋敷は、江戸時代の元禄年間(1688~1704年)に建てられた現存する本物の忍者屋敷です。忍者の歴史を学んだり、実際に使われていた忍者の道具や書物を展示しています。
忍者ファンであれば、お馴染みの手裏剣や撒菱(まきびし)などを始め貴重な道具の数々を見ると、なぜかワクワクしてしまうものだ。
忍者についてそれほどくわしくない人でも「どんでん返し(回転戸)」「落とし穴」「隠し梯子」という仕掛け(カラクリ)は、聞いたことがあるだろう。

屋敷内には、外敵に備えてそのようなカラクリが巧妙に隠されており、実際に見て触れて体験することができるので面白いですよ。
2019年には、日本遺産「忍びの里伊賀・甲賀-リアル忍者を求めて-」の構成文化財の1つに選ばれました。
【周辺の見どころ】
甲賀流忍術屋敷周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
甲賀五十三家の筆頭格である望月氏とは

甲賀流忍術屋敷の主として知られる望月氏。
平安時代には「平将門の乱」で功績をあげ、戦国時代になると「鈎(まがり)の陣」など歴史の裏舞台で様々な活躍をした一族です。
特に1487年に起こった「鈎の陣」では、室町幕府の命に背く佐々木六角氏を助ける戦いであり、第9代将軍・足利義尚の陣所に夜襲をかけて甲賀忍者の名を全国に知らしめました。
一族の著名人には、望月出雲守・望月吉棟・望月兵太夫・望月与右衛門がおり、今も残る甲賀流忍術屋敷は、望月出雲守の旧居だといわれています。
忍術屋敷には様々なカラクリが満載

屋敷の外観からは、普通の平屋にしか見えません。しかし、中へ入ると実際は3階建てなのだから驚きます。
忍者が暮らす屋敷の主な役割は、外敵の迎撃とピンチになった時にスムーズに逃げられること。この屋敷は、この2つを条件を十分に満たしている。見学しているとそのことが良く分かりますね。
そこで、主なカラクリを以下にまとめました。
- どんでん返し
- 落とし穴
- しのび押入れ
- しのび窓
- 厚い壁のような引き戸
- 隠し梯子
入口前のふすまを開けて中へ入り受付を済ますと、忍者の歴史や甲賀望月氏の歴史の動画を見て忍者の知識をインプットした次第です。
屋敷内は自由に見学ができるので、どの部屋から見てもOK。それでは、様々なカラクリについて紹介します。
最凶の罠「どんでん返し」と「落とし穴の」のコンボ

受付した部屋には、こちらの「どんでん返し(回転戸)」と呼ばれる扉があります。
どんでん返しとは、壁に背中を付けて、少し押すとクルリと回転する扉ですね。忍者が登場する時代劇などで見た人も多いのではないだろうか。
残念ながら安全上のため今は固定されているようで、体験できませんでした。(泣)

主人の間の押し入れにも「どんでん返し」があるので、こちらは利用できますが少し小さいかな。(押し入れの中にあるのだから当たり前か)
この扉の面白いところは半回転しかできない構造ということ。忍者がこの扉を使って逃げた時に、それを見ていた追手は、同じ側を通ろうとすると、半回転しかしないので回らないとなる。
う~む、うまく人間の心理を突いているぞ。最初に考えた人の発想力が凄いですね。
ちょっとした時間かせぎにしかなりませんが、そのわずかな時間があれば、忍者の驚異的な身体能力により十分逃走距離を稼げるでしょう。

続いて紹介するのが、罠としてポピュラーな「落とし穴」。
暗くて見えにくい場所の隅に仕掛けられており、事前に仕掛けを知っていなければ面白いように引っかかるだろう。
深さは約3mもあり、底にいくほど広く掘られているため、あがるのが困難なんだとか。それに、どんでん返しとのコラボが凶悪すぎます。
何も知らない追手が慌てて追いかけると、どんでん返しを通過した時に落とし穴に落ちるという寸法だ。

今は穴の上に強化ガラスが敷かれているため、穴に落ちないようになっています。実際、ガラスの上を歩きましたが、強化ガラスと分かっていても、ちょっと怖かったですね。
主人の間には隠されたカラクリがいっぱい

主人の間へ向かうと一見、普通の居間にしか見えません。しかし、至るどころにカラクリがあるので探してみよう。

とある押入れを開けてみると、何と赤色の忍び装束を身にまとう忍者とご対面。いきなりの登場でビックリだ。
床は取り外せる構造となっており、そこから抜け出して分家まで通じる地下通路が掘られていたそうですよ。(土のため時代とともに埋まっている)
他の押入れを開けてみると、先ほど紹介した「どんでん返し」があり、これを使って廊下側へ逃げれます。

おっ、これは固定式の窓だ。一見すると普通の窓にしか見えませんが、ここは忍術屋敷。もちろんこの窓にも仕掛けを施している。
その仕掛けとは、金網戸と壁の間に紙を差し込んでゆっくり上げると、「こころ」と呼ばれる半円形の木製の鍵が開き、軽くスライドさせて開きます。
この窓に触れるのはNGなので、気を付けて下さい。私はスタッフが実演しているタイミングで訪れたのでラッキーだったかな。
このように、とっさに逃げるための仕組みが色々あるのが面白いですね。
ちなみに、この窓を閉じると震動で「こころ」が落ちて鍵がかかる仕組みなので、逃げた形跡を残しません。う~む、よく考えられているな~。


また、こちらの長押(なげし)に注目しよう。実はこの長押と鴨居の間にある空間を利用して、護身用の槍や刀を隠している。
普通こんなところに武器があるなんて思わないので、追手の油断を誘えるかも。

こちらの引き戸は、どこにでもありそうな物に見えるけど、ここは忍術屋敷。見た目に騙されないで。
というのは厚さが3cm、重さが約50kgもあるのだからその頑丈さは折り紙付きです。檜の1枚板を3枚で作っており、刀や槍を通さないほどの防御力を誇る。
知らずに攻撃すると、ピクリとしないので追手が驚くに違いない。
腕に良い忍者にとっては、相手が驚いているわずかな時間さえあれば、逃げるなんてお茶の子さいさいですね。
隠し梯子を上った先に忍者がいるぞ

屋敷を外から見ても平屋にしか見えず、屋敷内のどこを探しても階段が見当たらないので、本当に2階があるのか半信半疑になります。
そんな状態で押入れを開けていると、2階へ上がる階段を見つけました。
まさかこんな所に2階へ通じる梯子があるなんて、普通は考えないものだ。そういう意味では、どんでん返しと同じく人の心理をうまくついています。
梯子を上った後で、引き上げてしまえば、たとえ追手が押入れを開けても違和感に気が付かないだろう。完璧な隠蔽に愕然となりました。

梯子を上った先は、中二階の部屋に続く。この部屋は天井が低すぎて立って歩けない。低いところでは1.1mしかなく、高いところでも1.5mしかありません。
これは、追手が刀を簡単に振り回せないようにするため、あえて低くしているぞ。
「それだと、自分も使えないのでは?」と思いませんか。忍者が使う刀の刀身は短いので大丈夫なんだとか。

それにここには見張り窓があり、1階の状況を監視することができます。

ということで、近付いてみるとなんと、窓近くに張り付く黒い忍者がいるではないですか。なるほど、面白い演出です。

ちなみに1階からは、このように忍者が見えます。
この見張り窓の格子の1本は外れるようになっており、これを外して1階へ逃げる仕組みですよ。本当に色々と考え抜かれたカラクリに拍手喝采を贈りたい。

3階は屋根裏部屋となっており、茅葺の屋根が良い感じ。縄梯子を使うと、直接地上に降りれるのがGood。
それにこの場所は、中二階の部屋と比べて天井が高いので、楽な姿勢で密会するのに適していると思います。
1つ1つのカラクリだけですと、見破る人も出てくるかも知れませんが、いくつも組み合わせることで、逃走経路が無限にあるように見えるものですね。
どれもこれも人の心理の裏を突くものばかりで、忍者の考え方に感心しました。
【歴史ある住宅の紹介】
旅先で訪れた甲賀流忍術屋敷のような歴史ある住宅を、下記記事で紹介します。
忍者が使ったユニークな道具の数々

屋敷内には、実際に甲賀忍者が使用していた様々な道具や書物を保存・展示しています。
ポピュラーな手裏剣を始め、杖に見せかけて刀を隠している「仕込み杖」や、逃げる途中で追手に怪我を負わせる武器「撒菱(まきびし)」、湿地などを歩くのに使用する「水蜘蛛」などが展示しているので、じっくりと見学していこう。


また、忍者の歴史や猿飛佐助や石川五右衛門など有名どこの忍者について説明したパネル資料も展示しているので、忍者についてくわしくない人でも大丈夫。
それらの資料を読めば、いっぱしの忍者博士になれるかも知れないですよ。

江戸時代になると、忍者の役目は諜報活動がメインになりました。甲賀忍者は主に山伏や薬の行商人として、全国を見て回っていたそうな。
そのため、屋敷内には多くの薬を作る道具を展示しています。

こちらはの道具は「百味箪笥(ひゃくみたんす)」。名前の通り、引き出しが100個ある。多くの生薬を引き出しに入れて、必要に応じて薬を調合しながら使用しました。
展示している書物の中には、甲賀望月氏本家に伝わる秘伝の巻物もあり、甲賀流忍術を使う忍者の基本理念が記載されています。
その他にも武器のくわしい使用方法や忍術を行う時の心構えなどを記した書物があり、忍者ファンでなくてもワクワクするだろう。
【博物館の紹介(その1)】
旅先で訪れた様々な博物館を、下記記事で紹介します。
忍者直伝「健保茶」をどうぞ

忍者は戦や情報収集などの任務を遂行するために、誰よりも健康維持に努めてきました。
怪我や病気の治療だけでなく、薬を使って敵を攻撃することもあったそうです。つまり、薬に精通したプロフェッショナルだった訳ですね。
そんな甲賀忍者が愛飲していた秘伝の「健保茶」という薬草茶があり、実際に試飲できるのはありがたい。
健保茶は、ハトムギや人参など7種類の薬草をブレンドしており、さらに飲みやすくするため2種類の茶葉を混ぜて完成させました。
血流改善・内臓強化・美肌効果を期待できるといいます。

この健保茶は、お土産売り場で購入できるので試飲して気に入ったならば購入してみてはいかがですか。
通信販売にも対応しており、多くのリピータがいるほど好評のようです。

私も試飲してみましたが、口当たりもよく、グイグイといくらでも飲めました。
健保茶を頂きながら、忍者や甲賀望月氏の歴史の動画を見たり、四季を通じて自然を楽しめる中庭をくつろぎながら眺めて下さいね。
【博物館の紹介(その2)】
旅先で訪れた様々な博物館を、下記記事で紹介します。
忍者のように手裏剣体験ができる

中庭にある手裏剣道場では、別途有料となりますが「手裏剣投げ」を体験できます。
投げる手裏剣は鉄製なので重くて危険なので、取り扱いに注意しよう。
投げるポイントは、的の正面に立ち、手裏剣の端を親指と人差し指で持つこと。そして、手首を曲げてそのまま肘をのばして、腕を耳の横まであげ、的に目掛けてスナップをきかせながら振り下ろして下さい。
それでも的に命中させるのは慣れていなければ中々難しいので、初めての方は、スタッフにレクチャーを受けるのをおすすめします。
お土産に忍者グッズはいかがかしら

屋敷内には、豊富な忍者グッズを販売しているショップが併設されています。
模擬刀を始め、忍者Tシャツやバンダナ、てぬぐい、ステッカー、キーホルダーなどを販売しているぞ。
ここでしか買えないオリジナルのお土産もありますので、ぜひ立ち寄って見て下さいね。


甲賀流忍術屋敷の基本情報とアクセス
住所 | 滋賀県甲賀市甲南町竜法師2331 |
電話番号 | 0748-86-2179 |
営業時間 | 【平 日】10:00~17:00(受付の終了は16:30) 【土日祝】 9:30~17:00(受付の終了は16:30) |
休館日 | 毎週水曜日 第4木曜日 年末年始(12/27~1/3) 冬期休館 |
入館料 | 大人(中学生以上)650円(600円) 小人(3歳以上)450円(400円) ※30名以上で団体割引きあり、( )内の金額は割引き後の料金 |
【アクセス】
- JR甲南駅から徒歩約25分
- JR甲南駅からタクシーで約5分
- 新名神高速道路「甲南IC」から車で約3分
甲賀流忍術屋敷の駐車場

甲賀流忍術屋敷には、2つの無料駐車場があります。(普通車 約50台)
第1駐車場は屋敷前にあり、徒歩約2分ほど離れたところに第2駐車場があります。
まとめ

甲賀流忍術屋敷では、謎に包まれた忍者の歴史を学べます。
激動の戦国時代に暗躍した彼らは、まさに影の主役として歴史を動かした存在でした。そんな彼らは、どことなく惹かれてしまうものですね。
彼らは魔法のようにみえる忍術を駆使しますが、どれも厳しい修行で取得した綿密に計算された技術ですよ。決して魔法使いではなく、リアルな人間として歴史に名を残しています。
唯一現存しているリアル忍者が暮らした甲賀流忍術屋敷へ足を運び、その空気感を肌で感じて下さいね。
また、甲賀市には甲賀流忍術屋敷以外にも「甲賀の里 忍者村」や「甲賀流リアル忍者館」など忍者について学んだり体験できるところが多いので、合わせて訪れてはいかがですか。