
兵庫県姫路市の最奥地にて、不思議な住人たちが暮らす小さな里山・安富町関地区があります。
関地区一帯には、「奥播磨かかしの里」があり、その名前の通りに人間そっくりな案山子たちを、至るどころで見かけるのが面白い。その姿を求め、観光客や写真愛好家が足を運びます。
そもそも案山子とは、作物を荒らす鳥獣から田畑を守るために立てる、竹やわらなどで作った人形のこと。そのため、見かける機会が多い。けれど、約130体の案山子たちが、一堂にそろっているのは珍しいのではないだろうか。
ぜひ日本の原風景が広がる里山にて、哀愁を誘う案山子たちが繰り広げる日常ドラマを感じ取って下さいね。
本記事では、案山子たちがひっそりと待つ「奥播磨かかしの里」を紹介します。
奥播磨かかしの里とは

世界遺産の国宝・姫路城で有名な姫路市。姫路市街から北上して、山間を通る東河内安富線(県道430号)を北へ向かった先には、安富町関地区があります。
奥播磨かかしの里は、この関地区の集落一帯にあり、過疎化や高齢化が進んだ集落の村おこしとして誕生しました。
集落を歩いていると、懐かしい日本の故郷の風景に心が癒されだろう。そして、そのような風景に佇む生き生きとした表情の案山子たち。案山子たちによる、昔ながらの暮らしを再現しています。
【周辺の見どころ】
奥播磨かかしの里周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
日本の原風景に溶け込む人間とそっくりな案山子たち

集落内のメインストリート沿い(県道430号線)を歩いていると、直ぐに多くの案山子たちを見かけます。
遠くから見るとまるで本当に住人のようで、思わず「こんにちは」と声をかけたくなるほどだ。その出で立ちから害鳥除けの案山子というより、手作りの人形といった方がしっくりとくるかな。
案内板によると、これらの案山子は集落出身の岡上正人さんが作られたそうですね。徳島県西部の祖谷の山里で見かけた人間そっくりの案山子に魅せられて、たくさんの「ふるさとかかし」を制作したといいます。
また、2019年時点で関地区の住民は15人であり、それに7割が80代後半以上という。彼らと共に暮らしている約130体の案山子たちが織りなす日常を楽しみましょう。




何気なく県道430号線沿いを歩いていると、本当の住人のように周囲に溶け込む案山子たち。そんな案山子たちから話し声が聞こえてきそう。
もちろん県道430号線沿いだけでなく、至るどころに案山子たちがいるぞ。気を付けて欲しいのは、住民の生活圏である敷地や田畑などへは勝手に入り込まないように。
それに住民はスタッフでもないので、撮影行為は慎むこと。マナーを守って楽しく案山子たちの日常を撮影しよう。
集落にある案山子たちは、昔懐かしい故郷をお思い出させるものばかり。よく見かけるアニメキャラクターの案山子はありませんが、周囲のイメージにピッタリなので気にする人はいないだろうな。
ぜひ豊かで愛らしい表情に注目して下さいね。案山子と風景の一体化がいい感じで進んでいます。

おっ、不審人物発見。近づいてみると案山子ではないですか。ビックリしたなも~。
これがリアルならば通報ですよ。まっ、たんに建付けが悪くて確認しているのかも知れませんが・・・

バス停にも案山子がいるぞ。ちなみにこのバス停は本物。神姫バスさんもご協力しているみたい。グッジョブです。
スカスカのダイヤルなので、バスで訪れる場合は時間に注意して下さいね。

こちらは、かかし農場。屋根付きベンチがあるので休憩するのに持って来いですよ。
ちなみに、散策中に天気が崩れてしまい、少しばかり雨が降ったため、雨宿りに利用したのは今では良い思い出です。

掲示板によれば、奥播磨かかしの里とアメリカの「カンブリア案山子」は、友好的な関係を築いているようです。
ワインの町で知られるカンブリアでは、毎年10月にカンブリア案山子フェスティバルが開催されており、オズの魔法使いやアリスの不思議な国など様々なテーマを持った独創的な案山子たちと出会えます。
奥播磨かかしの里の案山子たちも紹介されたそうで、国際交流のお勤めを果たしているのは、何気に嬉しいですね。
案山子たちが暮らす家「ふるさとかかしのギャラリー」

奥播磨かかしの里には、案山子の家族が暮らす民家があります。
それが「ふるさとかかしのギャラリー」の展示場ですね。案内板を見て赤い屋根の古民家へ近づいていると、たくさんの住人たち(案山子)が現れます。
畑仕事に精を出していたり、草の上で座って楽しそうにお喋りをしていたり、家の外壁を修理しているなど。どこにでも見られる光景に思わずにっこり。
ありふれた日常の風景というのは、ホッと心を和ませてくれます。

家の縁側では、住人たちが世間話に花を咲かせているぞ。何を話しているのか、耳を傾けたくなる。
現代ではSNSなどが発達しているため、時間や場所にとらわれずにコミュニケーションを図れますが、昔ながらの井戸端会議というのは、何だか懐かく感じるかな。



窓越しに家の中を覗くと、のんびりとくつろぐ住民たちの姿が見て取れます。近くで見ようと、家の中へ入らないように気を付けて。(立入禁止です。)
縁側には、寄せ書き帳もあるので、旅の思い出に一筆どうぞ。
たまたま私が訪れたの時期が、ひな祭りの開催期間中だったため、ひな祭り仕様になっていました。華やかな雰囲気が実に良いですね。
「かかしの教室」の賑わいが面白い

奥播磨かかしの里では、様々な場所で日常ドラマを繰り広げている案山子を見物できます。そのため、自分の感性で様々なストーリ性のある写真を撮影できるのが楽しいですね。
子供たちの日常といえば、学校ではないだろうか。もちろん集落内には、案山子の学校があるのでお見逃しなく。
「ふるさとかかしのギャラリー」から2~3分ほど県道430号線を歩くと、「奥播磨小学校 かかしの里分校」と書かれた看板を掲げる建物が見えてくる。
この学校、以前は集落の倉庫だったそうな。窓越しから教室内を覗いてみよう。


どうやら今日は、父母同伴の授業参加の日。授業そっちのけで、自由奔放な子どもたちの姿が面白い。
先生が黒板に書いた計算問題を早々に解いて、親に良いところをアピールしたり、親の視線を気にして後ろを振り向いていたり、マイペースに寝ている子供もいるぞ。
そして、ほほ笑みながら見守る保護者たちの温かさを感じます。なかには、バケツを持って立たされる子供がいる。う~む、これは恥ずかしい。
子供たち一人ひとりの表情や格好がとても輝いて見えるかな。このような賑やかな授業参観というのは、見ていて楽しいですね。
期間限定で様々なイベントを開催

奥播磨かかしの里では、春になれば特設会場にて、案山子たちの華やかな「奥播磨かかしの里のひなまつり」が期間限定で開催されます。
開催期間は、毎年2月16日から4月7日までの約二ヶ月間。メイン会場は「ふれあいの館」となる。華やかな衣装をまとった案山子のお雛様をぜひ見学しよう。
また、毎年11月には奥播磨かかしの里で一番のイベントである「ふるさとかかしサミット」が開催されます。
全国各地で案山子を使った町おこしに取り組む団体が一堂に会し、各団体が持ち寄った案山子を展示する注目のイベントです。
奥播磨かかしの里の基本情報とアクセス
住所 | 兵庫県姫路市安富町関地区 |
電話番号 | 0790-66-3505(グリーンステーション鹿ヶ壺) |
定休日 | グリーンステーション鹿ヶ壺の定休日は火曜日 |
【アクセス】
- 中国自動車道「山崎IC」から車で約30分
奥播磨かかしの里の駐車場
奥播磨かかしの里の入口前や、グリーンステーション鹿ヶ壺などにある無料駐車場を利用しましょう。
尚、グリーンステーション鹿ヶ壺は、火曜日は定休日のため駐車できません。迷惑行為になるため、周辺の空き地へは、路上駐車しないように気を付けて下さいね。
まとめ

奥播磨かかしの里では、1年を通して案山子たちの日常ドラマを楽しめます。
安富町は決してアクセスのよい場所とはいえませんが、山や川、田園など自然が満載であり、ノスタルジーを感じてやみません。
ここに限らず日本全国には、多くの限界集落がありますが、人間そっくりな案山子たちが繰り広げる日常ドラマを見ていると、「この集落を元気にしたい」という思いがヒシヒシと伝わってきました。
小さな里山で暮らす案山子たちの表情や仕草、動作を眺めながら、ただ感じたまま純粋に楽しみましょう。