「てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ」の童謡で日本全国に広がった「てるてる坊主」。
絶対に晴れて欲しい時のおまじないとして、現代でもご家庭で作られています。
効果はさておき、子供にとっては、雨の日の慣例イベントとして、てるてる坊主を作る機会が多いでしょう。
地域によって「てれてれ坊主」「てれれ坊主」「てるてる法師」など様々な呼び名がある。
私たちの生活に根付いた風習ですが、実は日本独自なものではありません。くわしくは本文中に説明しますね。
本記事では、てるてる坊主の由来や怖い話、やってはいけない作法について紹介します。
てるてる坊主の由来
「明日から旅行へ出かけるのだけど、天気が心配だな」というのは、誰もが一度は思ったことがあるでしょう。
特に天気予報では、曇りまたは雨となっていれば、前日に天へ祈りを捧げて晴れにして欲しいと願います。そんな時にてるてる坊主を作ることが多いですね。
そんな「てるてる坊主」ですが、その由来には様々な諸説がある。そこで、主な由来を以下にまとめました。
最も有力な由来が、中国の伝説上の女性「掃晴娘(そうせいじよう)」の話です。
とある村に掃晴娘という美しい少女が住んでいました。その少女は、村の人々が連日の大雨で困っている際、龍神に「雨を止めてください」と祈りを捧げます。
すると、天から「龍神の妃になれば雨を止めてやろう」という声が聞こえてきたので、その言葉に従い、天に昇りました。こうして、青空を取り戻した村は、救われたという話が伝わっています。
この伝説から雨が続く日には、掃晴娘を象った人形を門に吊るし、晴天を願う風習が産まれました。
この中国の風習が日本に伝来し、日本風にアレンジされたものが「てるてる坊主」という説です。
私はこの話を知って、アニメ映画の「天気の子」を連想しましたね。同じように思う方も多いのではないでしょうか。
次の由来は、お坊さんの言い伝えですよ。
長雨が続くのに困っていた殿様が、お経を唱えると必ず晴れるというお坊さんに依頼したことから話が始ります。
お坊さんは、殿様の依頼を受けて、熱心にお経を唱えるのですが、一向に雨が止まず、これに腹を立てた殿様がお坊さんの首をはねました。
昔は今と違って、人の命がとても軽いものだったので、殿様を怒らすと即座に死刑になることがある。本当に怖い時代だったのです。
そして、はねられたお坊さんの首を白い布で吊るすと、翌日には晴天が広がったと伝わっています。
う~む、どこからお坊さんの首を白い布で吊るすという発想がでてきたのか、個人的には気になるかな。
最期の由来として、日本古来の妖怪「日和坊(ひよりぼう)」「日和坊主」が関係する話です。
常州(常陸国)の山中深くに暮らしている日和坊は、雨が降れば姿を隠して、晴れた日に姿を現す妖怪だ。
江戸時代に女性や子供たちが「てるてる坊主」というものを紙で作り、晴れるのをお願いしているのは、この日和坊を祀っているのではないだろうかという説があります。
このような由来がありますが、個人的には掃晴娘の伝説に一票を投じたい。どのような由来にしても、今も昔も変わりなく天気というのは、人々が生活する上で重要度の高い関心事ですね。
本当は怖い「てるてる坊主」の童謡
てるてる坊主の童謡は、「あした天気にしておくれ」の歌詞で有名ですね。
一度聴いたら覚えやすい歌詞なので、口ずさんだ人も多いはず。この童謡に3番まで歌詞があるのをご存じですか。
実は3番は、1番と2番の明るい雰囲気が一変し、ホラーな展開になる。以下に歌詞を紹介します。
- てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ いつかの夢の空のよに 晴れたら金の鈴あげよ
- てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ わたしの願いを聞いたなら あまいお酒をたんと飲ましょ
- てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ それでも曇って泣いてたら そなたの首をちょん切るぞ
う~む、「そなたの首をちょん切るぞ」のフレーズ。これは怖すぎますよ。子供たちが歌うのに適しているかどうかというのは、現代の価値観からいえばアウトかな。
きっと、先ほど紹介したお坊さんの由来が歌詞に反映されているのでしょう。また、子供は虫を平気で殺してしまう子供特有の残酷な一面性が歌詞に反映されたのかも。
だからこそ1番と2番はよく知られているのに、3番を知っている人が少ないのかも知れませんね。
1921年(大正10年)に童謡「てるてる坊主の歌」(作詞:浅原鏡村/作曲:中山晋平)が発表されました。
この童謡は、1933年(昭和8年)に小学校の国語の教科書に掲載された「アシタ ハ エンソク」という話に描写があります。
てるてる坊主の顔を描いてはいけない
てるてる坊主を作る時に、顔を描いていませんか。実はこれ間違った作法ですよ。
江戸時代の風俗習慣を記した「嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)」によると、「てるてる法師月に目が明(あき)」という句があります。
これは、「願いがかなったので墨で目睛(ひとみ)を描いた」という意味なんだとか。
つまり、江戸時代には顔をいれず、のっぺらぼうの状態で吊るしていたことが分かりますね。
なので、願いが叶えば顔を描くというのが正しい作法となる訳です。
顔を描くというのは、願いを聞き届けてくれたてるてる坊主に対する感謝の気持ちを表す行為。
当時の作法にならって、てるてる坊主は顔を描かないで作りましょう。
【江戸時代の町並み】
日本全国には、江戸時代の町並みが残っている地域がありますね。そんな場所では、よりてるてる坊主が似合うかも。下記記事では、江戸情緒が感じられる町並みを紹介します。
てるてる坊主の裏技、雨を願うこともできる
てるてる坊主は、本来晴れを願うときに作るものですが、作り方によっては雨乞いになる場合があります。
たとえば黒い布を使って作ったり、スカートの部分に切り込みを入れると雨乞い用に早変わり。また、一番有名なのは、吊るす時に上下を反対にして、てるてる坊主を逆さまに吊るす方法です。
こうすれば意味合いも反転し、雨乞いのおまじないとなる。
このようなてるてる坊主のことは、「ふれふれ坊主」「逆さ坊主」「雨雨坊主」などと呼ばれ、地域によって様々な呼び方が存在します。
尚、「てるてる坊主」と「ふれふれ坊主」を一緒に作ればどうなるのかといった疑問がわきますが、「好奇心が猫を殺す」ということわざもある通り、やらない方が無難ですよ。
てるてる坊主の処分方法に注意
てるてる坊主の処分方法は、願が叶ったかどうかで変わります。
願いが叶った場合では、顔を描いて童謡の歌詞のようにお酒を飲ませ、川へ流したり燃やしたりしていました。
現代では、川に流すのは環境面から考えれば完全にNGですね。また、お焚き上げも中々難しいかも。そうなると、はやり顔を描いた後に感謝を込めて燃やすゴミに出すのが無難です。
願いが叶わなかった場合では、歌詞の通りに「首をちょん切る」必要はありません。顔を描かず、そのまま燃やすゴミとして処分します。
燃やすゴミにする際には、小さな箱を用意してそこに入れてあげて、外から見えないようにするとよいでしょう。
まとめ
科学技術が発達した現代では、精度の高い天気の予測ができるようになりました。それでも100%の予測はできません。
「明日は楽しみしていた旅行へ出かけるのだから、どうしても晴れてほしい」と願うならば、てるてる坊主を作って願をかけてみてはいかがでしょうか。
てるてる坊主は、ティッシュペーパーや端切れなどを使って、さほど時間をかけずに作れます。
そして願いが叶ったら感謝の気持ちを込めて、顔を描いてあげましょう。