かつて銀を採掘していた坑道跡が見られる石見銀山(いわみぎんざん)。
2007年には、世界遺産としてアジアで初めて登録された鉱山遺跡です。
最盛期には、ヨーロッパで流通していた銀の3分の1を産出していたという。
一般公開されている銀が採掘された坑道「龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)」を始め、レトロな大森の町並みや清水谷精錬所跡など見どころも盛り沢山。
石見銀山やその周辺の観光は、広範囲にわたるため、自転車を使うと便利です。
本記事では、初めて訪れる方にも失敗しないおすすめコースを交え、石見銀山の楽しみ方をお届けします。
石見銀山の歴史
石見銀山は、1526年に発見されてから1923年の休山まで約400年に渡り、銀が採掘されてきた鉱山遺跡です。
かつて黄金の国と呼ばれていた日本は、金も多く産出していましたが、金より大きな影響を与えていたのが石見銀山で採掘された銀でした。
世界有数の産出量を誇り、大航海時代の16世紀では、日本の銀鉱山としてヨーロッパの人々に唯一知られた存在と言われています。
石見銀山で取り入れられた製錬技術は、灰吹き法です。鉱石から金や銀を一旦鉛に溶け込ませた後で、そこから良質な金や銀を大量に抽出する方法ですね。
古来から培われてきた技術で、旧約聖書にも記述があります。石見の銀は、初めは中国との貿易で流通していましたが、ヨーロッパの参入により、世界的な経済・文化の交流に多大な影響を与えました。
そのため、当時の日本にとって石見銀山は、どれほど重要な鉱山であったのか伺い知れるでしょう。
【周辺の見どころ】
石見銀山の周辺には、世界一大きな砂時計がある仁摩サンドミュージアムなど沢山の見どころがありますので、下記記事で紹介します。
石見銀山世界遺産センターで銀山の情報を入手
石見銀山の観光を始める拠点は、石見銀山世界遺産センターがおすすめ。
このセンターでは、石見銀山の歴史や世界とのつながりを始め、鉱山や町の人々の暮らしについて学べます。
実物の歴史資料が展示されている博物館や資料館と異なり、模型や映像、レプリカ、再現品を中心に構成されていました。
銀山遺跡全体が見られるジオラマを見れば、その広大さが良く理解できますね。
また、30㎏の純銀インゴットを触ることができるため、銀の重さをリアルに体験できますよ。
毎週水・木曜日に開催される「丁銀づくり体験」では、低融合金(すず・ビスマスの合金)やプラ板を使い、キーホルダーやストラップを作れます。
展示品を見て学び、実際に手に触れて体験することで、石見銀山を深く理解できるかも。
一般公開されている龍源寺間歩までは、少し距離が離れていますが、大森の町までは有料のシャトルバスが出ているため活用しましょう。
是非、現地へ訪れる前にこのセンターへ訪れ、石見銀山の予習を行なえば、銀山の価値や魅力がより高まります。
【シャトルバスの乗って龍源寺間歩へ向かうまでの所用時間】
バスは、石見銀山世界遺産センター(石見銀山駐車場バス停)から大森バス停と大森代官所跡バス停の3箇所の間で走っています。
- 大森バス停で下車後、徒歩約45分(片道約2.3km)
- 大森代官所跡バス停で下車後、徒歩約65分(片道約3.1km)
大森代官所跡バス停で下車後、近くにある「レンタサイクル河村」でレンタサイクルを借りるのがおすすめです。
石見銀山世界遺産センター
- 住所 島根県大田市大森町イ1597-3
- 電話番号 0854-89-0183
- 営業時間 8:30~17:30
- 定休日 毎月最終火曜日、年末年始
- 料金 無料(有料の展示室有り)
- 有料展示室観覧料:大人(高校生以上)310円、小人(小中学生)150円
- 20名以上で団体割引き有り(大人260円、小人100円)、外国人割引き有り
石見銀山の観光には、自転車があると便利
石見銀山の観光スポットは、広範囲にわたっています。
特に見どころが多い、大森の町並みから龍源寺間歩までは、車での移動はご遠慮いただいていますので、徒歩か自転車でないと向かえません。
そこで、大森地区にある「レンタサイクル河村」でレンタサイクルを借りましょう。
ちなみに私はマイ自転車で見て回りましたので、レンタサイクルは借りませんでした。
レンタサイクルについて調べたところ、以下の料金で借りられます。
- 普通自転車:500円(3時間。延長30分まで100円)
- 電動アシスト付き自転車:700円(2時間。延長30分まで200円)
レンタサイクル河村
- 住所 島根県大田市大森町ハ44(大森代官所跡バス停そば)
- 電話番号 0854-89-0633
- 営業時間 8:30~17:00(12月~2月は16:30まで)
- 定休日 元旦(1/1)、悪天候の場合は休業有り
【自転車を趣味にしてみよう】
自転車を趣味にすれば、健康的に活動できますよ。下記で自転車趣味に関する記事を紹介します。
石見銀山巡りのおすすめコース
石見銀山世界遺産センターを拠点にした場合、以下の順番で足を運ぶのがおすすめです。
- 石見銀山世界遺産センター
- 大森の町並み
- 清水谷精錬所跡
- 龍源寺間歩
- 佐毘賣山神社
- 大森の町並み
- 石見銀山世界遺産センター
まず始めに、石見銀山世界遺産センターからシャトルバス又は徒歩で大森の町並みまで向かいます。
そこで、レンタサイクルを借りた後、大森の町並みを見て歩き、清水谷精錬所跡へ向かって下さい。
その後、龍源寺間歩で銀が発掘された坑道を冒険しましょう。
尚、冒険と言っても一本道なので、道に迷う心配はありません。
龍源寺間歩の出口を出ると、佐毘賣山神社(さひめやまじんじゃ)へ立ち寄り、再び大森の町並みへ戻りレンタサイクルを返します。
そして、拠点の石見銀山世界遺産センターへ戻りましょう。
ゆっくり見て回るならば、所要時間は4~6時間ぐらいはかかりますね。
石見銀山を巡る楽しみ方
情緒あるレトロな大森の町並みを歩く
石見銀山のふもとには、銀山の発展と共に栄えた町があります。
その町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、江戸時代に形づくられた陣屋町が色濃く残されていました。
そんな町並みを歩いていると、ノスタルジーに浸れますね。
町中には、いも代官ミュージアムや熊谷家住宅、観世音寺など様々な見所が沢山あるので、足を運んでみて下さい。
特に高台から眺める美しい石州瓦の景観が素晴らしいです。
古くから大森地区の人々が脈々と守り続けてきた町並みは、石見の誇る文化遺産と言えるでしょう。
詳しくは、下記関連記事で紹介します。
まるで城壁、清水谷精錬所跡の眺め
石見銀山の近代の精錬所跡が、清水谷(しみずだに)精錬所跡です。
1886年(明治19年)に藤田伝三郎(藤田財閥)が起こした大阪の藤田組が、当時20万円の巨費を投じて完成させた製錬所の跡地であり、世界遺産の構成資産の一つになっています。
当時の最新技術であった収銀湿式製錬という技術を導入しましたが、予想より鉱石の品質が悪く、銀の精錬能力も不十分だったため、わずか10年後の明治29年で操業を停止。
今では、9段に組み上げられた特徴的な石垣が残されています。
往時には、機械選鉱場や焙煎室など10棟以上の建物が建ち並んでいました。
こちらが、清水谷精錬所跡の説明板に掲載されていた当時の写真です。
森の中で静かに佇ずむ今の姿からは、当時の様子が全く伺い知ることができませんが、多くの人たちが夢を見た場所だということは伝わってきました。
2008年~2009年の発掘調査では、操業当時の建物跡の基礎や銀鉱石の品位分析に使った多量のキューペル(骨灰皿)などが見つかったそうです。
銀が採掘された坑道「龍源寺間歩」の冒険
銀山川に沿って、西へ山の中へ進んで行けば、龍源寺間歩へ辿り着けます。
その道中には、福神山間歩(ふくじんやままぶ)がありましたが、立入禁止で中へは入れません。
石見銀山には、大小合わせて約600以上の間歩(坑道)があるという。
龍源寺間歩は、その中でも代官所の直営だった大坑道の一つだったそうです。
尚、龍源寺間歩の入口までは、自転車で行けないので、途中にある無料の駐輪場に自転車を止めて歩いて向かいましょう。
駐輪場から約1分ほど歩けば、龍源寺間歩の受付がありました。
こちらの受付で料金を払った後は、よいよ龍源寺間歩へ。
龍源寺間歩の入口と出口は別々ですが、出口から道なみに歩くと、自転車を止めた駐輪場へ辿り着きます。
こちらが龍源寺間歩の入口。
もし龍源寺間歩のイメージを、鍾乳洞のような物だと考えていたらガッカリするかも知れません。
あくまで龍源寺間歩は坑道なので、鍾乳洞のような不思議な景色は見られませんよ。(笑)
壁一面には、手作業で掘り進めていたノミの名残が見て取れました。
採掘から銀の精錬まで全て人力・手作業だったことも世界遺産に登録された理由の一つなんだとか。
奥へ進むにつれ、空気がひんやりしますので、寒い場合は上に一枚羽織ると良いでしょう。
坑道を歩いていると、寒く薄暗い所で長時間、作業をしていた当時の鉱夫の作業がいかに大変だったのか伺い知れます。
道の脇には、沢山の横穴がありましたが、現在通れる道はほんの一部。
実際はアリの巣ようのに無尽に坑道が広がっているという。
全長は約600mもある通り抜けコースです。
途中からは、新しく開削した栃細谷新坑(とちばたけしんこう)を通り出口へ向かいます。
この栃細谷新坑は、現代的な道になっており、壁には江戸時代の鉱夫の作業風景などの資料が展示されていました。
しばらく歩くと、出口へ到着。
当時の銀山の作業現場を伺い知ることができたのは、貴重な体験でした。
通常、銀山開発には銀の精錬のため多くの木材が必要となるため、山の木がなくなることが当たり前だそうです。
しかし、石見銀山では、採掘当時から山を崩したり森林伐採をせず、森林管理をしっかり行い環境への配慮がされていたという。
採掘から搬出までの銀山運営の全体像がしっかりと残り、今の時代に伝えられているところも世界遺産となった重要なポイントです。
龍源寺間歩
- 住所 島根県大田市大森町ニ183
- 電話番号 0854-89-0347
- 営業時間 9:00~17:00(12月~2月は16:00まで)最終入場10分前
- 定休日 元旦(1/1)
- 料金 大人(高校生以上)410円、小人(小中学生)210円
- 20人以上で団体割引き有り、障害者割引き有り、外国人割引き有り
【遺跡の紹介】
龍源寺間歩のような遺跡へ訪れると、古い歴史に触れてロマンを感じますね。下記記事では、そんな遺跡を紹介します。
鉱山の守り神を祀る「佐毘賣山神社」へ参拝
龍源寺間歩の出口から道なりに歩いていると、小川の脇に小さな人形を見つけました。
なんだろうと思い近づいて見てみると、カッパの人形が。
実はこの辺りには、カッパが出るかも知れないのです。
周辺には「カッパを見かけても餌を与えないで下さい。」と注意喚起していました。
道なりへ進んでいると、右手に分かれ道が見えてくるので、その分かれ道へ向かいましょう。
すると、いかにも風情がある階段が見えてきます。
その階段は、波打つような段差であり、階段の上には鳥居が立っていました。
少し歩きにくい階段でしたが、上まで登ると「佐毘賣山神社(さひめやまじんじゃ)」へ辿り着いた次第です。
この神社の位置する場所は、銀山が栄えた最盛期において、大規模な鉱山集落の精神的・物理的な中心地だったという。
鉱山の守り神である金山彦命が祀られており、鉱脈の真上に鎮座しています。
佐毘売山神社は、石見銀山の歴史から見ても、極めて重要な宗教的施設だった訳です。
現在残っている拝殿は、鉱山の守り神として日本最大級の大きさを有しています。
境内は、それほどの広さはありませんが、緑の苔が良い味を出しているカメの像がありました。
目玉の5円玉がチャームポイントかな。
凛々しい狛犬もいますので、是非足を運んでみましょう。
【神社仏閣の紹介】
旅先では、様々な神社仏閣へ訪れますので、下記記事で紹介します。
石見銀山最大級の坑道「大久保間歩」の入坑はツアーで参加
石見銀山最大級の坑道跡である「大久保間歩(おおくぼまぶ)」。
ガイドに案内してもらう、一般公開限定ツアーへ参加してみませんか。
江戸時代の手掘りを始め、明治時代の機械掘りの様子が見られます。
ツアーの集合場所は、石見銀山世界遺産センター。
センターからは、専用バスでの移動となり、駐車場から金生坑まで歩いた後は、小屋で長靴やヘッドライト付きのヘルメットを装着して準備を整える。
そして、山道を歩いた後で入坑となる流れです。
歴史に残る貴重な遺跡を堪能しましょう。
詳しくは、大久保間歩予約センター(TEL 0854-89-9091)へお問い合わせ下さい。
石見銀山の基本情報とアクセス
住所 | 島根県大田市大森町 |
電話番号 | 0854-88-9950(大田市観光協会) |
【アクセス】
- JR仁万駅からタクシーで約10分(大森の町並みまで)
- JR大田市駅から路線バスで約25分(大森の町並みまで)
- 湯里ICから車で約12分(大森の町並みまで)
- JR仁万駅からタクシーで約15分(石見銀山世界遺産センターまで)
- JR大田市駅から路線バスで約33分(石見銀山世界遺産センターまで)
石見銀山の駐車場
石見銀山の周辺には、3つの無料駐車場があります。
駐車場名 | 住所 | 駐車台数 | 備考 |
---|---|---|---|
石見銀山公園駐車場 | 島根県大田市大森町ハ199 | 普通車40台 | 大森の町並みまで約100m |
大森代官所前駐車場 | 島根県大田市大森町ハ47-1 | 普通車20台 | 直ぐ近くには、いも代官ミュージアムがある |
石見銀山駐車場(世界遺産センター) | 島根県大田市大森町イ1597-3 | 普通車400台 大型バス11台 | 大森の町並みから少し離れている(徒歩約30分) |
まとめ
石見銀山で採掘された銀は、世界の経済・文化の交流に多大な影響を与えました。
今では世界遺産へ登録されており、多くの観光客が訪れます。
観光スポットは、広範囲に点在していますので、自転車があると大変便利。
石見銀山世界遺産センターを拠点にして、大森の町並みや清水谷精錬所跡などを見て回りましょう。
そして、龍源寺間歩へ訪れて、当時の採掘現場の雰囲気を体験して下さい。
予め石見銀山の歴史を知っていれば、より楽しめますよ。
また、鉱山の守り神を祀っている佐毘売山神社へ足を運び参拝してみませんか。
かつては、銀の採掘で賑わった石見銀山ですが、今では世界に誇る観光名所となっています。