誰しも一度は、雪舟(せっしゅう)の名前を聞いたことがあると思います。
あえて簡単に説明すれば、室町時代に活動した水墨画家・禅僧ですね。ここまでは知っている方も多いと思いますが、画聖として有名になる雪舟が、幼少時代に修行したお寺を知っていますか。
そのお寺が「宝福寺(ほうふくじ)」です。この寺は、紅葉の名所としても知られており、毎年紅葉シーズンになると、多くの観光客が訪れます。
境内にある国指定重要文化財の三重塔は、紅葉によく映えるフォトスポットですよ。また、仏殿の天上に描かれた「水呑みの龍」は見応えがありますね。
本記事では、宝福寺へ訪れる際、足を運びたい様々な見どころを紹介します。
紅葉の名所「宝福寺」とは
宝福寺(ほうふくじ)は、岡山県総社市に位置する臨済宗東福寺派の寺院です。山号は井山(いやま)、本尊は虚空蔵菩薩ですね。
創建は不明ですが、天台宗の僧・日輪によって開かれたといわれています。また、1232年(貞永元年)の鎌倉時代では、禅僧・鈍庵慧總によって禅寺に改められました。そのためか、別名として「宝福禅寺」とも呼ばれています。冒頭で述べた通り、画聖・雪舟ゆかりの禅寺ですよ。
最盛期には、塔頭55、末寺約300寺の大寺院となり隆盛を極めました。しかし、室町末期に起こった備中兵乱により、三重塔を残して全て消失した次第です。その後、江戸時代以降に仏殿・山門などが次々に復興され今に至ります。
ちなみに三重塔などの建立・復興された時期は、以下の通りですよ。
- 山門 明治時代に復興
- 仏殿 江戸時代後期に復興
- 三重塔 室町時代中期の建立
- 方丈 江戸時代中期に復興
こちらが、宝福寺の境内の配置図。
この配置から、禅宗様式の重厚な講造を伺い知れますね。特に朱色の三重塔は、国の重要文化財に指定されており必見です。
紅葉シーズンになると、境内は色鮮やかな紅葉に満たされ、幻想的な雰囲気を感じます。
【周辺の見所】
宝福寺の周辺の見所を、下記記事で紹介します。
【見所①】雪舟の石像と山門・方丈
宝福寺の正面には、駐車場が整備されており、そこから直ぐに山門へ向かえます。
重厚な雰囲気が漂う山門は見応えがあり、まずここで足を止める方も多いでしょう。(私もそうでした。)
この山門の隣りには、雪舟の少年時代の像が見て取れますね。一体彼は、なぜ縛られているのでしょうか。
彼の逸話を知らない人からすれば、頭の中に「???」が付いてしまう状況です。
雪舟少年の逸話を手短に説明すると、室町時代に雪舟少年は、宝福寺で修行をして暮らしていました。
何よりも絵を描くことが大好きだった雪舟少年は、修行をせずに絵を描くばかり。こんなことでは、彼のためにならないと思った住職が、反省を促すために方丈の柱と彼を紐でしばりつけました。
現代人の感覚では、今このようなことをすると、大問題に発展してしまいますが、当時ではそれほど珍しくなかったのでしょう。
この行ないに困り果てた雪舟少年。大好きな絵を描くことができず、涙を流します。しばらくして、住職が雪舟少年の様子を見にいくと、ネズミが1匹逃げようとしているところを目撃しました。
住職はそのネズミを慌てて捕まえようとしますが、ネズミは微動だにしません。「おかしいな」と思った住職ですが、よく見てみれば、そのネズミは濡れた線で描かれている。
雪舟少年に事情を聞いてみると、何と彼は、自分の流した涙を足の親指を使って、ネズミを描いというではないですか。住職は、まるで本物のように生き生きとしたネズミの絵に大いに感心し、それ以降、雪舟少年が絵を描くことを全くとがめなかったそうです。
こちらは、この話の逸話が残っている「方丈」ですね。
残念ながら、方丈は1575年に焼失してしまい、雪舟少年が縛られていた柱は既に存在していません。現在の方丈は、復興されたものですね。
この方丈前にも、雪舟少年が縛られている像がありますよ。
山門の横にある像より、小さな像です。雪舟少年のお顔が、お地蔵様に見えるのは私だけかな。
お地蔵様同様、親しみやすい子供だったのかも知れないですね。
【神社仏閣の紹介(その1)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
【見所②】室町時代中期の様式を残した「三重塔」
宝福寺には、戦渦に巻き込まれることなく、現在まで残っている三重塔があり、国の重要文化財に指定されています。
過去に何度が修繕はされているため、現在でも朱色の華麗な姿を維持してますよ。
この三重塔は、高さが約18mもあり、1376年(永和2)に建てられ岡山県内で2番目に古い塔です。ちなみに1番古い塔は、1285年(弘安8年)に建てられた長福寺の三重塔ですね。
宝福寺のある総社市には、五重塔で有名な備中国分寺がありますが、その五重塔に負けず劣らず均整の取れた美しさは目を引きます。
紅葉と織りなす朱色の塔は、青空の下で良く映えており、フォトスポットに最適。
私が訪れた日は、多くの参拝客・観光客が、この三重塔をバッグに記念撮影している光景を、幾度となく目にしました。
きっと、雪舟も三重塔を日々眺めて過ごし、時には塔内へ足を踏み入れて遊んでいたのではないでしょうか。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
【見所③】仏殿の「水呑みの龍」
仏殿では、本尊の虚空蔵菩薩を安置しています。
まずは、菩薩様へ参拝した後で、天上を見上げてみて下さい。天上には、迫力ある龍が描かれていますので、ビックリする方も多いでしょう。
この天上画は、250年前ほど前に、望月派の大家・鼇山(ごうざん)和尚が描いたそうです。
直径約6mほどの大きさがあり、勢いよく描かれた盤龍ですね。何でもこの龍は、近くにある白蓮池の水を飲みに夜な夜な現れるため、里人は恐れおののいたとか。
そのため、龍の目玉に釘を打ち封じたと伝わっています。このような伝説より、俗にこの龍のことを「水呑みの龍」と呼ばれるようになりました。
水呑みの龍の目玉を見てみましたが、それらしき釘跡が見えないのは、私の気のせいでしょうか。
ひょっとすると、既に復活を遂げており、今は力を蓄えるため、どこかに隠れているのかも知れませんね。(笑)
【神社仏閣の紹介(その3)】
宝福寺と同じく岡山県内にある神社仏閣を、下記記事で紹介します。
紅葉が彩る境内を散策
山門をくぐり抜けた後は、境内をゆっくり散策して過ごしましょう。
紅葉シーズンでは、境内の至るどころに彩りを感じますね。紅葉だけでなく、外塀の美しさも素晴らしい。更に緑の苔の絨毯も見事です。
まさに和の景観をこれでもかと考慮して演出している配置には、尊敬の念を抱かせます。
苔の絨毯が広がる一角には、雪舟碑が建てられていますね。
また、日本庭園には、枯山水が見て取れますが、その中に笠のようなオブジェが。これは一体何なのか、疑問に感じる方も多いでしょう。
私は、その笠を目撃した瞬間、「これはネズミ捕りに違いない」と思ったかな。
実は、このオブジェは、明治時代から昭和初期まで活動した洋画家・満谷国四郎の顕彰碑だそうですよ。雪舟ゆかりの地なので、ネズミ捕りの形状にしたのかも知れませんね。(真相は分かりません。)
雪舟の逸話以外にも、境内にある三つ葉楓の葉に願い事を書いた後で、2枚に重ねて持っていれば、願い事が叶うそうですよ。
それに、縁結びの如意輪観音が祀られていますので、縁を結びたい方は、足を運ぶのを忘れずに。
こちらのハス池は、白の花が美しく咲くそうです。ハスの花が咲くのは、7~8月頃なので紅葉シーズンに見られないのは残念。
けれど、境内に咲き誇る色鮮やかな紅葉の景色は、眺めているだけで心が癒されますね。
宝福寺の基本情報とアクセス
住所 | 岡山県総社市井尻野1968 |
電話番号 | 0866-92-0024 |
参拝時間 | 5:00~17:00 |
【アクセス】
- JR総社駅からタクシーで約7分
- 岡山自動車道「岡山総社IC」から車で約15分
宝福寺の駐車場
宝福寺には、無料駐車場があります。(普通車 75台)
バスの場合は、西側にある第二駐車場が利用できますね。
まとめ
宝福寺は、画聖・雪舟が少年時代に修行していたお寺です。なので、雪舟の逸話を知ったうえで訪れると、より楽しめますね。
また、岡山県内で有数の紅葉の名所として知られています。毎年、紅葉シーズンには多くの観光客が訪れ、紅葉に彩られた和の空間で、思い思いに過ごせますよ。
更にこのお寺から約10kmほど北上すれば、渓谷と紅葉を同時に満喫できる「豪渓」へ辿り着ける。
そのため、紅葉狩りには「宝福寺 + 豪渓」のセットで訪れると、より満足度の高い1日を過ごせます。