あなたは、自転車の博物館をご存じですか。
大阪府堺市には、「シマノ自転車博物館」という日本で唯一の自転車博物館があります。
サイクリストならば、1度は足を運んでみたい。たとえ自転車に興味がない人でも、自転車が誕生して現代まで続く、数多くの自転車が展示されていますので、眺めるだけでも楽しいですね。
自転車の歴史に触れ、その魅力を今一度再確認してみよう。サイクリストならば、今まで以上に「自転車が好き」と気持ちになると思う。
本記事では、自転車が発展した歴史や文化を中心に、シマノ自転車博物館の見どころを紹介します。
シマノ自転車博物館とは
自転車は、子供から大人まで誰もが利用している身近な乗り物です。シマノ自転車博物館では、そんな自転車の誕生から現代までの歴史や文化を紹介しています。
株式会社シマノの創業70年の翌年にあたる1992年に、本館の前身にあたる「自転車博物館サイクルセンター」が堺市の大仙公園内にオープンしました。
その後、オープン30周年を迎えた2022年に現在の場所へ移転し、施設名を「シマノ自転車博物館」に変え今に至ります。
ちなみに、シマノの名前を冠していますが、運営しているのは、公益財団法人シマノ・サイクル開発センターですよ。
また、移転前の大仙公園内にある「自転車ひろば」では、クラシック自転車のレプリカ体験や、自転車乗り方教室などを開催しています。
本博物館の建屋は5階建てで、展示スペースは1階・2階・4階ですね。それぞれの展示スペースは、以下の通り。
- 1階:エントランスホール、ヒストリーシアター
- 2階:ホワイトキューブ
- 4階
- ストリートオブバイシクルコンポーネンツ
- マルチメディアライブラリー
- 特別展示室
特に2階のホワイトキューブでは、自転車が発展した歴史を物語る様々な自転車を、3つのゾーンに分けて展示しています。所要時間は、一通り見学するならば30~60分ほど。しかし、じっくり見学するならば、2時間以上はみておきたい。
本博物館では、「ここへ来れば、だれもが自転車に乗りたくなる」をコンセプトとして掲げています。そのため、特にサイクリストであれば、見学後に「今すぐ自転車に乗りたいなぁ」と思えてくるでしょう。
【周辺の見所】
シマノ自転車博物館の周辺の見所を、下記記事で紹介します。
自転車が物語る自転車発展の歴史と文化
シマノ自転車博物館の2階が、メイン展示エリアです。
展示エリアはA・B・Cの3つのゾーンに分かれており、ここでは自転車の「はじまり(Aゾーン)」「ひろがり(Bゾーン)」「これから(Cゾーン)」をテーマに掲げている。本記事では、「はじまり(Aゾーン)」に重点を追いて説明します。
Aゾーンでは、自転車の黎明期と発展期に登場した自転車を展示しており、自転車の誕生からどのような発展を遂げていくのかを学べ、実に面白いですね。
まず始めに紹介するのは、自転車の始祖・ドライジーネの誕生について。時は19世紀の初め、当時の人々の生活を大きく変える発明品が生まれました。
それが、ドイツ人の発明家であるカール・フォン・ドライスが考案したドライジーネです。
ドライジーネは、縦に並んだ2つの車輪にまたがって地面を足で蹴って進み、ハンドル操作で行きたい方向へ舵をきる乗り物。
現代の自転車と比べると「おもちゃじゃないの」と思ってしまうかも知れませんが、当時は画期的な移動用具ですよ。これが誕生して以降、ヨーロッパでは、2輪の乗り物が各地で作られていきました。
19世紀の半ばを過ぎると、地面を足で蹴って進む考えから、前輪にペダルがつく構造へ進化をとげます。最初にペダルがついた自転車がベロンペード。
ペダルが付くと、より速く楽に走れるようになり、人々は旅や競争を盛んに楽しむようになりました。
その後、より速く走るために前輪が巨大化。これにより、ペダルの1回転で進む距離とスピードを出せれるようになったわけですね。そのため、スピードの魅力でよく売れました。
イギリスやアメリカでは、大規模な工場がつくられ、世界中に輸出されます。
オーディナリーは、見て分かるように巨大な前輪のため、乗車するのに危険が伴う乗り物です。そこで、登場したのが「ギア」と「チェーン」ですよ。
ペダルを回す力をチェーンで前輪のギアに伝え、前輪が小さくてもオーディナリーと同じ速度が出せるようになりました。
自転車は更なる進化をとげ、ついに四輪自転車が発明される。現代の自動車にも使われる操舵システム(ラック&ピニオン)や、ディファレンシャルギアが搭載されます。
当時のイギリスの女王が、サルボ型自転車を見て感激し、注文したことからロイヤルサルボと呼ばれることに。
走るのに危険が伴っていた、大きな前輪が特徴的なオーディナリーでしたが、この問題が解決されたのは、後輪駆動になったセーフティ自転車ですね。
前輪も小さくなり、これならば簡単に足を地面につけれるため、安全性が各段に向上した次第です。
その後、セーフティ自転車は進化していき、1885年にイギリスのジョン・ケンプ・スターレーが、前後の車輪をほぼ同じにした自転車を開発。私たちのよく知る自転車の原形が誕生します。
1888年には、ついに空気入りタイヤが実用化され、自転車はより安全で快適に走るようになりました。こちらの自転車は、120年以上前に作られたものですが、空気入りタイヤやローラーチェーンが付いているモデルですよ。
1920年代後半になると、イタリアのビットリア社などが外装変速機の生産を始めており、ロードレースでついに、ギアチェンジを行なえるようになる。
1935年頃には、多くのロードバイクに変速機が付けられました。
その後、技術が増々発展していき、現代の自転車へつながっていきます。
シマノ博物館では、往年の自転車が展示されており、各展示物の前には簡単な説明がされている。くわしい説明については、タッチパネルを使うデジタル解説システムを採用。
このシステムのおかげで、展示室全体がまるで美術館のような印象を与えています。
尚、Bゾーンでは、ロードバイクやマウンテンバイク、実用車など、近代から現代の自転車を展示。Cゾーンでは、大きな壁画に「自転車とつくる好循環」「自転車に乗るとどんないいことがあるのか?」というテーマについて、絵を使って分かりやすく説明しています。
【自転車のアイテム紹介(その1)】
自転車に役立つ様々なアイテムを、下記記事で紹介します。
【見所①】様々な自転車の展示品
シマノ自転車博物館では、自転車誕生期から現代までの様々な自転車が、展示されています。
1階はエントランスホールのほか、ほとんどが無料で見学できますね。黎明期の古い自転車が展示さており、インパクトが抜群です。
そのような自転車を見ると「どんな自転車が展示されているのだろうか」と興味が注がれる。また、日本の自転車産業の礎を築いた堺という土地について、展示品や映像で学べます。
より自転車について学びたいならば、有料エリアへ移動しよう。
2階は、先ほど触れたメイン展示エリアです。それ以外にも自転車ギャラリーがある。ここでは、本博物館が収蔵する自転車の一部を公開しており、面白い自転車も多いですよ。
たとえば、こちらのHPV(ヒューマン・パワード・ビークル)。
実は1980年に時速91.19kmの速度記録を樹立した自転車だ。人力の限界にチャレンジした意欲作。それにしても、運転した人は怖くなかったのだろうか。私なら余裕で失神すると思う。(笑)
ちなみに、人力では2016年にAerovelo(エアロベロ)社の「Eta(エタ)」という自転車が、時速144kmを叩きだしている。
こちらは、全天候型の自転車。見た目は車そのもの。
富山県のプラスチック製品製造会社「シロウマサイエンス」が中高年の健康維持を目的に作りました。安定性の高い三輪型で、電動アシストがついている。
4階には、特別展示室があります。ここでは、期間限定で様々な作品を展示しているみたい。私が訪れた日は、世界中を旅した自転車が紹介されていました。
それも子供を連れて家族で旅した自転車ですよ。子供の夏休みを中心に旅をしたみたい。小さい内から世界を知るのは、良いことですね。
それにしても凄い重装備だ。世界を旅するには、これくらいの装備は必要でしょう。
【自転車のアイテム紹介(その2)】
自転車に役立つ様々なアイテムを、下記記事で紹介します。
【見所②】コンポーネントのギャラリー
ストリートオブバイシクルコンポーネンツでは、歴代のシマノコンポーネントが展示されています。
初代デュラエースを始め、1980年代に早くもエアロに着目したデュラエースAXや、マウンテンバイク用のXTRなどをフルコンポで展示しており、サイクリストにはたまらない。
それぞれの部品を1つ1つ見ていると、ともて美しく感じるのは、私だけでしょうか。
「いずれはコンポをデュラエースに」と思っている方も多いと思うので、ぜひ足を運んで見学しよう。
【自転車のアイテム紹介(その3)】
自転車に役立つ様々なアイテムを、下記記事で紹介します。
【見所③】メディアライブラリー
メディアライブラリーでは、自転車に関する雑誌・書籍や情報を集積しています。
自転車雑誌でおなじみの「サイクルスポーツ」や「バイシクルクラブ」のバックナンバーもある。ここだけでも1日中時間を潰せそう。
また、博物館デジタルアーカイブでは、収蔵している自転車の情報を確認できますね。
【自転車に役立つサービス紹介】
自転車に役立つ様々なサービスを、下記記事で紹介します。
シマノ自転車博物館の基本情報とアクセス
住所 | 大阪府堺市堺区南向陽町2-2-1 |
電話番号 | 072-221-3196 |
営業時間 | 10:00~16:30(入館は16:00 まで) |
定休日 | 月曜日、祝日の翌日(土・日の場合は開館)、年末年始 |
入館料 | 一般 500円(400円) 大学生 200円(150円) 高校生 200円(150円) ※20名以上で団体割引きあり。( )内の金額は、割引後の料金 |
【アクセス】
- 南海電鉄堺東駅から徒歩約5分
- JR堺市駅から南海バスに乗って、堺東駅前で下車後、徒歩約5分
シマノ自転車博物館の駐車場
シマノ自転車博物館には、駐車場がありません。車で訪れるならば、周辺のコインパーキングを利用しましょう。
自転車で訪れる場合は、屋内駐輪場(10台程度)があります。
まとめ
自転車は、老若男女さまざまな人が昔から乗り続けている乗り物です。
けれど、私たちの生活に身近な存在だからこそ、かえってその魅力が伝わりきれないところもある。
シマノ自転車爆物館では、自転車が発展していく歴史や文化を学び、サイクリストはもちろん、そうでない人でも「自転車は素晴らしい」と再確認できます。