自転車は、私たちにとって身近な乗り物であり、街乗りや買い物、サイクリングなど幅広い用途で活用されています。
もちろん通勤に使っている人がいる中で、会社によっては、一切自転車通勤が認められていないところが意外に多い。
様々な理由が考えられますが、会社にとってデメリットが大きすぎるからなのは、容易に想像がつきますね。もし、会社に無断で自転車通勤すれば、懲戒処分は免れないですよ。
本記事では、会社側が自転車通勤を禁止にする理由と、無断に自転車通勤した場合にくだる懲戒処分について説明します。
会社側が自転車通勤を禁止にする理由とは
会社側が自転車通勤を認めているのかを確認するには、就業規則を確認しよう。ほとんどの会社では、通勤手段のルールについて細かく指定しています。
会社によりルールは様々。よく分からなければ、総務や人事担当者に確認して、ルールをしっかり把握したいですね。
もちろん会社によっては、自転車通勤を認めていたりします。それだけでなく、通勤距離に応じて通勤手当を支給しているところもあるのは実にありがたい。
一方、就業規則で自転車通勤を禁止にしているところもある。特に東京都心のようなオフィス街にある会社は、ほとんど禁止ですよ。
オフィス街の多くは、人通りが多く、道路は自転車が走行するには適していないところが多い。
そのため、自転車事故にあう可能性が比較的高く、もし事故にあうと被害者や加害者、会社側にとってもダメージが大きく、誰も得をしませんね。
また、通勤後に自転車をどこへ駐輪させるかについても会社側にとっては頭痛の種です。
そこで、会社側が自転車通勤を禁止にする主な理由を、以下にまとめました。
- 自転車の事故リスク
- 駐輪スペースの問題
それぞれについて説明します。
【自転車通勤に関する話】
自転車通勤に関する話を、下記記事で紹介します。
自転車の事故リスク
会社側が自転車通勤を禁止にする最も大きな原因は、自転車の事故リスクです。
自転車で通勤している最中に人身事故を起こすと、会社側も損害賠償責任に問われるケースがあります。
もし被害者を死亡させたり、後遺症を残すような状態になるものなら、数千万円以上の高額な賠償金が発生しかねません。実際、過去の判例では、賠償額が9千万円以上の判決がありました。
自転車事故の多くは歩行者との接触が多く、自転車側が加害者になるケースがほとんど。自転車保険へ加入していなければ、高額な賠償金を払うのは困難でしょう。
自転車は軽車両の一種であり、車の仲間ですよ。車よりお手軽に運転できますが、使い方次第では危険な存在になることを肝に銘じましょう。
また、通勤途中に自転車がスリップして転倒し怪我をしたり、前方不注意で電信柱にぶつかって流血をしたなど、いわゆる自損事故を起こして負傷してしまうことが十分あり得ます。
通勤途中であれば、労災が下りるため会社側の負担が重くなる可能性が高い。できるだけこのようなリスクを回避したいと考えるのは、誰しもが同じです。
それに、怪我の程度によっては、業務に支障がでることは確実となる。会社側からすれば何もメリットがありません。
自転車事故のリスクを避けるために、始めから自転車通勤を禁止するのは、ある意味合理的ともいえますね。
駐輪スペースの問題
自転車事故のリスクが低い通勤路であったとしても、会社側が駐輪スペースを確保できなくて、自転車通勤が禁止になる可能性が十分あります。
駐輪スペースがないのであれば、路上駐輪を考え出す社員がでてくるだろう。もし路上駐輪が横行するようになれば、社会問題ですよ。
会社側としては、そんなリスクを背負いたくないのは当たり前。自転車通勤そのものを禁止するのも頷けますね。
それに盗難リスクをゼロにできません。特にクロバイクやロードバイクのようなスポーツ向けの自転車は、高額で売買されるので、ターゲットになりやすい。
安全な駐輪環境が整っていなければ、通勤のたびに長時間駐輪するなんて危険すぎます。
また、会社によっては最寄り駅まで自転車通勤を認めるケースがある。その場合は、駅側のルールとマナーを守り駐輪しよう。必要に応じて自転車の盗難保険へ加入すると、安心感が増しますね。
会社に無断で自転車通勤すると懲戒処分の対象となる
「会社は自転車通勤禁止だけど、ばれなければ大丈夫だろう」と思っているならば、考えが甘すぎます。
就業規則に自転車通勤が禁止と書かれているのに、それを知っていて破れば、まちがいなく懲戒処分の対象ですよ。
処分の内容は、企業秩序の侵害度合いにより違ってきますが、何度も注意を受けても繰り返すようならば軽い処分では済まされません。
基本的には「戒告」や「けん責」などの軽い懲戒処分ですね。戒告は、口頭または書面による注意。けん責ともなれば、始末書の提出を求められることが多い。
懲戒処分が重くなれば、減給や一定期間の出勤停止にあい、その間の給料は支払わないことも考えられます。
その他の重い懲戒処分には、降格・解雇などがありますが、ここまで重い処分が下される可能性は低いでしょうね。
労働契約法15条によれば、違反行為の内容に対して重すぎる懲戒処分は「懲戒権の濫用」として違法・無効となります。
そのため、正当な理由もなく、会社側が法的リスクを犯してまで重い処罰をあたえる可能性は低いですね。
無断で自転車通勤中に交通事故に遭うと労災はおりるのか
勘違いしている人も少なくないと思いますが、会社側が自転車通勤を禁止しているにも関わらず、自転車通勤中に事故にあったとしても労災申請が認められるケースがあります。
認定要件の対象となるのは、まずは以下の状況での移動中に怪我や病気が発生した場合です。
- 住居と就業場所の往復
- 就業場所から他の就業場所への移動
- 単身赴任先の住居と帰省先の住居の往復
これらの条件に加えて、合理的な経路および方法であれば、通勤災害として労災申請が認められます。
これは所轄の労働基準監督署が認めるので、会社が定める就業規則とは無関係に適用される。
ただし、自転車は自由にコース変更や寄り道がしやすいため、いつもと違う通勤コースで事故にあえば労災認定の要件から外れる可能性があるので、必ずしも労災申請が認められる訳ではありません。
【自転車のルールを紹介】
自転車のルールに関する話を、下記記事で紹介します。
通勤手当の不正受給は詐欺罪となる
バスや電車など公共交通機関を利用して会社へ通勤するならば、会社側から通勤手当が支給されるのが一般的です。
通勤手当を支給されているにも関わらず、バスや電車を利用する区間を会社に黙って自転車で移動しているならば、刑法上の詐欺罪や横領罪に該当します。
本人は「たかが通勤手当だろう」という軽い気持ちがあるのかも知れませんが、れっきとした犯罪行為ですね。
ことが発覚すれば、懲戒処分は当たり前。会社側は、過去10年にさかのぼり返還請求が認められています。
また、悪質性が強くなければ、解雇リスクも十分考えられますよ。実際、平成11年11月30日に東京地裁が判決を下した「かどや製油事件」では、会社側の懲戒解雇が認められた事例もある。
そこまで重い懲戒処分でなくても、犯罪行為に手を染めて発覚すれば、社内での風当たりが強くなるのは容易に想像できますね。
まとめ
誰しもが、特に免許もいらずお手軽に運転できる軽車両が自転車です。
どれだけ気を付けていたとしても、自転車を運転し続ける限り、交通事故にあう確率をゼロにするのは難しい。
そのため、自転車の運転中の事故が多いことや、駐輪スペースの問題で会社側が自転車通勤を禁止する場合があります。
どのような理由があるにせよ、会社で働く限り、就業規則で決まっているならば守るのがルールとなる。もし、就業規則をやぶり自転車通勤すれば、懲戒処分の対象ですよ。
自転車通勤を始めたいのであれば、就業規則を確認することから始めよう。そして、自転車通勤が可能ならば、交通ルールと交通マナーを守り、安全運転に努めて下さいね。