
瀬戸内海には「しまなみ海道」や「とびしま海道」のように「〇〇海道」の名が付いた絶景ロードがありますが、それら以外にも魅力的なサイクリングコースはいくつもあります。
その中の一つが、瀬戸内海中央部に位置する備後灘に浮かぶ田島と横島の一周コースです。
両島には際立った観光スポットはありませんが、本土と橋でつながっており、のんびりとサイクリングするのに打ってつけの穴場的な島ですね。
実際、クレセントビーチや横山海水浴場など美しいビーチがあったり、瀬戸内海の多島美を楽しめる絶景スポット「王城切石山公園」が素晴らしい。また、「やぶ椿と水仙の里」では、園内に水仙や河津桜、ミモザの花々が咲き誇り海の景色と共に楽しめる。
本記事では、田島・横島一周サイクリングコースと足を運びたい見どころを紹介します。
田島・横島とは

広島県福山市に位置する沼隈半島(ぬまくまはんとう)。沼隈半島の観光地として「鞆の浦」や「仙酔島」が有名です。
田島は、この半島の南端から約500m先に位置する約8.7キロ平方メートルの小さな島であり、睦橋(むつみばし)により西側にある横島と往来ができます。一方、横島は約4キロ平方メートルとさらに小さな島ですよ。これらの島は、ほぼ山で平野部は狭いのが特徴です。
Googleマップで確認すると良く分かるのですが、この2つの島は、魚がキスをしているような姿をしているのが面白いかな。
美しい自然豊かな島であり、地元住民の釣りスポットとして人気が高いという。また、交通量がかなり少ないので、サイクリングするのに適しています。
【周辺の見どころ】
田島・横島周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
田島・横島サイクリングコースの紹介

田島・横島の外周は、合わせても約25kmほどしかありません。主に北側は平坦部が多く、南側にキツイ勾配の山道が続きます。
そのためか全体を通して走りごたえがあるので、距離が短いと言っても侮れません。平均速度を時速10kmで走ったとしても、2.5時間ほどで両島を一周できるので、お手軽に島旅を堪能できますね。
本州からは内海大橋を渡り田島へ入るのですが、まずはこの内海大橋の構造に注目しよう。よく見る他の離島に架かる橋と比べると違いが明らかです。
というのは、一般的な橋は、対岸へ向けて真っ直ぐ架かるものなのですが、内海大橋に限っては、途中から「く」の字に折れ曲がっているのが面白い。橋好きな人であれば、それだけでわざわざ訪れる価値があります。
こちらが田島と横島のマップです。特にマップを見なくても一周するのは難しくないだろうな。外周がそのまま周回道路になっているので、道に迷いにくいですね。
まずは内海大橋を渡り終えると田島を時計回りに外周を走り、睦橋を渡って横島へ入る。その後、横島も時計回りに外周を走り、再び睦橋を渡って田島へ入ると、内海大橋を目指して外周を走るコース取りとなります。



田島の北側は二車線なので自転車でも走りやすい道なのですが、それ以外は狭い道が多いです。これは横島にも言えますが、その土地本来の風景をそのまま感じられるのがいい感じ。
交通量がかなり少なくて、私が訪れた日は、走っている車に出会ったのが片手に収まる範囲でした。そのためか、海岸線では聞こえてくるのは波の音と風の音ぐらい。山道へ入ると鳥のさえずりが聞こえてきて、心地よいですよ。
ただ自転車を走らせているだけでノスタルジックな気分になってくる。このような場所は、なかなか見つからないのではないだろうか。

海岸線の一部では、防波堤やガードレールが全くない区間がある。昼間であれば気にせず通り抜けられるだろうが、景色に見とれていると危ないかも。
また、夜間ともなれば周囲に街灯がないため、端によりすぎると誤って海へ落ちてしまう危険性をはらんでいるぞ。
しかし、このような場所というのは、ストレートに海と一体化しているような感じするので、個人的には結構好きですね。このような道は、田島だけでなく横島にもあります。

田島の南側へ向かうに当たり、アップダウンが多くなってくる。本格的に勾配がキツクなってくるのは「やぶ椿と水仙の里」を過ぎた辺りから。
ちょっとした森林のヒルクライムコースとなっており、勾配は10%越えは普通にある。さらに道幅が狭いため、対向車に出会うと下手をするとバックでかなり戻る羽目に陥るかも。
島一周にこだわりがないのであれば、「やぶ椿と水仙の里」から少し東へ戻り、内陸部を横断して北側の外周へ戻り、睦橋へ向けて走った方が体力の消耗を抑えられます。


ツライ上りの後は、ご褒美のダウンヒルが待っている。スピードの出し過ぎには注意しよう。坂道を下る道中には、南地区の町並みが見えてきます。
そして、県道386号線を進むと睦橋が見えてくるので、橋を渡り横島へ入りましょう。横島は、田島よりさらに小さい島であり、睦橋を起点にすると一周約9kmほどしかありません。

横島の南側外周付近には、海と接するかのような最果て感のある道が続く。このような道を目の当たりにすると、テンションが上がる上がる。
思わず自転車を停めて、しばらくの間海を眺めていました。最果て感の雰囲気も良いですが、海岸線の中央付近からは、横島の絶景スポットである切石山にアクセスが可能です。

山頂に整備された王城切石山公園までは、道が舗装されているので走りやすい。しかし、勾配が10%を越える劇坂がそれなりに続くコースなので、この公園へ向かうならば心してかかるように。
せっかく横島へサイクリングへ来たのであれば、ぜひ立ち寄って頂きたい。苦労に見合う絶景を楽しめます。


横山海岸海水浴場を過ぎた辺りから、北側へ向けて約2.5kmほどのアップダウンが続く。
それなりの急坂が待ち構えていますが、切石山山頂へ向かう道中と比べると、レベルがツーランクもスリーランクも落ちるかな。一気に駆け抜けると、北側の海岸線へ到着。そこは、どこかもの悲しさを感じさせる雰囲気が漂っていました。

そして、そのまま東へ向けて走れば二車線の道路となり、内海大橋まで続きます。田島の北海岸を走り、遠くに内海大橋が見えてくる頃には、達成感や充実感を感じるだろう。
普段からロングライドを楽しんでいる人からすると、走行距離が物足りないと感じるかも知れませんが、距離が短いので視界に入ってくる景色が次々と変わっていく様は、飽きがこないと思います。
田島・横島の見どころを紹介
サイクリング中に立ち寄りたい田島・横島の主な見どころを以下のまとめました。
- クレセントビーチ海浜公園
- やぶ椿と水仙の里
- 睦橋
- 王城切石山公園
- 横山海水浴場の防波堤アート
それぞれについて紹介します。
ロケーションが魅力的な「クレセントビーチ海浜公園」

クレセントビーチ海浜公園は、大きく湾曲した砂浜の形がまるで三日月のように見えるロケーション抜群の公園です。
全長約600mにもおよぶ砂浜は、備後地方有数の規模なんだとか。内海大橋を渡り東へ約4kmほど海岸線を走ると辿り着きます。
夏になると、大勢の海水浴客でにぎわい、海の上には巨大な海上アスレチックが設置されるという。また、通年を通して利用できるキャンプ場があるので、キャンプツーリングするのにもおすすめ。食事処やトイレ、シャワーも完備されています。


この公園前の沖合には、小さな無人島の矢ノ島(やのしま)が浮かんでおり、景観の良さに一役買っている。
実は、矢ノ島は源平合戦のときに平教経(たいらののりつね)が矢を射ると、島に矢が命中して、そこから竹が生えたという伝承があるそうな。
矢ノ島の向こうに広がる瀬戸内海と綺麗な砂浜を眺めながら、優雅なひと時を過ごして下さいね。
約10万本の水仙が自生する「やぶ椿と水仙の里」

樹齢300年のやぶ椿と約10万本の水仙を始め、桜や菜の花、ミモザなど美しい花を咲かす公園が「やぶ椿と水仙の里」です。
例年、1月半ばから3月にかけて水仙が咲き誇り、瀬戸内海をバックにしながら花見を楽しめるスポットとして、地域の人たちによって大切に育てられています。
園内は無料で入れますので、水仙シーズンや桜シーズンに足を運んでみよう。春を感じる様々な花々が咲き乱れているので、見ているだけで気分が明るくなってくる。
それに思わず写真を撮りたくなるような光景が広がっているのは、素晴らしいですね。





園内には、座って休めるようなベンチが設置されており、お弁当を食べるのにもピッタリ。
水仙が香る中、瀬戸内海の美しい景色を楽しみましょう。
ラブなパワースポット「睦橋」

田島と横島を結ぶ橋が「睦橋(むつみばし)」です。
かつて田島と横島は、渡船で往来していましたが、両島の共同施設の大部分が田島側にあったため、交通や物流に支障をきたしたということで、 1951年に、瀬戸内海唯一の開閉式橋梁として初代・睦橋を架けました。
今の睦橋は2代目であり、1979年に完成したものです。


田島・横島の形が、まるで2匹の魚がキスしている様子に似ており、その唇部分が「睦橋」に位置しているぞ。
そのため、「睦橋」はラブなパワースポットとして注目されており、色々とデコレーション済み。橋の中心で「愛」を叫べばご利益があるかも知れません。
また、内海町で採れる海苔をモチーフとした「のり男」と「のり子」のキャラクターが、島を盛り上げています。
王城切石山公園からの眺望と巨石

標高約220mの切石山の山頂は、王城切石山公園が整備されています。
駐車場から少し歩いて山頂へ向かうと、切石山展望台があり360度とはいかないまでも、眼下には美しい瀬戸内海の風景を楽しめる。
因島や弓削島、百島など大小様々な島の景観や、むき出しの茶色の岩肌と緑の樹林が織りなすグラデーションが素晴らしい。
展望台だけでなく、駐車場やその周辺からも景観の良い風景が広がっているのでお見逃しなく。
そこで、王城切石山公園周辺の風景をダイジェストで紹介します。






また、切石山頂上には、太鼓岩と呼ばれる巨石があり、叩くとポンポンと音がするので面白い。実は、地元の人の噂では村上水軍の財宝を隠しているとかないとか・・・
真相はともかく、海からパワーを受けた太鼓岩を叩けば、きっと運気のアップが期待できると思います。
横山海水浴場のカラフルな防波堤アート

切石山へ向かう入口付近の海岸には、美しい景色が広がる横山海水浴場があります。
全長約1.5kmのロングビーチであり、ここでは海水浴やキャンプ、バーベキュー、魚釣りなどを年間を通して楽しめる場所ですね。この海水浴場も魅力的ですが、防波堤に注目したい。
というのは、様々な趣向の絵が描かれており、可愛い絵や幻想的な絵などがあるので、自分のお気に入りの絵を探してみるのも楽しそう。



その他にも防波堤に沿って、大海を泳ぐイルカや人魚姫などたくさんの絵が描かれています。
サイクリングの道中に、ぜひ見物してみてはいかがですか。
田島・横島の基本情報とアクセス
住所 | 広島県福山市内海町 |
電話番号 | 084-986-3561(内海町観光協会) |
【アクセス】
- JR福山駅から路線バス「新川線(内海農協前行)」を利用。
- JR松永駅から路線バス「沼南線(常石経由/内海農協前行)」を利用。
まとめ

備後灘に浮かぶ田島・横島は、一部にアップダウンが多くて大変なコースがありますが、全体を通して実に走りがいのあるサイクリングコースです。
外周約25kmほどしかありませんので、一気に走り抜けることもできますが、それだけだともったいない。本記事で紹介した「クレセントビーチ海浜公園」や「やぶ椿と水仙の里」などの見どころへ足を運び、田島・横島の魅力を味わって下さいね。
潮風を感じながらゆっくりと自転車のペダルを回し、自然豊かな島の景色を楽しみましょう。