江戸時代に鳥取藩最大の宿場町として栄えた智頭宿。
その智頭宿の中でもひと際威容を誇るのが「石谷家住宅(いしたにけじゅうたく)」です。国の重要文化財に指定される近代和風建築であり、その敷地面積はなんと約3,000坪もある。
また、吹き抜けの「土間」やハートの意匠がある「江戸座敷」、国の名勝の石谷氏庭園など見どころ盛り沢山。なので、じっくり見学していきたいですね。
本記事では、名家「石谷家住宅」の見どころを紹介します。
智頭町きっての名家「石谷家住宅」とは
石谷家住宅は、明治後期から大正時代の当主で、山林経営の実業家と政治家(衆議院議員、後に貴族議員)を務めた石谷伝四郎が改築造営した豪壮な邸宅です。
山林経営を行う中、敷地の拡張を続け、家構えを町屋形式から屋敷形式に変えました。
主屋や庭園、蔵などを始め邸宅全体が良好な状態で保たれており、多くの建築物や庭園に用いている資材・デザイン・施工技術ともに最高の水準を誇ります。そのため、近代和風建築の代表例として、その価値は非常に評価が高いですよ。
もともと石谷家は、鳥取藩主池田氏が参勤交代する際、智頭街道の宿としていました。藩主・池田公は本陣に宿泊され、随行の上級武士は石谷家に宿泊されたそうです。その名残として、家の格を表すため、武家風の式台(本玄関)が作られています。
蔵を利用した展示室(一号蔵・二号蔵・三号蔵)では、智頭林業の歴史や、石谷家伝承の美術品を紹介。邸内の喫茶室では食事もできますね。
石谷家住宅は2009年(平成21年)12月に国の重要文化財に指定され、石谷氏庭園は、2008年(平成20年)3月に国の名勝に指定されています。
【周辺の見所】
石谷家住宅の周辺の見所を、下記記事で紹介します。
【見所①】吹き抜けの「土間」と囲炉裏の間
主屋に入るとまず始めに驚くのが、高さ14mの吹き抜けがある「土間」です。これは度肝を抜かれますよ。私は思わず「うぉー」と言葉が出ましたね。(笑)
赤松の巨木を用いた梁組で、梁の上に小屋組を使い屋根を構築している。それを支える大黒柱や平物は欅材を使っています。
そのためか、全体的に豪壮な雰囲気を醸し出しており、往時の繁栄ぶりをうかがい知れますね。
土間の右奥には竃(かまど)と水槽があるので、石谷家の炊事場だったのでしょう。注目したいのが、竃があるのに、梁がすすけていないこと。
実は煙出しの「くど」は地下にあるという。すると、虫食いが心配になるけれど、梁は赤松の芯だけで、虫が食べる部位を削ぎ落として対処済み。う~む、細かいところにも丁寧な処置を施していて、知れば知るほど凄い邸宅だと感心します。
土間を一段上がると、そこは囲炉裏の間。来客者の主人への取り次ぎや、打ち合わせなどに使われていました。また、ここで家人は出入りの人たちと情報交換を行っていたそうですよ。
この囲炉裏の間の一角で古い電話ボックスを発見。年代物の電話機2台がありました。アンティーク好きの人には、惹かれる物ではないですかね。
これらの電話は、番頭が電話を受け主人に取り次ぎ、切り替えて使用していたそうです。
【カメラに関する話】
石谷家住宅で、旅の思い出に残る写真をたくさん撮ろう。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
【見所②】ハートの意匠がある「江戸座敷」
江戸座敷は、石谷家住宅の中でも最も古い部屋です。
部屋に入って、ひと際目立つのが大胆な猪の目(ハート形)に驚くかも。まさにSNS映えするフォトスポットですね。この部屋で記念撮影をしてみてはいかがですか。
部屋全体は、煤(すす)をなたね油で練ったもので塗り、長押(なげし)や床柱は角の丸みを残す面皮仕上げ。天井は江戸中期以降に見られる床差しといわれる棹が床の間に向かってる珍しい造りになっています。
この江戸座敷は、もとは土蔵だったものを1856年(安政3年)に座敷に改築しました。窓の障子には、細工が施されており陰影が美しい。この部屋は一番景色がよく、庭園の奥行きのある眺めは格別です。
テーブルの上には、自由帳が置かれていました。旅の記念に何かコメントを記入してみませんか。
また、この江戸屋敷には自然界の「気」があるという。なので、しばらく部屋で休みリフレッシュしていきましょう。
【建築物の紹介(その1)】
石谷家住宅のようにじっくり見学したい建築物を、下記記事で紹介します。
【見所③】らせん階段と太鼓橋
個人的に面白いと思ったのが、らせん階段と太鼓橋です。
2階へ通じる2つの階段のうち、1つはらせん階段で、吹き抜け空間を太鼓橋で渡らせます。太鼓橋は、手摺りにカーブのある材を用いており、らせん階段は洋風のデザインですね。階段の下から天井を見上げると、非常に高さを感じてしまう。
太鼓橋ともどもシオジ材の木目がとても綺麗に感じました。それにしても、屋内に「らせん階段+橋」のコラボを見られるなんて、とても珍しい造りに驚きますね。
【旅の移動に役立つサービスの紹介】
旅の道中で移動するにあたり、便利なサービスを利用してみませんか。下記記事では、そんなサービスを紹介します。
【見所④】主人の間など様々な部屋
石谷家住宅は、約40部屋もある広大なお屋敷。その中でも代表的な部屋を紹介します。
まずは「主人の間」。名前の通り石谷家の主人の執務部屋であり、主屋1階でもっとも上格の部屋です。上手左側には、内縁が付いていましたが、現在は間切りを撤去しています。
続いて紹介するのが、「和室応接」と呼ばれる書院座敷。
床の間と床脇があり、L字型に濡れ縁がまわる。濡れ縁には、幅広の栗板を使用し、床の間は床柱を立てない珍しい造りですよ。
書院障子には、扇面を表しているのが実によいですね。特に欄干は、石谷邸と諏訪神社を透かし彫りで現しています。見事な出来栄えに拍手喝采を送りたい。
こちらは、新建座敷です。昭和16~18年頃に建てられました。
天井材には、奈良の春日杉、床柱には屋久杉の笹杢(ささもく)を使用。床壁には、和紙の袋張りの書院造りで、縁板は幅広の欅板を使用しています。
また、庭園は広がりを見せる造りとしており、その贅を凝らした造りには感心しました。
部屋同士をつなぐ廊下には、畳が敷かれているところもある。すごく手間をかけていますね。
邸宅内には、喫茶室もあります。もともとは食堂として使われており、家族の団らんの場所だったそうですよ。
尚、見学は喫茶室利用者のみなので、悪しからず。
【建築物の紹介(その2)】
旅先で訪れた建築物を、下記記事で紹介します。
【見所⑤】屋内にある神殿
1階の主人の間の真上にある「神殿室」。部屋の奥に壇を作り、その中央に宮殿を置いています。
石谷家の神殿としてお祀りし、正月には右に山鳥、左に餅花をかけ、年桶を置いて祭祀を行っていました。実はこの神殿室で結婚式を挙げれます。実際、数十組のカップルが挙式を挙げた実績がありますね。
それにしても、一部屋まるごと神殿にするとは素晴らしい。大胆な発想といえますが、たくさん部屋があるならば、私も一部屋は神殿にするかも知れないので、同じような発想をする人は、意外に多いのかも知れないですね。
【見所⑥】蔵の展示品
石谷家住宅には、7つの蔵があり、そのうち3つが一般公開されています。定期的に美術品や工芸品、特別展、写真展などを開催しているので足を運ぼう。
当時は、それぞれに米・味噌・調度品・衣類・林業用具などを保管していました。1号蔵は主に米蔵として使用されており、床板は約3㎝と厚く丈夫に造られている。また、米俵の重みから内部の壁板を守るため、柱間隔を狭くし、米俵の加重を柱で受けています。
2号蔵では、工芸品が展示されていました。智頭杉を使った年輪彫刻であり、見事なフクロウを見学できます。
もともと2号蔵では、1階に米を保管し、2階に生活用品を保管していたそうです。
【見所⑦】国登録の名勝地「石谷氏庭園」
石谷氏庭園は、池泉庭園・枯山水庭園・芝生庭園から成り立っています。
池泉庭園は、江戸座敷・新建座敷に面しており、座敷から眺めることができますね。綺麗に整備された庭園を眺めていると、こころが落ち着きます。
池泉庭園はいつ頃造られたのかは定かではありませんが、枯山水庭園と芝生庭園は、石谷家の大正新築工事以降に築庭されました。
普段は公開されておらず、春と秋には有料で特別公開されます。
石谷家住宅の基本情報とアクセス
住所 | 鳥取県八頭郡智頭町智頭396 |
電話番号 | 0858-75-3500 |
営業時間 | 10:00~17:00(最終入館16:30) |
休館日 | 水曜日(水曜日が祝日の場合は翌日) 年末年始 |
入館料 | 大人 600円(500円) 高校生 500円(400円) 小・中学生 400円(300円) 幼児・高齢者(80歳以上)・障害者 無料 ※15名以上で団体割引きあり、( )内の金額は割引き後の金額 |
【アクセス】
- JR・智頭急行 智頭駅から徒歩約10分
- 鳥取自動車道「智頭IC」から車で約5分
石谷家住宅の駐車場
石谷家住宅には、専用の駐車場がありません。約400mほど離れたところに、無料の智頭宿駐車場がありますので、そちらを利用しましょう。(普通車30台、大型バスも駐車可)
まとめ
石谷家住宅は、江戸から昭和時代にかけて、古き良き日本の文化に触れられる建築物です。
3,000坪の広大な敷地には、美しい日本庭園や40の部屋がある大屋敷ですよ。邸宅の中をじっくり見学するも良し、縁側から庭園を眺めるのも良しなので、思い思いの時間を過ごしましょう。
智頭町へ訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでみて欲しい大邸宅ですね。