
かつて越中国と呼ばれていた富山県。当時の国府は高岡市に置かれていました。
加賀藩2代当主・前田利長が築いた高岡城の跡地は、高岡古城公園に整備されており、本丸跡に「射水神社(いみずじんじゃ)」が鎮座します。
全国に点在する一宮の中でも江戸時代の城跡に鎮座する唯一の神社ですね。また、伊勢神宮の古材を用いて作られた第一鳥居や、伊勢神宮と同じ造りの社殿などから分かるように、伊勢神宮と深い関りがある神社でもあります。
境内には、ハート型の空洞があるパワースポットの御神木や、茶道に使われていた水鏡の彫刻「竹に虎」、パワーストーン「さざれ石」など見どころ満載。
本記事では、越中国を代表する総鎮守一宮「射水神社」を紹介します。
目次
射水神社のご祭神・ご利益・所要時間

射水神社のくわしい創建は不明ですが、奈良時代に現在の高岡市と氷見市にまたがる二上山(ふたがみやま)を御神体としてお祀りしたのが起源です。
越中国守であった大伴家持(おおとものやかもち)は、日本最古の歌集「万葉集」を編纂し、その中で二上山を神様が宿る山として、多くの歌を詠みました。また、射水神社は平安時代に編纂された「延喜式」の神名帳で、「名神大社」に列せられています。
ちなみに、名神大社とは国家の重大事に特別な祈願を行う対象とされた神々(名神)を祀る神社のこと。射水神社は、越中国で唯一の名神大社ですよ。
もともとは、二上山に鎮座していましたが、1875年(明治8年)に現在地へ移されました。

ご祭神は、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)。天照大御神(あまてらすおおみかみ)の孫で、天孫降臨の神様として知られています。このことから分かるように、天皇家につながる血統の祖ですね。
稲穂を地上にもたらした農業神として崇敬され、「五穀豊穣・商売繁栄・家内安全・開運厄祓・縁結び・みちひらき」など多数のご利益があります。
所要時間は20~30分ほど。境内の広さは、本丸跡ということもあり、窮屈さを感じさせない程よい開放感がGood。社殿や社務所、御神木などがコンパクトにまとめられているので、思った以上に短時間で一通り見て回れます。
色鮮やかな「駐春橋」を渡り境内へ

高岡古城公園の出入り口は、車でのアクセスに便利な北口や、正門に当たる大手口跡が残る南口など複数あります。南口の一つには、南外濠には架かる「駐春橋(ちゅうしゅんばし)」があり、徒歩や自転車で訪れるならば、おすすめの出入り口です。
そもそも駐春橋は歩行者専用の橋のため、車両では渡れません。ただし、自転車は押して歩けば大丈夫ですよ。
青空の下、鮮やかな朱塗りの駐春橋は濠の水面に良く映える格好のフォトスポットなのだから、カメラ撮影しないのはもったいない。春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬は雪化粧した風景に駐春橋を交え、思い出に残る1枚を撮って下さいね。
駐春橋は、通称で太鼓橋と呼ばれており、1881年(明治14年)に開通しました。


駐春橋を渡り、道なりに約220mほど真っ直ぐ歩くと大鳥居が見えてきます。大鳥居の奥には、すでに外拝殿が見えていますが、ちょっと待って下さい。
参道付近には、高岡城の遺構が残されているので、特にお城ファンの方は見物していこう。

それがこちらの本丸と二の丸を結ぶ土橋の石垣です。う~む、見るからに長い時間を歩んできた趣きを感じるぞ。高岡城の大部分の石垣は失われているので、大変貴重な当時の遺構ですよ。

また、駐春橋からの道中には、高岡市出身の戦没者の御霊を祀る「高岡市護國神社」があります。こちらの神社は、射水神社の境外末社ですね。
常駐の神職がいないので、御朱印は射水神社の授与所で授かれます。
銅板が巻かれた「大鳥居」と伊勢神宮から譲り受けた「第一鳥居」

射水神社には、2種類の珍しい鳥居があります。1つは参道に建つ高さ約6~7mの「大鳥居」。何が珍しいかというと、銅板がぐるぐると巻かれているからですね。
1975年の遷座百年祭にあたり修築された結果、今の姿になりました。銅板を根元から巻くことで、地面からの湿気や雨水による腐食から鳥居を守っています。
射水市のお隣の高岡市は、400年以上の歴史がある高岡銅器のお膝元ということで、こちらの鳥居は、高岡銅器の技術で作られているとのこと。

見て下さい、この青緑色の光沢を。夕日に照らされたタイミングで見ると、最高にわびさびを感じるぞ。
銅は雨風にさらされて年月が経つと劣化していくため、赤褐色から渋い黒褐色へ変化し、最終的には青緑色になる。そのことから、神社と共に歩んだ歴史を感じます。

同種の鳥居は、本丸広場側にもあります。大鳥居を比べると小さな鳥居ですが、どちらも重厚感があっていい感じ。思わずパシリと1枚撮ってしまいました。

2つ目の珍しい鳥居は、外拝殿前に立つ「第一鳥居」です。
2015年に伊勢神宮の豊受大神宮(外宮)から板垣北御門(鳥居)を特別に譲り受けて建てられたそうで、このような鳥居は極めて珍しい。木曽檜製の神明鳥居ですよ。
この飾りのない直線的なシンプルな姿からは、木の温もりと清らかさを感じるかな。鳥居前に立つと、自然に背筋をスッと伸ばしてしまいます。
【珍しい鳥居のある神社を紹介】
旅先で訪れた珍しい鳥居のある神社を、下記記事で紹介します。
伊勢神宮と同じ造りの「外拝殿」にご注目

一般の参拝者がお詣りする場所は、外拝殿(げはいでん)までです。外拝殿とは聞きなれない言葉ですが、拝殿が2つ以上ある大きめの神社では、手前側(外側)にある拝殿のことを下拝殿と呼んでいます。
外拝殿・拝殿の造りは、伊勢神宮の正殿の建築様式と同じ神明造(しんめいづくり)。外拝殿前に立つと、そのシンプルな造りが気品に満ちているように感じました。
外拝殿の奥に拝殿があり、その奥には祝詞舎がある。さらに奥には本殿が続きます。本殿の周囲は板塀に囲まれているので、境内から直接見えないのは残念ですね。

屋根に目を向けると、銅板葺なのでビックリ。もともとは、木の薄い板を用いた屋根(柿葺)だったそうで、2025年の遷座150年祭に合わせて修繕されたそうです。
そういえば、愛媛県松山市の三津浜地区へ行った時に、三津厳島神社(こちら記事で紹介)を参拝しましたが、拝殿が銅製の屋根瓦でしたね。改修時にあえて銅製へ切り替える神社の話をちらほらと聞くようになったかも。
やはり決め手は、耐震性の向上と長期的な維持費の抑制だろうな。個人的には、檜皮葺のような伝統的な屋根が好きですが、銅製は年月が経つと独特の深い味わいや美しい質感となるので、これはこれでアリだと思います。

外拝殿の正面に掲げる扁額は、第12代加賀藩主・前田斉泰(まえだ なりやす)の筆によるもの。整った筆跡が、気品と格式の高さを物語っているように感じますね。


そもそも射水神社は、明治政府が定めた近代社格制度において、富山県内で最高位となる国幣中社(こくへいちゅうしゃ)に指定されました。
至るどころで目にする菊の御門は、皇室との深い関わりを象徴する証です。

拝殿の横には、たくさんの酒樽が積まれている。このお酒のことを知っていますか。
銘柄は「勝駒(かちこま)」と言って、実にカッコイイ名前だ。漢字の組み合わせから意味は何となく分かりますが、気になる方は調べてみよう。
香りは控えめだそうで、お米の豊かな旨みと共に透明感を両立しているそうですよ。そして、キレの良い味わいを楽しめると言われています。市場に中々出回らない幻の名酒ということもあり、酒好きの人には瑞泉ものだろうな。

勝駒とともに目を引くのが、大きな絵馬です。射水神社では、毎年年末に来年の干支を描いて奉納されています。
2026年は午年ということで、当然描かれているのは「馬」ですが、明るくてポップな色彩は予想外でしたね。
案内板を読むと、たてがみが虹色になっていて、色々な場所に七色の橋をかけるとのこと。そして、みんなが幸せな場所へ向けて歩けるようにという祈りを表現しているようです。
ジッと眺めていると、胸の内から元気が湧き出るような感じがしました。
縁結びの御神木「紅梅」にはハート型の空洞がある

御神木「紅梅」は、射水神社が二上山山麓から現在地へ移された際、地元の人々から記念に奉納されました。
樹齢400年以上といわれ、例年3月下旬頃には柔らかな紅色の花の見頃を迎えます。なので、その時期に訪れるのがおすすめですね。
この御神木の幹には空洞があるので、近付いてじっくりと見てみよう。すると、角度によってはハートマークに見えてきます。

そのことから、縁結びの御神木として人気を集めていますね。ひょっとして、何かの拍子で傷を負い、長い年月を経てハートの形をかたどったかも。そう思うと、自然が作り出した偶然の形に、小さな奇跡を感じました。
また、梅(うめ)は「産(うめ)」に通じるということで、安産・子授け・子孫繁栄の象徴なんですって。

ハート型の空洞だけでなく、幹回りや足元にも注意を払うと、あちこちに十二支の動物たちの像がひっそりと置かれているのに気が付くと思います。
これらの像は、参拝者が奉納されたものなんだそうですね。動物によっては、サイズが小さすぎて、うっかり見落としてしまうかも。それがかえって、宝探しをしているように感じて楽しい♪
御神体にハート型の空洞や小さな干支の像を見つけると、何か良いことが起こりそうな予感がします。
【神社仏閣の紹介(その1)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
手水舎と水鏡の鮮やかな花手水

射水神社では、四季折々の季節や行事にあわせて花手水が見られます。
生花を使用するので、季節や気温、花の調達状況により開催時期はまちまち。もしお詣りにきて偶然見られたらラッキーですね。
季節により、シャクヤクやアジサイ、ヒマワリ、バラ、アスターなどが手水舎を華やか彩り、季節の移ろいを感じさせてくれます。
私が訪れた日は、赤色や白色、ピンク色のボリューム感たっぷりなシャクヤクが、びっしりと水面に浮かんでおり、見ているだけで癒されました。

手水舎前で、石造りの水鏡の彫刻「竹に虎」を発見。石の面には、立体的に彫られた竹と虎に力強さを感じます。それにジッと見ていると、前向きな気持ちになるかな。
かつては、旧社務所の茶室近くにあったそうで、茶道で手を清める手水鉢の役割を果たしていました。今では、水面に自身の姿を映して心身を清める「水鏡」として使われています。

この水鏡にも華やかなシャクヤクが浮かんでいると、石造りの彫刻がパッと明るくなる。凛々しさと華やかさが調和した光景が良いですね。
ちなみに、射水神社では様々な御朱印があり、その中の一つに立体的な竹と虎の彫刻をデザインにした物もあります。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
「君が代」の歌詞に登場する「さざれ石」

さざれ石といえば、日本の国家「君が代」の歌詞に登場するので、知らない人はほぼいないと思います。
神社仏閣巡りをしていると、見かける機会はそこそこありますが、初めて見る人は「これが、さざれ石か~」と言って驚くのではないだろうか。
そもそもさざれ石は、石灰岩が雨水に溶けてコンクリート状の成分になると、小石や砂利の隙間を埋めるまで数万年~数百万年という途方もない歳月を経て固まり成長する石です。このことから、強い団結や永続・繁栄の象徴ですね。
ちなみに、国家には「さざれ石の巌となりて苔の生すまで」の一節に登場。この意味を紐解くと、小さな石が結びついて大きな岩になり、さらに苔が生えるほど長い年月が経つまで代々栄えますようにという、祈りが込められています。
古来から日本では、巨石や奇岩に神様が宿ると信じられてきました。さざれ石は「神霊の宿る石」とも呼ばれています。
夏場に開催される「赤ちゃん泣き笑い相撲」

神社に相撲場があるのは、それほど珍しくはありませんが、射水神社の入り口付近にある相撲場では、ユニークな「赤ちゃん泣き笑い相撲」が開催されるので、興味がある方は開催時期に足を運んでみよう。
赤ちゃんの健やかな成長を祈願する人気の行事で、参加する赤ちゃんは生後半年から2歳未満(または1歳半くらいまで)ですよ。化粧まわしをつけて土俵入りするそうな。
軍配(勝敗)の付け方がほのぼのしていて実に良し。赤ちゃんの元気な泣き声や満面の笑顔などで判断します。また、横綱・大関・関脇などの番付があるのも本格的?
勝敗はともかく、元気な姿を神様に見てもらうのが一番大事。赤ちゃんの可愛らしさにメロメロになるかも。家族による応援合戦が白熱するのも頷けますね。
射水神社の基本情報とアクセス
| 住所 | 富山県高岡市古城1番1号(高岡古城公園内) |
| 電話番号 | 0766-22-3104 |
【アクセス】
- JR高岡駅から徒歩約18分
- 万葉線・坂下町駅から徒歩約11分
- 能越自動車道「高岡IC」から車で約15分
射水神社の駐車場
射水神社の境内には、参拝者専用の無料駐車場があります。(普通車20台)
まとめ

高岡市にある自然豊かな高岡古城公園内には、伊勢神宮と深い関りを持つ「射水神社」が鎮座します。
境内には、伊勢神宮の古材を用いて作られた第一鳥居や、伊勢神宮と同じ唯一神明造の社殿、縁結びのパワースポットである御神木「紅梅」、水鏡の彫刻「竹に虎」など見どころ満載。じっくりと見て回ろう。
もし時間に余裕があれば、射水神社の参拝だけでなく、高岡古城公園内をゆっくりと散策するのも良いですね。
高岡市の玄関口・高岡駅から歩いて行ける範囲にあるので、アクセスも良し。高岡市へ訪れた際には、越中国を代表する総鎮守一宮「射水神社」へお詣りに足を運んでみてはいかがですか。



