
力強く大地を駆け抜ける馬は、古来より神様の乗り物として大切にされてきました。そんな「馬」に縁のある神社は、国内にたくさん点在していますね。
けれど「競馬神事」が伝わる神社は、岡山県浅口市の「大浦神社(おおうらじんじゃ)」のみ。460年以上続く伝統ある神事です。
大鳥居をくぐり抜け、石灯籠が並ぶ参道を歩き、立派な拝殿にてお詣りしよう。そして拝殿前にある大きな絵馬のカラクリを体験して下さいね。また、「馬」がデザインされた豊富な御朱印や、黄金色の勝守も魅力的です。
本記事では、陰陽師・安部晴明(あべの せいめい)が創建した「馬」と縁が深いパワースポット「大浦神社」を紹介します。
目次
大浦神社のご祭神・ご利益・所要時間

大浦神社は、岡山県浅口市寄島町に位置する古い歴史を持つ神社です。冒頭で触れた通り、平安時代に大活躍した陰陽師・安倍晴明が、997年に創建しました。
安倍晴明については、多くの物語や映画の題材になっているので、知っている人も多いでしょう。
当初は、現在沖合に浮かぶ三郎島の霊地にて、神様をお祀りして始まったのですが、永禄年間に備中国浅口郡(現在の浅口市)の守護を務めた細川通董(ほそかわ みちただ)公が、現在地に社殿を移し今に至ります。
また、1869年までは八幡宮だったこともあり、地元では親しみを込めて今でも「八幡様」と呼ばれているそうですね。

ご祭神は、応神天皇(おうじんてんのう)、中哀天皇(ちゅうあいてんのう)、神功皇后(じんぐうこうごう)です。ご利益には「勝負運・商売繁盛・学業成就・安産祈願・心願成就」などがあります。
所要時間は、境内を一通りゆっくりと見て回ると30~60分ほど。「本殿」「祝詞殿、幣殿及び拝殿」「鳥居」は、2019年(令和元年)に国の登録有形文化財になりました。
約460年の伝統を誇る国内唯一の「競馬神事」

大浦神社では、毎年10月の第一日曜に秋季例大祭があり、そこで奉納されるのが「競馬神事」です。
1559年に通董公が社殿を三郎島から現在地へ移した際に、神幸行事として地頭株と領家株が、それぞれ神馬を20頭づつ参列させたのが始まりだと言われています。
現在の競馬神事では2頭のみですが、祭りの当日に神様を乗せた神輿と共に町中を巡り、夕方頃に神社へ戻ります。そして、大勢の観客の中、威勢の良い掛け声と共に神輿や船の形をした山車(御船)の激しい練りを披露してくれる。
最後には、2頭の神馬が12回も観客の目の前をダイナミックに駆け抜けるぞ。その姿を見ているだけでも手に汗を握り、テンションが最高潮に達するでしょう。

話は変わりますが、境内の片隅にあるこちらの数本の石柱は、何だか分かりますか。
実は、これらの石柱は古くから出番を待つ神馬をつなぎ止めておくための物です。ジッと眺めていると、思わず神馬が静かに佇む姿を想像してしまいました。

また、境内の一角には御厩舎(おんきゅうしゃ)があります。そもそも御厩舎とは、神馬を保護するための建物ですよ。
大きさからして、おそらく神馬像があるのだろうな。ということで、中を覗いてみると・・・

やっぱり安置されていました。それにしても静かに佇むリアルな白馬の像がいい感じ。温かみを感じる木彫りの神馬の表情は、愛嬌があって個人的に気に入りました。
勝運や飛躍、交通安全の象徴としてご利益があるそうで、参拝者が祈願に足を運ぶスポットとなっています。
犬養毅元首相が揮毫した扁額のある「大鳥居」

大浦神社の大鳥居は、北木島で産出した花崗岩を使い、1927年に造られた明神鳥居です。その大きさは高さ6.5m、柱間4.5mと堂々とした立派なものとなっています。2019年に国の登録有形文化財として登録されました。
花崗岩製の鳥居自体は、全国的にみるとそれほど珍しくはありませんが、扁額には書かれた文字に注目して下さい。この文字は、岡山県出身の第29代内閣総理大臣・犬養毅(いぬかい つよし)によって揮毫されたものです。
このことから、犬養毅元首相と深い関りがあることが分かります。ちなみに、社号標の文字は鳥居の扁額に刻まれていた文字を拡大して、彫られたそうですよ。

彼は五・一五事件で暗殺されて帰らぬ人となりましたが、「民意こそが政治を動かす」の信念の下、暗殺される直前になっても「対話」と「希望」を信じ続けました。
その話は語り伝わっているので、感銘をうけた人も多いだろう。どのような時代でも納得するまで「対話」を続けなければ、より良い関係性を築けないと思います。そういう意味では、犬養毅元首相の考え方は大事ですね。

鳥居をくぐり抜けて、参道を歩いているとユニークなものを見つけました。それが、奉納された龍瓦や鬼瓦たち。熟練の職人たちが作り上げたのだろうな。豊かな表情がいい感じなので、お見逃しなく。
歴史が息づく立派な社殿

大浦神社の拝殿を正面から眺めると、千鳥破風の屋根と張り出した向拝が特徴的であり、大きな注連縄が印象に残ります。
さらに手前両側には、天に向けて松が伸びており、社殿にあしらわれた霊獣の彫刻もGood。個人的にカッコイイ拝殿と思いました。
拝殿の奥には、幣殿・祝詞殿・本殿が配置されていて、全体的に厳かな雰囲気を醸し出す景観が良いですね。

賽銭箱がある場所から上を見上げると、干支(十二支)が描かれた方位盤を発見。鬼門(丑寅=北東)と吉方位(辰巳=東南)が一目で分かります。
ちなみに、大浦神社の社殿は「辰巳」の方角を向いているという。これは、もともと鎮座していた三郎島の方角とのこと。そういう配慮は、何だか良いですね。

こちらの本殿にも注目しよう。どうですか大きいでしょ。実は岡山県内でも最大級の大きさなんだとか。今の本殿は1928年(昭和2年)に再建されました。
屋根は檜皮葺(ひわだぶき)に似せて作られた銅板葺であり、2015年に改修されたもの。比較的新しい屋根ですが、味わい深さを感じます。

こちらの絵馬殿は、1996年(平成8年)に新築されました。大小様々な絵馬が飾られています。
神社にもよりますが、神社の壁や天井で見かける絵馬は風化して、色がそれなりに落ちたものが多いですね。


しかし大浦神社の絵馬殿は、まだ比較的新しいということもあり、平成の絵馬が多いです。特に干支を描いた大きな絵馬は、見応えがあるのでお見逃しなく。

絵馬以外にも色々な展示物があります。馬の装具があったのには驚きましたが、競馬神事を行なう神社なので、あっても不思議ではないだろう。
馬の背に乗せる「鞍(くら)」や、馬に乗る際に人の足を乗せる「鐙(あぶみ)」などが展示さていました。ひっとすると、競馬神事へ参加する馬に使われていた物かも。(本当かどうかは分かりません)
また、2頭の馬をあしらったデザインの道鏡や、ほら貝なども展示されています。
【神社仏閣の紹介(その1)】
旅先で訪れた岡山県内の神社仏閣を、下記記事で紹介します。
「馬」をデザインした豊富な御朱印とお守り

大浦神社では、馬ゆかりの神社ならではの豊富な御朱印を授与しています。
馬をあしらった切り絵御朱印を始め、凛々しい馬を描いたものや競馬神事の様子を描いたものなどオリジナリティーにあふれており、見ているだけで楽しいですね。
もちろん神社のお名前だけのシンプルなものもありますので、自分の好みの御朱印を手に入れよう。

特に切り絵御朱印は、同じデザインでも色違いがあるので、重ねる色紙によっては受ける印象が全く異なります。
このようなアート性の高い御朱印は、まるで一枚の絵画のように感じました。



また、御朱印と共に注目したいのはお守りです。大浦神社のお守りは、ポピュラーな健康守や開運厄除以外にも馬にちなんだユニークなものがいっぱい。
特に注目したいのが「黄金色の勝守」ですね。競馬神事を連想させる、凛々しい馬が描かれた勝守は、勝負・商売・勉強・恋愛など「何にでも勝つ!」という力強さを感じてやみません。
その他にもあわび結びの馬をモチーフにしたお守り(水引き守り)や、馬のひづめを保護するために装着する蹄鉄(ていてつ)型のお守り(うまくいく守り)などがあります。

御朱印やお守りを眺めていると「競馬せんべい」なるものを発見。 寄島の三ツ山と「競馬神事」が描かれた包装紙のデザインが目を引きました。
ほんのり甘く、サクサクとした食感が楽しめる塩味とたまご味のせんべいなんだそうな。参拝のお土産に丁度良いのではないでしょうか。
拝殿前にある「動く馬の絵馬」に注目

拝殿前には、大きな絵馬が置かれていますが、見た目からして私たちが良く知る絵馬とは勝手が違うようです。
その絵馬は、DIYで作るような木製の馬がいて、見るからに可動部が存在しますね。そうです、これはカラクリ絵馬ですよ。
絵馬の左下隅には、朱色の丸ハンドルがあり、その上部には回るように指示する矢印が描かれている。もうお判りだと思いますが、ハンドルをゆっくりと回してみよう。

すると、とたんに馬の脚が動き出しました。ハンドルを回すほど激しく脚が動き、その姿はまるで草原を疾走しているかのようです。このような演出は個人的に大好き。
幸運やチャンスが飛び込んできてくれるような感じがします。ぜひ体験してみて下さいね。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で訪れた岡山県内の神社仏閣を、下記記事で紹介します。
大浦神社の起源となった「三郎島」

岡山県浅口市寄島町の沖合には、寄島町を象徴する名勝「三ツ山」が浮かんでいます。この山が大浦神社の起源となった三郎島(さぶろうじま)ですね。
大浦神社から南へ約2.5kmほど離れた場所にあり、近くには三ツ山スポーツ公園があるので、駐車場には困りません。
三ツ山は、その名の通り規則正しく並ぶ3つの山が印象的です。高さ約10m、長さ15m、約6m間隔で一列に並んでいます。また、見る角度によって山が重なり一つの山に見えることも。
海面に佇む姿が美しく、思わずカメラのシャッターを切ってしまいました。なので、撮影スポットにもおすすめ。特に夕日や朝日が差し込む時間帯がベストです。

干潮時には、本土から歩いて渡れるので、興味がある方はタイミングをあわせて訪れよう。(くわしくは三ツ山の潮見表を確認のこと)
ちなみに寄島は、干拓工事により本土と陸続きになりました。締切堤防の内側にある塩性湿地には、希少植物のアッケシソウの自生地があります。毎年10月中旬になると「アッケシソウ祭り」が開催され、深紅のサンゴのような美しく紅葉した姿を見物できますね。
大浦神社の基本情報とアクセス
| 住所 | 岡山県浅口市寄島町7756 |
| 電話番号 | 0865-54-2408 |
【アクセス】
- JR鴨方駅・JR里庄駅からタクシーで約10分
- 山陽自動車道「鴨方IC」から車で約15分
大浦神社の駐車場
大浦神社には、無料駐車場があります。(普通車10台)
まとめ

大浦神社は、安部晴明が創建した「馬」と縁が深いパワースポットです。馬のように力強く、軽やかに駆け上がる勝運を期待できます。また、毎年10月の秋季大祭で行われる「競馬神事」は、国内で唯一の存在ですね。
馬ゆかりの神社ならでは授与品もいっぱい。バラエティーに富んだ御朱印や黄金色の勝守、絵馬などを手に入れよう。さらに馬の焼印が押された競馬せんべいは、お土産にぴったり。
岡山県浅口市に観光へ訪れる際には、ぜひ大浦神社へ足を運び必勝祈願をしてみてはいかがですか。

