日本の夜を守る役割を持つ神社を知っていますか。
それが「日御碕神社(ひのみさきじんじゃ)」です。伊勢神宮が昼を守り、夜は日御碕神社が守る存在として、古くから大切に祀られてきました。
そのような唯一無二の存在でありますが、地元では親しみを込めて「みさきさん」と呼ばれています。
美しい朱塗りの楼門や社殿は見ごたえがあり、境内には数多くの重要文化財を見物できる。凛と身が引き締まる神聖な雰囲気が漂う境内を歩きながら、ゆっくりと参拝しましょう。
本記事では、島根のパワースポットの1つである日御碕神社の魅力と見どころを紹介します。
日御碕神社とは
日御碕神社は、島根県出雲市に位置し、島根半島西端の日御碕に鎮座しています。
その歴史は古く、創建は第3代・安寧天皇の時代までさかのぼるという。少なくとも古事記では、紀元前660年と伝えていますので、紀元前5世紀頃とみて間違いないでしょう。
日御碕神社の呼び名は、日沈宮(ひしずみのみや)と神の宮(かむのみや)の2社の総称です。もともとは、別の場所にありましたが、約1000年前の当時の村上天皇の勅命により、今の場所へ遷座されました。
その時の勅命の中に「伊勢神宮が日本の昼を守る、そして日御碕神社は日本の夜を守れ」のフレーズがあったそうですよ。
日御碕神社には、日沈宮や神の宮を始め、楼門・回廊・門客人社など12棟の社殿が、国の重要文化財に指定されている。それに社殿だけでなく、鳥居や石灯籠にも国の重要文化財に指定されたものがあり、見ごたえがありますね。
2017年には、「日が沈む聖地出雲~神が創り出した地の夕日を巡る~」のストーリが日本遺産に認定され、日御碕神社は構成文化財に含まれています。
【周辺の見所】
日御碕神社周辺の見所を、下記記事で紹介します。
日御碕神社のご祭神・ご利益・所要時間
日御碕神社の御祭神は、以下の通りです。
- 日沈宮(下の宮):天照大御神(あまてらすおおみかみ)
- 神の宮(上の宮):素戔嗚尊(すさのおのみこと)
これは、出雲大社の「上の宮」と「下の宮」と同じ。天照大御神は、日本神話の中でも超VIPな太陽の女神様。高天原を統べる主宰神ですね。その弟が、八岐大蛇を倒したことで有名な素戔嗚尊ですよ。
この2柱に月読命(つくよみのみこと)を含めて、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)から生まれた三貴子と呼ばれています。
こちらの境内配置図を見てわかるように、境内はそれなりの広さがあり、一通り見て回るには、ゆっくり歩いて50~80分ほどかかります。
ご利益は「厄除け・縁結び・夫婦円満・家運繁栄・交通安全・海上安全・商売繁盛・金運招福・諸願成就・五穀豊穣」など数が多い。特に厄除けのご利益が有名です。
【カメラに関する話】
日御碕神社は写真映えするところが多いフォトスポットです。旅の思い出にカメラ撮影を楽しみましょう。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
国の重要文化財のオンパレード、魅力ある社殿など見どころを紹介
日御碕神社には、数多くの国の重要文化財があるため、見ごたえがありますね。
鎌倉時代以降、幕府や武将の崇敬も篤く、源頼朝が寄進した白糸縅甲冑(しろいとおどしかっちゅう)は国宝ですよ。また、江戸幕府3代将軍・徳川家光の命により再建された社殿が今も数多く残っています。
本殿もその内の1つで、華やかな桃山時代の面影を見て取れるので、じっくり見物しよう。それでは、日御碕神社の見どころを紹介します。
【見所①】鳥居と楼門
境内へはいる入口となる鳥居に注目。気にしなければ、よく見かける鳥居なのでスルーしてしまうかも。実はこの鳥居が国の重要文化財です。
花崗岩でできたこの鳥居は、かつては参道入口の宇龍(出雲市大社町)にありました。今の場所には、1935年(昭和10年)に移されたそうです。その際に銘文が見つかったため、3代将軍・徳川家光が1639年(寛永16年)に寄進したことが分かりました。
鳥居の正面には、「楼門」が見て取れる。大きな朱塗りの楼門は、青空に良く映えています。もちろん、この立派な楼門も国の重要文化財ですよ。
楼門の左右には木製の狛犬がいますが、その姿がメカにしか見えない。そのように感じるのは、私だけじゃないと思うな。
楼門前は、とても写真映えする場所なので、記念撮影におすすめします。
【神社仏閣の紹介(その1)】
島根県内の神社仏閣を、下記記事で紹介します。
【見所②】日沈宮と妻飾り
日沈宮(ひしずみのみや)は、国の重要文化財に指定されています。当初は、近海に浮かぶ経島(ふみしま)にありました。
これは、昔に天照大御神が降臨された際、「吾はこれ日ノ神なり。此処に鎮りて天下の人民を恵まん。汝速かに吾を祀れ」という御神託により建立されたのです。948年に村上天皇の勅命で今の場所へ遷座されました。
日沈宮は、日本の夜を守る神社という特別感がある。朱塗りの色鮮やか外観は目を引きますね。
また、檜皮葺の黒い屋根と大きな注連縄(しめなわ)も良い感じ。拝殿前に立てば、パワーがみなぎっているのを感じ取れるでしょう。
拝殿の奥に本殿があります。現在の本殿は、当時の松江藩主であった京極忠高が1634年(寛永11年)に着手してから、10年の歳月を費やし、1644年に松平直政が完成させました。
本殿では妻飾りに注目してみよう。中央に「太陽」、右側に「月」、左側には「星」が彫刻されている。それぞれが、天照大御神、月読命、素戔嗚尊を表しています。
なるほど、3兄弟がそろいぶみ。そういえば、月読命が祀られていないのを疑問を思う人も多いと思う。調べてみると、日御碕神社から少し離れた場所に、月読神社があるということ。山奥にあるので、訪れる場合は動きやすい服装で行きましょう。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
【見所③】神の宮
楼門をくぐり抜け、右手側の小高い場所にあるのが「神の宮」です。神の宮も国の重要文化財ですよ。ここでは、素盞嗚尊が祀られています。
素盞嗚尊が出雲で国造りをしている最中に、根の国(黄泉国)より「吾が神魂はこの柏葉の止まる所に住まん」と柏の葉を投げて占うと、隠ヶ丘にとまりました。そういう経緯で、かつては隠ヶ丘に鎮座していましたが、安寧天皇の勅命にて、今の場所へ遷座した歴史があります。
日御碕は、素盞嗚尊の御霊が鎮まる霊地であり、厄災除・開運の神として、多くの崇敬者が後を絶ちません。
【見所④】蟇股(かえるまた)の彫刻
社殿や楼門を見上げると、梁や桁の上に置かれた蛙股(かえるまた)と呼ばれる部材に、色鮮やかな彫刻が目に留まります。
その彫刻は、動物や植物などバラエティーに富んでおり、見ているだけで楽しい。竜虎や鶴亀、松竹梅、草花など実に見ごたえがあります。
1つとして同じデザインがないので、見逃しに注意。桃山時代の特徴であるきらびやかな装飾は、印象深いですね。
【神社参拝に役立つ話】
神社を参拝する際、役立つ話を下記記事で紹介します。
【見所⑤】パワースポットの稲荷神社など数多くの境内社
境内には、数多くの境内社があります。楼門をくぐり抜けると直ぐに見かけるのが、左右に1つづつある門客人社(かどまろうどしゃ)。
社殿に向かって左手側には、豊磐間戸神(とよいわまとのかみ)を祀り、右手側は櫛磐間戸神(くしいわまとのかみ)を祀る。どちらも国の重要文化財です。
その他には、十九社摂末社や韓國神社、荒魂神社、御井神社などがある。十九社摂末社の近くには、宝庫があり、これも国の重要文化財ですよ。
境内の中でも、ひと際雰囲気がある場所が朱塗りの鳥居が並ぶ場所。「絶対に何かある」と感じました。
鳥居の中を通過し、奥の階段を上ると稲荷神社を発見。
聞くところによると、「善良な人でなければ辿り着けない」パワースポットということ。ぜひ参拝をおすすめします。
また、駐車場の近くには宗像神社があり、宗像三女神の1柱である田心姫命(たごりひめのみこと)をお祀りしている。社の周りが、堀となっているので少し珍しいですね。
【見所⑥】朱塗りの回廊と神紋石舎、和布刈神事のレリーフ
朱塗りのシンプルな回廊は、歩くだけでテンションが上がりますね。この回廊も国の重要文化財です。
シンプルですが、華やかで優美さを感じとれる。記念撮影するのに向いていると思います。
こちらは、神紋石舎。
社の中には、隠ヶ丘への鎮座の由来となった柏の葉の化石である「神紋石」が祀られている。
また、鳥居をくぐり抜けて、参道脇には大きなレリーフがありました。
これは、「和布刈(めかり)神事」の情景を表したもの。
今でも旧暦1月5日に神職が宇竜浦に浮かぶ権現島へ渡り、ワカメを刈り取って、神前に供え豊漁を祈願しています。この神事が終了すれば、ワカメの採取が始まりますね。
見逃すのはもったいない、日御碕神社の遠景
稲佐の浜から日御碕神社へ向かう日御碕街道(県道29号)では、日御碕神社全体を俯瞰する場所があります。
日本海をバックにして、色鮮やかな社殿が見て取れる。カメラのズーム機能を使って撮影したのがこちらの写真。
緑に囲まれ、ひっそりと佇む姿が神秘的な感じを醸し出している。
日御碕街道を通過中に「100m先左眼下 日御碕神社遠景」という看板がありますので、見落とさないように注意しよう。
聖なる島「経島」を遥拝しよう
駐車場から西へ約2~4分ほど歩くと、漁港へ辿り着きます。そこから浅瀬に浮かぶ大きな島が見えてくる。その島こそが、かつて日沈宮があった聖なる島「経島(ふみしま)」です。
目を凝らしてみれば、島の上に小さな社と鳥居があることが分かるでしょう。
また、この経島はウミネコの繁殖地として有名ですよ。シーズンになれば、地元のメディアに取り上げられるほど凄いとか。
一般人は渡ることが禁止されており、毎年、8月7日の「神幸祭(みゆきしんじ)」の際に、宮司だけが渡れます。なので、経島の社に向かって、手を合わせて遥拝してみてはいかがですか。
日御碕神社の「砂のお守り」について
日御碕神社には「御神砂守(別名:砂のお守り)」という貴重なお守りがあります。
1日に決められた数だけしか授与されないので、手に入れるには運が必要かも。必ずしも陳列されているとは限らないので、神職の方へ話をして出してもらいましょう。
このお守りに使われている神砂は、奇跡のような効果があるという。昭和40年に交通事故で医者から見放されるほどの大怪我を負った人が、神砂を塗ったところ、たちまち完治しました。このようないわれがあるため、厄除けや交通安全にご利益があります。
日御碕神社の基本情報とアクセス
住所 | 島根県出雲市大社町日御碕455 |
電話番号 | 0853-54-5261 |
社務所営業時間 | 8:30~16:50 |
【アクセス】
- 出雲大社から車で約15分
- 山陰自動車道「出雲IC」から車で約25分
- JR出雲市駅からバスで約57分、出雲大社バスターミナルからバスで約20分
- 両方とも日御碕神社のバス停下車後、徒歩約1分
- バスは1日8本と少なく、日帰りするならば最終バスに乗り遅れないよう注意が必要
日御碕神社の駐車場
日御碕神社には、無料駐車場が2ヶ所あります。
楼門前の左手側にある駐車場は、普通車が約30台ほど駐車できる広さがある。利用時間は、8:00~18:00までです。
時間外になると閉鎖されるので、気を付けましょう。
また、鳥居から東へ約1分ほど歩くと、バス停が併設された駐車場があり、そこにはトレイが設置されています。駐車スペースは、普通車が約10台ほどです。
まとめ
島根半島西端の日御碕は、島根県が誇るパワースポットの1つ「日御碕神社」が鎮座しています。
古くから日本の夜を守る役割を果たしてきた由緒正しい神社であり、桃山文化の面影を残す社殿は実に美しいですね。
境内には、石鳥居や楼門、神の宮、日沈宮など数多くの重要文化財がありますので、じっくり見物していこう。凛と気が引き締まる空気感を感じる場所なので、そこにいるだけで心が洗われてきます。
徒歩約12分ほど離れたところには、石造り灯台で日本一の高さを誇る「日御碕灯台」がありますので、合わせて訪れてみてはいかがですか。