古来より神様の島として知られる厳島(宮島)の中央には、信仰の対象となっている「弥山(みせん)」がそびえ立ちます。
2つのロープウェイを乗り継いで、獅子岩駅へ到着後、頂上を目指し登山しよう。標高535mの弥山山頂には、展望台が整備されており、瀬戸内海の絶景を満喫できる。
さらに「弥山本堂・霊火堂・三鬼堂」など宮島・弥山のパワースポットは見逃せません。
本記事では、弥山山頂まで登山しながら楽しめる、霊峰「弥山」の魅力ある見どころを紹介します。
宮島の霊峰「弥山」とは
宮島の最高峰である「弥山」は、原始的植物や温暖地帯の植物など様々な植物の分布が見られる豊かな自然を体感できます。
また、約1200年前に弘法大師・空海により、開基された伝説が残る宮島信仰の聖地です。登山道には、史跡や磐座石などが残り、歴史ロマンを楽しめる。
そして、山頂には展望台兼休憩所が整備されており、そこから眼下に広がる瀬戸内海の絶景をぜひご覧あれ。初代内閣総理大臣・伊藤博文が「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と言わしめるほどの景色ですよ。
弥山の山麓は、ユネスコの世界遺産「厳島神社」の登録区域の一部に指定されています。
【周辺の見どころ】
弥山周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
ロープウェイを利用する弥山山頂までの登山コース
一般的な弥山山頂までの登山コースを紹介します。
まずは、宮島ロープウェイ紅葉谷駅まで歩いていこう。フェリーで宮島へ上陸後、宮島桟橋前の広場から紅葉谷駅までは徒歩約25分ほどで辿り着く。
「えっ、そんなに歩くの?」と思う方もいるだろうがご安心あれ。実は、紅葉谷公園入口から紅葉谷駅までは無料のシャトルバスが運行している。(毎時10・30・50分の20分間隔でほぼ運行)
ちなみに、紅葉谷公園までは徒歩約20分ほどだ。たった5分。されど5分といえど、紅葉谷駅までは上り坂になるので、バスの存在はありがたい。
こちらは紅葉谷駅。ここからロープウェイに乗って出発し、榧谷駅(かやたにえき)で降りる。
その後、次のロープウェイを乗り継いで獅子岩駅まで移動します。
ロープウェイの高度が高くなるにつれ、素晴らしい景色が見えてくる。この景色だけでも、ロープウェイを利用する価値は十分にあると思う。
獅子岩駅へ到着後は、すぐ近くには「獅子岩展望台」があるので必ず訪れたい。
この獅子岩駅から山頂までは、約30分ほど歩くことになる。道中水分補給できるところが1ヶ所しかない。そのため、飲料を持参していないのならば、この駅で買っておくのが無難です。
ちなみに20分ほど歩けば霊火堂へ辿り着き、そこで飲料の入手が可能ですが、そこに至るまでの山道の登りは、それなりにキツイですよ。なので、飲料を忘れずに用意しよう。
こちらは、弥山山頂までの案内図。
右隅の獅子岩駅から中央の弥山本堂・霊火堂までは1本道で、そこから道が分岐していますが、山頂まではほぼ1本道となるので、道に迷う心配は少ないだろう。
整備された道といえども、足場が歩きにくいところがあったりするので、動きやすい服装は必須です。
ロープウェイを使わず、麓から登山道を歩いて山頂まで行けますが、弥山は急峻で迷い込むと危険な山であることは、あらかじめ知っておきたい。体力に自信がなかったり、時間に余裕のない方はロープウェイを使うのがおすすめです。
【登山に持っていきたいアイテムの紹介】
登山へ出かける際、持っていきたいアイテムを、下記記事で紹介します。
ロープウェイを利用しないコースの紹介
ロープウェイを使わずに、麓から山頂へ向かうコースを以下にまとめました。
- 紅葉谷コース(片道の所要時間:約90分)
- 大聖院コース(片道の所要時間:約90~120分)
- 大元公園コース(片道の所要時間:約120分)
紅葉谷コースは、紅葉谷公園から紅葉谷川に沿って登る初心者向きのコースです。
一方、大聖院コースは、石段が多く大聖院から仁王門跡を経由する。多くの史跡が見られるので歴史ロマンを満喫できるおすすめのコースですね。
最後に紹介するのが、大元公園コース。大元公園から岩屋大師を経由する弥山原始林を歩きます。分岐点が多いので道を間違えないよう気を付けよう。
ロープウェイで移動し、弥山山頂まで登った後で、帰路にこれらのコースで下山するのはアリですね。
ちなみに、私は大聖院コースで下山しました。私が訪れた日がたまたまだったのか、下山中に50~60人ほどの観光客を見かけましたね。観光客のほとんどが外国人が占めていましたが、わざわざ日本まで海を越えてくるだけあって、バイタリティがすごいと感心しました。
尚、登山の様子については、下記記事で紹介します。
ロープウェイによる空中散歩
先ほども触れましたが、ロープウェイは1回の乗り継ぎを行ないます。
紅葉谷駅~榧谷駅(かやたにえき)間は、乗車時間約10分の循環式で、1分おきに出発。8人乗りのロープウェイで、可愛らしいフォルムがGood。
そして、榧谷駅~獅子岩駅間は、乗車時間が約4分の交走式となり、15分おきに出発しているので、多少待ち時間があることも。
しかし、眼前の壮大な自然を眺めて入れば、そんなのは気にならないかな。ちなみに、この区間は30人乗りの大きなロープウェイで運行しています。
こちらは、ロープウェイからの眺め。このような景色を見るだけで、ハイテンションになり、まるで空を歩いているかのようだ。
2つロープウェイの乗車時間を合わすと、約14間の空中散歩を楽しめます。
- 営業時間 9:00~16:00(下り最終時刻 16:30)
- 料金
- 大人(中学生以上)往復:2,000円(1,800円)
- 大人(中学生以上)片道:1,100円(1,000円)
- 小人(小学生)往復:1,000円(900円)
- 小人(小学生)片道:550円(500円)
- 15名以上で団体割引きあり、( )内の金額は割引き後の料金
- 1歳以上6歳未満の幼児は、保護者同伴につき1名無料、2名から小人料金が発生
展望台から眺める瀬戸内の絶景
山頂までの道中では、絶景を楽しむ機会は多いです。その中でも整備された展望台からの眺めは、実に素晴らしいので紹介します。
獅子岩展望台
標高433mに整備された獅子岩展望台は、弥山山頂からの景色に匹敵するほどの絶景が楽しめる展望台です。獅子岩駅から徒歩約2分と近くにあるため、ぜひ足を運んでもらいたい。
眼下には、厳島海峡や大奈佐美島、江田島、能美島など安芸灘の島々が広がり、これぞ瀬戸内海といえる多島美を望める。
展望台のそばには、小さな東屋やベンチもあるので、ここでまったりと過ごすのもよいですね。山頂まで登る時間や体力に自信がない方は、この景色を見てから帰路に付こう。
ロープウェイから見る景色と獅子岩展望台の眺望だけでも、弥山へ登る価値は十分にあります。
弥山展望台
弥山山頂にある360度のパノラマ絶景が楽しめる展望台です。獅子岩展望台より、標高が約100mほど高くなり、その分より遠くまで見渡せます。
2013年10月に完成した弥山展望台は、周囲の景観に調和しているデザインがよいですね。トイレや休憩スペースは整備されていますが、残念ながら自動販売機などは設置されていないため、飲料は持参して足を運ぼう。
展望台からの景色を、ダイジェストで紹介します。
苦労して訪れた分、感動もひとしおだ。さすが伊藤博文がべた褒めする景色。オンリーワンの景色を楽しめる。
また、山頂一帯は景色だけでなく、迫力ある圧巻の巨石群も見逃せない。
これらは、古代信仰の磐座(いわくら)で、山自体が信仰の対象であったことの証拠ですね。
【旅先で気軽に上れる山の紹介】
比較的登りやすい山を、下記記事で紹介します。
宮島・弥山のパワースポットの紹介
弥山には、弘法大師・空海とゆかりある数多くの堂宇が建っています。
山頂を目指すルート上には、弥山本堂・霊火堂・三鬼堂・文殊堂・観音堂・大日堂などがあり、出来るだけ足を運びたいものですね。
また、山頂コースからは少し外れますが、厳島神社の奥宮・御山神社が鎮座しているので、興味がある方は訪れてみよう。本記事では、休憩スポットにもなる弥山本堂周辺の堂宇について紹介します。
弘法大師が修行した「弥山本堂」
弥山本堂は、大聖院の堂宇の1つであり、広島新四国八十八ヶ所霊場の1つです。お堂の中央には、人々に知恵を授けてくれる金色の虚空蔵菩薩像(こくうぞうぼさつ)が安置されています。
現在の建物は、1955年(昭和30年)に再建されました。堂内には、平安時代に平宗盛が寄進した「宗盛の梵鐘(むねもりのぼんしょう)」があります。重要文化財に指定された一品なので、じっくり見物していきたい。
創建は平安時代初期といわれており、唐から帰国した弘法大師が、霊地を探し求めて宮島へ立ち寄った際、弥山にお堂を建てて100日間にわたり求聞持秘法の修行を行ないました。
求聞持秘法とは、真言宗に伝わる、記憶力増進のための修法なんだとか。なるほど、これは私も修めたい。特に受験生には垂涎の的ではないだろうか。
個人的に気に入ったのが、こちらの小さなお地蔵様たち。「ねがい地蔵・ごめんね地蔵」という名前で、願いや懺悔の気持ちが託されたお地蔵様なんだそうだ。少し首を傾けた仕草が可愛いですね。
弥山本堂は、平清盛や福島正則、足利義尚など歴史上の人物に信仰が篤かったといわれています。
【お寺の紹介】
旅先で訪れたお寺を、下記記事で紹介します。
消えずの火で知られる「霊火堂」
霊火堂(れいかどう)は、弥山本堂と同じく大聖院の堂宇の1つであり、弥山本堂の向かいに建っています。創建は、弥山本堂と同じ時期で、ご本尊は不動明王ですね。
お堂の中へ入ると、いきなり目の前に囲炉裏があり、これが「消えずの火」ですよ。
弘法大師が修行の際に使っていた霊火であり、1200年以上経過した今でも燃え続けているという。そのため、消えずの火で沸かしたお湯は霊水になり、「万病に効く」「幸福になる」というご利益があるそうだ。
く~、飲んでみたいと思いませんか。茶釜の脇には紙コップが置かれていますので、ひしゃくで紙コップに霊水を自分でそそいで頂ける。実に嬉しいサービスですね。
そんな消えずの火は、広島平和記念公園の「平和の灯火」の元火になっていて、古くより伝わる弥山七不思議の一つに数えられています。
また、この霊火を今に至るまだずっと守り続けている霊火堂は、恋人の聖地に認定されました。幸せを呼び込むパワースポットとして、ぜひ足を運びたい場所ですね。
【神社仏閣巡りに役立つ話】
神社仏閣へ参拝に訪れる際、役立つ話を下記記事で紹介します。
鬼を祀る珍しいお堂「三鬼堂」
三鬼堂(さんきどう)は、弥山本堂と同じく大聖院の堂宇の1つであり、鬼を祀る日本で唯一のお堂です。
お祀りする鬼神は、三鬼大権現(さんきだいごんげん)といい、福徳を司る追帳鬼神(ついちょうきしん)、知恵を司る時眉鬼神(じびきしん)、降伏を司る魔羅鬼神(まらきしん)の三鬼神ですね。天狗信仰や山岳仏教とも結びつく神様なんだとか。
創建は不明。弘法大師が弥山を開基した際に、弥山の鎮守として三鬼大権現を勧請したということなので、平安時代初期が始まりだと推察できます。
現在の建物は、1998年(平成10年)に再建されたもの。家内安全や商売繁盛のご利益があるので、参拝していこう。
三鬼堂は、伊藤博文の信仰が篤かったそうで、掲額は伊藤博文の直筆なんだそうだ。ちなみに、弥山本堂の掲額も伊藤博文の直筆ですね。
かつては、平清盛が三鬼堂を「厳島神社の奥宮」と定めていた歴史があるほど、由緒正しいお堂であり、明治に発令された神仏分離令によって、現在の地にうつされました。今は御山神社が厳島神社の奥宮になっています。
巨岩のアーチ「くぐり岩」を体感しよう
山頂近くになると、多くの巨石が現れてきます。これらの巨石群は、花崗岩が風化してできたもので、大小様々な奇岩怪石が織りなす景観は、まさに山岳信仰の場所として相応しい。
そのような巨石群の中でも、自然が創り出した巨石のアーチが目を引くでしょう。「くぐり岩」と呼ばれるこのアーチは、近年発生した地震で高さが少しずつ低くなってきており、心配ですね。
それにしても、ダイナミックな巨石は見ごたえ抜群。おもわず拝んでしまいそうです。古代人の気持ちがよく分かるというものだ。
実際、不動明王が祀られている岩窟もあるので足を運びたい。
また、この辺りから完全に空が開け、眼下には瀬戸内海の絶景が広がります。
ここまで辿り着けば山頂まであと一歩。最後まで油断せずに行こう。
宮島の基本情報とアクセス
住所 | 広島県廿日市市宮島町 |
電話番号 | 0829-44-2011(宮島観光協会) |
【宮島ロープウェイ紅葉谷駅までのアクセス】
- 宮島口旅客ターミナルからフェリー(約10分)にのって宮島へ上陸後、徒歩約25分
- JR宮島口駅から宮島口旅客ターミナルまで徒歩約4分
- 広島電鉄・広電宮島口駅から宮島口旅客ターミナルまで徒歩約1分
- 山陽自動車道「廿日市IC」か「大野IC」から車で約15分ほどで宮島口へ到着
まとめ
弥山は、天然記念物の原始林や巨石群など、豊かな自然が魅力的な宮島信仰の聖地です。また、弘法大使ゆかりの弥山本堂・霊火堂・三鬼堂などパワースポットが今も残ります。
ロープウェイで獅子岩駅に到着後、獅子岩展望台で瀬戸内の絶景を眺めて、再びロープウェイに乗って下山しても構いませんが、せっかく獅子岩駅まできたのならば、ぜひ山頂目指して登山しよう。
そして、弥山の自然を体感して下さい。きっと、いつまでも心に残る経験を得られるでしょう。