瀬戸内海に浮かぶ島で2番目の大きさを誇る小豆島。
この小豆島を含む瀬戸内海の島々では、3年毎に瀬戸内国際芸術祭(略称:瀬戸芸)が開催されていることで知られています。
そのため、小豆島の至るどころには、多くの現代アート作品が展示されていますね。今回のサイクリングでは、そんな現代アート作品を見て回った次第です。
おりしも瀬戸芸2022の秋会期の真っ只中。期待に胸を膨らませたのは、無理もありません。
本記事では、小豆島の西側に位置する中山千枚田と三都半島を中心にサイクリングした様子をお届けします。
新岡山港からフェリーに乗って小豆島へ上陸
小豆島へ向かうには、船舶で移動するしか方法がありません。
私がよく利用するのがこちらの新岡山港のフェリー乗り場です。
新岡山港から小豆島の土庄港まで約50分の船旅を満喫できます。
今回もお世話になるフェリー「おりんぴあ どりーむ せと」に静かに礼をして、乗り込んだ次第です。
小豆島へ行くのは、春の桜シーズン以来ですが、ほぼ毎年足を運んでいるので手慣れたもの。デッキへ赴き、潮風を胸いっぱいに吸い込んでいました。
ほぼ儀式と化した船上から児島湾大橋を見届ける謎の行動を行った後、客席へ向かい小豆島の到着までくつろぎます。
しばらくして、ついに小豆島が見えてくると、テンションが上がってきますね。これも船旅の魅力の1つでしょう。
土庄港へ到着後、早々とフェリーを後にして、まず向かったのは土庄港に展示さているこちらの現代アート作品「太陽の贈り物」のもと。
私が毎回訪れる場所であり、私にとっては、小豆島でサイクリングを開始する場所と言っても過言ではありません。
金色に輝くオリーブの冠の作品は、小豆島のシンボルとして相応しい。個人的には、瀬戸芸の象徴的なモニュメントの1つと言っても良いのではないかと思っています。
金の輪っかの葉ひとつひとつには、子供たちへ向けたメッセージが書かれていますよ。是非、実際に作品を見てメッセージを受け取ってみて下さい。
このモニュメントから少し離れたところには、こちらの現代アート作品「再び・・・」があります。
作者が言うには「小豆島の空間に対して芽生えた感情を言葉にし、その言葉を想像の水の中に落とすことで、その空間とつながる水の動きをイメージした。」とのことですが、うん、私には少し難しい。
アート作品は、人の感性に訴えかけてくるので、波長が合わないと難解ですね。
土庄港を後にして、中山千枚田へ向けて自転車のペダルを回し始めました。
【小豆島の紹介】
小豆島の魅力やサイクイングを行った様子を下記記事で紹介します。
中山千枚田周辺の現代アート作品を見て回る
土庄港から少し離れると、見えてきました世界一狭い海峡でギネスに認定されている土渕海峡。
もはや私にとっては、定番となった立ち寄りスポットですね。
何度見てもただの川にしか見えないけど、世界でも珍しい海峡なので侮ってはいけません。
土渕海峡を横目で眺めながらその前を通過し、先へ進みます。
道中見つけたコスモス畑。こういうのを見かけると足を止めてしまうのは、私の旅のスタイルです。
だから遅々として中々先へ進まないのかも。(笑)
瀬戸芸2022秋会期ということもあり、島内には瀬戸芸をアピールするのぼり旗が沢山見られました。
しばらくすると、現代アート作品「猪鹿垣の島」を発見。
何でもこの作品は、約200年前に築かれたとされる小豆島特有の猪鹿垣を復興したという。そういう意味では、大変貴重かも。
こちらのピラミッド型の石積が一際目を引きます。
ピラミッドの頂上には、なぜかお城が建てられており、頭の中が「???」となりました。(笑)
これはこれでチャームポイントと言えるのではないでしょうか。
このアート作品があった場所から更に東へ進むと、次第にたくさんの小さな田が階段状に並んでいる風景が見えてきます。
そんなのどかな風景の中に、一際巨大な建築物が・・・
私の第一声は「あれは、一体何だ?」とビックリ。棚田の奥に佇む巨大な建築物に俄然興味が出てくるのは言うまでもありません。
近くにあった階段をおりて、巨大な建築物へ近づきます。
近くでみると更にその大きさに驚きますね。もうお分かりだと思いますが、これも現代アート作品ですよ。
作品名は「ゼロ」。2022年夏会期に公開されたものなので、私も初めて見ました。
聞くところによると、小豆島に自生した竹を約4,000本も使って造ったという。
直径約15mの球体になった部屋があり、竹で編まれた通路から中へ入ることができます。(中へ入るのは有料)
尚、作品名には「人類の全てがゼロから出発することになった」という思いがあるそうですよ。
なるほど、コロナ禍の昨今では頷けます。球体のスペースは、思っていた以上に広々としており、座って過ごすのが心地よい。
竹で編まれた外壁からは、木漏れのような光が降り注ぎます。これは、心から安らげる空間ですね。
しばらく竹の部屋ですごして、中山千枚田を後にしました。
ちなみに、現代アート作品だけでなく、中山千枚田も一緒に見学すると面白いですよ。
中山千枚田は、香川県で唯一「日本の棚田百選」に選ばれています。
標高250mmから150mにかけて、大小約800枚の田んぼが織りなす景観は見事。
優美な曲線が実にいい。見学しないなんてもったいないですね。
【日本の原風景】
千枚田の景色は、日本の原風景と言えますね。旅先ではそんな風景に会えることが多いので、下記記事で紹介します。
三都半島の絶景を満喫
次に向かうのは、南にある三都半島。いつも小豆島を1周する時は、スルーしていたので初めて行く場所です。
そこでどんな出会いのがあるのか、非常に楽しみにしながら、自転車のペダルを回し続けました。
道中では、海に向かって下る道があったりして、テンションが上がります。
個人的には大好きな道のタイプ。このような道が好きな人は結構多いと思うな。
三都半島の東海岸へ入り、海沿いの道を進めば、絶景のオンパレードが続きます。
しばらく海の景色を眺めていると、隣り合う大小2つの島を目撃しました。
この島は、花寿波島(はなすわじま)と呼ばれており、香川県が指定する自然記念物です。
海食作用により、島が2分されたようで、典型的な海食地形が1地域で数多く観察されるのは珍しいという。
見る角度によっては、海食洞門が見られるのは景観的にGoodですね。また、海食崖や柱状節理が発達しており見応えがありますよ。
花寿波島の見学を終えて、南下し続けていると、現代アート作品「境界線の庭」がある場所へ到着。
地面に埋められた鳥居と鳥居を中心に掘られている溝が意味深です。
更に鳥居の上面を見てみると、この場所を小さくしたモニュメントが見て取れますよ。ますます意味深ですね。
鳥居の奥の方には、祭壇のようなピラミッドが築かれており、何かを鎮魂している雰囲気が伝わります。
実は、この作品がある場所では、かつて酷い災害に見舞われたそうです。
その災害で出た土砂を埋め立てた土地に造られた石のモニュメントは、まるで今と昔を隔てている境界線を表しているように感じました。
一見穏やかに見える小豆島にも災害の歴史があることを忘れてはいけないですね。
【自転車旅の様子】
旅先では、三都半島のような海の絶景を楽しめるところが結構多いですね。下記記事では、海の絶景を楽しめた自転車旅の様子を紹介します。
小豆島の巨神兵、ダイダラウルトラボウが現れた
三都半島の東海岸から西海岸へ向かうため、内陸部を進みます。
急勾配な坂道を500mほど上りきり、下り坂の滑空感を楽しんでいると、右手に見えた広場には、寝そべっている巨人を目撃。
「なに!」の一声とともに、ブレーキを引いて自転車を強制的に止めて、うしろを振り向きます。
あまりの大きさにビックリ。近づくと、より巨人の姿が鮮明になってきました。
こちらの作品は、「ダイダラウルトラボウ」という。2022年に初めてお披露目されました。
名前から分かるように、ダイダラボッチをモチーフにしているのでしょう。
日本各地で伝承されているダイダラボッチは、山や湖沼を造る国造りの神様ですね。
そういう意味では、神様の依り代ともいえます。
ダイダラウルトラボウは、瀬戸内海の各所で集めた流木や神浦地区で取り払われた石垣、廃船などを使って作られたそうです。
全高は10mもあるので、迫力が物凄いですよ。まさに小豆島の巨神兵といって差し支えないでしょう。
彼の体に近づき、見上げた場所には、シャープなお顔が目にとまります。その風貌は、まるでウルトラマンに思えるのは私だけでしょうか。
ひょっとすると、名前に入っているウルトラとは、ウルトラマンから取ったものかも知れません。
私たち人間社会は、豊かな自然を開拓して、住みやすいようにしてきました。
その代償として、とある種が絶滅したり、多くの戦争や災害(人災)が起こっています。
もともと地球は、人類が造り出したものではなく、本来ならば自由にして良いものではないはずです。
ダイダラウルトラボウは何も語りません。もし彼が神様の依り代と考えるならば、いつまでたっても争いがたえない人類をみて何を思うのか確かめてみたいですね。
三都半島の西海岸、瀬戸芸の現代アート作品が続々登場
ダイダラウルトラボウと別れを告げ、西海岸へ向かうことに。
下り坂の先に見える海に向かってダイブすれば、堪らない爽快感に思わず笑顔がこぼれますね。
すると、あっという間に神浦地区へ辿り着きました。
海岸線につながる広場を歩いていると特徴的なモニュメントを見つけます。
そのモニュメントがこちら。「潮耳荘」と呼ばれる現代アート作品ですね。
大きなコブ山から赤い管がニョキと海に向けて延びている姿は、何と表現すれば良いのか難しい。
管の先には、大き目のホルンが見て取れます。
実は、このホルンで瀬戸内海の波や船の音を拾い集め、建物(コブ山)内部にそれらの音を響き渡らせる装置なのですよ。
内部へ入ると思ったより風通しがよく、ラッパの根元に耳を傾ければ、波などの音が聞こえてくるので、とても不思議な感じ。
このような体感型の作品は、実に面白いですね。しばらく作品と共に海岸線で海を眺めて過ごしました。(残念ながら2022年を最後に潮耳荘は解体されました。)
潮耳荘を後にして、住宅がならぶ坂道を駆け上ります。勾配はかなりきついので、無理に自転車で上らないほうが良いかも。
その先で見つけたのは、巨大なヤドカリ。普通のヤドカリと違う所は、背負う物が貝殻ではなく家なんですよ。(笑)
もちろん現実世界には、そのような種族はいないので現代アート作品ですね。
それがこちらの「ヒトクサヤドカリ」です。この作品は、2022年に初お披露目されました。
それにしても海の生き物なのに、住み着くのは「家」という発想が実に面白い。
家とは生活の基盤になるところ。雨風や外敵から身を守る安住の地でもある。
民家の中に紛れ込んだ巨大なヤドカリは、海を渡って様々な土地を渡り歩いてきたのでしょう。
そのためには、こころ安らぐ安住の地が必要。つまり「家」な訳だ。そのように考えれば、なるほどと思える作品ですね。
ヒトクサヤドカリの見学を終えた後は、西海岸を南下しました。
道は平地から勾配が徐々に上がり、沿岸には瀬戸芸ののぼり旗が風になびいています。
坂道の途中の沿岸には、金網フェンスがありましたが、その金網フェンスの一部が開いており、係員が誘導していました。ここが次なる作品の展示場所なのでしょう。
奥へ向かうと「山声洞」と呼ばれる現代アート作品が見えてきます。
見るからに先ほど訪れた「潮耳荘」と同じような体感型の作品のように見えますね。
中へ足を運ぶと、特に何もなくただ静かな空間が広がっていました。また、天井から差し込まれる光が印象的です。
後から調べてみると、どうやら耳をすませば自然の多様な音が聞こえる装置ということが分かりました。
体感型の作品という予感は当たっていたのだけど、あまりにも静かすぎて何も体験できなかったのだろう。そんな風に思い自分自身を慰めます。
ちなみに、山声洞の周りにはこちらの耳のオブジェがありますよ。
なぜ、この耳のオブジェを見て、気付かなかったのだろうか。少し悔しいので、またの機会に訪れることを誓った次第です。
その後は、しばらくの間、美しい瀬戸内海を眺めながら、西海岸を北上します。
三都半島は、東海岸の風景が良かったけど、西海岸の風景も負けず絶景が続きますね。
何で今まで三都半島へ訪れなかったのか、昔の私を叱り飛ばしたい心境です。
絶景と様々な現代アート作品が同時に楽しめるなんて、こんな半島は日本全国探してもあまり見当たらないのではないでしょうか。
そんな風に反省していると、また新たな作品の予感を感じました。
ポップな外壁な敷地へ入ると、いかにも秘密基地めいたツリーハウスを発見。
このツリーハウスも現代アート作品であり、作品名は『自然の目「大地から」』ですよ。
このツーリハウスは、実際に上ることができますね。何でも古民家の敷地内にある2本のイブキの木を利用して作ったとか。
ハウス内から島々の景色が眺望できます。
このような秘密基地で過すと、ワクワクしてきますね。
童心に帰れると思う本作品へ、足を運ばれることをお勧めします。
さらば小豆島、また来る日まで
三都半島のサイクリングが楽しくて時間が過ぎ去るのが早く感じますね。
まだ最終フェリーが出航するまでには、かなり時間に余裕がありますが、そろそろ帰路へつきましょう。トラブルなどでフェリーに乗り遅れたら目も当てられないので、余裕を持つのは大事です。
海の絶景を横目に眺めながら、西海岸を疾走。
しばらく道なりに進んでいると、道の駅「小豆島ふるさと村」へ辿り着きました。
それほど大きな道の駅ではないけれど、休憩するには十分ですね。
この道の駅から土庄港までは、約8kmほどしかないので、全く慌てる必要はなく、ゆっくり休憩していました。
このまま真っ直ぐ土庄港へ向かっても良かったのですが、フェリーの待ち時間が長くなるため、少し寄り道をします。
向かった先がこちらの宝生院。
そしてお目当ては、境内に自生しているシンパク(真柏)の大樹です。
国指定の特別天然記念物に指定されている宝生院のシンパクは、日本最大の大きさを誇ります。
幹の周りは16.9mもあり、近くから見た姿は圧巻の一言。
樹齢は1,600年以上もあり、応神天皇の手植えによるものと伝わっているそうですよ。
神々しささえ感じる巨木へ参拝した後で、土庄港へ向かいました。
ちなみに、シンパクだけでなく、本堂でもお参りもしていますので、悪しからず。
土庄港へ到着した頃には、辺り一面はオレンジ色に染まっていました。
再び現代アート作品「太陽の贈り物」のもとへ訪れ、別れの挨拶を交わします。(気分的なものですよ。)
そして、帰りのフェリーに乗り込み、小豆島を後にしました。
こうして本日の小豆島サイクリングは、終わりを告げた次第です。
【島旅の魅力】
小豆島のような島旅の魅力や瀬戸内海の島々を下記記事で紹介します。
まとめ
今回の小豆島サイクリングでは、沢山の現代アート作品を見て回れて満足感が高かったです。
実際、見学したアート作品を全て本記事で紹介すると、本文が1万文字を越えそうだったので、件数を絞って紹介しました。
また、三都半島で立ち寄っていないアート作品もあるので、またの機会に訪れたいですね。
小豆島は、普通に1周するいわゆる「マメイチ」や寒霞渓のヒルクライム、現代アート作品巡りなど様々な楽しみ方できるサイクリストにとって、走りがいのある島です。