化けたぬきをご存じですか。日本に伝わる妖怪で、「たぬきは変化の力を持っている」という話がありますね。
香川県高松市に位置する源平合戦の舞台となった屋島の山頂には、化けたぬきの伝説が今も伝わる「屋島寺」があります。実は、この屋島寺には、日本三大狸に数えられている、太三郎狸(たさぶろうたぬき)が祀られているのです。
その他にも国の重要文化財に指定されている本堂や、源平合戦とゆかりがある「瑠璃宝の池」など見どころも多い。
本記事では、お遍路さんにも人気がある四国霊場第84番札所「屋島寺」を紹介します。
四国霊場第84番札所「屋島寺」とは
屋島寺の正式名称は、南面山千光院屋島寺(なんめんざん せんこういん やしまじ)といいます。
754年(天平勝宝6年)に、屋島山上に名僧・鑑真(がんじん)が普賢堂を建て、唐から持参した普賢菩薩像を安置したのが始まりだそうです。
その後、弟子の恵雲律師が初代の住職となり「屋島寺」と称しました。当初は律宗でしたが、弘法大師が真言宗に改め、四国霊場第84番札所として今に至ります。
ご本尊は、十一面千手観音坐像。国の重要文化財に指定されています。
駐車場から屋島寺へ向かうと、朱塗りの東大門が見えてくる。比較的新しい大きな門であり、青空の下よく映えますね。撮影スポットとして申し分ありません。
広々とした境内には、鎌倉時代の名残を残す本堂を始め、鑑真が祀られている三躰堂、大師堂、一願不動尊、七福神像などがあります。
それに屋島寺といえば、たぬきの存在を抜きにして話せません。
本堂の隣りには、蓑山(みのやま)大明神が鎮座しており、雌雄2体の狸の石像が一際目立っていました。
オスは四国狸の総大将・屋島の太三郎狸(たさぶろうたぬき)ですよ。屋島の氏神として古くから信仰されており、数々のエピソードを今に伝えています。
【周辺の見所】
屋島寺の周辺の見所を、下記記事で紹介します。
たぬき伝説、太三郎狸は縁結び・子宝・福運をもたらす
蓑山大明神では、太三郎狸が祀られています。化けタヌキは、人を化かすばかりのイメージが付きまといますが、太三郎狸は神様ですよ。
彼は屋島で数多くの善行を積んだため、地主の神様として祀られた次第です。
その善行には、盲目の名僧・鑑真を山頂まで道案内したり、弘法大師が霧深い屋島で道に迷った時、蓑笠をつけた老人に化けて道案内をしたと伝わっています。
また、屋島に戦乱や凶事が起きそうな時は、いち早く屋島寺の住職に知らせていたという。現在の屋島寺がある所に寺院が移された後は、空海によってこの寺の守護を任されました。
僧との交流で太三郎狸は、学問の大切さを悟り、屋島にタヌキの大学を設けて多くのタヌキが修行を積んだそうです。
四国狸の総大将なのですから、多くの雌タヌキからお誘いも多かったでしょう。しかし、彼は一夫一婦の固いちぎりを結び、仲むつまじい夫婦であったといわれている。
そんな彼にあやかり、蓑山大明神では家庭円満、縁結び、子宝などのご利益があるとして信仰を集めています。
千本鳥居の先には蓑山塚があり、様々なタヌキの置物が奉納されていました。
その奥にも参道が続いており、一番奥には屋島稲荷が祀られています。社ではなく、文字が彫られた石が台座の上に置かれている。なぜか不思議な感じがするかな。
その石には「平雄明神・朝日明神・七九朗明神」と刻まれており、太三郎狸とどのような関係があるのか気になりますね。
【神社仏閣の参拝に役立つ話】
趣味で神社仏閣巡りを行なっている人は、結構多いですね。下記記事では、参拝時に役立つ話を紹介します。
太三郎狸のエピソード
太三郎狸の化けっぷりは、それは見事だったといいます。彼は化けっぷりだけではなく、数々のエピソードが残されており、四国狸の総大将の名は伊達ではありません。
たとえば、江戸時代に起きたタヌキの大戦争・阿波狸合戦では、金長狸と六右衛門狸の間に入って仲裁役を買って出ました。
その際、両者に遺恨が残らぬようまとめ上げたのは、総大将の貫禄ですね。
日露戦争の最中には、多くの子分を引き連れて中国大陸へ渡り、日本軍の味方をしたという。何でも小豆を兵隊に変えて援軍にしたんだとか。凄くないですか。
その他にも屋島寺の歴代の住職が変わるたびに、夢枕で屋島の戦いを再現していたそうな。
う~む、すでにタヌキの領域を越えた存在、スーパータヌキといえば良いのかも知れませんね。
【見所①】国の重要文化財に指定された「本堂」
本堂は、鎌倉時代に建立された前身堂の部材を再使用して、1618年(元和4年)に建立されました。
入母屋造の建物の前面には三間の向拝があり、屋根は古くから格式高い本瓦葺きです。1070年以上前に彫られた一木造りご本尊(十一面千手観音)は、全身に漆を塗り、金箔をおいた坐像ですよ。
鎌倉様式の美しい姿を残す本堂は、高松藩藩主により大切に保護され、何度も修復されています。
せっかくなので、本堂の彫刻をしっかり見学していきましょう。
こちらは龍の彫刻。躍動感を感じ、カッコ良くないですかね。
そうそう、龍といえば梶原芭臣石碑も見ておきたい。梶原芭臣石碑は、本堂から少し離れたところに設置しています。
龍が大きな球石をくわえている姿は、インパクト抜群。ちなみに球石には「松に月古き景色を時雨け里」と刻まれています。
【神社仏閣の紹介(その1)】
旅先で神社仏閣へよく訪れるので、下記記事で紹介します。
【見所②】源平合戦にゆかりがある「瑠璃宝の池」
瑠璃宝の池(るりほうのいけ)は、弘法大師が屋島寺伽藍を南嶺に移す際、お経とともに宝珠を納めて池にしたという伝説が残っています。
「瑠璃」と聞けば、紫みを帯びた濃い青をイメージしますが、この池の別名は「血の池」ですよ。何とも恐ろしい名称だ。
聞くところによると、屋島の戦いで勝利を納めた源氏の兵士達が、この池で刀についてた血を洗い流したという。
血の池なんて物騒な名前が付くのには、それなりの理由がある訳ですね。
歴史を知らなければ、草や水草、藻が生い茂る普通の池にしか見えません。しかし、歴史を知れば見方や感じ方が変わります。
【見所③】四天王像が安置された「四天門」
屋島寺の正式な入り口に当たるのが「四天門」です。重厚で歴史が感じられる荘厳な門ですよ。
この門をくぐり抜け、その奥に朱塗りの本堂が見えてくるように計算して建てられました。四天王門には前後左右に四天王像が安置され、お寺を守っています。
四天王像は、前に増長天・持国天、後に多聞天・広目天ですね。
ちなみに四天門の手前には仁王門があり、仁王門から四天門を通り本堂へ向かうのが、お遍路さんに人気があるそうです。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で神社仏閣へよく訪れるので、下記記事で紹介します。
【見所④】源平合戦の遺品などが展示される「宝物館」
本堂の直ぐ近くには、寺宝や源平合戦に関する宝物などを収蔵している「宝物館」があります。
弓の名人・那須与一の子孫から寄進された、源平合戦の遺物である「源氏の白旗」や「源氏の勝臼」が展示されている。
また、土佐光起の「屋島合戦屏風」「源平盛衰記絵巻」なども展示されており、歴史的に価値の高いものが見られるのは嬉しいですね。
尚、館内は撮影禁止なので気を付けるように。宝物館で屋島の歴史を学びましょう。
屋島寺の基本情報とアクセス
住所 | 香川県高松市屋島東町1808 |
電話番号 | 087-841-9418 |
営業時間 | 宝物館は9:00~17:00 |
定休日 | 年中無休(宝物館は不定休) |
拝観料 | 無料(宝物館は入館500円) |
【アクセス】
- 琴電屋島駅またはJR屋島駅からシャトルバスで約10分
- 高松中央自動車道「高松中央IC」より車で約30分
屋島寺の駐車場
屋島山頂にある有料の屋島山上観光駐車場が利用できます。(車 355台)
料金は、以下の通りです。
- 普通車 1日1回 300円
- 大型自動車 1日1回 1,200円
- 二輪車・原動機付自転車 1日1回 200円
入出庫可能時間は、6:30~22:00。24時間出庫できます。(22:00から翌6:30までは入庫不可)
まとめ
屋島寺は四国霊場第84番札所として、お遍路さんを含め多くの参拝者に人気です。
本堂に隣接している蓑山大明神では、四国狸の総大将・太三郎狸を祀っています。化け狸を祀っている神社仏閣は、全国的にみても数が少ないでしょう。
太三郎狸は仲むつまじい夫婦であったといわれ、家庭円満・縁結び・子宝などのご利益があるとして信仰を集めている。
参拝しながら、境内をゆっくり見て回っていると、心が穏やかになっていきます。
屋島には、屋島寺以外にも屋嶋城跡や新屋島水族館、展望スポット・獅子の霊巌など多くの見どころが点在していますので、ぜひ足を運んでみてはいかがですか。