本日の旅は、島根半島西端の日御碕から旅立ち、山奥深くにある神話の里・奥出雲町へ向かいます。前日は島根半島東端の美保関から日御碕へ訪れ、美しい夕日を眺めて1日を締めくくりました。(前日の旅の様子はこちらの記事で紹介)
前日の続きで、日御碕の観光を行なった後で、絶景ロード・みさきうみねこ海道を駆け抜け、粟津稲生神社(あわづいなりじんじゃ)などへ立ち寄る予定です。
奥出雲では、全国で唯一泊まれる奥出雲多根自然博物館へ足を運び、ナイトミュージアムを堪能しますよ。さてさてどんな旅路になるのか、乞うご期待。
本記事では、島根県出雲市の日御碕から奥出雲町まで、自転車で旅した様子をお届けします。
日本の夜を守る「日御碕神社」へお詣り
窓から差し込む朝日がまぶしく、目覚めました。私が今いる場所は、島根半島の西端に位置する日御碕。神話が息づく土地ですね。
お宿をチェックアウトし、まず始めに向かったのは、日御碕神社です。
鳥居くぐり抜け、境内へ足を踏み入れると、凛とした空気が流れ込む。このような神社の雰囲気が大好き。そんな風に感じるのは、きっと私だけじゃないでしょう。特に朝が早い時間帯であれば、より鮮烈に感じ取れてしまいます。
日御碕神社の歴史は古く、古事記では紀元前660年と伝えており、その歴史と由緒は折り紙付きですね。
とても目を引く朱塗りの楼門の先には、日沈宮(ひしずみのみや)と神の宮(かむのみや)の2社が鎮座しており、この2社の総称が日御碕神社となります。
華やかな桃山時代の面影が残る社殿は、見ごたえ抜群。梁や桁の上に置かれた蛙股(かえるまた)と呼ばれる部材には、色鮮やかな彫刻が施されており、見ているだけで楽しいですよ。
その彫刻は、竜虎や鶴亀、松竹梅、草花などバラエティーに富んでいるので、じっくり見物するのをおすすめします。
約1000年前、当時の村上天皇の勅命には、「伊勢神宮が日本の昼を守る、そして日御碕神社は日本の夜を守れ」というものがあり、日御碕神社の重要性はいうまでもありませんね。
日御碕神社のすぐ近くの商店では、イカが吊るされていました。風通しのよい日陰や夜に熟成しながら乾かす方法で作られる「イカの一夜干し」といわれるものだ。日御碕は、噛めば噛むほど旨みが感じらるイカが名物な土地柄。昨日、私も食しましたがとても美味でした。
狭い路地の向こう側には、海が見えている。高揚感をかきたてる場面ですね。路地を抜けると、そこは漁港。目の前には日本海が広がり、海風とともに潮の香が流れこむ。爽快感抜群のシチュエーションに一気にテンションが急上昇!!
浅瀬に浮かぶ大きな島は「経島(ふみしま)」です。ウミネコの繁殖地として有名な場所。シーズンになれば、地元のメディアが取り上げるそうだ。
かつて日沈宮があった聖なる場所であり、今でも一般人は渡ることが許されていない。島の上に見える社に向けて、手を合わせ遠くから参拝しました。
この時点で時刻は、とっくに9:00を過ぎている。なので、昨日参観できなかった出雲日御碕灯台へ急いで向かった次第です。
尚、日御碕神社については、下記関連記事でくわしく紹介します。
出雲日御碕灯台に共感する
日御碕神社から出雲日御碕灯台までは、徒歩で10~12分ほどかかるけど、自転車ならばさほど時間をかけずに辿り着きました。駐車場に自転車を置いて、灯台の敷地内へ向かいます。
おっ、昨日と違って柵は完全に開いている。もし空いていなければ、愚痴をこぼしながら地団太を踏んでいたかも。(笑)
日御碕へ訪れたならば、絶対に足を運びたい場所の1つが、出雲日御碕灯台でしょう。
その高さは43.65mもあり、日本一の高さを誇る石造洋式灯台ですよ。国内でわずか16基しか存在しない実際に登れる灯台は貴重そのもの。それに国内だけでなく、世界にもその重要性が認められている。そんな灯台は、この灯台を含め、国内には5基しかありません。
灯台は、暗い海に希望の灯りをともし続けてくれるありがたい存在ですね。出雲日御碕灯台は、1903年4月1日の初点灯から既に100年以上が経過しており、人間ならばかなりの高齢の域に達している。そんな灯台が今も現役として働き続けています。
かつて日本の灯台には、灯台守と呼ばれる人たちがいました。灯台までの交通網が整備されていない時代では、灯台守は敷地内の官舎に家族と共に暮らしていたそうです。
今は岬でただ1人で働く灯台の姿に「哀愁」を感じるのか、「孤高」を感じるのかは人それぞれですが、年を取ったとしても、カッコよく自分らしく生きていきたいものですね。
灯台の中へ入り、163段のらせん階段を上ると展望デッキへ辿り着きました。
展望デッキから見下ろすと、言葉不要の絶景に大興奮!!日御碕一帯を一望できる360度のパノラマ絶景が広がっています。これは来てよかったですね。
しばらくの間、展望デッキの主となり、周囲の景色を眺めながら過ごしました。
その後、日御碕商店街にある食事処へ向かい、少し早めの昼食を取りながら休憩すると、気力はより充実し、体力も回復。それでは、本格的な自転車旅のスタートを開始しましょう。
尚、出雲日御碕灯台と日御碕の観光スポットについては、下記関連記事でくわしく紹介します。
絶景ロード・みさきうみねこ海道を疾走
昨日、日御碕へ向かう際に通過したのは、日御碕街道(県道29号)です。「みさきうみねこ海道」の愛称がついているこの海道は、アップダウンも多い。けれど、この道以外に選択肢はありません。
というのは、Googleマップを見れば分かりますが、日御碕へ向かうには、みさきうみねこ海道か斐川一畑大社線(県道23号)の2つの街道があり、そうなると絶景が続く「みさきうみねこ海道」を選びたくなるというもの。サイクリストならばなおのことです。
自転車を走らせながら、日本海が織りなす絶景を横目で眺めていると、沖合の岩礁に人がいるのが見えました。
どうやら釣りをしているみたい。「こんな場所で!」と驚きましたが、釣りをたしなむ人からすれば珍しくないのかも。自転車にもいえますが、趣味の世界というのは、奥深いものです。
こちらは「筆投島(ふでなげじま)」。中々趣のある島じゃないですか。
沿岸にあった案内板によると、平安時代の画聖・巨勢金岡(こせのかなおか)がこの島を描こうとしたけど、朝夕に色彩がかわる姿を上手に描けなくて、筆を投げ入れたという。それ以来、筆投島といわれているそうですよ。巨勢先生、ちょっと短気過ぎませんかね。(笑)
道なりに疾走すると、展望台がみえてきた。昨日はスルーした展望台なので当然立ち寄ることに。
近づいてみると、立入禁止だと。
崖崩れでも起きたのでしょうかね。危険な場所へは立ち寄らないのが、楽しく旅を続ける上での鉄則。展望台に上がらなくても、沿岸から絶景を楽しめるので問題ありません。(強がりじゃないよ。)
せっかくの絶景ロードを一瞬のうちに走り去るのはもったいないので、自転車のスピードは抑え気味がちょうど良い。道中では、なんども停車しながら、長い年月を経て造り上げた自然の芸術品を眺めていました。
自転車と海道は相性が良いとも思う。平坦路が続くなら文句なしだけど、実際はアップダウンがあるのが現実。海道により、アップダウンの大きさや頻度が違うのは、海岸の成り立ちを考えれば当然かな。
けれど景色は最高なため、多少のアップダウンは気にならない。
国内には、しまなみ海道を始め、海道と呼べれる場所が多数点在しており、同じ光景は見られません。なので、できるだけ多くの海道を制覇してみたいですね。
しばらくすると、ついに終点の稲佐の浜へ到着。弁天島へ参拝した後で、出雲大社へ向かった次第です。
【自転車旅に役立つアイテムの紹介】
自転車で旅する際に使いたい、様々な役立つアイテムを下記記事で紹介します。
参道を電車が横切る「粟津稲生神社」へ訪れる
稲佐の浜から東へ約1kmほど進むと、出雲大社の駐車場へ到着。個人的には、過去に何度も訪れている出雲大社なので、勝手知ったる何とやら。
駐車場からスムーズに移動して、境内を歩き回ると、至るどころで見かけるウサギの像にカメラを向けて撮影会の開始です。拝殿への参拝を終えると、すみやかに退場。
次に向かうは「粟津稲生神社(あわづいなりじんじゃ)」です。サイクルトレイン・一畑電車の車窓から見た、この神社の千本鳥居がとても気になりました。
調べたところ、鳥居と社殿の間に一畑電車が走る、知る人ぞ知るフォトスポットという。ということで、今回の旅に合わせて訪れたわけです。
出雲大社から東へ約5kmほど進むと、千本鳥居を発見。以外と簡単に見つかりましたね。粟津稲生神社は、伏見稲荷神社の分社として勧請建立したそうなので、この見事な千本鳥居もうなずけます。
自転車を降りて、鳥居の中をゆっくり歩く。周りは畑に囲まれているので、朱塗りの鳥居はすごく目立つし、目を引きますね。だからこそ、興味を惹かれるのも無理がないかな。
最後の鳥居から少し離れたところには、線路が敷き詰められており、奥には本殿が見えてくる。実に面白い景観だ。
まずは、本殿へ足を運び参拝後に電車を待ちましょう。
「なぜ、参道の途中で線路があるのか?」と疑問に思う方が多いと思います。私も気になったので調べてみると、どうやら線路を敷くときに、神社の参道を迂回できなかったため、鉄道会社が神社側にお願いして、今の形になったそうですよ。
境内はこじんまりとしており、約1~3分もあれば一通り見て回れました。個人的に気に入ったのが仲良しの狛犬たち。思わずカメラのシャッターを切っていましたね。(嬉)
どうですか、中々良いでしょう。
隣の畑には、可愛いピンクのコスモスが咲き誇る。そよ風に揺れて風情を感じます。
しばらくの間、ここで電車が通過するのを待っていたのですが、一向にくる気配がない。調べてみると、昼間の時間帯は基本的に1時間に1本。多くて2本なので、これは結構待たなければならないな。
おそらく撮鉄の皆さんならば、辛抱強く待機していると思いますが、私はそこまで情熱はないので、あきらめた次第です。(鉄道自体は好きなので、旅の道中でそれなりに撮影してますよ。)
鳥居前に愛車を停めて、旅の思い出に記念撮影すると、よいよ山奥にある奥出雲へ向けて走りだしました。
ここからは、本日の旅の後半戦。前半戦が「海」を満喫するコースならば、後半戦は「山」のコース。といっても、本格的なヒルクライムコースはない予定なので、身構える必要は全くないかな。
【神社の紹介】
島根県内の神社を、下記記事で紹介します。
奥出雲へ向かう道中にて
次第に空には、雲が多くかかるようになってきました。また、所々で青空が見られますが、全て雲に覆われるのは時間の問題のように思われます。
少し、天気が心配ですね。そんな中、マイペースで南下していました。自転車旅では、大事なのはペース配分ですよ。これから山へ向かうのだから、体力の消耗は極力避けるべきです。
基本的なルートは、斐伊川(ひいかわ)沿いを走ること。川沿いの方が比較的勾配が緩いので、少し遠回りになりますが、結果的に早く到着できるという考え。あえて遠回りのコースを設定しましたが、急がば回れですよ。
斐伊川といえば、ヤマタノオロチ伝説の解釈で面白い話がある。奥出雲はたたら製鉄の本拠地であり、たたらに必要な木炭を取るために木を大量に伐採していたそうです。その結果、たびたび洪水が発生して、周囲の田畑に甚大な被害が出ていたそうな。
また、鉄の原料となる砂鉄の採取中に川が赤く濁り、斐伊川下流には無視できない被害がでていたという。これらのことから、「砂鉄や洪水で氾濫する斐伊川がヤマタノオロチの正体だったのでは。」という解釈がありますね。
そんな斐伊川を横目で眺めながら、自転車を走らせていくと、JR木次駅へ到着。
特に用事があるわけではありませんが、知らない駅舎を見えまわるのは個人的に興味あり。なので旅の道中では、無理のない範囲で立ち寄ることが多いですね。
駅前で見つけた「奥出雲おろち号」のロゴ。ヤマタノオロチのシルエットがカッコいいじゃないですか。後から知ったのですが、奥出雲おろち号は、2023年11月23日に廃止になりました。近年、このような話をよく聞くので残念です。
駅前の商店街を抜けて、国道314号をひたすら走る。その道中には、すごい落差で水が流れ落ちる堰堤を発見。
ということで、近くまでよってよく見てみよう。うん、これは迫力があるな。落差は約12mもあるので、見ごたえがありますね。
そこには、無料で見物できる日登堰堤水族館もありました。まさに隠れスポットのような感じですよ。
気になるところを見つけては、気軽に立ち寄れるのが自転車旅のよいところ。やはり私にとって旅の相棒は自転車に限ります。
のどかな風景を眺めながら自転車で走るのは気持ちが良い。
そうこうしている内に尾原ダムへ到着。ダム湖である「さくらおろち湖」を眺めながらしばし休憩をとりました。
湖面が陽光でオレンジ色に染まり、より美しく感じます。
ここまでくれば、本日の最終目的地「奥出雲多根自然博物館」まであと少し。残り約4kmですが、最後まで油断せずに行こう。
【自転車のアイテム紹介】
自転車に乗る際、必要となるアイテムを下記記事で紹介します。
奥出雲多根自然博物館へ泊まろう
尾原ダムからは、あっという間でした。瞬間移動とまではいきませんが、気付いていたら奥出雲多根自然博物館へ到着していた感じですね。
この博物館は、日本で唯一泊まれる博物館ですよ。その存在を知ってから、ぜひ一度は泊まりたいと思っていました。ここでは、恐竜の骨格標本や様々な古代の化石を見学できます。
もちろん博物館なので、宿泊しなくても普通に見て回れますが、宿泊者限定サービス「ナイトミュージアム」が私のお目当て。
ナイトミュージアムでは、昼間から雰囲気がガラリと変わり、ライトアップされた恐竜(エウオプロケファルス)は、より迫力を増し、まるで魔獣のようです。
また、深海を思わせるようなフロアは、昼間でも淡く青く光る室内であり、鮮烈な印象が残ります。そんな中で、色鮮やかな貝殻や海の生物の化石は、見ていて面白い。
日中と夜間の展示室を見比べてみて、個人的には夜間のナイトミュージアムの方が楽しかったかな。それほど、大きな違いはないので、宿泊しない方でも十分に楽しめる博物館ですね。
こうして、本日の最後は博物館を見学して、1日を終えました。
尚、奥出雲多根自然博物館については、下記関連記事でくわしく紹介します。
まとめ
本日の旅は、前半戦は島根の「海」を楽しみ、後半戦は「山」を楽しみました。
日御碕では、出雲日御碕灯台を登って日本海のパノラマ絶景を眺めたり、古来から使命を果たしている日御碕神社へお詣りするなど、有意義な時間を過ごした次第です。そして、絶景ロード・みさきうみねこ海道を駆け抜けたのでした。
個人的に「海道」と呼ばれるところには、特別感を感じている。そのため、新しい海道を知ると、ワクワクが止まらないですね。実際、走ってみると、海道の名に恥じないところばかりなので、何度も走りたくなるものです。みさきうみねこ海道もそんな海道の1つですよ。
本日の旅の最終地は、奥出雲多根自然博物館。まさか博物館で泊まれるなんて、実に貴重な体験ができました。