あなたは、貝殻にどのようなイメージを抱きますか。
貝殻は海の中で育つため、海のパワーが宿るのではないだろうか。貝殻で作られたネックレスやイヤリングなどを身に付けていると、海の波動を感じて大らかな気持ちになれるかも知れません。
四国の右下に位置する徳島県の牟岐町には、面白い貝殻を集めた博物館があります。それが「モラスコむぎ」ですね。
貝殻をイメージして造られた木造の展示棟では、食卓で良く見かける馴染み深い貝を始め、日本にしか住んでいない貝や世界一高価な貝、危険な貝など珍しい貝殻が目白押し。
さらに四国八十八景に認定された「松ヶ磯」の絶景を望めるロケーションが素晴らしいです。
本記事では、貝の資料館こと「モラスコむぎ」の魅力を紹介します。
「モラスコむぎ」はどんなところ
モラスコむぎは、徳島県海部郡牟岐町に位置し、世界中から集めた貝殻や化石の標本が約2,000種、6,000点を所蔵・展示している博物館です。
展示棟と管理棟から成り立っており、展示棟にて貝殻の標本を見学できます。
一方、管理棟では自然豊かなロケーションの下、Wi-FiやWEB会議用設備を備えたコワーキングスペースやコミュニティスペースとして活用できますね。
つまり、モラスコむぎは博物館だけでなく、コミュニティ複合施設ですよ。
館名の「むぎ」は牟岐町が由来なのはピンとくる人が多いと思う。しかし、カタカナで表記している「モラスコ」とはどう言う意味なのか、分からない人も多いだろう。(私がそうでした。)
調べてみると、イカやタコ、貝類などの軟体動物の総称なんだとか。ちなみに英語では軟体動物を「mollusk(モラスク)」というそうだ。
モラスコむぎは、1985年に国の木材需要拡大推進緊急対策事業の一環として始まり、最終的に1988年7月にオープンして今に至ります。
【四国の右下一帯の見どころ】
四国の右下一帯の見どころを、下記記事で紹介します。
入口にある1000年サンゴの模型にビックリ
こちらは、モラスコむぎの入口前にある大きなサンゴの模型です。そのあまりの大きさに初見では驚くだろう。それに見ていると、何だかワクワクしませんか。
本当にこのようなサンゴが実在するのか、疑問に感じる方は少なくないと思う。
実は牟岐町にある牟岐大島内湾には、1,000年以上生き続けているといわれるコブハマサンゴは実在するそうです。
このコブハマサンゴは、水深23mの海底に根を張っており、その高さは約9mもある。外周は約30mと大きく世界を見渡しても最大級の大きさ。
クリスマスツリーのような形状から「水中クリスマスツリー」とも呼ばれているぞ。なるほど、そいつは言い得て妙だ。
このようなサンゴが産まれた理由は、いくつもの好条件が重なった結果といいます。
黒潮由来の暖かい海水が流入したり、内湾のため外海の荒波から守られていたり、島が開発されず環境破壊がないことといったことが積み重なり、このような「奇跡の遺産」が誕生しました。
機会があれば実物を見てみたいと思うのですが、ダイバーでもなければ難しいのかも知れませんね。
貝の展示棟では珍しい貝やお馴染みの貝を見学できる
館内へ入るとまずは管理棟となり、そこから廊下を歩いて展示棟へ向かいます。
管理棟は巻貝をイメージした作りとなっていましたが、展示棟では二枚貝をイメージして作られたそうです。
視線を上に向けてると、そこには八本の骨組みが見える。管理棟ともどもお洒落な作りがGood。
ショーケース内には、分かりやすい分類で貝殻を分けて展示しているのは、ありがたいですね。
それに面白い解説などを交えているので、見学するのが楽しい。
ハマグリやホタテガイ、アカガイなどは食用として馴染みがあるので知っている人も多いだろう。けれど、見たことはあるけど名前を知らないという貝というのは、結構多いものなので勉強になります。
それに色とりどりの貝殻模様は、とても目の保養になりました。
おっ、これはオオジャコガイではないですか。熱帯・亜熱帯地方のサンゴ礁として世界最大級の二枚貝として有名。貝殻が展示されている博物館へ訪れると、高確率で見かける機会が多いぞ。(個人的な感想です。)
昔は食用や装飾用として乱獲されたそうで、現在は国際保護動物に指定されています。
また、貝殻の展示だけでなく、貝殻を使った貝細工や装飾品も展示されているので、じっくりと見学していこう。
それでは、個人的に興味を引かれた珍しい貝殻をいくつか紹介します。
本記事で紹介する以外にも珍しい貝はたくさんあるので、機会があればぜひ足を運んでみて下さいね。
【博物館や水族館の紹介】
博物館や水族館では、貝殻を展示しているところが多いですね。旅先で訪れた博物館や水族館を、下記記事で紹介します。
まさに生きた化石、古生代から今も生き続ける「オウムガイ」
まず最初の紹介するのは「オウムガイ」です。名前だけでも聞いたがことがある人は、それなりに多いのではないだろうか。
インド・太平洋の熱帯海域に生息している夜行性の貝ですね。貝殻の中は、たくさんの部屋に仕切られており、中には外敵から身を守るためのガスが詰まっているとか。
このガスは水中での浮力調整にも使われているという。まるで潜水艦のようですね。
昼間は海底にひっそりと潜み、夜になると食べ物をもとめてさまよいます。エビ・カニ・ウニなどを食べる肉食性。それにしても美味しいものばかり食べるとは、彼は意外とグルメなのかも。
オウムガイ以上に認知度が高い古き貝といえば「アンモナイト」の名を挙げる人は多いと思う。
中生代の海を代表する存在ですが、すでに絶滅しているため、その生きた証は化石でしか見ることができません。
そんな彼より遙か昔の古生代に栄えたオウムガイは、今も存続するなんて凄すぎませんかね。「生きた化石」とうたわれるのも納得です。
オウムガイやアンモナイトは頭足類に属しており、これはイカ・タコと同じグループだ。う~む、見た目からして全然違うので、その事実を知らない人は戸惑うだろうな。
イカやタコは進化した姿といわれると、どうしてコウナッタ?
生物の仕組みというのは本当に面白いですね。
これは貝なの?世界一長い「エントツガイ」
「エントツガイ」をご存じだろうか。その名を始めて聞く人は多い思う。実際その貝殻を見てみると、初見ではとても貝とは思えない外見ですね。
というのは、貝殻は最大で1.5m以上となる細長く、普通に杖にしか見えません。
エントツガイは、フナクイムシ科エントツガイ属の二枚貝なんだとか。石灰質の棲管(せいかん)を作り、煙突状に体を覆う奇妙な生き物。生態には不明な点が多いという。
泥の中に住むというのは、まだ納得できるとして、ほとんど食べ物を取らないとは一体どういうことなのか疑問を覚えました。
調べてみると、どうやら泥の中で生まれる有毒ガスを食べているそうな。「有毒ガス!!」と驚く言葉が飛びますが、人間にとっては有毒でも、他の生物に当てはまるとは限らないということ。
周囲の泥から発生する硫化水素を使い、栄養源となる有機物を作るといいます。あれ~、太陽ではなく有毒ガスという違いがあるものの「光合成」の仕組みに似ていますね。
地球の環境破壊に対して警鐘が叫ばれる中、ひょっとしたら「エントツガイ」のような存在は、未来の救世主になるのかも知れません。
意外かも、日本にしか住んでいないカラフルな「ヒオウギ」
自然が生み出したオレンジ、赤、黄、紫色などといった色鮮やかで見た目が可愛らしい「ヒオウギ」。
世界には少なくとも約84,000種の貝が生息するのですが、「ヒオウギ」は日本にしか生息しないという珍しい貝ですよ。
だからといって、知らない人は多いと思う。というのは、この貝はとてもひ弱な存在であり、海水に入れて運んでも、環境の変化に敏感なので直ぐに死んでしまうといいます。
つまり、産地以外では出回らないということ。知名度が高くないのはそのせいだろうな。ちなみに産地には、隠岐諸島、三重県志摩市の英虞湾や愛媛県の愛南町などで養殖されている。
野生の個体は褐色が多いのですが、人工採卵して養殖を行なうことで、遺伝的に色彩豊かにすることが可能なんだそうだ。なので、装飾品としての価値は高いですね。
それに彼の存在がより輝くのは、天下一品の味だ。剥き身にすると、ホタテと見分けがつかないほどだぞ。敷いてゆうならば、ヒオウギの方が甘味があるかな。
炉辺焼き、パスタ、酒蒸し、天ぷら、グラタンなど幅広いメニューに応用できる。一年中堪能できますが、旬は12月から3月ですよ。
う~む、なんだか無性に食べたくなってきました。(笑)
世界一高価な貝「リュウグウオキナエビス」は見逃すな
リュウグウオキナエビスの貝殻を目撃すると、初見では「綺麗な渦を巻いたう〇こ」のように見えるかも知れませんが、そんな失礼なことを言ってはならないぞ。
というのは、このお方は世界で最も高価な貝殻様なのだ。
1969年に日本の水族館が360万円(当時1万ドル)で購入した実績があり、この記録は未だに破られていないという。今後、彼を上回る貝殻が現れるのか、注目していきたい。
実際、ここまで高いのは珍しいと思います。そもそも市場価格は、2万~30万円というのだから全く侮れない存在ですね。
高知から奄美大島、インドネシア、台湾辺りの深海に生息しており、生きている姿を見る機会はほとんどありません。
見た目は重くて頑丈そうに見えるのですが、意外にもろいそうだ。その性質、ますます乾燥したう〇このように思えてしまうぞ。
おっと、これは失礼。高貴?な貝殻様にそのような感想を持つのは不敬かも知れないので気を付けよう。(個人的な見解です。)
殺人貝がいるなんて知ってるカイ
貝の中には、猛毒を持っている恐ろしいヤツがいます。そいつの名は「アンボイナガイ」。
イモガイ科に分類される巻貝の仲間であり、海(貝)中のハンターと呼べる存在だ。
サンゴ礁域に生息しており、殻の長さが約10cmほどで赤褐色の網目模様の外見をしています。人畜無害そうに見える外見に騙されないで。
口の中に隠し持った毒針で獲物(魚)をしびれさせ喰ってしまう手練れですよ。なので、迂闊に手にすると手痛い反撃にあうかも知れないぞ。
この貝の厄介なところは、たとえ刺されたとしても痛みはほとんど感じないところ。しかし、体が直ぐにしびれておぼれてしまう危険性が大いにある。
彼はコノトキシンと呼ばれる猛毒を作り出す能力があり、その威力はコブラより強力だ。
沖縄県では「ハマナカー」とも呼ばれている。その名の由来は、岸にたどり着くことなく、浜のなかば(途中)で死に至るということ。こんな貝が実在するなんて、怖すぎませんかね。
教訓「知らない貝には絶対に触れない」、これ本当に大事。
花や野菜、動物などの名前が付く貝の数々
私たちの日常でよく見かける動物や花、食用の野菜などの名前が付いた貝がたくさんあります。
たとえばバライロセンジュガイ。棘の先端が濃いピンク色なのがチャームポイントですね。バラと並んで見てみると、バラの花びらの造形とどことなく似ているように見えませんか。
花や野菜の名前が付いた貝には、カブラガイ、ザクロガイ、マメガイ、タケノコカニモリ、キノシタイモなどがあり、名前だけ聞くと貝の一種とは思えない。
カブラガイやザクロガイはカッコイイ名前だし、素敵な男性を表す言葉の「ナイスガイ」を連想させる。それにキノシタイモなんて「木下芋」と思ってしまうのは、絶対に私だけでないはずだ。(笑)
また、動物の名前が付いた貝には、ネコガイ、ジャノメウグイスマイマイ、クジャクアワビ、ウズラガイなどがある。貝の名前は、お偉い学者さんたちが考えて付けているのだろうな。
展示されている貝殻には、中には「おや?」と思う名前もありましたが、全体的には中々のネーミングセンスだなと、実物を見ながら感心しました。
松ヶ磯遊歩道の先には美しい砂浜が広がる
松ヶ磯遊歩道を歩いて当館の南側へ足を運んでみると、四国らしい多島美の景色が広がっています。
沖合には、小さな島「松ヶ磯(正式名:沖島)」が見えますが、潮が引くと陸続きとなる。いわゆる「トンボロ現象」ですね。四国を旅していると、トンボロ現象を見かける機会は多いですよ。
刻々と変化する潮の満ち引きにより、見えてくる景色は変わってくるのが素晴らしい。当館の海側から眺める景色は、四国八十八景に選ばれているほどです。
貝殻の見学だけでなく、ぜひ足を運んでみて下さいね。
【トンボロ現象の見物スポットを紹介】
松ヶ磯のようなトンボロ現象を見物できるスポットを、下記記事で紹介します。
「モラスコむぎ」の基本情報とアクセス
住所 | 徳島県海部郡牟岐町灘字下浜辺198-1 |
電話番号 | 0884-72-2520 |
営業時間 | 9:00~16:30 |
休館日 | 月曜(祝日の際はその翌日) |
入館料 | 大人 200円 小中学生 100円 幼児 無料 |
【アクセス】
- JR牟岐駅からタクシーで約5分
- 徳島自動車道「徳島IC」から車で約140分
「モラスコむぎ」の駐車場
モラスコむぎには、無料駐車場があります。(普通車 15台)
まとめ
「モラスコむぎ」では、世界中に生息している様々な貝殻の標本を展示しています。
展示された貝殻を眺めながら、一喜一憂するのがとても楽しい。より貝殻に対して興味が深まるでしょうね。
生きた化石と知られる「オウムガイ」を始め、世界一長い「エントツガイ」や世界一高価な貝「リュウグウオキナエビス」など実に興味をそそられます。
決してアクセスの良い場所ではありませんが、四国の右下一帯へ訪れる機会があるならば、足を運んでみてはいかがですか。