徳島県阿南市の山中には、猫神様を祀る神社「お松大権現(おまつだいごんげん)」が鎮座しているのをご存じだろうか。
ここでは、実話を基にした猫が悪を討つ正義の物語が語り継がれています。
徳島では合格祈願の神様として有名で、受験シーズンともなればたくさんの参拝者が後を絶ちません。また、境内には「猫・ねこ・ネコ!」と招き猫だらけのため、猫好きな人には堪らないおすすめスポットですよ。
約2mの巨大な招き猫を始め、狛犬ならぬ珍しい狛猫や猫仏の数々。猫の七福神や猫不動などが面白い。もちろん本物の猫ちゃんもいるぞ。
本記事では、勝負事や受験のパワースポットとして名高い「お松大権現」の魅力を紹介します。
お松大権現とは
お松大権現は、徳島県阿南市加茂町に位置する神社であり、日本三大怪猫伝の舞台の一つとなっています。
300年以上も昔に、正義を貫き命を落としたお松という名の女性と飼い猫(三毛ちゃん)にまつわる悲しい実話が、今も「阿波の化け猫騒動」として語られているのです。
その話に出てくる猫が「お松大明神」として祀られているという。そのため「猫神さん」や「お松さん」の愛称で親しまれていますね。
勝負ごとのご利益が抜群なので、選挙や訴訟、スポーツ必勝など負けられない勝負がある際には足を運んでみよう。
また、商売繁盛、海上安全、家内安全、諸難救護などのご利益もある。特に受験合格に霊験あらたかなパワースポットとして知られています。
【神社仏閣の紹介(その1)】
徳島県内で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
実話に基づく化け猫騒動
「阿波の化け猫騒動」について簡単に紹介。
江戸時代の貞享年間、徳島藩加茂村(今の阿南市加茂町)の庄屋の惣兵衛が、不作である村を救うために自分の土地を担保にして村の富豪・野上三左衛門に金を借りたことから物語が始まりました。
その後、惣兵衛は借金を全て返済するのですが、証文を受け取る前に病死してしまう。
そして、妻のお松さんが証文を請求したにも関わらず、知らぬ存ぜぬといいはり、挙句には返したはずの金を返せという始末。さらに担保にした土地も取り上げたそうな。
もちろんお松さんもこのまま黙ってはいません。この悪行を奉行所に訴えるも、奉行は既に富豪に買収済み。こうなるとどうにもなりません。そこで、大名への直訴に踏み切ります。
当時大名への直訴は、ぜひに関わらず死罪という今では考えられないほど重い罪。そのため、お松さんは処刑されてしまいました。この時、お松さんの飼っていた猫も一緒に殺されたそうです。
おそらく、一部始終を見ていた猫(三毛ちゃん)が気になったのでしょうね。
その後、三左衛門と奉行の家々に不可解な化け猫騒動が起き始めたという。そして、身内の全員が発狂・変死・病死といった不幸が相次ぎ、最後には両家とも断絶しました。
当時は公にできなかった伝承ですが、明治の世になると公然と語られるようになり今に至ります。
【神社詣りに役立つ話】
神社へお詣りに出かける際、役立つ話を下記記事で紹介します。
境内にはたくさんの「猫仏」がいる
お松大権現へ一歩踏み入れると、たくさんの招き猫がお出迎えしてくれます。
まず最初に目に付くのは、鳥居前にドーンと腰を据えている約2mの巨大な白い招き猫。その表情から「よろしくにゃ!」といっているような気がするぞ。
鳥居をくぐり抜けて境内へ入る。
すると、参道には猫の足あとを発見。これは猫神様の足跡だろうか。この先の展開にドキドキです。
境内を見渡すと、至るどころで招き猫や猫仏がいるではないですか。その独特の雰囲気に満ちた空気感が実にいい。
手水舎の龍の上には、小さな猫がチョコンと乗っているのが可愛い♪
おっ、これは合掌している猫がいるぞ。まるで「合格しますように」と祈りを捧げているかのように見えて微笑ましいですね。
近くにはたくさんの絵馬が奉納されていて、一つ一つ読んでみると「〇〇〇高校へ合格しますように」といったような受験合格の願いが多かったです。
またお願いの絵馬だけでなく「就職試験に合格しました」といった感謝の報告もありました。
拝殿の裏側で見つけたのは「さすり猫」。自分の体が悪いところと同じところをなでると、さすり猫が病気を引き受けて治してくれるというありがたいご利益があるそうな。
ということで、自転車乗りにの私は、大事な膝の部分をスリスリしました。(笑)
境内には、ねこの細道と呼ばれる場所があり、階段を上って高台をぐるりと見て回れます。
この細道に沿って色々歩いていると、猫の七福神や猫不動などを発見。くっ~、可愛い過ぎる!
また、お髭を生やした大きな猫大仏がいました。口元の毛並みがリアルかな。
休憩できそうな建物を発見。近づいてみると・・・
中には、たくさんの招き猫に囲まれた猫がいるではないですか。一瞬、本物かと思うほどリアルな作りにびっくりしました。
招き猫は意外なところにもいます。たとえば、こちらの灯籠の中を覗いてみると、小さな招き猫が置かれているぞ。
こういうの宝探し感覚を味わえるのは面白いですね。ぜひお気に入りの招き猫や猫仏を見つけてみましょう。
拝殿など建物には猫のデザインがいっぱい
猫探し行なう前に拝殿で猫神様へご挨拶して下さいね。
神仏習合の名残が残っていますので、拝殿前には香炉があります。なので、お松さんと三毛ちゃんの供養にお線香をあげてから参拝しよう。
拝殿にはたくさんの招き猫が奉納されており、中央には木彫りの御神体・猫神様がいます。
また、拝殿などの建物には様々な猫のデザインがあり、どれも秀逸ですよ。
たとえば、こちらの切り絵風の猫のデザイン。猫神様の左右に描かれた毛を逆立てて怒っているのは化け猫バージョンでしょうかね。
その他にも可愛らしい猫のデザインは、バリエーションが豊富。じっくりと捜し歩いてみよう。
屋根瓦など意外と見落としやすい場所にも隠れているぞ。
また、拝殿の屋根の四方にも注目。
高い場所から猫神様を守るだけでなく、私たちを見守って下さる凛々しいお顔の猫たちがいるのは印象的ですね。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
思わず「ネコー!」と叫びたくなる招き猫の光景
奉納された招き猫の数の多さはすさまじいの一言。なんと、その数は実に1万体以上というのだから、これほどの数がそろうと壮観です。
お松大権現では、招き猫を1体お借りして1年間祈願し、願いごとが叶うと招き猫と一緒に新しい招き猫を奉納するという風習があるそうですよ。
その話を知って、岡山の田倉牛神社の風習を思い出しました。こちらは猫ではなく牛なんですが・・・
何にしても1万体以上の招き猫があるというのは、それだけ多くの参拝者の願いを叶えてきたのだろう。
奉納された招き猫の収納場所は複数あります。特に資料館(伝承のやかた)の奥にある「猫の回廊」には足を運んで下さいね。
そこには、招き猫だけでなく大きなダルマが置いてあるではないですか。ダルマの頭の上には、小さな招き猫が乗っかっている姿が可愛い♪
このような光景を目の当たりにすると、思わず「ネコー!」と叫んで見たくなりませんか。
お松さんの墓所と猫の塚
境内には、お松さんの供養塔(墓所)があります。太龍寺の僧侶が義を貫くお松さんの生き方に感銘したそうで、「義理大権現」の崇号を授けました。
今のように立派な社殿が作られたのは、明治時代になってからなので、それまでは村人たちがひっそりと「義理大権現」として供養していたそうな。
供養塔に刻まれた「離楓妙散」はお松さんの法名の「春徳院離楓妙散」を元にしたものですね。
また、お松さんが寵愛していた猫の三毛ちゃんが御祭神として祀られた猫の塚もあります。
どちらもひっそりとした場所にあるので、気が付かずスルーしてしまうかも。
こららの墓所の近くには、鳥居と樹齢300年の御神木「イヌマキ」があるので目印にするとよいですよ。
このイヌマキは、村人たちがお松さんの供養のために植えたと伝わっています。
招き猫でなく本物の猫にも出会える
お松大権現では、招き猫や猫仏だけでなくリアル猫にも出会えます。
実は私は猫がいることを知らなくて、境内を一通り見て回った後で休憩しようとテーブル前の椅子に腰を下ろそうとしたときに、可愛らしいネコちゃんが椅子の上でゴロンとしている姿を見て和みました。
聞くところによると、お守りを買う時に店番をしていることも。く~、見てみたいぞ。
ちなみに授与所には、かわいい猫をモチーフにしたお守りがあるのでチェックしよう。
猫は気まぐれな生き物なので、バッタリ会えるかは運しだいかな。もし出会えたなら愛でてあげて下さいね。
伝承のやかたで伝承アニメを見よう
お松の伝承を目的としたギャラリーこと「伝承のやかた」へ足を運んでみよう。
ここでは、伝承アニメが上映されており、「阿波の化け猫騒動」についてより理解度を深めることができる。
さらにお菓子やマグカップ、ガーゼタオルなどお土産コーナーも併設しています。
もちろん色々なデザインの招き猫も販売しているので、お気に入りの逸品がみつかるかも知れないですね。
お松大権現の基本情報とアクセス
住所 | 徳島県阿南市加茂町不ケ63 |
電話番号 | 0884-25-0556 |
【アクセス】
- JR阿南駅から加茂谷行きの阿南バスに乗車して、終点の「加茂谷」バス停で下車して直ぐ(バスの乗車時間は約40分)
- 徳島自動車道「徳島IC」から車で約50分
お松大権現の駐車場
お松大権現には、無料駐車場があります。(普通車 20台)
受験シーズンなど混雑時は、加茂谷中学校のグラウンドが駐車場になります。
まとめ
お松大権現は、勝負事や受験のパワースポットとして多く参拝者が足を運びます。
「阿波の化け猫騒動」が御祭神の由来ですが、怖い話ではなく猫が悪を討つお話であり、オカルトが苦手な方でも大丈夫ですよ。
境内には、これでもかというほどの招き猫や猫仏がいるので、見応えが抜群ですね。なので、猫好きの人はもちろん、そうでない人も楽しめる。
また、御朱印やお守りなどの授与品は、猫をモチーフにしたオリジナルのものばかりなので、特に猫好きな人にはより満足度が高いでしょう。