まるで中世ヨーロッパの古城を思わせるダムが、日本国内にあるのをご存じですか。
そのダムは、「豊稔池(ほうねんいけ)ダム」または「豊稔池堰堤(ほうねんいけえんてい)といいます。
当初は、一部のコアなダムファンのみに熱烈に愛されていました。しかし、今ではダムファンだけでなく多くの観光客が訪れます。
香川県観音寺市の山奥に、ひっそり佇む豊稔池ダムは、一度みたら忘れることができないでしょう。それほど、普段見慣れているダムとは一線を画しているのです。
時間を経て歴史の重みを感じとれる外観は、周囲の自然に溶け込んでおり、素晴らしい景観を醸し出している。
本記事では、知る人ぞ知る観光スポット「豊稔池ダム」の見どころを紹介します。
豊稔池ダム(豊稔池堰堤)とは
豊稔池ダムは、香川県観音寺市にある日本最古の石積式マルチプルアーチダムです。
比較的小さなアーチが複数連なって、1つのダムを形成しています。このタイプのダムは、宮城県仙台市の大倉ダムを合わせて、日本国内にわずか2基しかない大変貴重なもの。
現在でも約500ヘクタールの農地の水瓶として役目を十分に果たしています
1926年(大正15年)に着工され、工事には地元住民による組合が部分請負して当たり、延べ15万人による人海戦術でおしすすめられたという。
その結果、わずか約4年という短期間で工事が完了し、1929年(昭和4年)11月に完成しました。
豊稔池ダムの構造形式は、農業土木史上極めて価値が高く評価され、2006年(平成18年)には、「豊稔池堰堤」の名称で、国の重要文化財(建造物)に指定されています。
【周辺の見どころ】
豊稔池ダム周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
迫力満点のフォトスポット、豊稔池ダムの重厚な外観
讃岐山脈を分け入った柞田川(くにたがわ)の上流には、中世のヨーロッパの城壁のような偉容を誇る豊稔池ダムが佇んでいます。
堤高30m、堤長145mもある巨大な建造物ですよ。中央部に見える5個のアーチと6個の扶壁が特徴的ですね。
約90年の長い年月の間、風雨にさらされて黒く変色した表面の石積みが醸し出す風格に、思わず「おー」と声を上げてしまいました。
日本全国には黒部ダムのように超有名なダムもある。つまりダムは観光資源になる証拠です。この豊稔池ダムだって負けてはいないと思うのですが、黒部ダムと比べてしまうと、まだまだ全国的には無名なのかも知れない。
この場所で長い年月を過ごした結果、今ではダムそのものが自然に溶け込んでいる。フォトスポットとしても人気が高いですよ。
上からでも、下からでも実に絵になる写真が撮れる。色々な角度にカメラを構えて撮ってみましょう。
こちらは真下から見上げた豊稔池ダム。実に迫力満点です。
上から見下ろして見れば、豊稔池も一緒に見えます。
また、山中に溶け込んでいるように見える豊稔池ダムの姿もいい!
さらに部位ごとに写真を撮ってみると、黒く変色した石積みの質感がとても美しく魅了されました。
そこで豊稔池ダムの魅力ある姿を、ダイジェストで紹介します。
このダムの近くには、柵やフェンスのような物がないため、思ったより近づける。これほど撮影に適したダムというのは、あまり見かけないですね。足元は滑りやすいので注意しましょう。
ダム正面の広場には、石でできたベンチがあり、そこに座ってダムを眺めてみてはいかがですか。
先ほども触れましたが日本に現存しているマルチプルアーチダムは、この豊稔池ダムと宮城県にある大倉ダムだけ。しかも石積み式なものになると豊稔池ダムしか存在しません。
現在の河川構造令では、同じようなダムの築造ができないため、貴重な建造物です。
【カメラに関する話】
豊稔池ダムのような圧倒的な存在感のある建造物は、自然にカメラで撮影したくなるものです。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
【見所①】豊稔池遊水公園
豊稔池遊水公園は、豊稔池ダムに隣接している公園です。
豊稔橋を渡り、右手側にダム、左手側に公園が広がっています。芝生広場の中には東屋が建てられていますので、ダムの見学に疲れたらここで休憩しましょう。
こちらが豊稔橋です。レンガでできた欄干が特徴的ですね。
東屋から石積み造りのダムが、しっかり見えますよ。
少し奥へ歩くとトイレがあります。
また、東屋とトイレの近くには、平成の補修工事の時に取り替えられた中樋取水バルブがありました。
中樋取水バルブの隣には、土砂吐樋門(どしゃばきもん)が保存されています。
この中樋取水バルブと土砂吐樋門も豊稔池ダムと同じく重要文化財に指定されている。
その他には、豊稔池改修事業竣功記念碑がありました。
豊稔池ダム見学が終わった後で、この公園内を散策してみてはいかがですか。
公園内はそれほど広くはないので、10分もかからずに見て回れます。
【公園の紹介】
旅先で訪れた珍しい公園を、下記記事で紹介します。
【見所②】豊稔池
豊稔池は、豊稔池ダムにより形成された貯水量約160万トンの人造湖です。観音寺市一帯の水源として、現在も現役で利用されています。
2010年(平成22年)3月25日に農林水産省により「ため池百選」に選定されました。自然に溶け込む見事な景観であり、ダムのアーチ上部の構造をしっかり確認できますね。
私がその景観に感心していると、偶然アーチ先端部にサギが止まる瞬間を目撃。こうして、奇跡的なタイミングで撮影ができた次第です。(嬉)
上流を散策してみましょう。
少し歩くと豊稔池へ近づく入口を見つけましたが、残念ながら立入禁止でした。
考えてみれば当たり前です。実は、豊稔池の水深は平均で約10mほどあり、最も深い所では約25mもある。
間違って池に入ってしまうと大変危険。立入禁止にするのは妥当ですね。
【見所③】豊稔池ダムの放水「ゆる抜き」
豊稔池ダムでは、毎年7月下旬から8月頃になると、雨量の少ない下流の農地へ池の水を放流する「ゆる抜き」の行事を行います。
毎秒4トンの水が轟音と共に流れる光景を見るために、多くの人が集まってくるそうです。
残念ながら私が訪れた日は6月の下旬。少し時期が早かったかな。ダイナミックな放水は見られませんでしたが、洪水吐から水がチビチビと流れ続けていました。
放水の時期は、ダムにとって絶好の撮影時期。私は他のダムで放水を見たことが何度もありますが、轟音を立てて流れ落ちる放水はいずれも見事なものです。アップで撮影すると凄い迫力を感じます。
夏の風物詩として地元に定着している「ゆる抜き」をお楽しみに。
【スゴイ建造物・建築物の紹介】
旅を続けていると、豊稔池ダムのような迫力のある建造物に出会ったりしますね。下記記事でそのような建造物・建築物について紹介します。
豊稔池ダムのダムカードの入手先
ダムファンの中には、ダムカードを収集している人も多いでしょう。豊稔池ダムもダムカードになっていて、配布場所は豊稔池ダムがある場所から少し離れています。
平日の配布場所は、豊稔池ダムの維持管理をしている「豊稔池土地改良区事務所」で、土・日・祝日は、「観音寺市大野原支所」ですよ。
ダムカードの入手には、豊稔池ダムと本人が一緒に移った写真や画像が必要ですので、忘れずに記念撮影をしておいて下さい。
- 豊稔池土地改良区事務所
- 住所:香川県観音寺市大野原町大野原1368-1
- 電話番号:0875-54-2035
- 配布時間 9:00~12:00、13:00~17:00
- 観音寺市大野原支所
- 住所:香川県観音寺市大野原町大野原1260-1
- 電話番号:0875-54-5700
- 配布時間 9:00~17:00
豊稔池ダムの基本情報とアクセス
住所 | 香川県観音寺市大野原町五郷田野々1050番地 |
電話番号 | 0875-23-3933(観音寺市経済部商工観光課) |
料金 | 無料 |
【アクセス】
- JR観音寺駅からタクシーで約20分
- JR観音寺駅からシャトルバスが出ています。(10:10に出発するバスのみ立ち寄ります)
- JR観音寺駅から「のりあいバス五郷高室線」に乗り、運転手に「豊稔池」と話して下さい。のりあいバスはバス停がなく、路線上ならばどこでも乗り降り自由です。
- 高松自動車道「大野原IC」から車で約15分
豊稔池ダムの駐車場
豊稔池遊水公園の駐車場が利用できます。(普通車約20台)
その他にも豊稔池の近くにある公衆トイレの駐車場では、5台ほど駐車できますね。(公衆トイレ用の駐車場なので長時間の駐車はお控え下さい)
まとめ
ダムファンの人、そうでない人も魅了する豊稔池ダム。
観音寺市の山奥にあり、周りの風景に溶け込みながら、中世ヨーロッパの古城のような重厚感を醸し出しています。
黒く変色した石積みの質感に魅了され、何度でも訪れたくなりますね。日本では、石積み式のマルチプルアーチダムはここでしか見れません。
歴史的にも貴重な豊稔池ダムを見学に、足を運んでみませんか。