自転車のシートポストを交換する際、全然抜けなくて困った経験をしたことがありませんか。
実は、シートポストは長い時間動かさないでいると、固着してしまうのです。固着する原因は色々ありますが、その原因を知り、対処方法を知っておきたいですね。
そうすれば、固着のトラブルに落ち着いて対処できるでしょう。また、一番よいのは、シートポストが固着しないよう定期的なメンテナンスが大事です。
本記事では、自転車のシートポストが固着する原因と対処方法について説明します。
シートポストが固着する原因
「サドルの高さを今一度調整したい」「乗り心地のよいシートポストに交換しよう」などシートポストの高さを移動したり、抜きたい時があります。
その際、力を入れてもシートポストがビクともしなければ、結構焦るものですね。これは、シートポストが固着してしまっているのが原因です。では、なぜこのようなことが起こりえるのでしょうか。その原因は、大きく分けると以下の2つに絞れます。
- 錆で固着する
- 電解腐食で固着する
これら以外にも、シートチューブとシートポストがカーボン同士の場合では、砂やゴミなどが入り込み、噛み込みによる固着が考えられます。
また、通常ならば考えられないのですが、今のシートポストの直径が、シートチューブの内径に対して大きく、無理やり入れているパターンです。
そうすると、圧入している状態なため、抜くのは非常に困難ですよ。最悪、シートポスト自体を壊す必要があるかも。それに、たとえ抜けたとしてもシートチューブ側にダメージが残る可能性はゼロではありません。
本記事では、主な原因となる「錆」と「電解腐食」について説明します。
錆で固着する
ママチャリでは、フレームがアルミ製で、シートポストもアルミ製のものを使っていたりします。
つまり、アルミ製のシートポストとシートチューブのような同一の物質の組み合わせは多いですね。これは、ママチャリだけでなく、ロードバイクやクロスバイクなど他の車種にもいえるでしょう。
アルミは、耐食性が非常に高く錆びにくいのが特徴ですが、錆にくいだけであって、決して錆びない訳ではありません。
実は、金属の同一物質では、錆による固着が多く、錆びる原因は色々考えられます。
主に雨や湿気など天候の影響や、走行中にいつの間にか塵や埃などがシートポストとシートチューブの間に入り込み、経年劣化によって錆びてしまう。
錆の状態が軽微であれば、比較的楽にシートポストを抜けますが、時間が経つにしたがい錆の範囲が広がり頑固になってくる。そうなると、抜くのがかなり困難になります。
電解腐食で固着する
先ほどシートポストとシートチューブが同質物質の場合、錆で固着する説明をしました。すると「違う金属同士ならば、大丈夫だろうか?」と疑問に思う方も多いでしょう。
結論からいえば、このパターンが一番厄介で、電解腐食により錆びてしまいます。
電解腐食とは、異物質同士(例:クロモリフレーム×アルミ製シートポスト)が化学反応を起こすことで、電気化学的腐蝕(電蝕)が起こること。通常の錆より強固に固着してしまうのです。
電蝕は、イオン化傾向の違いに起因するもので、金属間の電子移動による腐蝕なため、防ぐことができません。
電位差が大きくなると電気が通りやすくなり、湿度が高い環境であればあるほど、電蝕は起こりやすい。
「では、カーボンなら金属ではないので大丈夫だろう」と思うかも知れませんが、カーボンでも電蝕は起こります。カーボンも電気を通す素材なので、防ぐことはできません。
電解腐食が軽度な状態であれば、シートポストを抜けますが、酷くなると困難を極めます。
【サドルに関する話】
シートポストはサドルを支えるパーツで、サドルの高さや角度調整などサドルとは切っても切れない関係ですね。そこで、サドルに関する話を下記記事で紹介します。
固着したシートポストを抜く方法
力を入れてもシートポストが抜けなければ、焦ってしまうものですが、そこで諦めないように。固着してしまったシートポストの主な対処方法を以下にまとめました。
- 自転車ショップへ依頼する
- 潤滑剤を使う
- 熱湯をかける
これらの方法は、100%保証するものではありません。錆や電解腐食がかなり酷い状態ならば、抜けないことは十分ありえます。なので、そんな状謡にならないよう、定期的なメンテナンスが重要になる。メンテナンスについては、後で説明しますね。
それでは、主な対処方法について説明します。
自転車ショップへ依頼する
一番確実性が高いのは、自転車ショップへ持ち込み、プロに対処してもらうことです。
当たり前ですが、その道のプロなので確かな技術と経験により裏付けされた知識は、素人とはレベルが全然違います。
自分の力でどうしても抜けなければ、工具などの道具を使って力づくで抜こうと思いますが、それは思いとどまった方が良いですよ。下手をうつと、シートポストに傷や変形だけでなく、破損のリスクが伴います。そうなる前にプロに依頼しましょう。
費用は錆や電解腐食の状態により、ピンからキリなので何ともいえませんが、個人的には数万円の出費を覚悟しておくのが無難だと思います。
潤滑剤を使う
シートチューブとシートポストの間に潤滑剤を吹きかけると、シートポストが抜けやすくなります。
おすすめの潤滑剤は、ラスペネですね。ラスペネは、強力な浸透性と防錆性を兼ねたフッ素樹脂配合潤滑油ですよ。
固着した部分に数回吹きかけた後で、しばらくの間放置しておこう。潤滑剤の浸透具合によっては、今までビクともしなかったシートポストが、動くようになります。
ただし、一度に浸透させるのは難しいので、毎日少しづつ吹き付ける長期戦を覚悟するように。浸透具合は確認のしようがないので、根気が必要ですね。シートポストを揺さぶって動くような気配があれば、いずれすっぽり抜けるようになります。
熱湯をかける
シートチューブに熱湯をかけて、熱膨張を利用して固着したシートポストを外す方法があります。
これは、素材の熱膨張係数の違いを利用する方法なので、加熱後に急冷させる必要がある。加熱による膨張と急冷による収縮を繰り返して固着を解消させます。また、熱湯でなくバーナーでもOK。同じような熱膨張を期待できますね。
この方法は、クロモリフレームとアルミ製のシートポストのような異物質同士の金属に有効。反対にアルミフレームとアルミ製のシートポストのような同一の物質同士であれば、効果は期待できません。
また、カーボン製のものは、プリブレグの耐熱温度を超えてしまうと、剥離が起こる可能性があるので止めよう。
できるだけ、ダメージが少ない方法で対処するのが無難なため、熱湯やバナーによる熱膨張を利用する方法は、おすすめはしません。
シートポストの固着を予防しよう
シートポストが固着してから対処するのではなく、最良の対策はあらかじめ固着しないよう予防することです。
つまり、いつでもシートポストがスムーズに抜ける状態を保つのがベストといえます。
毎日シートポストを抜く必要はありませんが、2~3ヶ月に1度は抜いておきたいですね。再びシートポストをシートチューブに挿入する際、シートチューブの内側に薄くグリスを塗っておくのがポイントです。
特にエアロシートポストのような丸形でないものは、一度固着すると外すのが非常に困難になるので、固着に悩まされないためには、定期的なメンテナンスをしっかり行いましょう。
まとめ
本記事では、シートポストが固着する原因と対処方法について説明しました。
最後にもう一度、説明した内容を以下にまとめます。
- シートポストが固着する原因
- 錆で固着する
- 電解腐食で固着する
- 固着したシートポストを抜く方法
- 自転車ショップへ依頼する
- 潤滑剤を使う
- 熱湯をかける
一番ベストなのは、固着させないことなので、定期的にシートポストを抜いてグリスアップを行ないましょう。