寒い季節に欠かせない定番アイテムと言えば「手袋」ですね。
手袋の種類は、使用用途により様々であり、防寒手袋や軍手、ゴム手袋などがあります。
そんな手袋の一大生産地が、香川県東かがわ市であることをご存じでしょうか。
東かがわ市は、国内シェア90%を誇っている手袋王国なのです。
なぜ、温暖な香川県が手袋の産地なのか不思議に思われる方もいるでしょう。
それには、とある事情がありました。
また、この手袋王国では、手袋の魅力を伝える「香川のてぶくろ資料館」や「東かがわ手袋ギャラリー」があります。
これらの施設へ足を運び、手袋の魅力を再発見するのは楽しいかも。
そこで本記事では、東かがわ市が手袋の産地になった理由を始め「香川のてぶくろ資料館」と「東かがわ手袋ギャラリー」について紹介します。
手袋は、色々な場面で使われる
日本の手袋の始まりは、古くは鎌倉時代の武士が着用していた籠手(こて)までさかのぼります。
籠手を見たことがある人なら分かると思いますが、私たちがイメージする手袋とは大夫違いますね。
現代に通じる手袋は、16世紀中頃にポルトガルから輸入したものが起原です。
手袋の目的は、至ってシンプルであり「手の保護」なのはご存じでしょう。または、装飾品として使用されていますね。
手の保護と一言でいいますが、使用する場面によって様々な手袋が存在しており、最もメジャーな使い方として防寒用の手袋があります。
その他にも、軍手を代表する作業用の手袋や家庭用のゴム手袋、医療など専門職用の手袋など多岐にわたっているのです。
また、欧米諸国では王族や貴族など権威の象徴として手袋を使っていました。
実用的な使い方が多い手袋ですが、現代ではファッションの一部として着用されていたりします。
時代により様々な手袋が開発されており、それは今後も変わりなく続いていくでしょう。
なぜ、温暖な香川県が手袋の産地なのか?
東かがわ市が手袋の産地として根付いた背景には、ドラマチックな物語がありました。
きっかけは、僧侶と町娘の道ならぬ恋から始まります。
時は明治初期、東かがわ市に住んでいた当時34歳の住職・両児舜礼(ふたご しゅんれい)と当時19歳だった三好タケノという少女が駆け落ちしました。
現代のように当人同時の意思で結婚できる時代ではなく、結婚はお互いの両親が決めた相手とするのが当たり前だった時代です。
愛を貫くことを決めた二人は、覚悟を決めて大阪へ移り住みます。
そこで、生計を立てるために手袋製造を始めた次第です。
郷里からタケノの従弟だった棚次辰吉(たなつぐ たつきち )と数人の若者を呼び寄せると、本格的な製造活動を始めました。
しかし、大阪へ移り住んでわずか5年で舜礼が病死してしまったのです。
その後、辰吉がその意思を継いで事業を続けていくことに。
この時期、彼らの故郷である東かがわ市では、地盤産業(製糖業や製塩業)が衰退を始めており、産業に従事していた人たちの生活は苦しくなっていました。
これは明治時代に入り、外国から砂糖や塩の輸入量が増えたことで、生産量が減少した影響です。
大阪で手袋製造を営んでいた辰吉に相談が持ちかけられたことで、辰吉と職人たちは東かがわ市へ帰郷。
このことにより、東かがわ市で手袋製造が始まることになります。
その後、第1次世界大戦中にイギリスから日本に手袋の大量注文があり、それに対応するため1,000人規模の「大阪手袋株式会社(棚次辰吉社長)」と「東洋手袋株式会社(森本吉太郎社長)」という2つの工場が作られました。
こうして、東かがわ市は、日本を代表する手袋の産地となった訳です。
舜礼とタケノが駆け落ちしていなかったら、東かがわ市では、おそらく手袋製造が始らなかったでしょう。
そう考えると、何か運命的なものを感じますね。
【東かがわ市の見どころ】
東かがわ市には、手袋以外にも沢山の魅力的な見どころがありますので、下記記事で紹介します。
様々な手袋を見て学ぶ「香川のてぶくろ資料館」
香川のてぶくろ資料館では、手袋産業の歴史の紹介を始め、有名スポーツ選手の手袋や様々な素材を使った珍しい手袋などを展示しています。
東かがわ市で手袋の製造が始まったのは、1888年(明治21年)からです。ゆうに120年以上の歴史を誇りますね。
最寄り駅のJR讃岐白鳥駅から約10ほど歩いたところに、てぶくろ資料館がありました。近くには、白鳥神社もありますので、一緒に訪ねてみて下さいね。
白鳥神社を北側へ抜けると、白鳥の松原が広がっていますので、そこには棚次辰吉の像、両児舜礼の碑などがありますよ。
資料館へ入ると、お出迎えしてくれるマスコットの大きなゴリラ。
いきなりインパクトがありました。(笑)
展示室には、様々な用途で使われている手袋や一流スポーツ選手のサイン入りの手袋などが綺麗に並べられています。
普段見かけることがない珍しい手袋なども展示されており、「へぇ~、こんな手袋もあるんだ」と驚くことも。
また、東かがわ市の手袋産業の歴史や手袋の製造工程、世界の手袋などをパネルで説明しており、勉強になりますね。
館内で見学した珍しい手袋の一部を紹介します。
こちらの手袋は耐熱手袋。防寒用の物は良く見かけますが、耐熱用はあまり見かけないですね。
革・アルミ・アラミドなどを使用して耐熱・耐炎性能に特化したものという。
長時間の溶接や炉前(ろぜん)での作業を行う場合に使用するとか。
4層構造になっており、耐熱温度は実に200~300℃もある優れもの。
300℃も耐えられるなんて凄すぎです。(驚)
こちらは、オーストリッチ手袋。
オーストリッチとは、ダチョウのこと。
ダチョウの革を甲側に使った貴重なものです。
独得の模様と美しさ、品格を醸し出しており、まさに貴婦人の一品に相応しいのではないでしょうか。
その他には「永遠の愛」をテーマ作られた清純な手袋や、和柄のちりめん手袋もありました。
沢山ある珍しい手袋の中でも、一際珍しいと思ったのはこちらのお洒落な手袋。
豹柄ピンクにアクセントのハート型が織り込まれた一品は、エロカッコイイですね。(笑)
ファンション性があるため、女性ライダーにピッタリではないでしょうか。
手袋の他にも、かつて手袋作りに使われていた様々な道具が見て取れます。
当時は専用の道具は入手が困難だったため、似たような道具や農作業用のものを転用していたという。
そんな道具を見ていると、創意工夫しながら手袋を作っている光景が目に浮かび、当時の人たちの苦労が伺い知れました。
【博物館の紹介(その1)】
香川のてぶくろ資料館のような博物館では、知らなかったことを学べる貴重な機会を得ますね。下記記事では、旅先で訪れたそんな博物館を紹介します。
手袋のアウトレット店
展示室のお隣には、手袋のアウトレット店がありますので足を運んでみましょう。こちらでは、日本手袋工業組合に加盟する東かがわ市の手袋メーカーを中心に約30社の商品を販売してます。
店内には、数えきれないほどの商品の数々。手袋だけでなく、バッグや洋服など販売されており、商品には手袋作りで培った高い縫製技術が生かされているため人気が高いです。
また、市価の50%~90%以下の価格で購入できるそうなので、お得感満載ですね。
資料館で手袋作りの見聞を広めれば、資料館を出る頃には一端の手袋博士になっているかも。
現在でも手袋のデザインや技術は進化を続けています。
将来的にどうのような手袋が登場するのが非常に楽しみですね。
【博物館の紹介(その2)】
旅先で訪れた面白い発見ができる博物館を下記記事で紹介します。
香川のてぶくろ資料館の基本情報とアクセス
住所 | 香川県東かがわ市湊1810-1 |
電話番号 | 0879-25-3208(日本手袋工業組合) |
営業時間 | 10:00~17:00(受付終了は16:30まで) ※アウトレット店は、10:00~18:00 |
定休日 | 11/23、年末年始 |
入館料 | 無料 |
【アクセス】
- JR讃岐白鳥駅から徒歩約10分
- 引田ICから車で約10分
- 白鳥大内ICから車で約5分
香川のてぶくろ資料館の駐車場
香川のてぶくろ資料館には、無料駐車場があります。(普通車約150台)
「東かがわ手袋ギャラリー」で手袋のアート作品を楽しむ
東かがわ市の引田地方には、古い建物が色濃く残る引田の町並みがあります。その町並みの中で、ひっそり佇んでいるのが「東かがわ手袋ギャラリー」。
このギャラリーの建物は、2000年まで実際に手袋工場として使われていました。
観光客の招致と商品販売を目的に、手袋振興会などの協力によりギャラリーとして公開された次第です。
館内へ入ってまず始めに驚くのは、こちらの手袋庭園。
カラフルな手袋や手水鉢、木などで作られたシュールな光景は、いきなり意表を突かれます。(笑)
中央に置いてあるミシンが何気に良い。
聞くところによると、季節によって模様替えをするという。
夏には青、秋には紅葉をイメージした暖色の手袋にカラーチェンジされるそうです。
季節感を感じる手袋庭園なんて、想像するだけでも面白いですね。
館内を眺めていると、片隅にマドハンドを発見。(笑)
こちらは、新郎新婦が手袋という結婚式の光景。
新婦のお色直しもあります。見ていて楽しい。
白色の紙で囲われた秘密のお部屋では、一体何があるのでしょうか。
中へ入ってみると、天上から吊るされた沢山の手袋が。
色取りどりの手袋が織りなす不思議な空間が広がっていました。(嬉)
手袋のアート作品以外にも手袋の制作に使っていた道具がありますよ。
また、手袋生産の歴史が学べるスペースもあり、勉強になります。
更に東かがわ市で生産された高品質な手袋の販売もされていました。
ブランド手袋から作業用手袋までありますので、是非掘り出し物を探してみて下さい。
室内はそれほど広くないので、10分もあれば一通り見て回れます。
ゆっくりアート作品を見学して、手袋の魅力を再発見しましょう。
【博物館の紹介(その3)】
博物館では学ぶ機会が多いです。また体験できる所もあるので積極的に参加してみるもの楽しそう。下記記事では、体験スペースのある博物館を紹介します。
東かがわ手袋ギャラリーの基本情報とアクセス
住所 | 香川県東かがわ市引田2161-2 |
電話番号 | 0879-33-5055 |
営業時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 水曜日(祝日の場合は営業) |
入館料 | 無料 |
【アクセス】
- JR引田駅から徒歩約10分
- 引田ICから車で約5分
東かがわ手袋ギャラリーの駐車場
東かがわ手袋ギャラリーには、無料駐車場があります。(普通車約7台)
尚、直ぐ近くには、引田の町並みや引田城跡などの観光へ訪れる際に利用できる大きな駐車場(普通車約100台)がありますのでそちらに駐車しても良いでしょう。
まとめ
東かがわ市は、国内シェア90%を占める手袋の一大生産地であり、手袋の歴史や魅力を伝える施設が有ります。
東かがわ市へ訪れる機会があれば、是非「香川のてぶくろ資料館」と「東かがわ手袋ギャラリー」へ足を運んでみて下さい。
あなたの知らない珍しい手袋や手袋のアート作品を見学できますよ。
今以上に手袋のことを学んでいけば、きっとその魅力を再発見するでしょう。