私たちが子供のころから、世の中にはたくさんの玩具(おもちゃ)があふれていますね。
それは、古くから延々と受け継がれているものもあれば、今まさに生まれようとしている玩具だってあるのです。
兵庫県姫路市には、日本を含め世界中のあらゆる玩具が集まる「日本玩具博物館」があります。
この博物館では、日本の郷土玩具や近代玩具、ちりめん細工など所蔵する資料が約9万点もあるとか。
それに、世界のクリスマス展など季節ごとの企画・特別展も充実してますよ。
また、見学だけでなく、一部の玩具は手に取って遊べるので、特に小さなお子さんには、喜ばれるでしょう。
本記事では、世界中のおもちゃの宝庫と呼べる「日本玩具博物館」の見どころを紹介します。
世界中のおもちゃの宝庫「日本玩具博物館」とは
日本玩具博物館は、館長の井上重義氏が約50年の年月をかけて、世界中から収集した玩具を展示している個人運営の博物館です。
コレクションの規模や内容から日本を代表する玩具博物館として、世界に知られています。
1974(昭和49年)に当初、井上郷土玩具館として開館後、1984年(昭和59年)に日本玩具博物館と名前を変えました。
世界160ヶ国の玩具を所蔵し、展示ケースには5,000点を並べ、全ての資料は約9万点に上るという。
土蔵造りの建物など6棟からなる博物館であり、各館ごとには、テーマに沿った魅力的な玩具が展示されています。
館 | 主な展示品 |
---|---|
1号館 | 【企画展】 |
2号館 | 【常設展】昭和初期の戦時中の玩具 昭和22年からアメリカなどへ輸出された玩具 |
3号館 | 【常設展】江戸から明治期のちりめん細工 平成期に復元された玩具 |
4号館 | 【常設展】1階は日本全国の郷土玩具 2階は世界各国の玩具 |
5号館 | 【休憩施設】ランプの家(企画展示されることもある) |
6号館 | 【企画展】季節ごとに所蔵資料 |
2016年(平成28年)年には、ミュシュラン・グリーンガイド二つ星に認定されました。当館の所要時間は、1時間から1時間30分ほど。
ゆっくり見て回りながら、おもちゃの移り変わりや歴史などに触れてみて下さい。
【周辺の見所】
日本玩具博物館の周辺の見所を下記記事で紹介します。
【見所①】優しく風雅な「ちりめん細工」
館内には、華やかな印象が残る「ちりめん細工」が約1,800点も展示されています。
日本女性が古くから伝承してきた作品の数々であり、国内ではここでしか見ることができません。
ちりめん(縮緬)は、細かな「しぼ」をもつ絹織物で、着物の材料として古くから愛好されてきた歴史があります。
こちらの写真を見て下さい。あまりの可愛らしさに、ほほが緩みますね。
キュートな犬たちや招き猫。お持ち帰りして、居間に飾っていたいかも。
今でこそ「ちりめん細工」と呼ばれている作品たちですが、この言葉自体は、館長の井上氏が考案したそうですよ。
当時、何と呼ばれていたのかは分かりませんが、その生い立ちは、江戸時代後半まで遡ります。
貴族社会や武家の女性、裕福な商家の女性の間では、裁った後の残り布を利用して様々な袋物や小箱が作られました。
そのように作られた作品は、人形や動物、花などをかたどっていたという。これが「ちりめん細工」と呼んでいる物のルーツですね。
その後、明治時代になると、女学生の教材として取り上げられ、女学生たちがこぞって、意匠を凝らした作品を競い合うようになったそうです。
それが、当時の女性にとって、美的感覚などの教養を身に着けるために必要なものでした。
花鳥風月を表したり、四季の風物詩を織り込んだ作品は美しいの一言。
そんな作品を目の当たりにすると、「和の伝統」の素晴らしさに感動しますよ。
残念ながら、太平洋戦争による世の中の混乱や戦後の生活様式の変化に伴い、ちりめん細工の存在は、忘れられてしまいます。実に悲しいことですね。
館長の井上氏は、古作品や文献資料の収集を行いながら、展示会や講習会を開催し、復旧と普及を務め今に至ります。
ちりめん細工は、古くから日本女性が伝承してきたものです。次の世代の人々へ思いをつなげていきたいですね。
【博物館の紹介(その1)】
日本玩具博物館のような博物館へ訪れると、色々と学ぶことが多いです。下記記事では、そんな博物館を紹介します。
【見所②】日本の玩具コレクション
日本国内で作られた、北は北海道、南は沖縄まで各地域ごとの玩具(おもちゃ)がズラリと展示しています。
また、年配の方たちにとっては、子供の頃に遊んだキャラクターのおもちゃや、ブリキやセルロイドのおもちゃなど懐かしく感じる物が沢山ありますよ。
反対に今の子供たちにとっては、新鮮な驚きを感じるかも。
そもそも日本では、江戸時代から明治時代にかけて、子どもたちの健やかな成長を願い数多くの玩具が作られました。
身近にある紙・木・竹・土などで作られた郷土玩具は、その地域ごとの特色が色濃く表現されています。
ふるさとの風土や暮らしぶりを反映した玩具を見ていると、ノスタルジーを感じ、ジーンとくることも。
そんな郷土玩具の一部を紹介します。
特に「首人形」の作品をみて思い出したのが、高知県で自転車旅中に、畑で見つけた頭部だけの人形が地面につき刺されていた景色は、強い衝撃とともに記憶に残っています。(私が見た物は、展示されていた物のように愛らしくはありませんでした)
当時はカカシか何かの儀式かと思っていました。
こんな風に昔みた物が、予期せぬ形で再び相まみえるのは、何だか不思議な縁を感じますね。
尚、郷土玩具は、単なる子どもの遊び道具だけにとどまりません。人々の美意識や造形感覚がみごとに表現されているのです。
海外では、この日本人の美意識などを表現した作品を「アート」として高い評価を受けていますよ。
今の玩具は、テレビゲームが主流ですが、たとえ時代が変わろうとも、郷土の誇る玩具を後世に残していきたいですね。
【博物館の紹介(その2)】
博物館を見学していると、見学した物に対して、今まで以上に興味が湧くことがありますね。下記記事では、そんな博物館を紹介します。
【見所③】世界の玩具コレクション
4号館の2階へ向かえば、世界の民族玩具が約2,000点ほど展示されています。
日本の玩具しか知らない方にとっては、とても新鮮な感じがしますね。
アジア・オセアニア・アフリカ・ヨーロッパ・南北アメリカなど地域ごとに代表的な玩具が多いですよ。確かに日本にいると、見る機会なんて皆無といってよい玩具ばかり。
例えば、こちらはインドネシア・バリ島の「稲の女神」という玩具です。
ヤシの葉で作られた人形で、稲の収穫儀礼の際に祀られるという。
世界の民族玩具が一箇所にこれほど集まっているのは、世界でも珍しいそうで、海外の専門家からも評価されているとか。うん、なんだか納得です。
そんな民族玩具の一部を紹介します。
その国独得の雰囲気を醸し出していますので、見ていて実に面白い。
実は、現存する木の玩具は大変な貴重品ですよ。それもそのはず、2000年頃に姿を消している玩具が大半なんです。
理由の1つには、中国製の製品が世界を席巻した背景がありました。
時代の流れとはいえ、寂しさを感じますね。
【博物館の紹介(その3)】
博物館の中には、日本玩具博物館のように展示品の見学だけでなく、手に触れるなど様々な体験ができるところもありますよ。下記記事では、そんな博物館を紹介します。
【見所④】「世界のクリスマス展」などの特別展
6号館では、年に3~4回ほど特別展を開催しています。
過去には、雛人形が50組以上並ぶ豪華絢爛な「雛まつり展」や「端午の節句展」など季節ごとの展示作品が多いです。
私が訪れた日は、「世界のクリスマス展」が開催されていました。
このクリスマス展は、恒例となっているようで、世界各地のクリスマスの風景を知るよい機会ですね。
北欧を含むヨーロッパやアメリカ・アフリカ・アジアなど地域ごとのクリスマスの風景の特色に違いがあり、見ていて楽しいですよ。
クリスマスといえば、私たちがよく知っている12月25日に行われる世界的なイベント。そもそも「イエス・キリストの降誕祭」に当たります。
そのためか、キリスト降誕人形などが展示されていました。
それにクリスマスに欠かせない物は、やはりクリスマスツリーでしょう。
クリスマスツリーには、モミの木などの常緑樹が使われていますね。これは常緑樹が古くから「永遠の象徴」と言われているからです。
また、旧約聖書に登場する「知恵の樹」を表しているという説もあるそうですよ。
クリスマスツリーだけでなく、至るどころには、クリスマスに関係する人形などの玩具がたくさん展示されていました。
私なんか「これ可愛いな」「へぇー、こんな人形もあるんだ」なんて感心しきりです。
そんな人形の一部を紹介します。
その内の1つには、ユールトムテがありますよ。
彼(彼女?)は、スウェーデンのクリスマスの日に、贈り物を届けて家々をまわる小人なんだとか。
サンタクロースではなくて、小人の妖精が運んでくれるなんて夢があっていいですね。(サンタクロースに夢がないとは言っていないので悪しからず)
そんな世界のクリスマスに、触れてみては如何でしょうか。
【見所⑤】玩具で遊べる「遊びのコーナー」
館内には、一部の玩具を手に取って遊べるコーナーが用意されています。
子供はもちろんのこと、大人の方にも是非遊んで欲しいですね。
日本でお馴染みの玩具として、コマやけん玉、達磨おとしなどがあり、今でも遊んだことがある方も多いのでは。
また、ヨーロッパで遊ばれている木製玩具を使って自由に遊べます。
機械仕掛けなどはなく、手で動かすものばかりなので、大人が見れば直ぐに仕組みが理解できますよ。
すると、子ども時代に戻ったように、目を輝かせて遊んでしまうのも仕方がありません。
「えっ、こーさんも遊んだの?」といった声が聞こえてきそうですが、もちろん遊ばないという選択肢が私の中には存在しませんよ。(笑)
お土産に日本・世界の玩具を如何ですか
館内では、日本の郷土玩具や世界の民芸玩具、ポストカードなど約200種類の商品が販売されています。
商品のラインナップを少し紹介しますね。
こちらは、山形県米沢市の笹野彫り。
藩主上杉鷹山が農家の冬の副業で作らせたのが始りだったそうですよ。
こちら新潟県の「三角だるま」です。
私は三角形のだるまを初めて見ました。ひょうきんな表情が面白いですね。
こちらは説明不要でしょう。「こけし」です。(宮城産)
特に世界の民芸玩具は、中々購入できないので、興味がある方はお土産に買って帰るのが良いと思います。
中には既におもちゃを作っていた会社が廃業していて、在庫限りの物もありますよ。
早い者勝ちなので、商品を見てビビッときたら手に入れておいた方が、後から後悔しないでしょう。
日本玩具博物館を見学する際の注意事項
館内での展示品の撮影には、注意事項があります。
それは、展示資料保全のため、フラッシュ撮影はNGです。
ルールと守って気持ち良く撮影しましょう。
日本玩具博物館の基本情報とアクセス
住所 | 兵庫県姫路市香寺町中仁野671-3 |
電話番号 | 079-232-4388 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
休館日 | 水曜日(祝日の場合は開館) 年末年始(12/28~1/3) |
入館料 | 一般 600円 高校・大学生 400円 子ども(4歳以上) 200円 ※20名以上で団体割引きあり |
【アクセス】
- JR香呂駅から徒歩約15分
- 播但有料道路「船津IC」より車で約5分
日本玩具博物館の駐車場
日本玩具博物館には、無料駐車場があります。(普通車 30台)
尚、大型バスも駐車可能です。
まとめ
日本玩具博物館は、日本を始め世界中のあらゆる玩具が一堂に集まる、世界でも貴重な博物館です。
展示される玩具は、明治や昭和など年代別に分かれていたりして、玩具の移り変わりを学べます。
また、日本全国の郷土玩具が地方別に並んでおり、その地方ごとの特色は見ていて面白いですね。更にアジアやヨーロッパ、アフリカ、アメリカなど世界の民芸玩具は圧巻ですよ。
見たことも聞いたこともないが玩具が目白押しです。こころゆくまで見学していきましょう。