日本のイメージカラーである「レッドジャパン」を体感できる町をご存じですか。
岡山県高梁市の山間にある吹屋は、かつてベンガラ(弁柄)顔料と鋼生産で栄えました。ベンガラ色で統一された吹屋ふるさと村の景観は、他に類がありません。
ノスタルジーを感じる日本の古き良き風景が、今もその町には残っているのです。そんな赤い町並みを散策していると、面白い気付きがある。新しい発見にはワクワクしますね。
また、町並みから少し離れたところには、旧吹屋小学校やベンガラ館、広兼邸などの見どころもある。
本記事では、日本遺産に選ばれた「吹屋ふるさと村」の楽しみ方や見どころを紹介します。
日本遺産「吹屋ふるさと村」とは
吹屋ふるさと村は、高梁市成羽町吹屋に位置し、標高500mの高原場にある赤い町並みです。
江戸時代から明治時代にかけてベンガラと鋼生産で繁栄した鉱山の町として栄えました。
吹屋に伝わる俗謡(ぞくよう)には「吹屋よいとこ 金掘るところ 掘れば掘るほど 金がでる」の歌詞がある。うん、吹屋を表すのに非常にわかりやすいかな。
吹屋で生産されたベンガラは全国に流通し、伊万里焼や輪島塗、社寺など日本を代表する工芸品を鮮やかに彩ります。
実はベンガラは発色が美しいだけでなく、耐熱性・耐水性・耐光性・耐酸性・耐アルカリ性にも優れているという。ここまで凄い顔料であれば、引く手あまたなのも頷けますね。
ベンガラで彩色された格子の建物が残る町並みは、独特の景観を醸し出している。それが訪れる人を魅了してやまないです。
また周辺には、弁柄工場跡や銅山跡なども残り、往時の繁栄を偲ばせている。
吹屋ふるさと村は、重要伝統的建造物群保存地区に指定されているだけでなく、「ジャパンレッド発祥の地 弁柄と銅の町」として日本遺産に登録されています。
毎週日曜日には、懐かしいボンネットバスが走行しているよ。レトロ観光バスで町中の景色を楽しんでみてはいかがですか。
【周辺の見所】
吹屋ふるさと村の周辺の見所を、下記記事で紹介します。
吹屋ふるさと村の楽しみ方
吹屋ふるさと村の楽しみ方は、大きく分けて以下の3つがあります。
- 吹屋の町並みの散策
- 吹屋を代表する施設の見学
- ベンガラ染め体験
吹屋の町並みには、食事処・Cafe・雑貨屋・土産屋・宿屋など観光地にあるものは一通りそろっており、じっくり見て回れますね。
こちらが、町並みの全体図。ほぼ一本道のため迷うことはないでしょう。
町並み観光の際、お得な「吹屋ふるさと村周遊券」を購入(1,000円)すれば、吹屋を代表する以下の4つの施設の入場が割引される。
- 旧片山家住宅・郷土館
- ベンガラ館
- 広兼邸
- 笹畝坑道
これは入手しておきたいですね。(上記の施設それぞれで周遊券を購入できる)
これらの施設以外で絶対に外せないのが「旧吹屋小学校」。周遊券の割引対象外となりますが、ぜひ足を運ぶのをおすすめします。
ちなみに、私が訪れた日は「笹畝坑道」が工事中であったため観光できませんでした。なので本記事では、レポートしていませんので悪しからず。
笹畝坑道は、江戸時代から大正時代まで主に黄銅鉱、硫化鉄鉱を産出していた坑道だそうです。
【カメラに関する話】
吹屋ふるさと村は、フォトスポットが多いですよ。そんな場所では、性能の優れたカメラで記憶に残る1枚を撮りたいものですね。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
ベンガラ色の美しい町並みを散策
峡谷沿いの道から山へ分け入り、人家も稀な急峻な山道を進んでいると、突然目の前に赤い建物が連なる景観があらわれる。
そんな場所に出会えるのは、吹屋の町並みだけでしょう。まさに「ジャパンレッド」の看板に偽りなし。
ノスタルジーを感じる古き建物は、赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一され、町全体が美しく輝いているように見えました。
調べてみると、かつて吹屋の旦那衆たちが相談して、町全体を統一した外観になるように造ったそうです。当時では、かなり珍しい発想だったのではないでしょうかね。
その思想は、現代まで引き継がれており、唯一無二の独特な景観を残しています。
そのため、どこを見てもフォトスポットの宝庫ですよ。気に入った場所を見つけては、カメラで撮影を繰り返し、思い思いに散策を楽しみました。
そんな町並みをダイジェストで紹介。
こちらは、ベンカラ色の吹屋郵便局ですね。周りの風景に溶け込み過ぎているので、スルーしてしまうかも。
明治7年に開局したそうです。入口にある暖簾が可愛いということで、インスタ映えスポットになっている。
この郵便局前には、黒のポスト「書状集箱」がありました。1871年(明治4年)に郵便事業創業時に使用していたものと同じ型のものですよ。それに実際に利用できるみたい。
こちらは、重要伝統的建造物の長尾家(東長尾)。
上半分が開くような格子は、保存地区の住宅でもここだけ。当時は、家の前に牛や馬をつないでいたといわれています。
このような建造物がたくさん残されているので、1つ1つ注意深く見て回りながら、違いを見つけるのも面白いですよ。
レトロな外観の公衆電話に惹かれ、中へ入ってみるとビックリ。
過去と未来につながる公衆電話があるじゃないですか。黒電話(過去電話)が過去のあなたや友人、知人などと話ができるという。
無料で使え、自分の過去の出来事を思い出して話をして下さい。その際、決して誤りがあっても誤らないように。多分、誤ってももう遅いことが多いから。
なるほど、何とも面白い電話ですね。残りの1台が未来電話。未来の夢を語ってみませんか。
こちらは、下町ふらっと。有料ですが、ベンガラ染め体験ができる。
体験できるのは、ステンシルと型染め、ベンガラ染めです。ステンシルは、型紙を使って染めること。
また、ベンガラ染めコースでは、布の持ち込みも可能。染めてみたい洋服などがあれば、確認してみましょう。
いずれも所要時間は約30分ほどであり、作った作品は当日お持ち帰りができます。
私は時間的な都合で、ベンガラ染め体験をしませんでしたが、興味がある方は、ぜひ体験してみて下さい。
奥まで歩き、町並みを抜けたところで急な石段を発見。鳥居と狛犬が見て取れます。
階段を上りきると、そこには本山山神社が鎮座していました。地元では「さんじんさま」と呼ばれている。
この場所からは、眼下にベンガラ屋根が見渡せますので、お見逃しなく。
【古い町並みの紹介】
旅先で訪れた古い町並みが残る観光スポットを、下記記事で紹介します。
ベンガラ豪商「旧片山家住宅」と「郷土館」の見学
吹屋の町並みを散策していると、多くの重要伝統的建造物が見られます。
その中の1つには、吹屋を代表する豪商であった片山家の住宅がある。片山家は、1759年から200年以上もベンガラの製造、販売をしていました。
当時のままの店構えを残している「旧片山家住宅」は、近世弁柄商家の典型として高く評価され、国の重要文化財に指定されています。
この住宅は一般公開されており、ベンガラの原料や見本、寝室、家族居間、書籍などが見学できますね。
見学できるエリアは、大きく分けると家内工場・商業店舗・住居に分かれており、3階建てで18室もある。なので所要時間は40~60分は見ておきたい。
石州瓦葺や弁柄格子を始め、曲屋・腰抜・東城錺金具など優美な景観を誇る大屋敷。これは見学のしがいがありますね。
こちらの受付場所には、可愛らしい猫のぬいぐるみが・・・
猫城主の「さんじゅーろ」ですよ。さんじゅーろといえば、同じ高梁市にある備中松山城に住んでいる猫のこと。吹屋から少し離れていますが、会いに行ってあげれば喜ぶと思う。(人慣れしている可愛い猫ですね。)
こちらは卵部屋。卵を保存するための専用部屋ですよ。
昔は卵が貴重品だったそうで、涼しいこの部屋に保存されていました。
こちらは寝室です。
当主夫妻の寝室ですが、この部屋に入るには、後継者居間から人ひとりがかがんで通りぬけれるほどの大きさしかない入口を通過するしかない。
寝込みを襲われないようにするための工夫だろうか。
片山家の敷地は、約2,000平方メートル。特に主屋の奥には、弁柄蔵や仕事場などのベンガラ製造に関わる建屋がある。
仕事場では、人形などを使って当時の作業風景を表現していました。それにしても、赤い部屋は強烈な印象が残りますね。
旧片山家住宅の前には、「郷土館」があります。郷土館は、1879年に建てた片山家の分家。石州(今の島根県)から大工を呼び寄せ、5年の歳月をかけて造らせたそうです。
土台と外側の柱は、全て栗の角材で作られている。家の材料や大工に拘っているため、よほど強い思いで建てたのでしょう。
この郷土館も一般公開されてますよ。当時実際に使われていた提灯やランプ、ハエ取り器などの生活用品が展示されており、明治時代の生活を伺い知れます。
また、司馬遼太郎先生が原作の映画「燃えよ剣」のロケで使用されたふすま絵がありました。
特に面白いと思ったのが、隠し部屋やからくり戸といった仕掛けが多くあることです。このことから、防犯面に重点をおいていたのが良く分かりますね。
2階から窓の外を見れば、石州瓦の並びが見て取れます。
吹屋の町並みへ訪れたら、ぜひ旧片山家住宅と郷土館へ足を運び、当時の生活に思いを馳せてみましょう。
- 電話番号 0866-29-2205(高梁市観光協会)
- 営業時間 9:00~17:00(12月~3月は10:00~16:00)
- 定休日 年末(12/29~12/31)
- 料金 大人500円、小人250円(旧片山家住宅と郷土館で共通)
【旅行に役立つサービスの紹介】
快適に楽しく旅行を行なうために、便利なサービスが色々あるので、下記記事で紹介します。
【見所①】現役最古を記録していた「旧吹屋小学校」
旧吹屋小学校は、2012年(平成24年)に閉校されるまで、現役最古の木造校舎でした。
今は、吹屋の歴史や文化を発信する地域の新たな拠点とて活用されています。
その外観は、明治時代後期を代表する擬洋風の学校建築。その趣のある外観は、吹屋の雰囲気にピッタリです。
校舎中へ入ると、三間廊下(さんげんろうか)や明治・平成時代の教室、講堂、校長室、懐かしい実験道具の展示など見どころ満載。さらにXRといった最新テクノロジーも楽しめる。
また、校舎内には「日本遺産センター」がありますので、「ジャパンレッド」発祥の地として興味深い展示品が並んでいますね。
旧吹屋小学校について、くわしくは下記関連記事で紹介します。
【見所②】ベンガラ作りを学べる「ベンガラ館」
ベンガラ館では、明治時代のベンガラの製造工程をわかりやすく展示しています。この館は、1974年までベンガラ工場として使われていました。
イラスト入りの解説を読んでいると、ベンガラの製造工程はいくつにも分かれており、非常に手間暇がかかることが良く分かりますね。
鉱石に熱を加えて黄緑色のローハ(硫酸鉄)を作る。そして、乾燥・焼き等の工程を行ない、赤く変色したものを石臼で挽く。そして、酸を抜きやっと鮮やかなベンガラになります。
その工程の中でも酸を抜く作業が大変そう。作業自体は、水でかき混ぜて酸が溶けた上澄み水を捨てるという単純作業ですよ。
上質なベンガラを作るには、この作業を多くて100回以上も繰り返したという。うん、私には無理。このような単純作業は、私のように耐えられないという人も多いでしょう。
それにしても、江戸時代にこのような技法を考えつき実践するなんて、先人の知恵には感服するばかりです。
- 住所 岡山県高梁市成羽町吹屋86
- 電話番号 0866-29-2136
- 営業時間 9:00~17:00(12月~3月は10:00~16:00)
- 定休日 年末(12/29~12/31)
- 料金 大人300円、小人150円
- 駐車場 普通車20台、バス2台
【見所③】見事な石垣に目を見張る「広兼邸」
吹屋の町並みから約4kmほど離れたところには、広兼邸(ひろかねてい)と呼ばれる豪邸があります。
その豪邸は、一目で只物ではないと分かりますよ。その理由は、城郭にも劣らない堂々たる石垣が今も残っているから。
これが個人の邸宅だと思うと、当時の富豪ぶりがよく分かるというものです。
広兼家は、代々大野呂地区の庄屋を務めたお家柄。1800年頃、小泉銅山とローハ(硫酸鉄)の製造を営み巨大な富を築き上げました。
坂道を歩いた先には、見事な楼閣が見て取れる。この楼閣は二層からなっており、二階部分には見張り部屋があったそうな。ますます城塞の雰囲気が漂いますね。
敷地は781坪もあり、2階建ての母屋や離れ、土偶、使用人たちが暮らしていた長屋などがありました。
また裏手の崖からは、湧き水が流れており、その湧き水を日常生活のなかで使っていたそうです。
吹屋の町並みから少し離れていますが、城塞と見間違うほどの豪壮な邸宅へ訪れるのをおすすめします。
- 住所 岡山県高梁市成羽町中野2710
- 電話番号 0866-29-3182(成羽町観光協会吹屋支部)
- 営業時間 10:00~17:00(12月~3月は10:00~16:00)
- 定休日 年末(12/29~12/31)
- 料金 大人400円、小中学生200円
- 駐車場 普通車30台、バス5台
吹屋ふるさと村の基本情報とアクセス
住所 | 岡山県高梁市成羽町吹屋 |
電話番号 | 0866-29-2205(高梁市観光協会) |
【アクセス】
- JR備中高梁駅から吹屋行きバスに乗って約55分、終点で下車
- 岡山自動車道「賀陽IC」から車で約50分
吹屋行きのバスは、本数が少ないため発車時刻をよく確かめておきましょう。
吹屋ふるさと村の駐車場
吹屋ふるさと村には、無料で利用できる「下町駐車場」があります。観光バスも数台駐車できるほどの広さがありますね。
まとめ
吹屋ふるさと村は、ベンガラ色で統一された建屋が立ちならぶ町並みが特徴的です。
吹屋の町並みの散策や旧片山家住宅・郷土館、旧吹屋小学校、ベンガラ館、広兼邸などの見学、ベンガラ染め体験など様々な楽しみ方ができます。
決してアクセスが良いわけではありませんが、高梁市の山間に佇む異空間へぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。