備前焼の里として、全国にその名がとどろく岡山県備前市。
備前市には、備前焼ゆかりの「天津神社(あまつじんじゃ)」が古くから鎮座しており、地元の人々の崇敬を集める氏神様として親しまれています。
備前焼と聞くと、食器や花入をイメージする方が多いでしょう。備前焼で作られるものは、それだけでなく数多くの細工物も存在しているのです。この天津神社では、参道・門・狛犬など至るどころで備前焼が見られ、その光景は実に素晴らしい。
本記事では、そんな魅力ある天津神社の見どころを紹介します。
天津神社とは
天津神社は、岡山県備前市伊部(いんべ)に位置し、備前焼とその歴史を共有する由緒ある神社です。
創建は1411年(応永18年)と古く、伊部地域の総鎮守として学問の神様や病気平癒の神様を祀っています。昔は浦伊部にありましたが、1549年(天正7年)に神託により今の場所へ遷宮されました。
境内には、備前焼陶板を敷きつめた参道を始め、神門・随神門の屋根瓦、狛犬など数多くの備前焼が見て取れて実に面白いですね。
その鮮やかな美しさは、備前焼ファンでなくても楽しめます。また、初夏にはアジサイが咲き、備前焼の色彩とのコントラストが印象的ですよ。
参道の階段を上るとすぐ目の前に拝殿があります。この拝殿周りにも多くの備前焼の作品がありますので、お見逃しなく。なので、参拝してすぐに引き返さないようにしよう。
天津神社の本殿は、1678年(延宝6年)に改築しており、市指定の重要文化財に選ばれている。また、神社の裏山には江戸時代の「伊部北大窯跡」と呼ばれる史蹟があります。
地面には、陶器の破片が大量に落ちており、往時にどれだけの陶器を作成したのか興味がわきますね。
【周辺の見所】
天津神社の見どころを、下記記事で紹介します。
天津神社のご祭神・ご利益・所要時間
天津神社のご祭神は、以下の通りです。
- 少彦名命(すくなひこなのみこと)
- 菅原道真(すがわらのみちざね)
- 天太玉命(あまのふとだまのみこと)
- 大巳貴命(おおあなむちのみこと)
当初は少彦名命をお祀りしていましたが、伊部・浦伊部は菅原氏の荘園であった関係から後に菅原道真を配祀しました。
少彦名命は病気平癒の神、菅原道真は学問の神様として有名。大巳貴命は大国主命(おおくにぬしのみこと)のことで、一般的に大国様と呼ばれ親しまれていますね。
なので、ご利益には「病気平癒・学業成就・陶業繁栄」があります。ここで注目したいのが、陶業繁栄のご利益。
備前焼陶祖とされる天太玉命のご利益でしょう。陶芸を志す人にとっては、何よりもご加護を頂きたいのではないでしょうか。
毎年10月の第4日曜日と前日が大祭・ご神幸祭であり、4月15日に祈年祭、11月23日に新嘗祭が開催されます。
境内はそれほど広くはありません。20~30分もあれば一通り見て回れますが、至るどころで見かける備前焼の作品をじっくり見学して楽しみましょう。
【神社参拝に役立つ話】
神社へ参拝する際に役立つ話を、下記記事で紹介します。
【見所①】備前焼が敷かれた参道と狛犬
天津神社の入口前から続く参道には、他の神社と異なり、備前焼が敷き詰められています。それだけでも、ここが備前焼ゆかりの地であることを強く意識させられますね。
控えめですが、その色鮮やかさに美しさを感じる参道を歩くのは素直に嬉しい。
特別感のある参道を1歩づつ歩いた先には、鳥居が建っており、鳥居の扁額には「天神」の文字が記されている。これだけで、ご祭神が菅原道真であることがピンときます。鳥居の両隣には、備前焼の狛犬が守護していました。
昔は阿像(口を開いている)は獅子で吽像(口を閉じている)は狛犬でしたが、今ではどちらの呼称も狛犬ですね。備前焼では「宮獅子」と呼ばれています。その凛々しくもユーモラスな姿は、親しみを持てる造形ですよ。
解説板によれば、これらの宮獅子は江戸時代末(1861年)に作られたという。岡山県内の神社へお参りにいくと、備前焼の宮獅子を見かける機会が多い。特に備前地域では、よく見かけます。
これについて昔調べたことがあるのですが、江戸時代後半から近代にかけて、窯元の主力商品として作られたとか。そのため、全国へ流通しました。
参道を歩いていると、至るところに応援のメッセージがある。「なんとかなるって!」という言葉は、特別なパワーワード。
どんな時でもポジティブに考えていきたいですね。
【神社仏閣の紹介(その1)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
【見所②】備前焼だらけの神門と随身門
鳥居をくぐった先に見えるのが神門です。この神門は、一目で特別感があるのがわかります。備前焼の屋根瓦がとても美しく、見栄えが素晴らしい。境内の中でもっとも目を引く存在ですね。
瓦の家紋は、剣梅鉢紋と五七桐紋の2つが交互にあしらわれている。
これらの瓦は、天津神社宮司の家系に当たる日幡光顕(ひばた こうけん)、寿(ひさし)父子が奉納されたそうですよ。後世に残るいい仕事をしてくれました。
また、陶板をはめ込まれた壁や宮獅子のレリーフも見ごたえあり。屋根の上には、シャチホコがいました。もちろんシャチホコも備前焼。生き生きとした姿が見て取れます。
これほど圧巻で贅沢な神門には、拍手喝采を送りたい。この神門は、歴史が古く元文年間(1736~1740年)に造られたそうです。
真正面から眺める神門の姿もよいですが、門をくぐり先に続く階段を上った途中から、振り返って神門を見て下さい。上から見ると、備前焼の瓦の模様がより鮮明に分かります。
石段を囲む塀にも注目。備前焼作家の陶印が入った陶板が、埋め込まれている。
陶印とは、陶芸作家が自分の作品に印すサインのこと。いわゆる証明書ですね。その色鮮やかさは目に嬉しいですよ。陶芸に興味がある方は、知っている作家の陶印を探してみてはいかがですか。
また、階段のところにも応援メッセージを発見。そのメッセージに元気をもらう。うん、こういうのはいいですね。
少しの階段を登ると随身門が見えてきた。この門の左右には、神様が安置されており、悪霊が入り込まないようにここで門番をしています。
もちろん随身門の屋根瓦も備前焼。ここまできて、備前焼でなければ、変に思ってしまうかも。(笑)
随身門も神門と同じく、元文年間に造られたそうです。
随身門を抜けたら拝殿まであと少し、頑張って階段を登りましょう。
【カメラに関する話】
備前焼が織りなす光景をカメラに収めて旅の思い出にしよう。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
【見所③】拝殿周辺や境内に見られる備前焼の数々
拝殿周辺には、備前焼の作品が多いです。参拝した後で、そのまま来た道を戻るのは、実にもったいない。じっくり拝殿周辺を見学していこう。
拝殿前の床にも備前焼が敷き詰められています。さらに壁面には、宮獅子のレリーフがあり、四神(朱雀・青龍・白虎・玄武)のレリーフもありました。うっかり見逃すともったいないですよ。
拝殿の隣へ向かうと、子宝祈願にご利益がある「子宝いぬ」が奉納されています。当然ですが備前焼ですね。
本殿裏では、備前焼で作られた七福神の細工物が奉納されている。可愛らしいだけでななく、精緻な作りです。レリーフには、七福神社とかかれています。
個人的に驚いたのは、こちらの祠。
祠の隣には、備前焼のネズミやイノシシなどが並べられおり、良くできているなと感心していたのですが、祠の穴の中から人の顔がこちらを見ており、一瞬ギョ!としましたね。これは、夜見てしまうと怖いかも。
境内はそれほど広くないので、歩いていると様々なところで備前焼の作品を見かけます。そんな作品をダイジェストで紹介。
個人的に足を運んでもらいたいのは、駐車場の奥です。石灯籠の隣にある二宮金次郎の像は、ぜひ見て欲しい。
この二宮金次郎の像も備前焼でできている。これは珍しくないですか。少なくとも私は、ここでしか見たことがありません。
それにしても数多くの備前焼の作品は、見ているだけでも面白い。鮮やで暖かい色合いの作品群に影響されてか、天津神社は独特の空間を作り上げていますね。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
【見所④】伊部稲荷神社などの境内社
拝殿周辺には、小さな社が複数あるので参拝していきましょう。
商売繁盛の神様を祀る「稲荷神社」や、病気平癒などにご利益がある「伏園社」があります。
稲荷神社には、備前焼のお稲荷さんがおられ、伏園社には備前焼の牛などがいますので、お見逃しなく。また、日本で最初の天皇を祀る「神武天皇社」も鎮座している。開運のご利益を授かろう。
特に目を引くのが、朱塗りの鳥居が鮮やかな「伊部稲荷神社」です。
これらの境内社は、拝殿近くに配置されているので直ぐに足を運べますが、離れたところには天太玉命を祀る「忌部神社」があります。
今回、私はそこまで足を運びませんでしたが、周囲には備前焼の欠片が落ちており、拾って帰るのはタブーですよ。そんなことをすると、神罰がくだるといわれているので注意しましょう。
天津神社の基本情報とアクセス
住所 | 岡山県備前市伊部629 |
電話番号 | 0869-64-2738 |
【アクセス】
- JR伊部駅から徒歩約7分
- 山陽自動車道「和気IC」から車で約15分
天津神社の駐車場
天津神社には、手水舎に奥に無料駐車場があります。(普通車5台)
まとめ
天津神社は、大きな神社ではないですが、見どころが多いです。
参道の足元を始め、周囲を囲む塀や門の屋根瓦、狛犬など至るどころに備前焼を目にしました。その色鮮やかな美しさは、備前焼ファンでなくても目を引きます。
岡山県備前市へ訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでみて下さい。たくさんの備前焼で作られた作品を楽しみましょう。