日本全国に点在する古い町並みは、先人たちの培った歴史を伝えるとともにノスタルジーを感じますね。
岡山県北部にある津山市では、旧出雲街道沿いに国の重要伝統的建造物群保存地区(通称:重伝建)に指定された城東(じょうとう)地区の町並みがあります。
津山市のシンボル「津山城」のお膝元で栄えて城下町の景色が、今もなお色濃く残り、町歩きをすれば様々な文化を感じとれる。
古い町並みに興味がある方はもちろん、そうでない方もぜひ風情ある町歩きを楽しんでみよう。城東むかし町家や津山洋学資料館、千光寺など見どころも目白押しです。
本記事では、津山の城下町・城東町並み保存地区の魅力を紹介します。
城東町並み保存地区(重要伝統的建造物群保存地区)とは
津山城の東側に位置する旧出雲街道に面した城東町並み保存地区は、城下町が発展してできた町並みです。
茶屋・豆腐屋・紺屋・塩屋などの商人や、鍛冶屋・大工・左官などの職人の家が並ぶ町人町として、江戸時代初期に形成された地割が色濃く残されています。
なまこ壁や虫籠窓(むしこまど)など、当時の面影を残した建物や、一つ一つ名前の付いた小さな路地など城下町としての名残が感じられる。
また、江戸時代に建てられた豪商の邸宅が保存されており、「城東むかし町家」として無料で一般公開されているので、ぜひ足を運んでみよう。
2013年には、重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
津山城の西側の旧出雲街道に面した城西地区には、寺町や商人町が残っているよ。
【周辺の見どころ(その1)】
城東町並み保存地区周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
「和蘭堂」で観光パンフレットを入手
城東町並み保存地区で一番始めに訪れたいのは、観光案内所兼カフェを営業している「和蘭堂(おらんだどう)」です。城東観光駐車場から西へ約150mほど歩いた場所にあります。
和蘭堂では、観光パンフレットを配布しているので入手しよう。
城東地区や城西地区の詳細なお散歩マップとして活用できるよう、分かりやすいくイラストなどで観光スポットを紹介しており、町歩きに心強い。さらにレンタサイクルを貸し出しているので、必要に応じてレンタルして下さいね。
また、自家焙煎の美味しいコーヒーや本格的な抹茶、ワッフル、ソフトクリームなどを頂けるので休憩スポットとしても持ってこい。店内には、津山名物ホルモンうどんや作州の竹細工など土産物も販売しています。
私が訪れた時期は、ちょうど「雛めぐり」が開催中でしたので、店内には綺麗なお雛様が飾られていました。個人的には、こちらのお内裏様とお雛様がハンバーガーを食している姿が、現代的で面白かったですね。
- 住所 岡山県津山市西新町5
- 電話番号 0868-24-6288(和蘭堂・城東観光案内所)
- 営業時間
- 4~9月 10:00~18:00
- 10~3月 10:00~17:00
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合は翌日)
- 祝日の翌日
- 年末年始(12/27~1/4)
【周辺の見どころ(その2)】
城東町並み保存地区周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
重伝建に指定された津山・城東地区の町歩きを堪能
城東の町並み保存地区は、橋本町・林田町・勝間田町・中之町・西新町・東新町の出雲往来沿い全長約1.2kmほど続きます。
片道を歩くだけでも20~30分ほどかかり、色々なお店や施設に足を運んでいると、いつの間にか2~3時間はあっという間に経つものですね。
戦国武将で有名な織田信長の側近として最期まで献身的に支えた森蘭丸の弟・森忠政によって建てられたのが津山城です。その城下町は戦禍をまぬがれたため、当時の面影を残す建物が軒を並べて残っています。
主な江戸時代の町家は「切妻造平入り(きりづまづくりひらいり)」であり、火事が移ることを避けるための袖壁が見られる。さらになまこ壁という意匠が二階の壁に施されている。もちろん格子窓や焼杉板の外観も素晴らしい。
特に特筆すべきなのは、表側の壁が出雲往来両側の側溝ぎりぎりに建てられていることだろう。
一階の庇(ひさし)の位置が、隣同士でよくそろっている景観は、他の地域では中々お目にかかれないですね。
町中を歩いていると、こちらの用水桶の存在が目につきます。
これは、1655年に火の用心や喧嘩などの防止のために、あらかじめ火事に備えるように定められた結果なんだそうな。このエピソードだけでも、江戸時代には火事が頻発していたことを伺い知れる。
こちらは「作州城東屋敷」です。江戸時代の町家を再現した建物。
映画「男はつらいよ」シリーズのロケ地として人気があります。隣接する消防機庫と長いハシゴが目につきやすいですね。
ひとたび火事が起これば、ハシゴを登り先端にある鐘を鳴らしている様子が思い浮かびます。
この屋敷は、私の記憶では無料休憩所だったはずですが・・・「あれ、閉まっている?休憩所に休業なんて、ないと思うのだけどな」とこの時は不思議に思いました。
後日知り得たのですが、2023年4月から民間事業者に有料で貸し出しを始めたそうな。なるほど、閉まっている理由は分かりましたが、これも時代の流れなのでしょうね。
ちなみに作州城東屋敷の裏手には、だんじり展示庵と駐車場がありました。
先ほども少し触れましたが、一つ一つ名前の付いた小さな路地があり、路地ごとに名前が刻まれた石柱が建てられている。
ここまですると、特別感を感じてしまうのは私だけかな。路地の向こう側には、上之町の通りや寺下通りがあり、千光寺や大隅神社などの神社仏閣が連なるので足を運んでみて下さいね。(千光寺や大隅神社は後で紹介します。)
城下の街道ということで、城の防備のためにわざとかぎ状に造られた「大曲り」が点在しているのは、城東の町並みの特徴ですよ。
その中でも一番東に位置する「荒神曲り」はかなり見通しが悪い。なので、出会い頭に気を付けよう。特に自転車で通過する際には、歩行者とぶつかる可能性はゼロではありません。
この荒神曲りを曲がると、「とうふ」の文字が目に飛び込んでくる。城東地区で有名なお食事処兼お土産屋の「津山城東とうふ茶屋 早瀬豆腐店」ですね。
私は既に昼食を食べていたので、中へ入りませんでしたが、店前で記念撮影している観光客を何人も見かけました。
聞くところによると、早瀬豆腐店で売られている「ウルトラトーフ(絹)」は、第3回全国豆腐品評会中四国予選きぬ部門1位を獲得したんだとか。うん、これは興味が注がれます。B’Zの津山公演を記念して作られたそうで、食べれば「ウルトラSOY!」と叫びたくなるかも。(笑)
他に足を運びたいのは、江戸時代の豪邸「城東むかし町家」ですね。城東の町並み観光には外せません。無料で見学できるのもポイント高し。有料ですが、津山洋学資料館もおすすめ。くわしくは、後で紹介します。
おっ、銭湯を発見。見かけは銭湯に見えますが、そうではありません。たしかに1897年(明治30年)に開業され、戦後数年までお風呂屋を営業していたそうで、2015年にコーヒー店として復活を成し遂げた「福寿湯」ですよ。男湯か女湯のどちらから入ればよいのか悩みませんか。(笑)
うん、洋風の建物だ。和の建物が立ち並ぶ中、洋風の建物があるのは、なんだか新鮮に感じてしまう。ちなみに、町並み街道のほぼ東端には教会があります。
こちらは、城東地区で最大規模を誇る町家、旧苅田家住宅(きゅうかんだけじゅうたく)です。残念ながら非公開なので、建物の外をぐるりと回り外観のみを見物しよう。高くそびえ立つ火の見櫓が見えますよ。
江戸時代の造酒屋を今に残す建物群であり、津山城下町の酒蔵の中で、唯一現存する貴重な遺構だという。2009年(平成21年)には、酒造業を廃棄しています。
江戸時代以降、継続して営んだ酒造業とともに発展し、歴史的な価値も高い。2016年(平成28年)に国の重要文化財に指定されました。
ゆっくり歩きながら町並みを見物していれば、まだまだたくさんの発見を楽しめる。
この地で暮らしていた先人たちの想いを想像しながら、ゆったり過ごそう。歴史と文化が根付く城東の町並み見物を満喫して下さいね。
【古い町並みの紹介】
旅先で訪れた古い町並みを、下記記事で紹介します。
江戸時代の豪邸「城東むかし町家(旧梶村邸)」を見学
城東むかし町家(旧梶村邸)は、両替商として津山藩の藩札を発行していた茂渡籐右衛門(しげとうとうえもん)により江戸の元禄時代に建てられ、城東有数の豪商として発展しました。
そんな由緒ある住宅なのですが、無料で入れるのは嬉しい限りですね。もともとは江戸時代に母屋の一部が建てられていたそうですが、明治・大正・昭和初期には、洋館・茶室(千草舎)などが建てられ、今の大きさになったそうです。
その内9棟の建築が、国登録有形文化財に指定されています。個人的には、ドイツ壁の洋館が想定外すぎて驚きましたね。
室内は広々としており、高い天井を始め、かまどやタライなど日常生活で使われていた趣のある家具などが見て取れる。また、大名かごの複製など珍しいものがあり、見応えがありました。
お座敷では、思わず畳の上に寝転がってしまいたくなりますが、そこはグッと我慢しよう。NHK朝の連続小説ドラマ「あぐり」のロケ地だったそうですよ。
「雛めぐり」の開催期間であったので、多くの部屋には立派な雛段が飾られていました。こういう演出は素敵です。
庭園へ足を運ぶと、石組の築山が素晴らしい。豪商の庭園としては規模が小さめに感じますが、当時の町家として考えれば立派なのだろう。
この庭園は「旧梶村氏庭園」として国登録記念物(名勝地)ですよ。
庭の奥には蔵があり、今では資料館として使われています。1階は歌舞伎を演じる人形たちが展示されており、見ていて面白い。2階へ上がれば、展示された古い写真から、昔の情景を知ることができる。
せっかくなので、お屋敷の縁側からのんびりとお庭を眺めながら、くつろいでみませんか。城東むかし町家で、ぜひ津山の歴史を体験して下さいね。
- 住所 岡山県津山市東新町40
- 電話番号 0868-22-5791
- 営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日 火曜日(祝日の時は翌日)、年末年始(12/29~1/3)
- 入館料 無料
【旅行に役立つ話】
旅行に役立つ話を、下記記事で紹介します。
城東地区の町歩き中に立ち寄りたいスポット紹介
先ほど紹介した「城東むかし町家(旧梶村邸)」の他にも、以下のスポットへ足を運んで、城東地区の町歩きを楽しみましょう。もちろんこれら以外にも、気に入る場所はあると思うので、色々と探してみて下さいね。
- 津山洋学資料館
- 箕作阮甫旧宅
- 千光寺
- 大隈神社
それぞれについて紹介します。
【神社仏閣巡りに役立つ話】
神社仏閣を参拝するに当たり、役立つ話を下記記事で紹介します。
津山洋学資料館
津山洋学資料館では、江戸時代後期から大正期にかけて、西洋の学問を研究した津山ゆかりの蘭学者たちの資料を展示しています。
西洋の内科医学を初めて紹介した宇田川玄随(うだがわ げんずい)や、幕末の対米露交渉を始め様々な活躍をした箕作阮甫(みつくり げんぽ)などを紹介している。
個人的に凄いと思ったのは「解体新書」の初版本の存在ですね。歴史の授業で習った日本最初の本格的な翻訳医学書を見られるとは、テンションが上がりました。
常設展示は主に、3つのテーマ「人体に隠された科学への扉」「世界へと開かれていく眼」「日本の近代化と津山の洋学者」に分かれており、それぞれのテーマ別に学べます。尚、館内は撮影禁止なので気を付けて下さいね。
- 住所 岡山県津山市西新町5
- 電話番号 0868-23-3324
- 営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
- 休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始(12/27~1/4)
- 料金
- 一般 300円
- 高・大学生 200円
- 小・中学生 無料
- 65歳以上200円
箕作阮甫旧宅
津山洋学資料館へ訪れた後で、ぜひ立ち寄ってほしいのは、箕作阮甫(みつくり げんぽ)旧宅です。
明治から大正時代には、鍛冶屋や豆腐屋などで使用されていたそうですが、1942年(昭和17年)に津山市が買収しました。江戸時代の姿を良くとどめているとして、国の重要指定史跡となり一般公開されています。この施設も城東むかし町家と同じく、無料で見学できるのはありがたい。
箕作先生は、蘭方医だけでなく、語学・西洋史・兵学・宗教学など広範囲にわたり洋学を修め、多方面で活躍した人物として歴史に名を残しています。
また、江戸幕府直轄の洋学研究教育機関である「蕃書調所(ばんしょしらべしょ)」の主席教授を務めました。
この蕃書調所は、後に洋書調所や開成所となり、明治維新後には開成学校、大学南校と名前を変えていき、今の東京大学になります。ということは、箕作先生が日本初の大学教授といっても差し支えありませんね。
- 住所 岡山県津山市西新町6
- 電話番号 0868-31-1346
- 営業時間 9:30~16:00
- 休館日 月曜日(祝祭日の場合は翌日火曜)、年末年始(12/29~1/3)
- 料金 無料
千光寺
千光寺(せんこうじ)は、城東町並み通りのひとつ裏通りとなる寺下通りにあります。
このお寺の境内は、知る人ぞ知るしだれ桜の名所ですね。樹齢は150年以上あり、高さ約15m、枝の広がり幅が約18mもあるので迫力満点ですよ。そのため、毎年多くの見物客が訪れます。
私が訪れた時期は、桜シーズンの少し前だったので、全く開花していませんでしたが、その枝ぶりは見事なものでした。
実はしだれ桜以外にも見どころがあるということを、和蘭堂で入手した観光パンフレットを読んで発見。なんと「樽墓」と「槍墓」があるというじゃないですか。
そんな珍しいお墓を一目見たくて訪れた次第です。特に樽墓を見た時の私の第一声は「なんて立派な樽なんだ!」ですよ。墓石の頭に石でできた樽が載っている姿は面白い。生前、よほどの酒好きだったのか色々な想像をしてしまいました。
一方、槍墓の方は想定内かな。墓石の上に槍の穂先が真っ直ぐに立てられていました。
観光パンフレットのいう通り、確かに一見の価値があるので、ぜひ見物してみよう。あくまで墓場なので静かにして、マナーを守るのを忘れないで下さいね。
- 住所 岡山県津山市林田1703
- 電話番号 0868-22-7978
大隈神社
大隈神社は、城東町並み通りから大隅小路を真っ直ぐ歩いて行くと、辿り着きます。
創建は奈良時代の和銅年間(707~715年)ととても古く、城下町を造る際には、城下の鬼門の守護として今の場所へ移されました。
この神社の鳥居が独特で面白いですよ。なんと扁額の上に屋根が載っているなんて、斬新なアイデアにびっくり。まるで越屋根のようなデザインで大変珍しいですね。神社好きの方は、思わずまじまじ見てしまうでしょう。(私がそうでした。)
また、神門は明治維新以後に津山城内の門を移築したもの。津山市の重要有形民俗文化財になっています。
少し長い階段を上ると拝殿があり、その周りには多数の境内社が並んでいる。ぜひ参拝していこう。
- 住所 岡山県津山市上之町78
- 電話番号 0868-24-3310
城東町並みの基本情報とアクセス
住所 | 岡山県津山市橋本町~東新町 |
電話番号 | 0868-24-6288(和蘭堂・城東観光案内所) |
【アクセス】
- JR津山駅から徒歩約20分
- JR津山駅から市内循環ごんごバスに乗って「東新町」で下車
- 中国自動車道「津山IC」から車で約15分
城東町並みの駐車場
東新町の旧出雲街道沿いには、無料で利用できる城東観光駐車場があります。(普通車30台、バス6台)
まとめ
津山の城下町・城東町並み保存地区をゆっくり歩き、先人たちから受け継いだ歴史と文化を体感しよう。
古い建物が連なる眺めは、とても風情を感じるとともに、なんだか懐かしさを感じます。これも私たち日本人のDNAがなせる業なのでしょうかね。
城東むかし町家や箕作阮甫旧宅など無料の施設が多いのもありがたい。ぜひ足を運んで見学し、当時の生活を垣間見てみよう。また、近くには津山城があるので、合わせて訪れるのをおすすめします。
レトロな町並みに興味がある方はもちろん、そうでない方も楽しめる魅力ある城東町並み保存地区。気になったお店や施設へ足を運び、津山観光を楽しんで下さいね。