高知県を代表する観光スポットの1つとして知られる「室戸岬」。
室戸ユネスコ世界ジオパークに認定されており、国内だけでなく世界から注目を集めている景勝地です。
ダイナミックな奇岩地帯を縦横無尽に歩きながら、大自然が造り上げた迫力ある景観を満喫しよう。また、岩に絡みつくように無数の根を張るアコウの木など南国高知の色とりどりの植物も魅力的。
さらに太平洋を一望できる展望台や恋人の聖地、弘法大師が修行した「御厨人窟(みくろど)」など見どころも多いです。
本記事では、自然の力強さを実感するジオパークの景色を歩きながら、室戸岬の魅力を紹介します。
室戸岬とはどんなところ
室戸岬は四国の南東端に位置しており、室戸半島の先端の岬です。
日本地図で四国を一目見て分かるほど、太平洋に向けて逆三角形に突き出た地形が特徴的ですね。
海岸にはダイナミックな奇岩が乱立し、亜熱帯性樹林や海岸植物が茂る景勝地として有名。大地震により過去に何度も隆起を繰り返してきました。
実はその証拠が地形にバッチリと残っているだけでなく、室戸半島は今も隆起し続けているというのだから驚きです。
また、台風銀座として知られるほどの強風地域。テレビの台風中継で室戸岬が映される様子を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
1928年には国の名勝として登録され、1964年に室戸阿南海岸国定公園に指定されました。そして、2011年9月には世界ジオパークに認定され今に至ります。
【周辺の見どころ】
室戸岬周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
室戸岬の所要時間と注意点
室戸岬周辺には魅力的な観光スポットが多く、遊歩道や室戸岬灯台、スカイライン山頂展望台を見て回るだけでも3~4時間ほどかかります。そのため、時間に余裕をもって行動しよう。
海岸線には歩きやすい遊歩道が整備されているのですが、せっかく室戸岬へ訪れたのだから岩礁地帯を歩かないのはもったいない。面白い形をした奇岩怪岩をより間近で見物して楽しんで下さいね。
すると、遊歩道と違ってとたんに足元が悪くなるので、ヒールやサンダルはNG。スニーカーや運動靴のように歩きやすい靴でなければ危ないです。
また、風が強い日が多く、全国的にみて強風地点に挙げられる。年間の平均風速が7.7m/sもあり、1年のうち約250日ほどは強い風が吹くのだから風対策は必須ですよ。
帽子をかぶるのならば、風で吹き飛ばされないようにしっかりとかぶりましょう。
マグマの活動や地殻変動によって生まれた奇岩の数々
ユネスコ世界ジオパークに指定された室戸岬の先端には、全長約2.6kmほどの「乱礁遊歩道(らんしょうゆうほどう)」が整備されています。
遊歩道を歩きながら、様々な奇岩が密集する景観を堪能しよう。遊歩道の出入り口は複数あり、遠くからでも目立つ中岡慎太郎像のすぐ近くにもあるぞ。
晴天の下、白波が打ち寄せる岩礁は迫力満点。海底の隆起によって形作られた奇岩の数々は、見る場所によって全く違う表情を魅せてくれる。ぜひ太古の地球の息吹を感じて下さいね。
こちらは約1,600~2,800万年に深海にあったとされる「しましまの地層(タービダイト)」。
名前から分かるように白(砂)と泥(黒)がしましまに織り交ざった姿が印象的です。
地震により比重の違う泥や砂が斜面を下ることで、重いものから先に積もりました。その結果が、地層によく表れている。
1枚の砂の層をよ~く見てみると、下から上に向かって砂粒が少しづつ細かくなっているのが面白い。
こちらの見晴らしの良い浜辺には、「牛角岩」と書かれた杭が突き刺さっています。
おそらく初見では多くの人が首をかしげてしまうだろう。
というのは、名前から察するに牛の角のような岩があるというのは想像できるのだけど、辺りを見渡してもそのような岩が一向に見つからない。
実は、遊歩道を少し東へ歩くと「子授の岩(こさずかりのいわ)」があり、遊歩道を挟んで反対側にある大きな岩が「牛角岩」なんだとか。
杭のある場所から少し離れており、特に案内板がないので、初見で気付くのは難しいのではないかな。(私は後から知りました。)
子授の岩を見てみると、小さな石がたくさん積み上げられている。どうしてこうなった?
案内板によれば、どうやら子供が授かるという伝説のある岩ということ。
この岩の上へ向かって小石を投げて、そのまま落ちてこなければ子供が授かるそうですよ。なるほど、だからこんなにたくさんの小石があるのか~。納得しました。
それにしても奇岩奇勝が目白押しのため、遅々として先へ進みませんね。(笑)
そんな室戸岬の風景をダイジェストで紹介。
室戸岬では様々な名称が付けられた場所が数多くあり、どんないわれがあるのか調べるのは楽しいです。
ジオパークらしく岩が浜にゴロゴロ転がっている「月見ヶ浜」では、中秋の名月に眼前の海から月が昇り、絶好のお月見スポットになるそうですね。
また、ホルンフェルスを見かけます。ホルンフェルスとは、岩のやけどのこと。
1,000度を超えるドロドロのマグマが砂や泥の地層に入り込むと、砂や泥の性質が変化するため、やけど痕のように見えてしまう。
おっ、岩の表面が蜂の巣のようになっているではないですか。
実はこれ「タフォニ」と呼ばれる岩盤や岩塊の表面に形成される風化穴です。
海水が岩石にくっつき、水分が蒸発すると塩の塊が作られて、その塊が大きくなると圧力により岩石に小さな割れ目ができる。
そして、次第に広がってできた結果が今の状態というわけ。遊歩道の至るどころには、案内板があるため、室戸岬が形成された過程を学べます。
【景観の良い岬を紹介】
室戸岬のような景観の良い岬を、下記記事で紹介します。
弘法大師・空海の逸話が残るスポット
室戸岬は、弘法大師が苦行修行を積みながら、悟りを開いた場所として知られています。そのため、至るどころに逸話が残る場所があるので見物していこう。
灌頂ヶ浜(かんじょうがはま)では、弘法大師が仏と縁を結ぶ灌頂の会式を行なったそうな。
周辺に見える岩礁は地震で隆起したもので、磯には小さなプールとなった入江もあるので、磯の生物の観察にピッタリ。
それに白波が打ち寄せる様子をじっくり見物できるのもGood。
また、振り返ると、山頂に白亜の灯台が見えるではないですか。それに中腹辺りには、展望台が見えるぞ。時間があるのならば、両方ともぜひ足を延ばしてみよう。
そこから見える景色は絶景です。
こちらは、行水の池。弘法大師が修行中にこの海で行水されたと伝わっています。
池の岩をよく見ると窪みがあり、波打ち際に住むヤッコカンザシの巣が残っているぞ。
今から約2,700~1,000年前に造られたというのだから凄いものだ。かつて波打ち際にあったはずなのに、ずいぶん高い位置にまで持ち上げられているため、大地の隆起をリアルに実感できました。
個人的にその効用は本当?と思ったのは、こちらの目洗いの池。
大きな岩の近くにある草がボウボウと茂る池なのですが、弘法大師がこの池の水を用いて人々の目の病気を治した逸話がある。
う~む、どう見ても目を洗うと大変なことになりそうなんだが・・・
恐らく今と昔では自然環境が違っており、昔は澄み切っていたに違いない。
【弘法大師の逸話が残るスポット】
旅先で訪れた弘法大師・空海の逸話が残るスポットを、下記記事で紹介します。
エボシ岩とビシャゴ岩は必見
室戸岬の遊歩道を歩いていると、印象的な奇岩をたくさん見かけますが、その中でも「エボシ岩」と「ビシャゴ岩」はひと際存在感が大きいです。
エボシ岩は、その名の通り遠くから「烏帽子」のように見える。エボシ岩を含むその周辺の岩は、班(はん)レイ岩ですね。
そもそも室戸岬先端の東側は、ほとんど斑レイ岩が占めています。
この班レイ岩は花成岩の一種であり、室戸がまだ深海にあった約1,400万年前に、海底にあったマグマが地中でゆっくりと冷えて固まった岩石なんだとか。
とてつもなく硬い特徴があるので、周囲の地層が波の浸食で削られたけれど、その姿を守り続けたタフガイですよ。
遊歩道を歩き続けて最後に現れるボス的な存在が、こちらの「ビシャゴ岩」。こちらもエボシ岩と同じく斑レイ岩です。
エボシ岩も大きかったけど、こちらも負けていないぞ。約20m近くある火山のように見える岩は迫力満点です。
このビシャゴ岩には、室戸に生きた人々の悲しいエピソードがあります。
かつて「おさご」という絶世の美女がいて、多くの男性からひっきりなしに求婚があったという。
あまりの煩わしさに耐えかねた彼女は、「今後私のように辛い思いをする美女が生まれませんように」と願を掛けて、このビシャゴ岩から身を投げたといいます。
残念ながら彼女の願いは叶わなく、その後も室戸には多くの美女が生まれているそうですね。
個人的に気になったのが、どうして「ビシャゴ」という名前なのだろうか?
パンフレットや案内板には特に説明がないので分かりませんでしたが、色々調べてみると恐らく猛禽類の鳥「ミサゴ」に由来するかも知れません。
というのは、ミサゴは四国ではだいたい「ビシャゴ」というそうだ。ミサゴが魚を獲るときに、水面に脚を入れた際にビシャと聞こえるからこのように言われています。
現在、室戸岬ではミサゴを見かけませんが、かつては多くのミサゴがいたのではないでしょうかね。そして、ビシャゴ岩に巣を作って、暮らしていたのではないかと想像しました。
【カメラに関する話】
室戸岬は、フォトジェニックスポットとしてカメラ撮影が楽しいですね。下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
亜熱帯植物「アコウの木」の生命力あふれる姿が凄い
三方を海に囲まれた室美岬は、沖合に暖かい海流の黒潮が流れており、冬でも温暖な気候です。
さらに1年を通して降水量が多くなく、亜熱帯性植物や海岸植物の生息場所として適しています。特に目につくのは、岩に絡みつくように無数の根を張る「アコウの木」でしょう。
まるで「天空の城ラピュタ」に登場する大きな樹木を彷彿させるその姿は神秘的。見るからに力強い生命力を感じるぞ。
それに今にでも動き出しそうだ。もし本当に動き出したら怖いので、全力ダッシュで退散します。(笑)
パワースポットとしても有名なアコウの木は、たくさん生息しているので、一つ一つ違いを見つけるのも面白そう。
また、色とりどりの花が咲いているので、散策していると多くの花に出会えます。
たとえばハマユウやアロエ、アコウ、アオギリ、ハイビスカスなどが見られますが、個人的に見てみたいのはリュウゼツランですね。
このリュウゼツランは、数十年に一度しか花を咲かせないというのですから、どんな花なのか自分の目で確かめてみたい。
室戸岬の植物たちは、「室戸岬亜熱帯性樹林及び海岸植物群落」として国の天然記念物に指定されています。
【存在感満点の大木を紹介】
旅先で見物したアコウの木のような存在感満点の大木を、下記記事で紹介します。
太平洋を見つめる「中岡慎太郎の銅像」は何を思うか
室戸岬の先端付近には、明治維新の勤王の志士「中岡慎太郎」の銅像が立てられています。
坂本龍馬と共に薩長同盟を成し遂げるなど活躍した彼は、室戸の北にある北川村の出身です。
「人の価値は家柄ではなく、自身の為したことによって決まる」という信念を持っており、新しい時代を切り開くため幕末の世を奔走しました。
残念ながら大政奉還が行われた後、龍馬と同じく近江屋で暗殺されてしまいます。わずか30歳という若さでこの世を去りました。
彼らが夢見た日本の夜明けを、自分で見ることが叶わなったのは心残りでしょう。今の令和の世を見て、彼が一体どう思うのだろうか興味があります。
彼の信念がそれなりに叶った現代社会に対して、満足の笑みを浮かべるのかも知れませんね。
ちなみに慎太郎像の周囲には、風見鯨のモニュメントがあります。
これは、室戸岬沖でよく見られるマッコウクジラをモチーフとした風見鳥のクジラ版だ。風速5~6mで悠然と風上を向く仕掛けなので、ぜひ見物していこう。
室戸岬には3つの「恋人の聖地」が集まっている
室戸岬の周辺には、恋人の聖地と呼ばれる場所が3ヶ所あります。
1つ目の聖地は、室戸岬灯台展望台です。室戸岬から室戸スカイラインを車で約5分ほど駆け上ると、最御崎寺(ほつみさきじ)と同じ駐車場がありますので、そこから灯台へ向かいましょう。
普段は灯台の中を見学できませんが、ここからは180度近い太平洋のパノラマ絶景を堪能できる。
青空の下、眼前に広がる大海原と共に白亜の灯台の光景は、フォトジェニックスポットとして素晴らしいので、ぜひ記念撮影をおすすめします。
2つ目の聖地は、室戸岬展望台です。
先ほど紹介した中岡慎太郎の銅像の裏手にある丘を少し上った所に展望台があります。200段ほどの階段を上らなくてはなりませんが、苦労しがいのある眺望が待っているぞ。
その眺望がこちら。どうですか、階段を上った疲れなんて吹き飛ぶぐらいの景色です。
どこまでも続く青い水平線や岩礁に波がぶつかり、白く砕け散る様子に拍手喝采を贈りたい。ジオパークが織りなす絶景を展望台から心行くまで楽しんで下さいね。
そして最後の3つ目が、室戸スカイライン山頂展望台です。
室戸岬灯台からさらに約2kmほど北上すると、辿り着きます。展望台からは、360度の室戸半島一帯を望むパノラマ絶景を楽しめる。
空の蒼・海の藍・山の緑のコントラストが実に良い。思わず息を飲むほどの美しさだ。
これらの恋人の聖地へカップルで訪れたならば、きっといいムードで景色を堪能できるでしょう。
弘法大師が難行苦行を重ねて修行した「御厨人窟」
国道55号線沿いには、平安時代に弘法大師が修行しながら暮らしていた洞窟があります。海水の浸食でできた洞窟であり、パワースポットとしても知られている。
洞窟は2つあり、正面から左手側は弘法大師が生活をしていた「御厨人窟(みくろど)」。右手側が修行をしていた「神明窟」だ。2つ合わせて「みくろ洞」や「みくら洞」と呼ばれています。
洞窟内には五所神社があり、中へ入った後で振り返ると鳥居越しから太平洋が見える。かつて弘法大使は、この洞窟内から見えた空と海に深い感銘を受け、自らを「空海」と名乗りました。
厳かな雰囲気が漂う中、神秘のパワーをチャージしてみてはいかがですか。
室戸世界ジオパークセンターでジオパークを学ぶ
室戸世界ジオパークセンターは、ジオパークとしての室戸の魅力を学べる施設です。室戸の地質的な成り立ちを始め、風土に合わせた独得な文化や歴史などを紹介しています。
個人的には、リクガメがサボテンを食べる説明があって驚いた。う~む、実に興味深いですね。実際、室戸のしおかぜサボテンとして商品化されています。
また、体験プログラムやガイドツアーも開催しているので興味があるならば参加してみよう。さらにグッズ販売や軽食も楽しめる。
じっくりと学ぶことで、施設を後にした時には、いっぱしのジオパーク博士になっているかも知れませんね。
- 住所 高知県室戸市室戸岬町1810-2
- 電話番号 0887-23-1610
- 営業時間 9:00~17:00
- 休館日 無休
- 入館料 無料
室戸岬の基本情報とアクセス
住所 | 高知県室戸市室戸岬町 |
電話番号 | 0887-22-0574(室戸市観光協会) |
【アクセス】
- 土佐くろしお鉄道(ごめん・なはり線)奈半利駅から高知東部交通のバスへ乗車して「室戸岬」のバス停で下車(乗車時間は約60分)
- 高知市街から国道55号線を経由して車で約2時間
室戸岬の周辺は、公共交通機関が充実していないので、周辺の観光スポットをいくつも見て回るのであれば、マイカーやレンタカーをおすすめします。
室戸岬の駐車場
中岡慎太郎像のすぐ近くには、無料駐車場があります。(普通車 約20台)
まとめ
高知県を代表する観光スポット「室戸岬」は、地球のエネルギーを肌で感じとれる場所です。
長い年月を経て大自然が造り上げた圧倒的な景観には、驚かずには入られません。
雄大な太平洋を眺めながら、波の音に耳を傾け、岩礁に打ち寄せる白波やダイナミックな奇岩などを見て歩いて過ごし、非日常を満喫して下さいね。
室戸岬のある室戸半島には、室戸世界ジオパークセンターや吉良川の町並み、むろと廃校水族館など数多くの観光スポットが点在しているので、合わせて訪れてみてはいかがですか。