「水没ペンション村」をご存じですか。
その名前を聞くと、何やら不穏なイメージが思い浮かびますね。そして、どのようないわくがあるのか、興味をそそられる。
その名前の通り、水没したペンション村をイメージする方も多いでしょう。岡山県瀬戸内市には、その名で呼ばれるスポットが確かに存在します。
かつてのリゾート地が廃業後にいつの間にか水没してしまい、今なおその姿を残している。その怪しげな場所は、廃墟マニアにとって垂涎(ずいせん)もの。初めてその景色を目の当たりにすると、誰もが絶対に驚きますよ。(私もそうでした。)
余りの衝撃に言葉を失うかも知れませんが、今も現実に残り続けている土地であり、その問題は根深そうです。
本記事では、私の考察を交えながら、水没ペンション村ができた経緯や現状の風景を紹介します。
牛窓地区の水没ペンション村「鹿忍グリーンファーム」とは
岡山県瀬戸内市牛窓は、お洒落なヨットハーバーや日本のエーゲ海と呼ばれる風光明媚な町として多くの観光客が訪れます。
この牛窓には、かつて「鹿忍(かしの)グリーンファーム」と呼ばれていたリゾート地がありました。鹿忍グリーンファームでは、可愛らしい外観のペンションで宿泊しながら、ゴルフ練習場やテニス、プールなどスポーツを楽しんだり、レジャー施設で遊んだりできる一大スポットだったそうです。
しかし、今では辺り一帯に水没したペンションやテニスコートなどが見られ、廃墟と化しています。いったいこのリゾート地に何があったのでしょうか。
沈みゆくペンションを眺めていると、諸行無常を感じますね。
ザ・廃墟、水没ペンションの風景
水没ペンション村は、私が県道232号線を矢寄ヶ浜(やよりがはま)方面から牛窓の市街地へ向けて自転車で走っていた道中に現れました。
尚、水没ペンション村へ向かうならば、県道28号線から県道232号線へ向けて走った方がアクセスは良いですね。
矢寄ヶ浜からの道中はアップダウンが続いていましたが、右手に海が見える快走路を走っていたその先で、水没したペンション村の光景を見ることになります。
遠くから見えたペンション村は、最初は「池の上に建っている建屋かな」と軽く考えていたのですが・・・
この建屋へ近づくにつれ、恐るべき姿が現れました。
こちらの写真を見て下さい。建屋の周辺に池があるのではなく、建屋が水没しているじゃないですか。
初めてこの光景を見たときは、衝撃的だったことを覚えています。
世の中には知識としてこのような廃墟があることは知ってはいましたが、いざ自分の目で確かめて見ると、天と地ほど認識に甘さがあることを痛感しました。
建屋の外観上はそれほど朽ち果てたようには見えませんが、建屋の中はいったいどのよう状態なのか気になりますね。
建屋の周りには多くの野鳥たちが羽を休めており、野鳥の鳴き声がけたたましく聞こえてきます。すでにこの土地の住人は、人間ではなく鳥たちなのです。
また、害虫であるユスリカが大量に飛び交い、水も決して綺麗ではありません。
建屋だけではなく、車も水没している姿が見て取れます。
こちらの写真で見えるのは、水没したゴルフ練習場でしょうか。
それにしても廃墟に多くの野鳥が集まる光景は正直怖いですね。
このペンション村は、海に隣接しているため、野鳥たちはエサに困らないでしょう。
私には、鳥が「人間どもよ我らの住処に近づくのではない」と言っているような気がしました。
このペンション村では、まさしく異様な光景が広がっています。
日本のエーゲ海と呼ばれるほどの美しい海の直ぐ近くに、このようなスポットがあるのは、異次元の世界へ迷い込んだような錯覚を覚えますね。
【カメラに関する話】
水没ペンション村を撮影する際、望遠機能に優れたカメラで、あまり近づかずに撮影するのがおすすめです。そこで、下記記事では、カメラに関する話を紹介します。
ペンション村が建てられた土地は、元塩田であった
ペンション村が建てられた土地がある瀬戸内海沿岸は、昔から気候・地形的に塩の生産条件に恵まれていました。
牛窓、鹿忍地区では古くから良質な塩が取れることで知られており、1709年(宝永6年)には大塩田があったそうです。しかし、大正時代から昭和初期にかけて、世界中に不況の嵐が吹き荒れます。
そんな中で塩の生産は、国産より低コストな生産が行える当時日本が中国で租借していた関東州などで行い、国内にあった塩田は次々に閉鎖されていきました。
鹿忍の塩田は、第二次世界大戦後も存続し続けていましたが、製塩技術の進歩と牛窓地域の他の場所に最新式の大規模塩田が開発されたことにより、その役目を終えた次第です。
そして、時は流れ、1980年頃にリゾート地として再開発されました。
鹿忍グリーンファームが水防した理由
鹿忍グリーンファーム(ペンション村)が水没した理由についてお話しましょう。
先ほど触れたようにペンション村があった辺り一帯は、かつて塩田でした。鹿忍の塩田では、潮の満ち引きを利用して海水を内部に汲み入れていたそうです。
そのため、陸地の高さが、満潮時には海面より低くなってしまうため、盛り土をしないと雨水がはけない土地になります。
また、もともと定期的な排水が必要な土地であることから、鹿忍グリーンファームが営業されていた当時では、水没を防ぐため、溜まった雨水をポンプで汲み出し続けていましたが、廃業のおり排水がされなくなってしまいました。
そうなると、雨水などが少しずつ溜まるようになって、最終的にはペンション村が水没してしまったという訳です。
このまま何も手を打たないでいれば、きっと数年後か数十年後には、建屋が完全に朽ち果てて、全ては水没して何もなくなってしまうでしょう。
1980年頃に鹿忍グリーンファームのリゾート開発を行ない、2000年頃に閉鎖されたね。2013年頃からじわじわと水没し始め今に至るよ。
【まるで異次元のような風景を紹介】
水没ペンション村のように日常からかけ離れた異次元のような絶景スポットについて、下記記事で紹介します。
なぜ、水没ペンション村は放置され続けているのか
周辺の地元住民は、この土地を問題視しており、過去に市議会へ取り上げられています。しかし、残念ながら土地が私有地であるため、市が手を付けることができないそうです。
個人的には、人の暮らしを良くするための法律なのですがら、今の暮らしに合うよう常にアップデートすべきですね。放置し続けていると、今以上に荒れ果てることは確実です。
異臭が周辺にあふれ出したりして、地元住民への健康被害が表れる可能性だってゼロではありません。
もし、この水没ペンション村へ訪れる機会があれば、遠くから見学をするだけにしておいて下さい。水深はかなり深そうなので、大変危険です。
【旅に役立つサービスを紹介】
旅先の移動や宿泊に役立つサービスを、下記記事で紹介します。
今後の水没ペンション村のゆくえを考察
今後の水没ペンション村のゆくえを私なりに考察してみます。
土地の所有者はいる訳ですから、本来ならば所有者が、水没したペンション村を処理すれば話は非常に単純なのですが、そうもいかない事は容易に想像がつきますね。
広大な敷地面積にある建屋の処分だけでも数億円~数十億円ぐらいはかかるでしょう。ただでさえ処分するだけで数億円もかかるなんて誰だって嫌に決まっています。ましてや、現時点では利用価値が見込まれない土地にお金を掛けたくないでしょう。
そうなると、人に健康被害などの実害が出ない限り、ずっと放置されるのではないでしょうか。
個人的には、国や自治体が今の法律を時代に合った物に変更すべきだと考えています。
この水没ペンション村のように全国に点在している空き家や所有者がわからない土地などもかなりの問題になっていますね。
例えば、所有者がわからない土地や建屋などは、数年後には国が没収する制度を整備したり、所有者が分かっていても客観的に明らかに社会全体に迷惑にしかならないと判断できるのならば、土地の没収もできるようにすべきではないでしょうか。
このような法律を作ると、悪用する人が出てくるのが世の常なのはわかっていますが、一番やってはいけないことは何もせず放置することだと私は思っています。
より良い時代を後世に残していくためにも、今と未来の暮らしに合った法整備は急務ですね。
【番外編】矢寄ヶ浜と水没ペンション村の景観の対比
水没ペンション村から南へ約2.5kmほどのところに「矢寄ヶ浜(やよりがはま)」があります。
矢寄ヶ浜は西脇海水浴場にもなっており、道路に沿って細長く伸びた砂浜が特徴的な海岸です。
矢寄ヶ浜と水没ペンション村の景観を比べてみると、ほとんど距離が離れていないのにも限らず、景観の差が歴然ですね。
矢寄ヶ浜はこちらの写真を見てわかるように、とても綺麗で透明感がありました。
余りの違いに、同じ牛窓町鹿忍地区でこうも違うのかと考えさせられてしまいますね。
いつの日か、水没ペンション村も矢寄ヶ浜のような綺麗な景観に生まれ変わる事を祈っています。
【海の絶景スポットの紹介】
旅先で訪れた海の絶景スポットを、下記記事で紹介します。
水没ペンション村「鹿忍グリーンファーム」のアクセス
- JR西大寺駅から牛窓行きのバスに乗り「鹿忍中(かしのなか)」で下車後、徒歩約10分
- 邑久ICから車で約15分
水没ペンション村「鹿忍グリーンファーム」の駐車場
水没ペンション村の周辺には駐車場がありません。
そのため、余りお勧めはしませんが、通行の邪魔にならない路肩などで一時的に駐車しましょう。
矢寄ヶ浜か牛窓の市街地まで行けば駐車場がありますが、歩いて水没ペンション村へ向かうにはそれなりに距離があります。
矢寄ヶ浜からでは約2.5km、牛窓港にある無料駐車場からでは約4kmほどです。
まとめ
水没ペンション村は、珍しいスポットですが、余り褒められた物ではありません。
もし、このペンション村へ訪れる機会があれば、遠くから眺めるだけにしておいて下さい。うっかりペンション村の中へ入ってしまい、自分自身が沈んでしまったら命に関わります。
一日でも早くこのペンション村の問題がかたずいて欲しいですね。