
かつて海軍の町として発展してきた歴史のある広島県呉市。この町は、世界最強とうたわれた戦艦大和が誕生した地としても知られています。
そんな戦艦大和の大規模模型を展示しているのが「大和ミュージアム」です。また、本物の零銭も展示しているというのだから凄くないですか。数々の展示品や資料パネルにより、呉市が歩んだ歴史を楽しく学べます。
また、隣接する大和波止場から呉湾を一望してみよう。呉湾に浮かぶ海上自衛隊の護衛艦や、戦艦大和を建造したドック跡を見渡せるし、何よりも海風が心地よいですね。
本記事では、戦艦大和の模型など展示品を中心に「大和ミュージアム」の魅力を紹介します。
大和ミュージアムとは

大和ミュージアムの正式名称は、呉市海事歴史科学館です。正式名称より、愛称である大和ミュージアムの方が広く定着しています。
呉市の歴史やその近代化の礎となった造船や製鋼を始め、様々な科学技術を紹介しており、当時の先人の努力や文化を学べる施設として評価が高いですね。
特に目玉なのは、世界最大となる戦艦大和の大規模模型だろう。この戦艦大和に関する展示を中心にして、零銭など様々な兵器を展示。
そして何よりも平和の尊さを後世に伝えています。
大迫力!ビッグサイズで作られた戦艦大和の模型

戦艦大和は、日本海軍が建造した世界最大の戦艦です。
戦艦大和が運用されたのは、第二次世界大戦の真っ只中。航空機が発達した時代の戦いだったため、期待通りの働きをしたとはいえない状況でした。大戦末期の沖縄特攻作戦に参加して沈没したことは、教科書などで学んだ人も多いと思います。
世界最大の戦艦として全長263m、幅38.9mのスペックを誇り、もはや船と言うより「島」と言った方が良いほどの巨大さでした。
大和ミュージアムでは、10分の1サイズとなった戦艦大和の模型を展示しています。つまり、全長26.3mもある模型のため迫力満点だ。初見ならば「なんだ、これ!!」と目を見開くほどビックリするかも知れません。
当時、戦艦大和は国家機密であり、敗戦直後には設計図などの多くの資料が焼却処分されたそうです。残っていた資料や写真、潜水調査の水中映像などを元にして、できる限り本物に近づけて再現されました。

艦橋周りを見て下さい。見れば見るほど、カッコイイですね。また、カッコイイだけでなく機能美を感じます。
今後、新たな資料の発見や新たに判明した事実があった場合は、この大和の模型を改装する可能性があるかも知れません。

戦艦大和といえば46cm口径の砲門が有名です。世界で46cm砲が搭載された艦船は、大和と姉妹艦の武蔵だけ。
これは、現代においても最大の艦載砲であり、ビネスブックに認定されています。最大射程は42kmもあるのだから、艦隊戦であれば遠距離から一方的に敵艦を射撃できる。いわゆるアウトレンジ戦法を突き詰めた存在ですね。
でも実践では、天候や波頭など様々な要素が絡むので、必ずしもカタログスペック通りにはいかないだろうな。
残念ながら現代では、46cm砲を製造する技術が失われており再現できません。つまり、ロストテクノロジーとなっています。

おっ、これは戦艦大和が用いる91式徹甲弾ではないですか。重量1.46トンもあるとんでもない重さの大きな砲弾ですよ。

また、喫水線下の艦首部分が丸くなっているのも特徴です。これは、球状艦首と呼ばれています。
日本で初めて球状艦首を導入した艦船が大和でした。
球状艦首は英名でバルバス・バウと呼ばれ、船の造波抵抗を打ち消すために効果があり、航行速度を高め燃費を改善する重要な要素があります。
この球状艦首は、現代の船にも活用されている技術ですね。

並んでいる対空砲や機銃の配置さえも美しさを感じます。たくさんの対空砲や機銃を搭載していても、三次元の動きで空を駆け巡る航空機を打ち落とすのは難しい。
やはり航空機の未来位置に向けて射撃するのは、当時の技術では限界がありました。

艦尾に目を向けると、今にもカタパルトから水上偵察機が飛び立つところを目撃できます。
戦艦大和は、最大で7機の水上機を搭載できました。これは、当時世界の戦艦史上最大規模ですよ。搭載機には、零式水上偵察機や零式観測機などを運用していたそうです。

艦橋もカッコいい。ここに艦長や司令官が入り大和の指揮を取っていたのだから、まさしく大和の頭脳ともいえるでしょう。
そのため、艦内でもひときわ分厚い装甲が用いられていました。
大和は自艦が搭載する46cm砲に対して、20~30kmの距離が安全と言われており、当時の戦闘距離では遠距離であったため、絶対の防御力を誇ることから「浮沈艦」と呼ばれていたのもうなずけます。
大和の基準排水量は6万4千トンもあり、装甲だけでも2万トン以上あったそうです。自艦の約3割が装甲とは、まさしく鉄壁ですね。
それにしても、大和の模型は迫力がありました。個人的には、この大和の模型が海の上を航行している姿を眺めてみたいですね。
【戦う船の観光スポット】
戦艦大和のような戦う船を見学できる観光スポットを、下記記事で紹介します。
本物の兵器を多数展示、零戦に注目せよ

戦艦大和と同じく日本軍の有名な兵器といえば「零銭(れいせん)」です。俗称である「ゼロ戦」で覚えている人も多いでしょう。
零銭の正式名称は「零式艦上戦闘機(れいしきかんじょうせんとうき)」であり、一言で零銭といっても様々なバージョンがあります。この零銭は、第二次世界大戦を通して運用されました。
実は大和ミュージアムには、本物の零戦が存在しているというのだから凄くないですか。展示されているのは、後期バージョンの「零式艦上戦闘機六十二型」です。
零銭がデビューした当時は、破格の攻撃力と航続距離、高い運動性を備えていたため空の上では無類の強さを誇りました。

主翼に内蔵された20mm機銃は、当時の大型機を粉砕するほど大威力。極限にまで軽量化されてた機体は、高い運動性能を誇り、さらに航続距離が長く渡洋攻撃にも参加できるほどのスペックだ。
世界的にみて当時の零銭にかなう航空機はなく、まさに無敵街道まっしぐら。しかし、米軍が次々に投入してくる新鋭機の前に膝をくっし、やがて壊滅されたのは歴史の知るところです。

展示されている機体は、エンジントラブルで1945年(昭和20年)8月6日に琵琶湖へ不時着した機体ですね。
琵琶湖へ不時着して33年後の1978年に、海底に沈んでいた零戦の引き上げを行ないました。琵琶湖は淡水のため、引き上げた零戦の復元が可能だったのだろうな。海に沈んでいたら復元は絶望的だと思います。
当初は京都の嵐山美術館で展示されていましたが、その後、和歌山のゼローパークで展示され、2005年から大和ミュージアムへ展示されました。
日本に現存している零戦は10機ほどと言われており、六十二型は大和ミュージアムでしか見物できません。
つまり、それほど貴重な機体という訳なので、興味がある人は隅々までじっくりと見物して下さいね。

こちらは零戦の心臓部、いわゆるエンジンです。三菱重工が開発・製造しました。
航空機のエンジンを見る機会などほとんどないため、本物の零戦を見た事と合わせ大興奮。男の子ならば、こういうのを見るとテンションが上がる人が多いだろうな。

また、零戦が展示されていたフロアには、特殊潜航艇「海龍」も展示されています。
この海龍も本物です。水中を航空機のように自由に航行・浮上ができる世界で初めての有翼潜水艇ですよ。


その他には、酸素魚雷や特攻兵器「回天」の本物が展示されているぞ。

また、戦艦金剛に実際に搭載されていたヤーロー式ボイラーがあります。1931年(昭和6年)3月に行った戦艦金剛の近代化改修の際撤去されたものですよ。
大和ミュージアムでは、軍艦など兵器の模型だけでなく本物の兵器を見物できる貴重な博物館です。実物を見て、当時の戦況を顧みてみよう。
そして戦争の悲惨さをよく知れば、二度と戦争を起こさない未来を築いていきたいと思うのではないでしょうか。
呉の歴史、鎮守府の開庁から戦後までを学ぶ

大和ミュージアムでは、明治時代以降に海軍の町として発展してきた呉市の歴史について学べます。
ペリーの来航をきっかけにして、徳川幕府の鎖国政策は終わりを告げたのは有名ですね。そして、西洋の進んだ技術を導入して船を造るために海軍を創り、その拠点の一つとして呉に鎮守府がおかれました。
数十年後、太平洋戦争が始まると、日本の艦艇の建造や修理を行なうため、呉海軍工廠の役割はより重要になった次第です。そして、戦後に荒廃した呉市は、平和産業港湾都市を目指して復興を遂げました。


フロア内では、「呉鎮守府開庁前後の地域社会」「呉海軍工廠設立時と軍器国産化」「製鋼部の成立と技術教育」など各テーマに合わせてパネル資料で説明。世界大戦における呉市の影響や、終戦後の呉地域の実態などを紹介しているので、激動の時代を学びましょう。
現在の呉市は、戦前から長い時間をかけて育ててきた技術と新しい技術が結びつき、世界最大のタンカーを数多く建造できる臨海工業都市として発展しています。
【博物館の紹介】
旅先で訪れた様々な博物館を、下記記事で紹介します。
屋外展示にも注目、戦艦陸奥の遺品など様々な展示品あり

大和ミュージアムの屋外には、戦艦陸奥の41cm主砲身を展示しています。
陸奥が建造された当時は世界最大の艦載砲であり、呉海軍工廠で開発されました。
戦艦大和ができるまで戦艦陸奥は、姉妹艦の戦艦長門と供に帝国海軍の象徴として多くの国民に親しまれてきたという。姉妹艦ともども連合艦隊の旗艦を経験した経歴の持ち主だ。
当時はワシントン海軍軍縮条約により、41cm以上の主砲を搭載した3万5000トン以上の大型戦艦の建造は制限されていたため、世界にはたった7隻しかこの条件に当てはまる戦艦が存在していませんでした。

そのため、日本の「長門」と「陸奥」、イギリスの「ネルソン」と「ロドニー」、アメリカの「コロラド」と「メリーランド」「ウェストバージニア」は、世界のビッグ7(世界7大戦艦)と呼ばれているほど超有名。
そんな戦艦陸奥の艦載砲を間近で見学できるのは、軍艦ファンにとっては感無量ですね。


また、艦載砲以外にも戦艦陸奥に取り付けていたスクリューや錨、フェアリーダーも展示されおり、実在した戦艦陸奥の大きさを物語ります。
ちなみにフェアリーダーとは、船から出し入れするロープなどを保護するための金物ですよ。

軍艦など兵器には関係ないですが、ポセイドンの銅像もあるぞ。ポセイドンは、ギリシア神話で海と地震を司る神として登場します。
凛々しく思慮深さを兼ね備えた神様に見える。人であればナイスミドルと呼ばれていただろうな。

その他には呉市のマスコットキャラクター「呉氏」がいます。
以前、YouTubeでヒット曲「CRAZY GONNA CRAZY」の替え歌「呉ー市ーGONNA呉ー市ー (クレーシーゴナクレーシー)」の プロモーションビデオ を見ましたが、呉氏とダンサーたちのキレッキレのダンスが軽快な曲と見事にマッチしており、非常に楽しめました。
呉氏のプロモーションビデオは複数あり、今でもYouTubeで視聴できます。
大和波止場から呉湾を望む

大和ミュージアムの裏側には波止場が広がっています。
この波止場は、「大和波止場」と呼ばれており、実物大の戦艦大和の左甲板を再現した公園になっているのは驚きですね。
港の風景や磯の香りを感じる憩いの場所として大人気。
恋人と一緒に鐘を鳴らすと、恋愛が成就するいう「大和の時鐘」があるので、カップルで訪れてみよう。戦艦大和の艦首にあたる部分では、お思わず映画タイタニックのポーズをしたくなるかも。

また、艦橋をイメージした「展望棟」へ足を運んでみよう。そこからの見晴らしが素晴らしく、確かにこれならばプロモーションビデオの撮影場所として人気があるのもうなずけます。
こちらは、大和波止場をGoogleマップの航空写真で確認したものです。確かに左甲板に見えますね。実際に歩くと戦艦大和の巨大さを肌で実感できます。

この波止場からは、海上自衛隊の潜水艦や護衛艦などを見物できる。さらに奥には、造船所も見えるぞ。
呉湾には、任務などで必ずしも護衛艦が停泊しているとは限りませんが、護衛艦を見物できるのは日本全国でも限られた場所だけなので、遠目でもよいのでじっくりと見物していきたいですね。

個人的に面白いと思ったのが、芝生に並んだ犬の銅像だ。ほぼ等間隔で並んだ銅像を追いかけていると、面白い展開に遭遇するぞ。

うん、これはどういう状態なの?
なんと、犬の先頭はこのように体の半分がないではないですか。

一番後ろの犬の姿がこちら。なるほど、先頭の犬がワープしてるのね。こういう発想力が個人的に大好き。いやはや面白いものが見れました。

その他にも波止場の入口には、実物の潜水調査艦「しんかい」が展示されています。「しんかい」は、戦後に初めて建造した本格的な有人深海調査艇ですね。
1969年に川崎重工業で建造され、翌年の1970年から海上保安庁が所有すると、1975年まで伊豆半島沖などの水深600mまで調査を行なっていました。
大和波止場は散策するも良し、呉湾を眺めて過ごすのも良し。大和ミュージアムと共にぜひ足を運ぶのをおすすめします。
【公園の紹介】
旅先で訪れた様々な公園を、下記記事で紹介します。
大和ミュージアムの基本情報とアクセス
住所 | 広島県呉市宝町5番20号 |
電話番号 | 0823-25-3017 |
営業時間 | 9:00~18:00(入館は17:30まで) |
休館日 | 火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日休業) 4/29〜5/5、7/21〜8/31、12/29〜1/3は無休 |
料金 | 【個人料金】 一般(大学生以上)500円、高校生300円、小中学生200円 【団体料金(20名以上)】 一般(大学生以上)400円、高校生200円、小中学生100円 未就学の幼児は無料です。 |
呉市内に在住在学の高校生以下の人や呉市いきいきパス「敬老」をお持ちの人などは無料です。全額無料の対象になる人については、大和ミュージアムのホームページでご確認下さい。
【アクセス】
- JR呉駅から徒歩5分(広島空港からエアポートバス「呉広島空港線」に乗って呉駅まで約58分)
- 呉ICから車で約5分(距離は約2km)
- 呉中央桟橋から徒歩1分
大和ミュージアムの駐車場
大和ミュージアムの周辺には有料駐車場があります。
駐車場名 | 収容台数 | 料金 | 備考 |
---|---|---|---|
大和ミュージアム駐車場 | 67台 | 1時間100円 | 24時間営業、車両制限有り(長さ5m以下、幅2m以下、高さ2.1m以下、重量2t以下まで)、67台の内2台は身障者用スペース |
マリンビル3号館 | 220台 | 30分100円(最大料金600円) | 営業時間は7:00~24:00(24:00以降、翌日7:00まで入出庫できません)、車両制限有り(高さ2.1m未満、重量2t未満まで) |
中央桟橋ターミナル駐車場 | 27台 | 最初の30分は無料、30分を超え60分までは100円で、その後30分ごとに100円追加。(24時間まで最大1,200円) | 車両制限有り(車長5m以上または車幅2m以上は駐車禁止) |
まとめ

大和ミュージアムでは、呉市の歴史や戦艦大和について学べます。
メインの展示品である戦艦大和の模型は、精巧に作られており、全長26.3mもあるため迫力満点だ。また、本物の零戦を見物できる日本国内で数少ないスポットですね。
呉市の歴史を学ぶことで、当時の人たちがどのような思いで過ごしてきたのか触れてみよう。
そこで、何を見て何を感じるかはあなた次第ですが、一つ言えるのは戦争は二度と起こしてはならないことだと思います。