江戸時代までは、沢山のコウノトリが大空を舞っていたのも今は昔。
日本では、一度全滅したことをご存じですか。
2020年には多くの人たちの協力の下、200羽まで復活しましたが、絶滅危惧種から解除されるのはまだ先の話です。
兵庫県豊岡市では、コウノトリを大切にしてきた歴史があり、今もコウノトリの保護運動に積極的に取り込んでいます。
コウノトリへ会いに、豊岡市にあるコウノトリの郷公園へ訪れてみませんか。
そこでは、多くのコウノトリが育成されており、野生のコウノトリも見かけたりしますね。
本記事では、コウノトリの絶滅から復活までの道のりを紹介しながら、コウノトリの郷公園で出会ったコウノトリを通じ、考えさせられたことについてお伝えします。
なぜ、日本でコウノトリが一度全滅してしまったのか?
コウノトリは、翼を広げると約2mにもなる大型の鳥です。
「コウノトリは、赤ちゃんを運んで来る」なんて迷信を聞いたことがある人も多いでしょう。
それほど多くの日本人には、馴染み深い存在だったのですが、1964年に繁殖個体は絶滅し、1971年に野生のコウノトリは日本からその姿を消しました。
絶滅してしまった理由をまとめると以下になります。
コウノトリが絶滅した理由
- 明治時代に狩猟が解禁され、コウノトリが乱獲された
- 河川や湿地の開発などにより、コウノトリの生息地が消失した
- 農薬の使用により、水田のコウノトリの餌生物が壊滅した
- コウノトリの営巣地に適したマツが、第二次世界大戦中に沢山伐採された
どの理由も人間の行いによる物で、人間の業の深さが良く分かりますね。
これらの結果、1956年には23羽しかいなくなってしまいました。
官民挙げて「どじょう一匹運動」など保護活動を行ってきたのですが、残念ながら1971年に豊岡で野生のコウノトリが捕獲され、健闘虚しくその後死亡。
ついにコウノトリが絶滅してしまいました。
【旅先で出会った動物の紹介】
コウノトリを始めとする動物は、猫などの愛玩動物や野生で暮らす猿など色々いますね。下記記事では、旅先で出会った動物たちを紹介します。
コウノトリの絶滅から復活の道のり
今の豊岡市では、多くのコウノトリを見かけたりできるようになりましたが、この状況になるまでには長い時間と努力の積み重ねがあります。
最初の取り組みは、コウノトリを飼育して、人工的に繁殖させようとしたことです。
1965年(昭和40年)にはコウノトリ飼育場(保護増殖センター)が完成し、人工的に繁殖させようと試みたのですが、日本に住むコウノトリは、農薬が含む水銀の影響を受けていたために、ヒナが全く育ちません。
そこで、1985年(昭和60年)にソビエト連邦(今のロシア)から、野生の幼鳥6羽を兵庫県がもらい受け、この6羽を飼育して、つがいを作りヒナを増やしていきました。
そして、1989年(平成元年)になると、ロシアからもらったコウノトリが、ついにヒナを産むことに成功したのです。
保護繁殖に取り組み、24年の長い歳月が経過しましたが、コウノトリ復活の第一歩を感じ取れた瞬間は、感無量だったでしょう。
それ以降、毎年ヒナが誕生するようになり、2002年には飼育数が100羽を超えるに至り、今も保護増殖は続けられています。
2003年になると、兵庫県によりコウノトリ野生復帰推進計画が策定されました。
これは、飼育しているコウノトリを野外に放し、野生で暮らすコウノトリを復活させる計画です。
この計画に基づき、2005年には5羽のコウノトリが豊岡の空を飛び回り、2007年になると豊岡市内に至るどころで立てられた人工巣塔で、放鳥後初めてとなる野外繁殖に成功。
着実にコウノトリの復活の足音が聞こえてきました。
日本だけでなく、世界中をみてもコウノトリの個体数は減り続け、今でも絶滅危惧種であることには違いありません。
しかし、豊岡市が取り込んできた計画は、多くの人たちの協力で大きな成果を出しています。
今では、日本各地で大空を飛び回るコウノトリが目撃される機会も増えました。
しかし、その機会はまだまだ少なく、確実にコウノトリに会いたい場合は、コウノトリが育成されている「コウノトリの郷公園」へ訪れると良いでしょう。
コウノトリの元気な姿を見るために、コウノトリの郷公園へ足を運んでみませんか。
コウノトリが住まう町、兵庫県豊岡市を訪ねて
コウノトリの郷公園でコウノトリに出会う
コウノトリの郷公園へ向かう道中には、多くの水田が広がっていました。
周辺の農家では、かつてコウノトリが絶滅した原因となった農薬は使わず、無農薬栽培を行っているそうです。
コウノトリは、湿地帯に生息しており、魚やカエル、バッタ、ヘビなど様々な生き物を捕食します。
大きな体のため、天敵はほぼおらず、湿地帯ではほとんど敵なしの存在だったのです。
そんなコウノトリが飼育されているコウノトリの郷公園は、広々とした水田などの湿地帯にありました。
コウノトリの郷公園は、公開エリアと非公開エリアに分かれており、非公開エリアにある飼育ゾーンには立ち入ることができませんが、教育・研究ゾーンにある観察広場でコウノトリを直接観察することができます。
こちらは、コウノトリの郷公園のマップ。
このマップから右隅の方に観察広場があることが分かります。
教育・研究ゾーンの手前には、駐車場が整備されているので、まずはそこへ向かいましょう。
観察広場に辿り着くと、湿原をゆっくり歩くコウノトリたちを発見。
優雅に歩くその姿は、湿地帯の王者の風格です。(笑)
ところでコウノトリの鳴き声を知っていますか。
恐らく聞いた人は、いないのではないでしょうか。
それもそのはず、実はコウノトリはヒナの時は鳴くのですが、成長するに従い全く鳴かなくなります。
それでは、どうやって仲間とコミュニケーションを図っているのか気になるところ。
クチバシをカスタネットのように叩き、カタカタカタと音を立てて、コミュニケーションを図ります。
この行為をクラッタリングを呼び、挨拶や求愛、満足、威嚇などによって音の大きさやテンポが異なりますね。
コウノトリをじっと観察して、是非クラッタリングに耳を傾けてみて下さい。
コウノトリの気持ちを感じ取ることができるかも知れません。
観察広場は、周辺が金網に覆われており、直接コウノトリへ触れ合うことはできません。
そのため、静かにコウノトリの観察を行いましょう。
間近で見られるだけでも貴重な機会です。
例えば、こちらのようにコウノトリのツーショットがみられるかも。つがいかな?
今にも羽ばたきそうな瞬間をとらえた一枚。やはり羽を広げるとその大きさが良く分かります。
観察広場の外にあった人口巣塔にもコウノトリを発見。これは運が良い。
育成されているコウノトリと野生化したコウノトリの両方を見られ、大変満足しました。(嬉)
また、豊岡市内には、多くの人口巣塔が立てられていますので、大空を舞うコウノトリたちに出会えるかも知れません。
日本国内では、希少動物であり国の特別天然記念物として保護されているコウノトリ。
豊岡市では、コウノトリを見かける機会が多いそうなので、空を見上げながらコウノトリの雄姿を探してみるのも楽しそうですね。
【公園・庭園の紹介】
公園や庭園では、ゆっくりと過ごし、心身共にリフレッシュを図れたりできますね。旅先で訪れたそんな公園・庭園を下記記事で紹介します。
コウノトリ文化館でコウノトリについて学ぶ
先ほど触れた教育・研究ゾーンには、コウノトリ文化館がありました。
この文化館では、コウノトリのはく製や野生復帰の解説パネルが並んでいたりして、コウノトリについて深く学べます。
また、豊岡周辺の自然や生物を始め、山陰海岸ジオパークや伝統文化などを紹介していました。
入館は無料ですが、館内の受付前には、コウノトリの環境を作るための募金箱がありましたので、喜んで募金した次第です。(100円/口)
すると、お礼にコウノトリの折り紙を頂きました。(嬉)
館内には、企画展示コーナーや展示学習室など沢山の部屋がありますが、一押しは多目的ホールでしょう。
こちらが多目的ホールの様子。
部屋の奥が開かれており、そこからは、コウノトリの観察広場が見て取れます。
ホームでくつろぎながら、ゆっくりコウノトリの観察ができる訳です。
天井を見てみれば、コウノトリの模型があったり、部屋の隅の方には、コウノトリの親子のはく製が展示されていました。
また、現状の野外コウノトリの繁殖状況や目撃情報をまとめており、実に興味深い。
2005年の試験放鳥以降、ヒナが産まれ育ったところを一目で分かるように日本地図上に工夫して表記されており、非常に分かりやすいですね。
この地図によると、2021年までに兵庫県、京都府、鳥取県、島根県、福井県、徳島県、栃木県、千葉県で確認されているようです。
コウノトリの目撃情報についても地図で分かりやすく表していました。(2022年5月時点の目撃情報)
この地図を見て気になったのが「なぜ岡山県で目撃されていないのか」ですね。
岡山県の周りの県では目撃されているので、恐らく通過していると思うのですが、たまたま目撃事例がないだけだと思います。(気になりますね。)
この多目的ホールでは、一時間に2回(毎時00分と30分)、解説員によるコウノトリの説明を約10分程度行っていますので、是非聞いておきましょう。
解説員のよる説明では、コウノトリは渡り鳥であり、人間が水田を作った影響で食料となるカエルなどの生き物が増えたため、日本に住み着いた話や、クラッタリングについて詳しく話してくれました。
個人的に印象に残っているのは、コウノトリは長さ1mもある蛇をクチバシで絞殺して、丸のみにしたり、モグラも食べると聞いた時は、凄く獰猛そうな生き物だと感じたことですね。
また、コウノトリは鶴と良く似ており、昔からの名残なのか高齢者は今でもコウノトリのことを鶴と呼んでいるんだとか。
確かに似ているので、間違うのも無理はありません。
コウノトリと鶴の違いとして一番分かりやすいと思うのが、鶴は助走をつけないと飛べないため、木の枝へ止まったりしませんが、コウノトリは木の枝に止まると言うことです。
このことから、昔の日本画に描かれている木の枝に止まっている鶴は、実はコウノトリでしょうね。
コウノトリ文化館では、コウノトリの生態や現状の繁殖状況などについて、色々楽しく学ぶことができて有意義な時間を過ごせます。
【博物館の紹介】
博物館では、知らない事や興味深い事を沢山学べますね。旅先で訪れたそんな博物館を下記記事で紹介します。
コウノトリの郷直売所とコウノトリ本舗
駐車場の敷地内には、コウノトリの郷直売所とコウノトリ本舗がありますので、お土産を買って帰るのも良いですね。こちらがコウノトリの郷直売所です。
こちらのお店では、近郊で収穫した新鮮で安全・安心な農産物を安価で販売しています。
また、コウノトリにちなんだグッズも沢山あり、目移りしますね。
コウノトリの写真や写真データ、刺しゅうなど気に入った物があればお土産に一つ如何でしょうか。
可愛いコウノトリ人形もありました。
尚、この直売所の入口前には、コウノトリのポストがあります。
幸せを呼び鳥の名にあやかり、思い人や親しい人に手紙を出してみませんか。
続いて紹介するのは、こちらのコウノトリ本舗。
店内へ入ってみると、コウノトリグッズやお菓子、酒やジュースなど色んな商品が並べられていました。
コウノトリのお守りも売っており、良縁・子宝・安全・子供の成長に効果がありそうですね。
コウノトリ本舗の隣りには、「幸(こう)のトリング」と呼ばれるモニュメントがありますので、幸せを呼ぶ鳥コウノトリにあやかり、鐘を鳴らしてみましょう。
きっと、幸せが訪れるかも知れないですね。
コウノトリの伝説がある久久比神社へ参拝
コウノトリの郷公園から少し離れた所に、コウノトリの伝説が残る「久久比(くくひ)神社」があります。
久久比神社の鳥居の前には、朱色の欄干の橋が良く映えており、目立っていました。
久久比神社が鎮座する豊岡市下宮地区は、古来より多くのコウノトリが空を舞っていたそうです。
日本書記の記録によると、垂仁天皇が誉津別皇子(ほむつわけのおうじ)をともない宮殿の前に立つと、くくい(コウノトリの古称)が大空を飛んでいたという。
皇子は30歳であったが、今まで一度も言葉を話すことができなかったのに、コウノトリを見て「あの鳥は何という名前なのか?」と始めて話したそうです。
これには、天皇が大層喜び、コウノトリの捕獲を部下に命じます。
その結果、天湯河板挙(あめのゆかわのたな)が出雲国か但馬国でコウノトリを捕まえ、献上したと言われていますね。
このことから、コウノトリは霊鳥として大切にされ、その鳥が住んでいる土地を久々比(くくひ)と呼び神社を建て、今の久々比神社となりました。
こちらは、久久比神社の拝殿。
コウノトリの恩恵にあやかりたいと、日本各地から参拝客が訪れます。
もし久久比神社で大空を舞うコウノトリを目撃することができれば、何か運命的な物を感じるのではないでしょうか。
久久比神社の本殿は、国の重要文化財に指定されています。
個人的には、本殿にあった龍の彫り物が素晴らしと思いました。
境内はあまり広くないので、10分もあれば見て回れますね。
尚、御神木の隣りには、コウノトリの像がありますのでお見逃しなく。
久久比神社
- 住所 兵庫県豊岡市下宮318-2
- コウノトリをデザインしたお守り(赤色・緑色・紫色)があります。
【神社仏閣の紹介】
旅先では、様々な神社仏閣へ立ち寄り参拝していきますので、下記記事で紹介します。
人間にとってもコウノトリが暮らせる環境を作ることが大事
コウノトリが野生で暮らしていくためには、自分たちで食べ物を探して捕食していかなければなりません。
そうすると、どうしてもコウノトリの食べ物となる生き物が豊富に必要となります。
そのため、豊岡市では、無農薬でお米を作っていたりしますね。
無農薬で作ったお米はコウノトリだけでなく、人にも優しい。
そんなお米は、ブランド化につながり、高い付加価値を生み出しています。
本来ならば、日本国内で無農薬化が進めば良いのですが、害虫や雑草の除去はきつい作業なので、全ての農家に適用するのは現実的に無理がありますね。
だからといって、このままほおってよい問題でもありません。
いつの日かコウノトリなどに全く実害のない新しい薬品が開発されたり、農業ロボットの導入などで、農薬を使わない作業効率の高い仕組みが生まれることを期待します。
食べ物だけでなく、住む場所も大切ですね。
コウノトリは湿地帯を好みますので、湿地帯を適度に増やすのは良いことだと思います。
世界的に見てみても1900年以降、世界の湿地の64%が失われたと言われており、これは大きな問題でしょう。
日本国内でも明治・大正時代には、約2,110平方キロメートルあった湿地が、今では約800平方キロメートルしかないと言う。
これは由々しき問題であり、コウノトリだけでなく、人間や多くの生物にとっても死活問題と言えるのではないでしょうか。
淡水の供給源となる湿地帯が減少すると言うことは、水田の削減につながります。
また、湿地には沢山の微生物たちが住み、汚れた水を綺麗にする働きをしているのですが、この力が減少したらどうなるのでしょうか。
考えるだけで恐ろしいですね。
個人的な意見ですが、水田の拡張で湿地帯を増やし、外国に頼らなくても、昔のように自国で自給自足で食料の確保ができるようになるべきです。
多くの反対意見が出てくることは重々承知ですが、50年後や100年後の先を見据えると、AIやロボットの活用しだいでは、実現可能だと考えています。
そうすれば、人間とコウノトリを含む多くの生物にとって、共存し合える環境が造り出せるでしょう。
コウノトリの郷公園の基本情報とアクセス
住所 | 兵庫県豊岡市祥雲寺128 |
電話番号 | 0796-23-5666 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
定休日 | 月曜日(休日に当たるときはその翌日) 年末年始(12/28~1/4) |
入園料 | 無料 |
【アクセス】
- JR豊岡駅からタクシーで約15分
- 但馬空港ICから車で約20分
- 丹鉄コウノトリの郷駅から徒歩約30分
コウノトリの郷公園の駐車場
コウノトリの郷公園には、無料駐車場があります。(普通車72台、中型バス3台、大型バス9台)
まとめ
兵庫県豊岡市は、古くからコウノトリを大切にしてきた歴史があり、今もコウノトリの保護運動に取り込んでいます。
豊岡市にあるコウノトリの郷公園では、コウノトリの保護繁殖を続けていると同時に、飼育したコウノトリを野外に放す活動を続けていますね。
野外に放たれたコウノトリは、ヒナを産み少しずつですが、固体を増やしているのは嬉しい知らせです。
日本全国でコウノトリが目撃されており、復活に向けて着実に動き出していると言えるでしょう。
いつの日か日本全国で、昔と同じように沢山のコウノトリが、大空を舞う日がくることを楽しみにしています。