四国八十八ヶ所の霊場を巡るお遍路の旅は、昔からチャレンジする人が多いですね。
その霊場の中でも真言宗の宗祖である弘法大師・空海の生誕地として有名な「善通寺(ぜんつうじ)」は、人気が高いパワースポットとして、全国から多くの参拝者が足を運びます。
国の重要文化財である金堂と五重塔を始め、御影堂の「戒壇めぐり」や遍照閣の「四国八十八ヶ所お砂踏み」など見どころも多い。
古くから篤い信仰を集めている善通寺の境内をゆっくり歩きながら、空海ゆかりの地を巡ってみよう。
本記事では、空海の三大霊跡の一つに数えられている善通寺の魅力を紹介します。
善通寺とは
善通寺は、香川県善通寺市に位置し、真言宗善通寺派の総本山です。
平安時代初頭の807年に、唐から帰ってきた空海が、父である佐伯直田公(さえきのあたいたぎみ)により寄進された土地に創建しました。
ちなみに、寺号は父の法名である善通(よしみち)から付けられたといいます。
境内の総面積は、45,000平方メートルもあり、だいたい東京ドームと同じ広さなんだとか。なので、一通り見て回るのに、所要時間を1時間から1時間30分はみておきたい。
境内は「西院」と「東院」に分かれおり、西院には1889年(明治22年)に再建された仁王門があります。
そこでは、筋肉粒々の仁王様(金剛力士像)を見物していこう。この仁王様は南北朝時代(1370年)に作られたものですよ。ちなみに裏側には、大草履があるので見逃さないように。
西院は、江戸時代までは善通寺とは別の寺院(誕生院)でしたが、明治時代に一つになり今にいたります。
善通寺は四国八十八ヶ所の第七十五番札所であり、四国八十八ヶ所霊場会の本部も置かれている中心的な場所だ。弘法大師・空海の誕生の地である善通寺でパワーを授かろう。
空海の三大霊跡とは、香川県の「善通寺」、和歌山県の「高野山」、京都府の「東寺」のことだよ。
【周辺の見どころ】
善通寺周辺の見どころを、下記記事で紹介します。
パワースポット・御影堂の「戒壇めぐり」は貴重な体験場所
御影堂(みえどう)は、江戸時代まで善通寺全体を監督・管理していた誕生院の中心的なお堂でした。
現在の建物は、1831年(天保2年)に建立されたもので、国の登録文化財に指定されています。「礼堂・中殿・供養殿・奥殿」の四殿から構成されており、奥殿にあたるところで空海が誕生したといわれている。
また、奥殿には弘法大師の自画像「瞬目(ひめき)大師像」が祀られており、50年に一度開帳されるので、長い人生でもそう何度も見られない貴重な代物ですよ。
この場所で戒壇めぐりにチャレンジしてみよう。まず始めに戒壇めぐり・宝物館共通の内拝券を購入します。
地下へ続く階段を下りれば、そこは何も見えない暗闇の世界となる。約100mほどの通路を歩きますが、この場所は撮影禁止で、灯りをつけるのは無粋極まるかな。真っ暗闇の中を歩き、己を見つめ直そう。
光が全くない場所を歩くのは、少し恐怖を感じましたね。暗闇が苦手な人はやめておいた方が無難かも。歩く際には「南無大帥遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えよう。この言葉は弘法大師・空海を拝むときに唱えるお経で「弘法大師空海に帰依する」の意味ですよ。
中心には、弘法大師の母・玉寄御前のお部屋がありました。その中央に大日如来像を安置しており、空海とのご縁を結べます。
私が訪れた日は、弘法大師御誕生1250年記念事業(2023年)の一環として、弘法大師坐像が初公開されていました。江戸時代の天保4年(1833年)に作られたもので、寄木造りの黒漆黒塗りの像は、レンズ状の水晶をはめ込んだ玉眼により活き活きとした表情を見せてくれています。
ご案内してくれた僧侶の話によれば、もう2度と公開されないかも知れないという話でしたので、貴重な体験ができた次第ですね。ちなみに弘法大師坐像以外にも、愛染明王坐像や降三世明王像などが初公開されていました。
御影堂の廊下を歩いた先では、空海が生まれた際に使用された産湯の井戸があったり、宝物館が見えてくる。
宝物館では、約2万点の収蔵物のうち常設展示されているのは、約30点と少なめですが、善通寺所蔵の文化財を間近で見物できるのでお見逃しなく。(宝物館内は撮影禁止)
【神社仏閣巡りに役立つ話】
神社仏閣巡りに役立つ話を、下記記事で紹介します。
弘法大師・空海が誕生した産湯の井戸を見逃すな
こちらの建物では、空海が誕生した時の産湯の井戸が見物できます。他の建物と比べて小さいので、スルーしてしまうかも。宝物館が直ぐ近くにあるのでよい目印になる。そこから周囲を見渡せば見逃す心配はないでしょう。
建物の十字窓から中をのぞくと、井戸がありました。空海が産まれた当初に使われていたかと思うと、何だか神聖な感じがしますね。
遍照閣で「四国八十八ヶ所お砂踏み」や「写経会」にチャレンジしよう
遍照閣(へんじょうかく)は、1984年の弘法大師1150年御遠忌の事業の一環として建立された研修道場ですね。弘法大師のお心を中心に、出生の本懐と人生の証を考え、これを反省し身に付ける場所といいます。
1階には「お砂踏み道場」があり、そこでは四国八十八カ所各霊場寺院のご本尊を祀っている。ここで礼拝すれば、四国八十八カ所の霊場を巡拝するのと同じ功徳を得られるという。
四国八十八カ所を巡る時間が取れない方にとっては、実にありがたい場所ではないだろうか。入場は無料なので、ぜひ足を運んでみよう。
そこで心配になるのはお賽銭ではなかろうか。受付で500円を5円100枚に両替ができるので安心して下さいね。個人的には、あらかじめ用意されていた5円玉の束をみて「銭形平次も真っ青だ!」と思いました。(笑)
時間が取れない方は、全てのご本尊を参拝しなくても大丈夫。ご本尊の前には、功徳が表示されているので、気になるご本尊のみを参拝していこう。ちなみに、お砂踏み道場のある部屋は撮影禁止です。
館内で見つけたダンボール製のウサギを紹介。ビッグサイズのウサちゃんですが、表情が可愛らしく気に入りました。
また、カラフルなマンダラも目撃。こちらは、チベット密教砂マンダラですね。
なんでも20色以上の大理石を砕いた砂を小さな筒の先から少しずつ壇上に落として描いたそうですよ。手間と時間をかけて作られた作品というのは、一目で分かりました。
2階では、毎月21日の10時から写経会を無料で開催しています。写経用紙と見本用紙も販売しているのは、ありがたい。
写経といえば「般若心経」を思い浮かべ人が多いと思う。写経は心身修養になるので、興味がある方は参加してみてはいかがですか。当日10時からは、僧侶による法話を聞けます。
【神社仏閣の紹介】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
国の重要文化財「金堂」と「五重塔」を見物
東院の中央には、善通寺の本堂こと「金堂」があり、唐の青龍寺を模して建てられました。
1558年(永禄元年)に兵火により全焼してしまい、現在あるのは1699年(元禄12年)に再建されたものですね。国の重要文化財に指定されています。
ご本尊は、薬師如来坐像です。眼には水晶をはめ込んだ生気に満ちた表情が見て取れる。ぜひ参拝していこう。
個人的には、金堂に掲げたカラフルな仏旗が目を引きました。金堂の外観によくマッチしているではないですか。違和感がないどころか、これで1つの完成系と思ってしまう。この仏旗、意外に歴史が新しく、1886年にスリランカで考案され、3年後の1889年に日本へ伝わったといいます。
JR善通寺から歩いてくれば、東門から入り直ぐに金堂へ辿り着きますが、善通寺の駐車場は西院に隣接しているので、この駐車場から歩いてくると、金堂までは、約10分ほど歩くことになる。一番始めに本堂へ参拝する習慣の方は、気になるかも知れませんね。
金堂のすぐ近くには、五重塔がそびえ立ち存在感を示しています。こちらも金堂同様に国の重要文化財で、約43mの高さを誇る善通寺のシンボル的な存在だ。
実はこの五重塔は、国内の木造塔では3番目の高さなんだとか。ちなみに最も高い木造塔は、東寺の五重塔で約55mほどあります。
消失と再建を繰り返えしており、現在の塔は4代目で1902年(明治35年)に完成したものですね。下から見上げみれば、空に向かってそびえ立つダイナミックな五重塔に拍手喝采を送りたい。
普段は中へ入れませんが、毎年5月の連休中に2階まで公開される。興味ある方は、日付を合わせて訪れてみよう。
【旅行や旅などで役立つ話】
旅行中に訪れた土地で、神社仏閣へ参拝することは良くある話ですね。そこで、旅行や旅などで知っておきたい役立つ話を、下記記事で紹介します。
樹齢1,000年以上の大楠からパワーを授かろう
南大門と五社明神社のそばには、香川県天然記念物に指定された樹齢1,000年以上の大楠がそれぞれ1本づつあります。
空海が産まれた時から繁茂しており、特に五社明神社そばの大楠は、その姿を仰ぎ見るだけでもパワーを感じるほどだ。そのため、参拝者の評価が高いですね。
幹周りは約10m、樹高は約22mの巨木は石柵に囲まれているので、近付けないですが遠くからでもその存在感はスゴイですよ。せっかくなので、できるだけ近づき、手を合わせておきましょう。
弘法大師・空海の両親を祀った「佐伯祖廟」と「御影池」
佐伯祖廟(さえきそびょう)では、空海の父・佐伯直田公(さえきのあたいたぎみ)と母・玉寄御前(たまよりごぜん)を祀っています。
父の官職は多度郡少領で、多度郡を治める役人であり、現代でいう市長のようなものです。経済力をもった有力な地方豪族でした。
母は阿刀(あと)氏の娘で、朝廷が作った八色の姓(やくさのかばね)の内、上から3番目の宿禰(すくね)の姓をもつ名門の出だ。朝廷に仕える知識人の家系として知られ、格式の高い家柄です。
そんな両親から生まれたのが、佐伯真魚(さえきまお)ですね。真魚は空海の幼名ですよ。今日まで多大な影響を与え続けている、真魚少年を育てた両親に感謝の気持ちを込めて参拝しましょう。
また、御影堂の隣には御影池があります。この池は、佐伯家の人たちが住んでいた頃の邸宅の庭にあったそうですね。
この池には弘法大師・空海の像がそび立ちます。青空に映えるそのお姿は実に見事なり。
修行中の空海とともに、兜率天(とそつてん)の教主である弥勒菩薩坐像と、両親の像がとり囲んでいます。
「ほやけ地蔵」と表情豊かさなお地蔵様たち
地蔵堂には、「ほやけ地蔵」と呼ばれる地蔵様が安置されています。
頬やけ(あざ・やけどの痕)の子供を授かった母親が、頬やけが治るよう3年間お願いしたところ、綺麗にとれました。このことが評判となり、あざや病気の平癒に功徳のある「ほやけ地蔵」として信仰されている次第です。
ほやけ地蔵は、大きな体躯にお顔にあざが見て取れますが、穏やかな表情が印象的ですね。
また、地蔵堂の奥にある建物では、たくさんのお地蔵様が安置されているので、その表情に注目してみよう。
笑った表情や厳つい表情、エロティックな表情などがあり、見ていて面白いですよ。
遣唐使の気分を味わえる「済世橋」を歩く
善通寺の駐車場と西院を結んでいるのが「済世橋(さいせいばし)」です。
この橋は、空海を始めとする遣唐使たちが、唐の都・長安へ向かう途中に渡った、有名な天津橋を復元したものですね。
かつて中国中東部の河南省には、黄河の支流である洛水を利用した交易により、古都・洛陽が栄えていました。この洛水に架けられていた橋が天津橋ですよ。
済世橋を渡りながら、長旅を続ける遣唐使の気分を味わおう。橋を渡っていると、正面には唐風の門・正覚門(しょうがくもん)が見えてくる。
善通寺には、正覚門の他にも、仁王門・中門・東門・南大門など多くの門があるので、見比べてみるのも面白いですね。
宿坊ではお遍路さん以外でも宿泊できる
善通寺では、お遍路さんや遠方から訪れた参拝者のために宿泊施設「いろは会館」があります。いわゆる「宿坊」ですね。
和室が50室もあり、最大で約250名の方が宿泊可能。冷暖房や大浴場、洗濯室などを完備していて、快適に過ごせます。
また、朝のお勤めに合わせて、ご祈願・ご供養(廻向)の予約ができる。空海が生まれ育った地で、旅の疲れを癒しましょう。
善通寺の基本情報とアクセス
住所 | 香川県善通寺市善通寺町3-3-1 |
電話番号 | 0877-62-0111 |
拝観時間 | 金堂や遍照閣などお堂別に開扉時間が異なる 9:00~16:00間であれば、全てのお堂や施設が利用可能 |
定休日 | 無休 |
拝観料 | 拝観料は基本無料ですが、一部の施設では拝観料あり 【戒壇めぐり・宝物館拝観セット】 大人(高校生以上)500円 小人(小・中学生)300円 ※20名以上は団体割引きあり(2割引き) |
【アクセス】
- JR善通寺駅から徒歩約20分
- 高松自動車道「善通寺IC」から車で約10分
善通寺の駐車場
善通寺には、普通車が1日300円、バス・大型車が1日1,000円の有料駐車場があります。(最大収容台数 350台)
まとめ
善通寺は、弘法大師・空海の生誕地として知られる四国八十八ヶ所の第七十五番札所です。
境内には、金堂や五重塔、御影堂、遍照閣など見どころが多いですが、各お堂別に開扉時間が異なっているので、足を運ぶ際には気を付けて下さいね。
また、駐車場には、お土産品などを販売している物産会館があるので、帰路に立ち寄ってみよう。
香川県には、善通寺を始め満濃池や屋島寺など数多くの空海ゆかりの地がありますので、興味がある方は訪れてみてはいかがですか。