
北陸の小京都・石川県金沢市。この金沢市のメインストリートに面した場所に鎮座するのが「尾山神社(おやまじんじゃ)」です。
この神社の前を通りかかると、思わず足を止めてしまうほど珍しい神門があり、特に美しいステンドグラスが目を見張ります。思わずカメラのシャッターを切ってしまうのも頷けますね。
その他にも和漢折衷の「本殿」やレンガ造りの「玉垣」、楽器の名前のついた庭園など見どころが満載。ゆっくりと境内を見て回ろう。
本記事では、神社とは思えないモダンアートのような「尾山神社」を紹介します。
目次
尾山神社のご祭神・ご利益・所要時間

尾上神社の創建は、1873年(明治6年)までさかのぼります。ご祭神は、加賀藩の藩祖・前田利家(まえだ としいえ)と正室・お松の方ですね。全国的に見ても夫婦が一緒に祀られている珍しい神社です。
当初は、利家公を神のように崇めていた2代藩主・前田利長(まえだ としなが)が神社を建立しようとしていましたが、江戸幕府の権力を恐れて断念。明治時代に入った後、旧加賀藩士たちの協力の下、尾上神社が完成しました。
ご利益は、主に「出世・仕事運、良縁成就、夫婦円満、家内安全」などが期待できます。利家公の勝負強さにぜひあやかろう。また、仲睦まじい夫婦ということで、強い結びつきや和やかな家庭を願う参拝者が多いそうです。
所要時間は、境内を一通り見て歩くと30~60分ほど。市街地にありながら、境内はそれなりの広さを誇ります。
尾山神社の象徴、和漢洋が融合した美しい「神門」

南町の大通りを歩いていると、石段の上にステンドグラスの入った三層の建物が見えてきます。この建物が、尾山神社の「神門」ですね。様々な建築物がある尾山神社の中でも、ひと際目を引く存在ですよ。
日本・中国・ヨーロッパの3つの国や地域の建築様式を、一つに融合したような外観は不思議と調和しており、その独創的なデザインは深く印象に残ります。
この神門は1875年(明治8年)に完成し、1935年5月には旧国宝(現在の国の重要文化財に相当)に指定されました。そして、1950年8月に国の文化財保護法が施行されると、改めて国の重要文化財になり今に至ります。
このような建築様式の神門は、日本全国でも極めて珍しい。なので、じっくりと見物して下さいね。

一層はレンガの上に木造の櫓を積み、ニ層は和風としています。また、層が上がるごとに段々と小さくなっているので、塔や灯台のように感じるかも。
それに加え、3つの通路入口はアーチが連なった形状だ。中国の寺院や物語に出てくる竜宮城を想起させるぞ。これだけでも見ごたえがあるので、神社仏閣巡りを趣味にしている人ならば、絶対に一度は足を運んでみるべきです。

神門に施された彫刻にもご注目。加賀藩主・前田家の家紋である「加賀梅鉢(かがうめばち)」が見て取れます。この家紋をよく見ると、中心部分を小さな剣で囲んでいるではないですか。さすが武家を表すデザインですね。

そして、最も目を引くのは三層にあるステンドグラスでしょう。まるで中世ヨーロッパの教会みたい。四方には、5色のステンドグラスがはめられていて、時間帯により様々な表情を見せてくれます。
昼間でもその美しさは見て取れますが、日没後はライトアップされるので、その優しい光がステンドグラスを通り、見る者を幻想的な雰囲気に感じさせるそうですね。
ライトアップは、日没から22時まで。気になる方は、昼間だけでなく夜間もチェックしよう。普通の神社では得られない体験ができます。
ちなみに、建物の一番上にある避雷針は日本最古のものなので、お見逃しなく。

当時前例がない和漢洋折衷のこの神門の建設には、あえて伝統に拘らずに強固を目指したという。また、あまりにも斬新すぎる外観には不評の声も多かったそうです。
今では立派な観光名所ですね。私が訪れた日も多くの観光客が神門前で記念撮影をしていました。
かつてこの神門に灯りをともし、金石近海を通る船に灯台の役目をしていた実績もあるとのこと。尾山神社を象徴する立派な建築物です。
荘厳さと優美さを兼ね備える「拝殿」とライオンのような「狛犬」

神門を抜けると、目の前に見えてくるのが「拝殿」です。黒瓦と重厚な木造建築が特徴的な入母屋造で、正面には千鳥破風(ちどりはふ)や軒唐破風(のきからはふ)が見て取れます。
反り上がった屋根は、太陽の光を取り入れつつ雨を遠くに逃がす工夫なんだとか。そもそも反り屋根は、飛鳥時代以降に中国から仏教建築とともに伝わった様式ですよ。
その堂々な佇まいは、見る物に荘厳さを感じさせる一方で、優美な曲線美から柔らかさや優しさを感じてやみません。
創建時に建てられたこの拝殿の奥には、加賀藩の藩祖・前田利家夫妻をお祀りする本殿が建っています。

正面に掲げている扁額は、15代当主・前田利嗣(としつぐ)公が書いたもの。金色で力強く描かれた社名は見事なり。建物全体の重厚感を、より一層引き締めていると感じました。

こちらは、拝殿前に立つ狛犬です。一般的な狛犬に比べて明らかに足が長く、凛々しさを感じさせる表情がGood。犬というより、まるで王者の風格を身にまとったライオンに見えませんか。
こちらの狛犬は、尾山神社の創建60周年を記念して1933年5月に建てられました。

狛犬は神社ごとに姿や表情、歴史的背景により、そのデザインはまちまち。どこからとなく「滅悪」という言葉が聞こえてきそうです。
個人的には、この狛犬から強い正義感を持ち悪に対して容赦のない姿勢を感じました。最強格のガーディアンといえるでしょうね。
【神社仏閣の紹介(その1)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
楽器にちなんだ名前が満載の「庭園(楽器の庭)」

神門をくぐり右手側へ歩いて行くと庭園が見えてきます。この池泉廻遊式庭園は、1954年に金沢市の指定名勝に選ばれており、別名で「楽器の庭」と呼ばれる前田家最後の築園です。
もともとは前田家の別邸「金谷御殿」の庭園として、江戸時代末期に造られました。池泉の島には、琵琶島・笙島(しょうじま)・鳥兜島(とりかぶとじま)があり、琴橋や図月橋、八ツ橋が架けられています。
ここでピンと来た人は楽器に造詣が深いだろう。というのは、「琵琶」「笙」「琴」の名前は、雅楽で使用する楽器です。ちなみに、「鳥兜」は楽器ではなくて、伝統芸能の雅楽(舞楽)などに用いられるかぶり物のこと。全て和のものに統一されているのに、神社らしさを感じました。
楽器の庭は、日本三名園の一つに数えられ、日本を代表する江戸時代の庭園・兼六園のお膝元らしく美しい庭園ですね。

こちらは図月橋と琴橋。特に図月橋の雰囲気良し。明治時代に造られたレンガ積み・腰瓦が組み込まれたアーチ橋なんだとか。
気に入ったので勇んで渡ろうとしましたが、残念ながら渡るのはNGでした。なので、見物だけで留めて下さいね。



楽器の形を想像したり、その音色を頭の中で奏ながら、足元に注意して園内を歩いてみよう。
個人的には、市街地にあるとは思えないほど静かな空間ということも相まって、より穏やかな気持ちになりました。
本殿の周囲に張り巡らされたレンガ造りの「玉垣」

古式に則った三間社流造の本殿に対して、向かって右側へ歩いていこう。すると、神社建築では珍しいレンガ造りの玉垣を見ることができます。
日本で本格的なレンガ造りが始まったのは幕末頃で、明治時代になってから普及が進みました。明治に入ってから建てられた尾山神社には、レンガ造りの建築物が多いのも時代を感じさせますね。
玉垣は、一般的に木や石で作られる物です。当時日本にもたらされた新たな素材を神社のような伝統的な建築物に使用するとは、色々と反対意見も多かったことでしょう。
否が応でも目を引いてしまう神門の陰に隠れがちですが、この玉垣は神門より古い物なんだとか。そういう意味では、神門のみが異色なのではなく、境内全体に西洋化を取り込んだ結果と考える方が自然かも。神社にあえて西洋化を取り入れるその精神は、本当に凄いことだと思います。

玉垣の下部は石積みであり、上部のレンガ造りはまるで西洋の城壁のように見える。そして、笠石により全体を引き締めてバランスがいい感じ。
また、表面には前田家の家紋「加賀梅鉢」の透かしを並べることで、ただの塀ではないことを強く印象付けています。注意深く観察すると、素材の切り替えや意匠の置き方など細部の様々な工夫が見て取れますね。
神門のような派手さはありませんが、このレンガ造りの玉垣はとても個性的な存在だと思います。
境内には「金鯰尾兜」や「金箔カエル」など彫刻やオブジェが満載

尾山神社は利家公とその奥方・お松の方をお祀りする神社なので、境内には彼らの像を始め、利家公を記念する様々な彫刻や置物を見かけます。
馬に乗った利家公の像は、赤母衣(あかほろ)をまとい長い槍を掲げているぞ。まさに「槍の又左(またざ)」の異名をとった武勇を彷彿させますね。また、どんな困難にも立ち向かう力強さを感じました。
利家公は、織田信長や豊臣秀吉に仕えて武功を挙げ、加賀百万石(現在の石川県や富山県など)の礎を築いた人物。つまり、今の金沢の経済や文化、教育などの基礎は彼の功績が大きいです。

凛々しい姿の利家公の近くに立つのは、こちらのお松の方の像です。出兵する利家公を静かに見守る姿を描いています。
彼女は戦国時代の乱世を利家公と共に過ごして支え、利家公亡き後は「芳春院」と号しました。徳川家康が前田家に嫌疑を掛けた際には、家名存続のために自ら人質となって江戸へ渡り、忠誠の意思を示した人物です。
その穏やかな表情から、内助の功で支え続けた「良妻賢母」としての優しさと強さを感じました。

特に見ておきたいのが、こちらの「金鯰尾兜(きんなまずおかぶと)」です。利家公ががぶっていた兜をモデルにしたものなんだそうですよ。
授与所の前を通りかかると、突如現れる金色に輝く兜の像に目を見張ります。霊力を持つと考えられていた鯰の尾をモチーフにした兜は、金色でとても派手なデザイン。新しい物好きであった利家公らしさが全開ですね。
戦場ではとても目立つので、自分の居場所を味方に知らせ、武功を大きくアピールするのに役立ちます。しかし、敵に視認されやすい危険性があるだろうな。そんなことは利家公も分かっていたと思いますが、己の力を信じ、派手な衣装を好む傾奇者といったところか。
ちなみに、戦国一の傾奇者として知られる前田慶次は、利家公の義理の甥にあたります。


境内の一角には、ハスをモチーフにしたアートなオブジェがあるのでお見逃しなく。このハスは隠れたフォトスポットですね。というのは、ハスの上をよく見てみると、金箔のカエルが乗っかっているではないですか。思わずカメラを向けて、パシリと1枚撮ってしまいました。
このオブジェは、埼玉県在住の鍛鉄工芸家たちが手掛けた物で、作品名は「夏の夕刻」という。その名が示す通り、身をひそめていたカエルが夏を迎えて、「そろそろ出番だ」と姿を現した情景を表現したものだそうです。
当初は1匹だった金箔カエルは、その後増設され今では5匹もいますね。ハスの上で戯れる姿や茎を一生懸命に上っている姿に愛らしさを感じます。
お洒落なデザインの授与所

尾山神社の授与所のデザインを知ると、驚く人は多いだろう。現代的な「総ガラス張り」のお洒落なデザインは、今までの神社のイメージを覆すと思います。
遠目からでは、まるでアートギャラリーやセレクトショップのように見えて、とても授与所とは思えませんでした。神門や玉垣のような前例があるので、今でも古い慣習や従来の枠組みにとらわれず、新しい物事にチャレンジしいく尾山神社ならではの精神が見て取れますね。
この授与所は、2015年秋に完成しました。ガラス張りということで、内部からは境内や庭園の様子を広く見渡せ、開放感を生み出しているのがいい感じ。


また、外国人観光客や日本の若者たちからは、お洒落で入りやすいと評判も上々のようです。確かに私が訪れた日も外国人や若い観光客で賑わっており、特に学生が多かったのは印象的でした。制服をきた団体だったので、修学旅行かも知れません。
独特の神聖な空気感がある一般的な授与所も良いですが、これはこれでカジュアルに立ち寄れる雰囲気があって素敵な授与所ですね。
【神社仏閣の紹介(その2)】
旅先で訪れた神社仏閣を、下記記事で紹介します。
金沢城公園へつながる「鼠多門橋」と「東神門」

神門の反対側には、鼠多門橋(ねずみたもんばし)が復元されています。この橋を渡ると、金沢城の跡地に整備された金沢城公園(玉泉院丸庭園)へ直接行けるので便利です。
橋の上からは、正面に黒い海鼠漆喰(なまこじっくい)の目地が特徴的な鼠多門(ねずみたもん)がそびえ立ち、その独特の外観と重厚感に見応えを感じました。
この鼠多門橋を上手に活用して、尾山神社から金沢城公園や兼六園、長町武家屋敷跡、金沢21世紀美術館などを巡る加賀百万石回遊ルートの散策を楽しんで下さいね。

鼠多門橋から少し離れた場所には東神門が建ちます。鼠多門橋が復元される前は、金沢城公園へ向かう通りによく利用されていました。
もともとは、金沢城の二の丸の唐門だったみたい。金沢城のたび重なる火災の中でも消失することのなかったエピソードがあり、とても縁起の良い門ですよ。
ということで、特に用があった訳ではないですが、実際にくぐってみた次第です。これで運気がアップしたかしら。

お堀通りからは、鼠多門橋と鼠多門をほぼ横側から見ることができます。青空の下、木造の美しい橋の直線美と共にシックな海鼠漆喰のコントラストがとても映え、中々の写真映えですね。
その景観は、現代に蘇った加賀百万石の歴史ロマンを感じられます。
尾山神社の基本情報とアクセス
| 住所 | 石川県金沢市尾山町11-1 |
| 電話番号 | 076-231-7210 |
【アクセス】
- JR金沢駅から徒歩約25分
- JR金沢駅からタクシーで約5分
- 北陸自動車道「金沢東IC」から車で約20分
尾山神社の駐車場
尾山神社には無料駐車場があります。(普通車15台)
まとめ

約400年の歴史を持つ武家文化の城下町・金沢市は、京都に劣らない古い町並みや伝統文化が今も残ります。その金沢市のメインストリートの近くに鎮座するのは、モダンアートのような尾山神社です。
全国でも珍しい和・漢・洋の建築様式を取り入れた「神門」が特徴的。特にステンドグラスがはめられたその姿は、まさに新しい物好きの前田利家公らしさではないでしょうか。
また、夫婦が一緒に祀られているのも珍しいですね。さらに尾山神社から鼠多門橋を渡り、金沢城公園や兼六園へ向かえるのも魅力的です。
金沢市へ観光へ訪れた際には、歴史と文化が息づく金沢を代表する神社の一つ「尾山神社」へぜひ足を運んでみてはいかがですか。


