瀬戸内海のほぼ中央に位置する「鞆の浦」。
江戸時代から「潮待ちの港」として栄え、今でも当時の面影を残すノスタルジーに浸れる癒しの港町です。
普段の喧騒から離れ、海の見える町でゆっくり過ごしてみませんか。鞆の浦には、誰しも優しい気持ちになれる空間が広がっていますね。
本記事では、鞆の浦の古い町並みを散策しながら、外せない観光スポットを紹介します。
鞆の浦とは
鞆の浦は、広島県福山市鞆地区の沼隈半島南端に位置しています。
今でも江戸時代に建てられた町家や湾口施設一体が、色濃く残る全国でも珍しい港町です。
また、瀬戸内海のほぼ中央に位置しており、鞆の浦を境にして満ち潮と引き潮がぶつかる場所であるため、多くの船が潮の流れが変わるのを待つために鞆の浦へ寄港していました。
このことから「潮待ちの港」と呼ばれ、多くの文化が交流する町へなったそうです。
特に江戸時代中期と後期の町絵図に描かれた街路が、今もほぼすべて現存しており、このような港町は日本全国探してみても鞆の浦以外にありません。
そのため、古くから続く町並みや名所旧跡を訪ねて、毎年多くの観光客が訪れます。
1927年に日本二十五勝の海岸景勝地として「鞆の浦・屋島・若狭高浜」が選ばれており、1992年には都市景観100選に選ばれました。
更に2007年には、美しい日本の歴史的風土100選に選ばれ、2018年には日本遺産へ認定されています。
2008年に公開されたジブリアニメ「崖の上のポニョ」は、この鞆の浦がモデルになったそうです。
【古い町並みの紹介】
鞆の浦のような古い町並みは、日本全国に点在していますね。旅先で訪れた古い町並みを下記記事で紹介します。
鞆の浦観光情報センターで観光情報を入手
鞆の浦を観光するならば、まずは鞆の浦観光情報センターへ立ち寄りましょう。
このセンターでは、鞆の浦の歴史を紹介したり、鞆の浦を見て周るために有益な様々な観光情報を扱っています。
観光の手助けとなるパンフレットやマップも入手できますので、初めて鞆の浦を訪れた人にとっては、大きな助けになりますね。
パンフレットを片手に鞆の浦の町へ散策に繰り出しましょう。
土日祝日のみですが、無料で事前予約なしで、観光ガイドと鞆の街を散策できます。(所要時間:1時間30分)
集合時間や集合場所が決まっていますので、詳細については、鞆の浦観光情報センターへお電話にてご確認下さい。
また、平日の観光ガイドは、有料で事前予約が必要になります。
鞆の浦観光情報センター
- 住所 広島県福山市鞆町鞆416-1
- 電話番号 084-982-3200
- 営業時間 10:00~17:00
- 定休日 無休
- 駐車場 普通車20台
日本遺産に認定された古い町並みをぶらりと散策
鞆の浦の町中は、多くの細い路地が張り巡られており、江戸時代の港町の風景が色濃く残っています。
そのため、町を散策していると、当時の雰囲気を感じ取ることができますね。
この細い路地は、車が通行しますので、周囲に注意しながら歩きましょう。
突然ですが、鞆の浦を表すシンボルについて知っていますか。
実はこちらの常夜灯が鞆の浦のシンボルになります。
現存する江戸時代の常夜灯として、最大級の大きさになると言われていますね。
多くの観光客がこの常夜灯の前で記念写真を撮っていました。
常夜灯の役割は、日暮れまでに寄港できなった船が、暗い夜間でも到着できるための目印です。
名前の通り一晩中明かりを点けており、現代の灯台に当たります。
この常夜灯の近くには、雁木(がんぎ)と呼ばれている石階段が残っており、鞆港に赴きを与えていますね。
雁木は、雁が飛ぶさまに似ていることからそう呼ばれ、潮の干満に関らず船着けできる特徴があります。
特に鞆の浦の雁木は、全国でも類を見ない大きさを誇り、この雁木に座りながら常夜灯を見上げてみませんか。
尚、江戸時代の港湾施設である「常夜燈、雁木、波止、焚場跡、船番所跡」の5点セットがほぼ完全な形で残っているのは、日本では鞆の浦だけです。
是非、足を運んで見学してみましょう。
この常夜灯の直ぐ近くには、いろは丸展示館や太田家住宅があります。
いろは丸展示館では、「いろは丸事件」で知られている龍馬と海援隊の船「いろは丸」から引き揚げた物や龍馬のかくれ部屋、いろは丸の沈没状況のジオラマなどを紹介していますね。
太田家住宅は、国の重要文化財に指定されており、江戸時代の商家を今に伝える歴史的建造物です。
細い街路を歩いていると、今自分がどこを歩いているの迷ってしまうこともありますが、こちらのような案内板が立てられているのは実に有難いですね。
町中には多くのお店が点在していますので、気になるお店があれば入ってみましょう。
また、こちらのような面白い物を発見できたりします。一体何かわかりますか。
これは、保命酒(ほうめいしゅ)に漬け込んだ16種類の生薬です。乾かして香り袋に使用します。
保命酒は鞆の浦の特産品であり、もち米を原料とした原酒に、16種類のハーブを漬け込んで作った和製リキュールのことです。
生薬を含むことから「瀬戸内の養命酒」と言われたりしますが、厳密には養命酒とは異なり医薬品ではありません。
とろけるように甘く優しい口当たりでありながら、薬味の滋味深く爽やかな香りを楽め、かつて福山藩の重要な産物でした。
この保命酒を販売しているお店が、鞆の浦には点在していますので、お土産に買ってかえるのも良いでしょう。
保命酒を販売しているお店の一つには岡本亀太郎本店があり、かつては福山市の重要文化財に指定されている長屋門でした。
1873年(明治6年)に福山城の廃城をきっかけに長屋門は民間へ払い下げられ、醸造業を営んでいた岡本家がこれを譲り受けた際、店舗にした経緯があります。
石畳が敷かれた道を歩きながら古い町並みを眺めていると、まるで江戸時代へタイムスリップをした感覚を味わえますね。
また、歴史上に名を残す場所を発見できたりしますので、思わずニンマリしてしまいます。
こちらは桝屋清右衛門宅(ますやせいえもんたく)です。
いろは丸事件が起きた当時、鞆港を訪れた坂本龍馬率いる海援隊が宿泊したの住宅でした。
桝屋は廻船問屋を営んでいたため、土佐藩や薩摩藩、大洲藩などとも取引があったそうです。
その縁で龍馬一行の救出に関わったと思われます。
こちらは「御舟宿いろは(おんふなやど いろは)」です。いろは丸事件の際、龍馬一行が紀州藩に対して談判の場として使われた町家(旧魚屋萬蔵宅)となります。
現在では旅館業を営んでおり、1階はレストランになっていますので、食事だけでも頂けますね。
こちらの「いろは御膳」は、瀬戸内海の鯛を酒や昆布などを使って、1週間以上漬け込んだ絶品料理だそうです。
私が訪れた日は、お店が閉まっていたため食べられませんでした。(泣)
多くの古い建屋を一軒ずつ眺めて周ると、時間が経つのを忘れてしまいます。
町中を見て周るだけでも1時間から2時間程度はかかりますので、時間に余裕をもって観光しましょう。
朝鮮通信使が絶賛した福禅寺・対潮楼からの景色
鞆の浦を観光するに当たり、忘れてはならない観光スポットの一つには、福禅寺・対潮楼があります。
江戸時代に李氏朝鮮から江戸へ向かう朝鮮通信使一行は、鞆の浦へ必ず立ち寄っていました。
その際、ご一行をもてなすために使用された迎賓館が福禅寺・対潮楼です。
1711年に訪れた朝鮮通信使の李邦彦(イバンホン)は、対潮楼の座敷から見た景色を「日東第一形勝(日本で一番美しい景勝地)」と讃えたと伝わっています。
福禅寺・対潮楼については、下記関連記事で詳しく紹介します。
日本国内唯一の五色岩、仙酔島へ行こう
仙酔島は、先ほど紹介した福禅寺・対潮楼から眺めることができる沖合に位置する島です。
フェリー(平成いろは丸)に乗船した場合のみ、島へ上陸できます。(乗船時間は約5分)
仙酔島は、日本で唯一の五色岩(ごしきいわ)が存在する場所であり、様々なパワーが宿ると言われている西日本屈指のパワースポットです。
五色岩が織りなす異次元のような景色は、ここが現実世界なのか忘れさせられますね。
仙酔島については、下記関連記事で詳しく紹介します。
鞆の浦の絶景スポット「医王寺」の眺望
鞆の浦を一望できる観光スポットと言えば「医王寺」ですね。
医王寺は、坂道を上った先にある後山(うしろやま)の中腹にあります。
坂を上っている途中で見つけた明圓寺の門の前には、花束を背負った象がいました。面白いですね。(笑)
医王寺は、鞆の浦で2番目に古い寺院であり、826年(天長3年)に弘法大師・空海によって、開基されました。
ご本尊は、木造薬師如来立像で広島県の重要文化財に指定されており、6年に一度しかご開帳されないため大変貴重です。
こちらの写真を見て下さい。医王寺から眺めた鞆の浦の眺望です。
鞆湾の全景が一望できて、その絶景に思わず「素晴らしい!!」と声を出してしまいました。(嬉)
鞆の浦へ訪れたら是非、この景色をご覧下さい。
医王寺まで坂道を歩いてきた疲れが吹き飛びますよ。
尚、医王寺の境内から更に坂道が続いています。
583段もある長い階段を上った先には、太子殿があり、そこからは最高の眺めが期待できますね。
医王寺の山門から約100mほど下ったところには、平賀源内生祠(ひらがげんないせいし)がありますので立ち寄ってみましょう。
平賀源内氏について知っている人も多いと思いますが、エレキテル(摩擦起電器)や寒温計、源内焼き、火浣布などを創作した発明家ですね。
また、生祠とは存命中から生き神として祀る社のことを言います。
平賀氏は諸国を遍歴した際、鞆の浦へ訪れ溝川家の居候となりました。
この時に源内焼の製法を伝え、三宝荒神(土の神・かまどの神・平賀源内大明神)を祀るよう言い残したと言われています。
医王寺
- 住所 広島県福山市鞆町後地1397
- 電話番号 084-982-3076
【寺院の紹介】
旅先では、寺院へ良く訪れ参拝しますので、下記記事で紹介します。
海を護る祇園さん(沼名前神社)の祭事
沼名前神社(ぬなくまじんじゃ)は、鞆の浦で行われている様々な祭の舞台になる神社です。
沼名前神社は鞆祗園社(ともぎおんぐう)とも呼ばれており、地元住民からは「祇園さん」と親しみを込めて呼ばれています。
須佐之男命と大綿津見命が祀られおり、平安時代に作られた「延喜式」という法令に記載されている由緒正しい神社です。
毎年7月の第2日曜日の前夜には、鞆の浦の夏の祭事と知られている「お手火神事(おてびしんじ)」が開催されます。
お手火神事は、長さ4.5m、重さ200kg以上ある大手火を沢山の人々で担いで、町内の穢れを清めたり、無病息災を祈願する祭事です。
大手火が沼名前神社の拝殿前まで運ばれた後は、神輿を拝殿に納め、深夜まで盛大な火祭りが繰り広げられます。
その華やかさや勇壮さが多くの人々を惹きつけ、心が激し煽られるでしょう。
沼名前神社
- 住所 広島県福山市鞆町後地1225
- 電話番号 084-982-2050
【神社の紹介】
旅先では、神社へ良く訪れ参拝しますので、下記記事で紹介します。
山中鹿之助首塚とささやき橋
山中鹿之助(やまなかしかのすけ)について、知っている人は余りいないのではないでしょうか。
私は戦略シミュレーションゲーム「信長の野望」で初めて知った人物ですね。恐らく私と同じくゲームで知った人も多いはずです。第二次世界大戦前の日本では、多くの児童や生徒が学校で習っていました。
鞆の浦には、先ほど紹介した沼名前神社の近くに山中鹿之助の首塚があります。
山中鹿之助は、戦国時代に出雲国の尼子氏に仕えた武将ですが、中国地方の覇者である毛利氏により尼子氏は滅ぼされてしまいます。
それでも彼は、戦いに敗れても決して諦めない信念や意志の強さ、忠義の厚さは折り紙付きで、自分の生涯を主人である尼子氏のために尽くしたそうです。
特に「我に七難八苦を与えたまえ」は有名なセリフであり、どんな困難な状況であろうとも必ず主人の尼子氏を復活させる強い意志を表しています。
山中鹿之助首塚の直ぐ近くには、ささやき橋がありました。
橋と言うより、普通の道としか思えないため、注意して歩かなければ見過ごしてしまいますね。
この橋には悲恋の伝説があります。
応神天皇(おうじんてんのう)の招きで、百済から王仁博士(わにはかせ)一行が、大陸の優れた文化と技術を伝えるため来日しました。
渡来人の「接待官」として武内臣和多利(たけのうちのおみわたり)が、「官妓」として江の浦(えのうら)を派遣したそうです。
しかし、この二人は渡来人の接待を忘れるほど恋に落ち、夜毎この橋で逢瀬を重ねました。
それが噂となり、上官の知るところとなった結果、二人は海に沈められてしまったそうです。
それから、この橋は「ささやき橋」と語り継がれるようになりました。
恋は盲目と言いますが、他国から天皇が直々に招いた人たちを蔑ろにするのは、さすがにマズイでしょう。
今で言えば、国際問題に発展しかねません。
流石に死罪は重すぎると思いますが、当時は今と比べて人命が軽かったため、このような結末になるのは日常的だったのではないでしょうか。
【番外編】スリル満点、阿伏兎観音(磐台寺)へ行こう
鞆の浦から西へ約5kmほど離れたところに阿伏兎観音(あぶとかんのん)があります。鞆の浦へ訪れたら、是非合わせて訪ねて欲しい絶景スポットです。
阿伏兎観音の正式名称は磐台寺(ばんだいじ)であり、断崖絶壁の上にそびえ立つ朱塗りの観音堂と、雄大な自然とのコントラストが非常に美しいですね。観音堂から瀬戸内海の絶景を楽しみましょう。
また、阿伏兎観音では、子宝や安産、産後に母乳が沢山出て子供がスクスクと育つ子育てのご利益があると言われています。
尚、阿伏兎観音の詳細については、下記関連記事をご確認下さい。
鞆の浦の基本情報
住所 | 広島県福山市鞆町鞆 |
電話番号 | 084-982-3200(鞆の浦観光情報センター) |
【アクセス】
- JR福山駅から鞆鉄バス鞆線で「鞆港」へ下車(乗車時間約30分)
- 福山東ICから車で約15km
鞆の浦の駐車場
鞆の浦には、複数の有料駐車場があります。
駐車場 | 料金 | 最大料金 | 収容台数 | 営業時間 |
---|---|---|---|---|
鞆の浦第一駐車場 | 8:00~17:00 30分毎100円 17:00~8:00 1時間毎100円 | 夜間最大料金 1,000円 | 35台 | 24時間 |
鞆の浦第二駐車場 | 8:00~17:00 30分毎100円 17:00~8:00 1時間毎100円 | 夜間最大料金 1,000円 | 20台 | 24時間 |
鞆の浦駐車場 | 8:00~22:00 30分毎100円 22:00~8:00 2時間毎100円 | ー | 25台 | 24時間 |
広島県営鞆町 鍛冶駐車場 | 8:00~22:00 4時間まで1時間毎150円 4時間を超え7時間まで1時間毎100円 7時間を超える場合、1,000円 22:00~8:00 1時間毎100円 | ー | 230台 | 24時間 |
まとめ
鞆の浦は、江戸時代から変わらない港の景色や古い町並みにより、ノスタルジーに浸れる癒しの港町です。
ゆっくり時間をかけて町中を見て周れば、新しい発見に出会えるかも知れません。
忙しい普段の日常を離れ、日本遺産に選ばれた美しい港町で心の洗濯としゃれ込みませんか。