愛媛県の東予地方をサイクリングします。今回の旅のお目当ては、別子銅山の跡地に残る産業遺産の数々です。
産業遺産とは、かつてその地域に根付いていた産業の姿を今に伝える遺物・遺構・遺跡であり、その歴史を知っているとより楽しめる。
別子銅山の産業遺産には、東洋のマチュピチュと呼ばれる古代遺跡のようなものを始め、役目を終えた水力発電所やトンネルなどがあり、見ていて面白いですよ。
本記事では、新居浜市から今治市まで自転車で旅した様子をお届けします。
旅のスタートは新居浜駅
本日の旅のスタートは、新居浜駅です。いつものように輪行でやってきました。
別子銅山の跡地の1つには、マイントピア別子というテーマパークが整備されていますので、まずはそこを目指します。
本日の旅で一番訪れたい場所が、東洋のマチュピチュと呼ばれる別子銅山・東平(とうなる)地区ですよ。ここにある産業遺産は見ものです。
昔1度だけ、観光にきたことがあるので、本日の自転車旅で再訪となりますね。
実は東平地区は、山の中腹にあり、自転車で直接行けるのですが、今回も前回と同じくマイントピア別子から出発している観光バスを利用します。
ひょっとして「ヒルクライムがつらいからかな」と思いました?
誤解がないようにいっておきますが、マイントピア別子や周辺にある数々の産業遺産を見学すると、普通に3~4時間ぐらいかかるので、時間の短縮のためですよ。(結果的にこの判断は大正解でした。)
さて、新居浜駅で自転車の組立てを終えて、よいよマイントピア別子へ向けて、自転車のペダルを回し始めた次第です。
【自転車旅の様子(その1)】
本記事のような自転車旅の様子を、下記記事で紹介します。
景勝地「別子ライン」の風景
新居浜駅からマイントピア別子までの距離は約6.5km。距離にすると大したことはありません。
しばらく平坦路を走り南下していると、新田橋へ到着。この橋を渡り、今度は国領川沿いにある県道47号を走りますよ。
渓谷沿いに整備された県道47号をずっと上り続けて行けば、マイントピア別子へ到着します。
観光バスが出発する時刻までには十分な余裕があり、急ぐ必要もないので、ほとんどお気楽モードでペダルを回していました。ならば、渓谷美を楽しもうじゃないですか。
まず最初に目に付いたのは、こちらの生子橋。朱塗りの欄干が青空の下、よく映えます。
この生子橋は、別子ライン(渓谷の名称)の関門なんだとか。春には桜と朱塗りの橋のコラボが楽しめる。さすがは景勝地ですね。
別子ラインは、国領川上流部の約10kmにわたっており、生子橋からマイントピア別子を経て鹿森ダム・遠登志渓谷へ続きます。
生子橋のたもとには、製錬夫像が設置されている。先人たちの働く様子がわかるというもの。
また、生子橋から数十メートル離れた所には、不思議なオブジェを見つけました。
それを見た私の第一声は「大きな鉛筆だな」ですよ。(笑)
この鉛筆のオブジェの近くには「えんとつ山 入口」と書かれた看板が掲げられており、興味を引きますね。
さすがに登山をしているほどの余裕はないので、スルーしたのですが、後日「えんとつ山」について調べたところ旧山根製錬所の煙突であることが判明。
登山口から約2分ほど歩けば、到着するみたいなので、スルーしなくても良かったかも知れませんね。またの機会に訪れてみます。
それにしても、別子ラインは美しく、見ているだけ楽しくなる。そんな景観をダイジェストで紹介。
それにしても綺麗な水ですね。まるで吸い込まれそうだ。
リズミカルに坂道を上り続けていると、少し優美さにかける斜張橋(端出場大橋)が見えてくる。
私の斜張橋の基準は、しまなみ海道の多々羅大橋なので、採点は結構厳しいですよ。(笑)
この端出場大橋を渡り、マイントピア別子へ辿り着きました。
【渓谷の風景】
旅先で訪れた様々な渓谷を、下記記事で紹介します。
マイントピア別子を見て回ろう
観光バスの出発までは、まだ40分ほど余裕があるので、その間にマイントピア別子・本館を見て回ります。
マイントピア別子では、観光坑道と呼ばれる場所で銅山の歴史を学んだり、当時の作業を体験できる。また、別子鉱泉を利用した温泉や芝生広場、砂金採り体験もできますね。
更に園内には、いくつもの産業遺産が残されており、全てに足を運ぶのは40分では絶対に無理。最低でも1時間30分ほどは見ておきたい。
そこで、本館内にある展示物を中心に見て回りました。(産業遺産の見学は後から行ないます。)
まずは、観光バスの予約をしているのでチケットの受取りを終えた後、向かったのがこちらのお土産売場です。
やはり愛媛といえばこれでしょう。誰もが知っているポンジュース。温州みかんを使った「八寿(やじゅ)みかんジュース」という商品名ですね。
商品のアピール文を読むと、愛媛セレクションみかんジュースコンクール2019で、ゴールドアワードを受賞したといいます。興味深々かな。
「うん、カブの駅?」どうやらここは、2023年2月にカブの駅に認定されたようです。あっ、カブはバイクの方ですよ。
特に目を引くのが、金色の刺しゅうが美しい太鼓台。新居浜太鼓祭りは、四国三大祭り・日本三大喧嘩祭りとして知られています。
その祭事の起原は平安時代までさかのぼるという。長い歴史と伝統がありますね。
また、別子銅山で採掘された鉱石も展示されていました。
その中でも机の上にドンと置かれた、重さ2トンもある大きな金剛石には驚きますよ。
今の時価は不明ですが、2012年(平成24年)時点では2,642万円だったというじゃないですか。ひょっとすると、今ならば時価3,000万円越えかも。
レストランの前には、出入口が2つありますが、こちらの出入り口が面白い。
別子銅山の記念すべき最初の坑道「歓喜坑」に似せて作られています。個人的には、こういう演出大好きです。
そうこうしている内に、あっという間に時間が過ぎ去り、バスが出発する5分前までにバス乗り場へ向かいました。
別子銅山の産業遺産の見学
観光バスに乗って、別子銅山・東平地区へ向かいます。
県道47号を上り、途中から東平地区へ向かう約5.5kmの山道を走りますね。道幅が大変狭くなっているので、対向車とのすれ違いが困難な場所が多く、自家用車で行く際には細心の注意が必要ですよ。
約30分ほどかけて東平地区の中心部へ到着。山の天気は変わりやすいといいますが、あれほど晴れていたのに、東平地区へ辿り着くころには嘘のように曇天です。なんでこうなった。
ガイドさんの案内の下、東洋のマチュピチュと呼ばれる別子銅山の産業遺産を観光しました。
観光の所要時間は、1時間しかないので、東平地区全体を見て回るのは難しいですが、メインとなる索道停車場跡と貯鉱庫跡を中心に見て回るので、知的好奇心が十分に満たされます。
別子銅山は、日本三大銅山の1つに数えられており、1690年に発見されてから1973年に閉山されるまで70万トンも産出し、日本の貿易や近代化を支え続けてきました。
全盛期には3,800人の人々が生活を営んでいたため、社宅を始め学校や郵便局、娯楽場などがあっといいます。大変な賑わいを見せていたのは、想像に難くありません。
そんな跡地に足を運びながら、今は使われなくなった産業遺産は、自然の中に溶け込むように佇み、山奥から人々の暮らしを見守っているように感じます。
また、レンガ造りの建物は、ところどころが崩れており、かつての繁栄が嘘のよう。まさに栄枯盛衰を体現している場所ともいえるでしょう。
観光バスに乗って、再びマイントピア別子へ到着。そしていつの間にか、青空が広がっている。30分しか移動していないのに、この落差はすごくないですかね。
さぁて、残りの産業遺産を見て回りますよ。
その中で特に見所が多かったのが、こちらの旧端出場水力発電所です。
前回訪れた時は、非公開だったのですが、なんと2023年3月28日から一般公開されたという。私は現地に訪れるまで、そのことを知らなかったので、これは嬉しいサプライズでしたね。
館内には、ドイツのシーメンス社製発電機、フォイト社製のペルトン水車などが並んで展示されており、メカ好きならば堪らない空間が広がっています。
「こーさんは、メカ好きなの?」という声が聞こえてきそうですが、男の子はいくつになっても、メカが好きな物ですよ。(笑)
なので、ゆっくり時間をかけて見て回ったのはいうまでもありません。
その他にも第四通洞、四通橋、端出場鉄橋、端出場隧道、泉寿亭を見て回り、ホクホク顔で産業遺産の見学を終えた次第です。
まだ多くの産業遺産がありますが、時間の都合や徒歩圏内にないものがあったりするので今回はパス。
時計を確認すると、この時点で14時30分ぐらい。今から今治市へ向かえば暗くなる前には辿り着ける。
ここまでは計画通り。やはり、観光バスで東平地区へ向かう計画が正しかったことが実証されました。
さて、マイントピア別子へ来た時から気になっていたものを頂くとしますか。
こうして売店に足を運び「じゃこ天」を購入。愛媛に来たらやっぱり食べなきゃね。
じゃこ天を食べながら休憩をして、再び自転車に乗り、マイントピア別子を後にしました。
尚、別子銅山の産業遺産については、下記関連記事でくわしく紹介します。
のんびりゆったり田舎旅
別子ラインを下り、新居浜市のお隣の西条市へ向かいます。
自転車のペダルをゆっくり回し、のどかな景色を眺めながら進むのは、自転車旅ならではの楽しみ方ですね。
車やバイクであれば、このような楽しみ方はできません。車のようにスピードが速くなく、歩きより段残速い自転車は、私にとって丁度よいスピードで走れる乗り物です。
風を切りながら、ゆっくりだけど確実に変わっていく風景を楽しめるのが何よりも素晴らしい。何気ない風景の中には、新たな発見や興味深い出会いがあったりする。
たとえば、地蔵様が彫られた道標を見つけて、思わずカメラのシャッターを切りました。
道標にこのようなバージョンがあったのか。個人的には新発見です。
レンゲ畑を発見すれば、自転車を停車して、レンゲを鑑賞したりしていました。レンゲの可憐な姿を見ているとを癒されます。
また、丈が長い草がたくさん生えている場所では、風が吹くたびに草が傾き、まるで草原のように波打つ姿を見ていると、思わず感嘆しますね。
その姿に「疾風勁草(しっぷうけいそう)」という言葉が頭の中によぎります。
疾風勁草とは、激しい風が吹くことで、初めて強い草がどれか分かることから、人の真価は苦境に立ってこそ初めて分かるというたとえ。うん、よい言葉です。
そんな風にのどかな風景を楽しんでいると、いつの間にか西条市の市役所前に到着していました。
近くには、こちらの「うちぬき広場」を見つけたので立ち寄った次第です。
西条市は、西日本最高峰の石鎚山の麓に位置しており、地下から湧き出る自噴水が至るどころにある水の都ですね。
この自噴水は「うちぬき」と呼ばれており、その数は約3,000本というから驚きだ。その1つがうちぬき広場にあり、軟水で癖がなく飲みやすい名水として評判ですよ。
残念ながらここへ辿り着くまでに、それなりの水分補給をしていたため、あえて飲む意欲がわかずスルー。
「うちぬき広場」のことを事前に知っていれば、絶対に調整しながら走っていましたね。けれど、西条市にはまたくる機会があると思うので、その時に名水の味を確かめてみましょう。
点在している「うちぬき」で、水の飲み比べをするのも楽しそうです。
【自転車旅の様子(その2)】
本記事のような自転車旅の様子を、下記記事で紹介します。
今治市街へ到着
私は西条市や今治市へ過去に何度もきたことがありますが、西条市と今治市の間を自転車で走るのは、何気に初めてです。
そのためかテンションが上がり、自転車のペダルをリズミカルに回して北上を続けました。誰のセリフだったのか「リズムにのるぜ」という言葉が口から出てくる始末。
しばらくの間、そんな調子で颯爽に道を駆け抜けていると、道の駅「今治湯ノ浦温泉」の大きな看板が目に留まります。これは立ち寄っていきましょう。
こちらは、この道の駅で見かけた温泉の湯けむりをイメージしたモニュメント。
実際、湯けむりが立ち昇っていましたね。何でもこの辺りは、昔から温泉保養地だったとか。
少し休憩を入れて北上すると、タオル美術館の案内板を目撃しました。今治市街から離れているため、まだ一度も訪れたことがないので興味津々です。
この美術館までの距離は、今の地点から5kmということなので往復すれば10kmになる。美術館の見学時間を1時間とすれば、暗くなる前にゴールに到着できるか微妙なところ。(恐らく見学が長引くと思うので無理かな。)
そのためスルーして、当初の計画通りに今治市街を目指しました。誘惑には負けませんよ。(笑)
しばらくすると、周りに住宅地が立ち並んできて今治市街へ入ります。
ここまできたら後はゴールするだけ。本日のゴールは今治市役所です。正確にいえば市役所前にあるスクリューがゴールですね。
自転車のスピードを落とし、クールダウンに努めます。そしてついに今治市役所へ到着。
本日の別子銅山の産業遺産を見て回る旅は、こうして終わりを告げました。
【しまなみ海道の紹介】
今治市は自転車の聖地で有名な「しまなみ海道」の四国側の入口です。下記記事では、しまなみ海道について紹介します。
まとめ
本日の自転車旅では、前半は別子銅山の産業遺産の観光に時間を使いました。後半は今治市までのサイクリングです。
日本全国には、様々な産業遺産が残されており、マチュピチュのような景観を楽しめる遺跡・史跡は数件ありますね。その中でも冠に「東洋の」が付くのは別子銅山だけでしょう。
産業遺産に興味がある人は、ぜひ訪れてみて下さい。その際、足尾銅山の歴史について事前に調べておくと、なお楽しめます。
かつての繁栄が嘘のように佇む遺産の姿は、哀愁を誘い感動的ですよ。