
水をせき止めるアーチ状の止水壁が複数連なっているダムの事をマルチプルアーチダムといいます。
このアーチダムは、日本国内ではわずか2基しかありません。
香川県観音寺市の山奥には、このマルチプルアーチダムである「豊稔池堰堤」(ほうねんいけえんてい)があり、ダムファンだけでなく多くの観光客が訪れるスポットになっています。
このダムは一度見たら忘れる事ができないほど、普段見慣れているダムの姿と異なり、まるで中世ヨーロッパの古城を思わせる重厚感に衝撃を受けるでしょう。
本記事では、文化財としても価値が高く、国の重要文化財に指定されている豊稔池堰堤を紹介します。
中世ヨーロッパの古城のような抜群の重厚感を感じるダムを訪れて
圧倒的な存在感、豊稔池堰堤を見上げて
阿讃山脈を分け入る柞田川上流へ向かいます。
豊稔池遊水公園へ近づくにつれ、遠くから分かるほど巨大な建築物が見えてきました。

視線を目の前の建築物へロックオンしながら、レンガでできた欄干の豊稔橋を渡ります。

豊稔池遊水公園はそれほど広くはないですが、芝生広場が整備され石畳の道が続いているので、とても歩き易いですね。

目の前に見える巨大な建築物が「豊稔池堰堤」であり、圧倒的な存在感と重厚感を感じます。
近づいて良くみて見ましょう。
堤高30m、堤長145mの巨大な建築物であり、中央部に5個のアーチと6個の扶壁が特徴的です。
まるで、中世ヨーロッパの古城の城壁を思わせる姿に、ここが日本であることを忘れそうになります。

1926年(大正6年)に起工して、当時の最新技術が投入されて建築されたそうです。
1929年(昭和4年)11月に竣工後、今でも約500ヘクタールの農地の水瓶として役目を十分に果たしています。
約90年の長い年月の間、風雨にさらされて黒く変色した表面の石積みが醸し出す風格に、思わず「おー」と声を上げてしまいました。


洪水吐から水が流れ続けています。

毎年7月下旬から8月頃には、雨量の少ない夏に下流の農地へ池の水を放流する「ゆる抜き」の行事を行います。
毎秒4トンの水が轟音と共に流れる光景を見るために多くの人が集まってくるそうです。
私も機会があれば、是非見てみたいですね。
部位ごとに写真を撮って見ると、黒く変色した石積みの質感がとても美しく魅了されました。




下から見上げる角度で豊稔池堰堤を見てみると、迫力倍増ですね。

この堰堤の近くには、柵やフェンスのような物がないため、思ったより近くへ近づく事ができるのもポイントが高いです。(足元は滑りやすいので注意が必要です)
この堰堤の前には、石でできたベンチがあり、そこに座って豊稔池堰堤を眺める事ができます。

日本に現存しているマルチプルアーチダムは、この豊稔池堰堤と宮城県にある大倉ダムだけです。
しかも石積み式な物になると豊稔池堰堤しか存在しません。
現在の河川構造令では、同じようなダムの築造ができないため、貴重な建築物になっています。
【建造物あれこれ】
旅の道中では、豊稔池堰堤のように迫力のある建造物や美しい建造物に出会ったりしますね。下記記事でそのような建造物について紹介します。
豊稔池遊水公園の散策
豊稔池遊水公園には、東屋がありますので、豊稔池堰堤の見学に疲れたらここで休憩しても良いでしょう。


少し奥へ歩くとトイレがあります。

また、東屋とトイレの近くには、平成の補修工事の時に取り替えられた中樋取水バルブがありました。

中樋取水バルブの隣には、土砂吐樋門(どしゃばきもん)が保存されています。

この中樋取水バルブと土砂吐樋門も豊稔池堰堤と同じく重要文化財に指定されているそうです。
その他には、石碑のような物がありました。近づいてみます。

石碑の正体は、豊稔池改修事業竣功記念碑でした。

豊稔池堰堤の見学が終わった後で、この公園内を散策してみるのも良いでしょう。
公園内はそれほど広くはないので、10分もかからずに見て周れます。
【公園あれこれ】
自転車旅で立ち寄った公園には、豊稔池遊水公園のような小さい公園もあれば大きな公園もありますので、下記記事で紹介します。
豊稔池を眺めよう
豊稔池遊水公園を後にして、県道9号線まで出てみましょう。
この写真の右側を進むと豊稔池が見える方向へ進みます。(左側の道へ下ると豊稔池遊水公園へ進みます)

しばらく進んでいると、右手に公衆トイレがありました。

駐車場があるため、車で訪れる場合は、ここへ一時的に駐車するのも良いと思います。(公衆トイレの駐車場なので、長時間の駐車はお控え下さい)
直ぐ近くには、バス停がありました。

観音寺駅を10:10に出発するシャトルバスを使えば、豊稔池を見学した後で、雲辺寺ロープウェイ山麓駅へ向かえます。(豊稔池で25分間停車します)
尚、雲辺寺については下記記事で紹介しています。
このバス停と道を挟んで向こう側には、豊稔池が見えますね。
上から見下ろしてみる豊稔池堰堤も素晴らしく、豊稔池も眺める事ができます。

山中に溶け込んでいるような豊稔池堰堤の姿に興奮を隠せません。

堰堤のアーチ上部の構造がバッチリ確認できます。

偶然、アーチ先端部にサギが止まる奇跡の撮影ができてご満悦です。(嬉)

上流を散策してみましょう。

残念ですが、アーチ部へは立入禁止で入れません。

豊稔池の水深は平均で約10mほどあり、最も深い所では約25mあるそうです。
間違って池に入ってしまうと大変危険ですので、立入禁止にするのは妥当ですね。
豊稔池堰堤のダムカードはあるのか
ダムファンの中には、ダムカードを収集している人もいると思います。
豊稔池堰堤もダムカードになっている事をご存じでしょうか。
配布場所は、豊稔池堰堤がある場所から少し離れています。
平日の配布場所は、豊稔池堰堤の維持管理をしている「豊稔池土地改良区事務所」で、土・日・祝日は、「観音寺市大野原支所」になります。
豊稔池土地改良区事務所
住所:香川県観音寺市大野原町大野原1368-1
電話番号:0875-54-2035
配布時間 9:00~12:00、13:00~17:00
観音寺市大野原支所
住所:香川県観音寺市大野原町大野原1260-1
電話番号:0875-54-5700
配布時間 9:00~17:00
ダムカードの入手には、豊稔池堰堤と本人が一緒に移った写真や画像が必要ですので、忘れずに記念撮影をしておいて下さい。
豊稔池堰堤の基本情報とアクセス

住所 | 香川県観音寺市大野原町五郷田野々1050番地 |
電話番号 | 0875-23-3933(観音寺市経済部商工観光課) |
料金 | 無料 |
【アクセス】
- JR観音寺駅からタクシーで約20分
- JR観音寺駅からシャトルバスが出ています。(10:10に出発するバスのみ立ち寄ります)
- JR観音寺駅から「のりあいバス五郷高室線」に乗り、運転手に「豊稔池」と話して下さい。のりあいバスはバス停がなく、路線上ならばどこでも乗り降り自由です。
- 大野原ICから車で約15分
豊稔池堰堤の駐車場
豊稔池堰堤の間近にある豊稔池遊水公園の駐車場が利用できて、約20台の普通車を駐車できます。

その他にも豊稔池の近くにある公衆トイレの駐車場では、5台ほど駐車できます。(公衆トイレ用の駐車場なので長時間の駐車はお控え下さい)

まとめ
ダムファンの人、そうでない人も魅了する豊稔池堰堤。
観音寺市の山奥で、周りの風景に溶け込みながら、圧倒的な存在感と中世ヨーロッパの古城のような重厚感を醸し出しています。
黒く変色した石積みの質感に魅了され、何度でも訪れたくなりますね。
日本では、石積み式のマルチプルアーチダムはここでしか見る事ができません。
香川県観音寺市や近くへ訪れる機会があれば、是非立ち寄って欲しいスポットです。
【サイクリストの管理人からの一言】
自転車旅を続けていると豊稔池堰堤のような珍しい建造物に出会えたりします。そのことが自分の人生に大いに影響を与えることがあるため、旅は面白いのです。下記記事では、自転車旅によってどのような影響を受けるかについてお伝えします。