冬になると気温が下がり寒く感じるもの。
そんな季節にサイクリングへ出かけていると、スピードが普段より出せない方も多いでしょう。
特に初心者は「自分は弱くなった?」と勘違いしている方も多いはず。
決してそうではないのでご安心下さい。
冬場では空気抵抗が増加するため、自然にスピードが遅くなるのです。
これは仕方がないことなので、受け入れるしかないですね。
また、空気抵抗以外にもスピードが遅くなる原因がありますよ。
本記事では、冬場で自転車のスピードが遅くなる原因についてお伝えします。
様々な要素が絡み合い、冬場では自転車のスピードが遅い
自転車の走りには、常に空気抵抗を受けています。
分かりやすく言えば、向かい風の状態で自転車を走らせると、全然進まないのは、空気抵抗が大きいからですね。
この空気抵抗により、ペダリングの軽さが全く異なってきますので、空気抵抗が少ないほどスピードが出せる訳です。
空気には重さがあって、冬場になると気温が低くなり、重くなります。
すると、自然に空気抵抗が大きくなるのは仕方がありません。
冬場で自転車のスピードが遅くなる主な原因は、空気抵抗の増加で間違いはないですが、それ以外にも原因はあります。
そこで、以下に冬場で自転車のスピードが遅くなる原因をまとめました。
冬場では、筋肉が硬化しやすいため、そんな状態ではスムーズなペダリングは難しいでしょう。
そのため、自転車へ乗る前に入念なウォーミングアップを取り、筋肉を温めると良いですよ。
上記に挙げた原因の内、4番目の原因である「冬用のウェアによる影響」は、ウェアの重ね着による空気抵抗の増加につながります。
冬場ではスピードが遅くなるのは仕方がないため、気落ちせずサイクリングを楽しみましょう。
冬場でスピードが遅くなる主な原因は空気抵抗の増加
冬場は空気が重くなる
空気は、「窒素」が約8割り「酸素」が約2割り含まれている混合物です。
更に水蒸気も空気中に含んでいますね。
季節により空気の質量は変化する原因は、乾燥空気量と水蒸気量の割合の変化によるもの。
基本的には、乾燥空気量は水蒸気量より多いのですが、夏から冬になると乾燥空気量が増加し、水蒸気量が減少します。
この乾燥空気量が大きいほど空気の密度が濃くなる訳です。
1991年~2020年の東京の気象データより、1月と8月の空気密度を以下にまとめました。
月 | 平均気圧(hPa) | 平均気温(℃) | 空気密度(kg/㎡) |
---|---|---|---|
1 | 1012.8 | 5.4 | 1.2669 |
8 | 1007.1 | 26.9 | 1.1695 |
この結果から1月の空気密度は、8月に比べ約8%増加していることが分かります。
つまり、空気抵抗が8%増加しているため、走りに影響を受けるのは仕方がないと言えますね。
空気抵抗の割合増加の計算は「1.2669 ÷ 1.1695 = 1.08」で算出したよ。
空気が重いと空気抵抗が増す
自転車で走っている時に受ける、具体的な空気抵抗の値について解説します。
例えば40km/hのスピードで走っていると想定した場合、風速は「40,000m ÷ 3,600秒 = 11.1m/s」となりますね。
つまり、1秒間に11.1m進み、風速11.1m/sの風を受けているのです。
実際は、11.1mも進む際中にも常に空気が運転者にぶつかり、秒速ゼロまで減速するので、平均を取る意味で11.1mの半分の距離の風速で計算した方がより正確でしょう。
運転者が受ける表面積は、ブラケットポジションで0.4平方メートルぐらいなので、以下の式で空気の重さを計算できます。
風速(m/s)÷ 2 × 1立方メートル当たりの空気の重さ(kg)× 0.4
夏(8月)の平均気温が26.9℃の場合では、1立方平方メートル当たりの空気の重さが1.1695kgとなり、冬(1月)の平均気温が5.4℃では1.2669kgですので、この値使って考えてみましょう。
上記の計算式に当てはめると以下の結果が算出されました。
- 【夏の場合】11.1m/s ÷ 2 × 1.1695kg × 0.4 = 2.60kg
- 【冬の場合】11.1m/s ÷ 2 × 1.2669kg × 0.4 = 2.81kg
その差は、僅か0.21kg。
僅かな差ですが、気温の差により空気抵抗が増すのは間違いなく、自転車の走行に影響を与えます。
尚、この考えは無風状態で考えているため、向かい風などにより、より重く感じるでしょう。
筋力の低下により、スピードが出せない
気温が低くなるほど筋力が低下します。
これは、気温が低いと足の筋肉の温度が下がるため、それに伴い筋力が低くなり自転車のスピードが出せなくなるのです。
通常、気温が低い日に運動を行うと、筋肉は収縮して体温が上がりますが、同時に血管を収縮させてしまいます。
そして、体温が外へ出るのを防ごうとするのですが、疲労が溜まりやすくなる。
疲労が溜まれば筋肉は硬くなり、血流も悪くなるため、足の温度が下がってしまう。
まさに負のスパイラルですね。
【ロードバイクのトレーニング方法を紹介】
筋力が低下するとトレーニングに支障をきたす可能性があるので注意しましょう。下記記事では、自転車のトレーニングについて紹介します。
冬場はタイヤが転がらない
タイヤの素材はゴムです。ゴムは気温が高くなると膨張しますが、反対に気温が低くなると硬くなる。
また、タイヤには弾力があるため、凹んでも元に戻ろうとする力が働くのですが、気温が低くなると元に戻る力が弱まります。
つまり、ゴムは硬くなると柔軟性がなくなるため、走りが重くなってしまう訳です。
一般的にロードバイクが受けている抵抗の80%以上は空気抵抗と言われていますので、タイヤの転がり抵抗は10~20%程度でしょう。
その内、転がり抵抗の影響で5%のパフォーマンスが悪化したと仮定するならば、全体に対する影響度は、「0.15×0.05×100=0.75%」となります。
もし300Wの出力であれば、2.25Wの影響を受けることが分かりますね。
人によって2.25Wの捉え方は、大したことは無いと言いう意見もありますが、少なくても気温低下による影響は間違いなく有ると考えて良いでしょう。
その他に気温が低くなる弊害は、ゴムが硬くなるだけではありません。
気温が下がれば、タイヤの空気圧も下がります。
段差を乗り越える時、空気圧が足りないとリム打ちパンクになる可能性が高まるため、自転車へ乗る前には、空気圧が適正なのか確認を忘れずに行いましょう。
【タイヤに関する話】
タイヤは地面に唯一触れるパーツであり、空気圧を適正に入れる必要がありますね。そこで、タイヤに関する記事を紹介します。
冬用のウェアによる影響で空気抵抗が増加
冬用のウェアは選びは「保温性、防風性、速乾性」に着目して選びます。
また、重ね着することが基本となるため、夏と比較して体のラインにピッタリなウェアを着ることができません。
だからといって、夏と同じように薄着にするのは、ほとんど自殺行為。
あまりの寒さに走りに集中することができないでしょう。
つまり、冬用ウェアで体全体をしっかり防寒・保温対策すれば、冬でも快適にサイクリングができますが、代償として空気抵抗の増加はやむを得ないです。
尚、ウェアによる防寒・保温対策について、詳しくは下記関連記事で紹介します。
冬場はウォーミングアップを念入りにしよう
冬場のサイクリングでは、筋肉の動きが鈍いため、サイクリングの前は夏より入念なストレッチを行ないましょう。
そして、乗り始めはゆっくり走り、徐々にケイデンスを上げるような走り方が望ましいです。
また、ウォーミングアップを十分に取れば、筋肉は良くほぐれますので、腰痛などを防げます。
まとめ
冬場で自転車のスピードが遅くなる原因は、気温低下による空気抵抗の増加です。
更に筋肉が低下しますので、自転車へ乗車する前には、入念なストレッチを入れましょう。
気温低下は、自然現象のため上手く付き合うしか対応方法はありません。
また、タイヤが硬くなることで走りが重くなったり、ウェアの重ね着で更に空気抵抗が増加したりします。
様々な要素が重なり合い、走りが重く感じるのは仕方がないので、気落ちせずサイクリングを楽しみましょう。