私たちにとって自転車は、とても身近な交通手段であり、日常生活の足として活用されています。近年、自転車に関わる悪質な違反や事故が多く、何かしらの抑止力が声高に叫ばれてきました。
そして、2024年5月17日に反則金制度を盛り込んだ道路交通法(略:道交法)を改正する法案が、閣議決定された次第です。
この反則金制度は、比較的軽微な交通違反者に対する行政手続きであり、いわゆる「青切符」と呼ばれるもの。青切符の導入により、より一層自転車の取り締まりが強化されます。
そうすると「いつから実施されるの?」「青切符の適用対象は?」といったような疑問を持つ方も多いでしょう。私も気になりましたので色々と調べてみました。
本記事では、「青切符」とはいったいどのような制度であり、違反者に対してどこまで期待できるのか私の考察を交えて紹介します。
なぜ自転車に「青切符」が導入されるのか
警察庁の発表によれば、全国的に交通事故の発生件数は減少している一方で、自転車に関わる事故が増加傾向にあるそうです。2022年では、自転車関連の事故が約70,000件もあったそうですから、その実態に驚きます。
自転車は車の仲間であり、軽車両の分類される立派な乗り物。扱い方次第では、死亡事故につながる危険性をはらんでいます。
実際、2022年には約7,000件の死亡・重傷事故が発生していますので、これを放置しておくことはできないでしょう。
今までは、自転車の違反取締りは、「警告」か「赤切符」の2つしかなく、赤切符はよほど悪質な違反者でなければ適用されませんでした。
つまり、軽度な違反者に対しては「警告」しか行われないので、実質その場限りの効果しかないことは想像に難くありません。
また、自転車事故に関する主な原因のほとんどが、「信号無視」と「指定場所一時不停止」という結果が統計から読み取れ、どのようにすれば効果的な指導ができるのか課題となっています。
このような背景により「青切符」が導入されることが決定されました。
【自転車のルールを紹介(その1)】
自転車の様々なルールを、下記記事で紹介します。
青切符の対象年齢と主な適用対象を紹介
青切符は全年齢が対象者となる訳でなく、16歳以上の人が対象となります。
対象が16歳になった理由は、最低限の交通ルールを理解しているであろうと思われることや、原付き免許などを取得できる年齢などが理由だそうです。
個人的には、「交通ルールを理解せずに自転車に乗っていること自体が問題なのでは?」と思うので、もう少し対象年齢は引き下げた方が良いのではないでしょうかね。
そもそも赤切符の対象年齢が14歳以上なのに対して、青切符の対象年齢がそれより上というのはどうだろうか。
青切符の適用となるのは、113の違反行為が対象となり、このうち重大な事故につながるおそれのある違反に対して取り締まりを強化します。
そこで、主な適用対象を以下にまとめました。
- 信号無視
- 一時不停止
- 右側通行などの通行区分違反
- 歩道走行(例外的に歩道を通行できる場合でも徐行をしていない)
- 歩行者妨害
- 二人乗り
- 逆走
- 無灯火
- イヤホンの着用や傘差し運転
- スマホや携帯電話を使用しながらの運転(ながら運転)
- 遮断踏切立ち入り
- 駐停車違反
これらの違反行為を警察官が見つけ、次のような場面で「青切符」の対象となります。
- 警察官の警告に従わずに違反行為を継続した
- 通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせた
- 交通事故に直結する危険運転行為を行なった
また、たとえ青切符が交付されなくても、将来の運転行動の改善を促すため、指導警告を受けることがありえますね。
青切符の実施時期と罰則
冒頭で触れた通り、2024年5月17日に道交法を改正する法案が閣議決定され、「青切符」の導入が正式に決まりました。青切符の導入は、改正法の公布から2年以内に施行されるので、2026年に実施されます。
青切符が交付された違反者は、5,000円~12,000円程度の反則金を支払わなければなりません。これは義務となるので、無視できないですよ。
もし反則金を納めなければ、警察が検察に事件送致して刑事手続きとなります。
個人的な見解ですが、注意や警告に対して反抗的な態度をとったり、違反行為を止めるようにいわれているのに無視したりしていると、青切符ではなくて赤切符が交付されるかも。
違反を犯したならば、素直に過ちを認めて反省しましょう。
【自転車のルールを紹介(その2)】
自転車の様々なルールを、下記記事で紹介します。
悪質な違反には従来通り「赤切符」が交付される
ながら運転や飲酒運転など事故につながる危険な運転をしていると、従来通り「赤切符」が交付されます。
そうなると、刑事罰の対象ですね。罰金だけでなく、前科が付く可能性があるため、よりいっそう気を付けたい。
取り締まりの強化は、通勤通学の時間帯や日没の前後1時間ほどの薄暮が多いだろう。また、駅周辺など自転車が多く利用されている場所や、過去に自転車事故が発生した場所などであることが予想できる。
そもそも普段から交通ルールを守っていれば、それほど恐れる必要はないですね。
赤切符については、下記関連記事でくわしく紹介します。
青切符の効力はどこまで期待できるのか?
個人的には「青切符」が導入されれば、一定の効果があるだろうと期待していますが、大きく違反者が減少しないのではないかと思っています。
というのは、先に導入された「赤切符」ですが、2022年に交付された件数は、約25,000件と多いからですね。
もし青切符の効果が芳しくないのであれば、さらなる罰則の強化や抜本的な制度の変更が必要になるでしょう。具体的にいえば、自転車の運転免許制度の導入です。
今は誰もがお手軽に自転車へ乗れるため、自転車の持つ怖さや交通ルールをよく理解せずに乗れてしまうのが問題ではないでしょうか。
法整備だけでなく自転車道の充実と教育環境の整備が大事
「青切符」や「赤切符」などの法整備はたしかに大切ですが、将来的には今以上に自転車道の充実と教育環境の整備しなければ、違反者を減少させる根本的な解決はできないと思っています。
本来自転車は、車道を走る乗り物なのですが、残念ながら歩道を走る乗り物として広く認知されているのが現状です。
この認識を改めさせるためにも、自転車が安全に走れる自転車道の整備は必要でしょう。
具体的には、路肩を自転車道に整備したり、一部の狭い一車線の一般道路を自転車専用道路に変更するのが現実的だといえる。新規に自転車専用道路を整備するのももちろんありですが、よほどの費用対効果が期待できなければ、実現は難しいと思います。
また、先ほども少し触れましたが、自転車にも免許制度を導入すべきでしょう。
繰り返しとなりますが、交通ルールを知らなくても誰もが自由勝手に自転車へ乗れてしまう今の現状こそが、根本的な問題であると思います。
実際、自転車の走り方は、自分自身で好きに覚える機会が多く、正しい指導者を必要としている訳ではありません。つまり、交通ルールを覚える機会が車と比較して低すぎます。
免許制度を導入することで、強制的に交通ルールと正しい走り方を身に付けなければ、自転車事故の減少につながらないと思います。
万一に備え自転車向けの損害保険へ加入しよう
日本国内の多くの自治体では、自転車保険の加入を義務化したり、努力義務化が広がっています。
万が一の事故に備えて、自転車事故の被害者と加害者双方の経済的な負担を軽減させるためにメリットが大きいですね。
実際、過去には裁判所により自転車事故の加害者に対して、約1億円となる高額賠償の判決が下されました。このような高額の損害賠償責任を負うリスクに対して備えるためにも「個人賠償責任保険」は必須です。
自転車保険は、たいていは傷害保険と個人賠償責任保険の2つがセットになっているものが多い。この2つを簡単に説明すると以下の通りとなります。
- 傷害保険は、自転車の運転中に転倒などで自分が怪我をした場合の備え
- 個人賠償責任保険は、自転車の運転中に、相手に接触などで怪我を負わせてしまった場合の備え
保険会社では、様々な保険商品を扱っているので、自分が何を重視するかよく考えて決めていきましょう。
自転車保険については、下記関連記事でくわしく紹介します。
まとめ
青切符は、比較的軽微な交通違反を起こした人へ適用される行政制度です。
1人1人が交通ルールをしっかりと遵守し、交通事故が少ないのであれば、このような改革はされなかったはず。そういう意味では、現状を顧みて、青切符の導入はやもえないでしょう。
もし青切符を導入した後でも違反者が続出するようであれば、再び罰則の強化が図られるに違いありません。そうなれば、抜本的な制度の仕組みにメスを入れる必要があります。
今一度、自分自身の自転車の乗り方について振り返ってみて、悪いと思うところは意識して改善するよう心掛けたいですね。